このブログを検索

2024年5月18日土曜日

X twitter 5月14日 ~16 日 家族の起源をめぐって

 

布野修司 Shuji Funo
ホモ・サピエンスの家族の起源はどのような形態であったのか?そもそも家族とは何か?マードックなど人類学社会学の碩学が①血縁(親子・兄弟姉妹)②共食(竈)③共住(住居)④経済(生計、消費、生産、経営、財産)を基本要素として定義されるが、例外は少なくなく、通文化的定義は放棄されている。


家族の定義として、その起源において、①血縁関係(親子・兄弟)を共同する出自が基本要素とされるが、養子制度やゴースト・マリッジ(死者との婚姻)のあるところでは当てはまらない。上野千鶴子によれば、文化人類学が辿り着いたミニマムな定義は、火(台所、竈)の共同、すなわち共食共同体である。

家族のミニマムな定義は、②共食あるいは③共住である。しかし、家族と世帯は一致しない。共食単位と居住単位にはずれがある。出稼ぎや単身赴任、勉学などのための下宿やアパート生活は、世帯(生計)は共有されている。世帯群が共住する例がもちろんある。すなわち一家族=一住居はむしろ例外である!

エンゲルス『家族・私有財産・国家の起源』(1884)は国家や一夫一婦制、私有財産や奴隷制度、賃労働を自明のものとする歴史観にたいして、それらは、歴史的なもの、すある条件のなかで生成し、またその条件の解消にともなって消滅(変化)するにすぎないと主張した。では、家族の起源は?その形態は?

エンゲルスは、野蛮段階で部族を構成するのは男性と女性による集団婚で、誰が子どもの父親であるかが不確定の母系制の共同体を形成していた。しかし、農牧業の発達による富の形成は土地の分割と私的所有をもたらし、財産となる土地や家畜の所有を戦闘力に優れる男性の権限に移し替えていった、という。

エンゲルスは、「乱婚(無規律性交)→血族婚→プナルア婚→集団婚→対偶婚→父系制単婚」という発展図式を考えた。古代の母系制社会は、私有財産制度の成立と富の拡大ともに父系制社会へ移行する。私有財産制は集団婚を単婚へと移行させ、単婚制を一夫多妻の家父長制から一夫一婦制へと移行させた!!


重田園江(明治大学)ノーラン監督『オッペンハイマー』評:ニューメキシコのロスアラモス研究所は今もアメリカ核開発の一大拠点であり続け、大量の各廃棄物や有害物質を敷地内に保管、近くを流れるリオグランデ川はメキシコ湾に流れ込むが、軍の機密事項で市民の監視の眼はおよんでいない、という。

エンゲルス『家族・私有財産・国家の起源』(1884):私有財産制は家族制度を新しい段階へと発展させる。集団婚を単婚へと移行させ、やがて、単婚制を一夫多妻の家父長制から一夫一婦制へと移行させた。単婚家族という新しい家族形態がまったくの過酷さをもって現れるのは、ギリシアの場合である。


エンゲルス『家族・私有財産・国家の起源』(1884):英雄時代のギリシアの妻は‥結局、相続者である嫡出子の母であり‥家政婦長であり、女奴隷たちの監督官に過ぎない。若い美しい女奴隷の存在、単婚は妻にとってだけの単婚であって、夫にとっての単婚ではないという性格を今日でもなお帯びている。


エンゲルス『家族・私有財産・国家の起源』(1884):一夫一婦制が歴史に登場するのは、決して男女の和合としてではなく、いわんやその和合の最高形態でもない。その反対である。それが登場するのは一方の性に対する他方の性の圧制としてであり、知られることのなかった両性の抗争の宣言としてである。

エンゲルス『家族・私有財産・国家の起源』(1884)は学生時代に読んだ。執筆のモメントはカール・マルクスの遺稿整理である。晩年のマルクスはロシア農村共同体から共同体一般への関心を高め、原始共同体の手がかりをルイス・ヘンリー・モーガンのイロコイ・インディアンの『古代社会』に求めていた。


マルクスは『経済学批判』(1859)の段階で、すべての民族の起源に原始共産制社会があったと考えていた。エンゲルスも『空想から科学へ』で原始共産制社会の存在を指摘し、平等な共同体が有史以前に存在していたと主張していた。その実証のために、マルクスもエンゲルスも古代研究を必須と考えていた。