メテオプラザ
布野修司
隕石の落ちたというハプニングを積極的に町おこしに生かしたいということもあって、また、隠岐島への玄関口であるということもあって、通常の機能を超えた象徴的な表現が強く求められた建築作品である。公開ヒヤリング方式の設計競技(コンペティション)によって設計者が選ばれたのであるが、その際、周辺の漁港の風景に調和的に連続する案とこの実施案とが最終的に残り、議論となった。最終的に象徴性を最大限に表現するこの作品が選定されたのであるが、決め手となったのは隠岐への行き帰りに必ず眼にする海側からの景観である。
景観というのは、時に、新しく創り出されるものである。また、敢えて自然と対立する表現としてすぐれた景観が成立する場合もある。記憶に残る景観創出の新しい意欲的な試みとして大いに評価したい。
羽須美村立羽須美中学校
山間に建てられたしっとりと落ちついた中学校である。指名コンペ方式で選定され実施された作品だという。校庭に面して設けられた緩やかにカーブした二層の回廊がやわらかな雰囲気を醸し出している。打ち放しのコンクリートの仕上げが主体である中に、木材が使用されているのも効果的で、柔らかな空間の印象を与えるのに寄与しているように思えた。周囲の景観に溶け込む秀作である。
ただ、落ちついた雰囲気の中庭に対して校庭側の色彩の扱いが少し中途半端で徹底しないように個人的には思った。すなわち、青、赤、黄色、緑といった原色が鉄骨部分に塗られるのであるが、そう効果があがっていないように思えたのである。色を絞るか、面積をもう少し増やすか、少しものたりないのである。景観を考える上で色彩は難しい。生成(きなり)の色が日本人の感覚に合うというのであるが、もう少し、大胆に色を使う例があってもいいとも思う。