このブログを検索

ラベル 景観賞 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 景観賞 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2026年3月14日土曜日

奥出雲おろち号、第7回しまね景観賞 優秀賞選評、島根県、1999

 奥出雲おろち号

  布野修司 

 出雲横田駅の近くの踏切で待った。紅葉の季節がほぼ終わりかけ、明日には運転がお終いになるという日で、雪も降り出しそうであった。

 やがてゆっくりと奥出雲おろち号が現れた。白とブルーに塗り分けられた車体は後ろの山の緑と紅葉によく映えて見えた。映えると言っても、自己主張をする映え方ではない。適度のスピードで通り過ぎるから、適度に刺激的である。このデザインが賞の対象だけれど、それよりこの企画自体が景観賞に値する。すなわち、景観を鑑賞する仕掛けがいい。

 このトロッコ列車の存在によって鉄道沿線の景観は常に意識されるだろう。旅客たちは奥出雲の自然を楽しむと同時に奧出雲の歴史と伝統を思う。他に同様のアイディアはあるにせよ、いつまでも続けて欲しいと思う。

 寒いから、トロッコ列車に乗っている人はいないのじゃないか、といささか心配であったけれど、やってきた奥出雲おろち号には紅葉を楽しむ少なからぬ客があった。

2026年3月4日水曜日

カラコロ工房、曽田邸、しまね景観賞、島根県景観課、2000年

 

カラコロ工房

布野修司

 

 旧日本銀行松江支店のリニューアル(更新)計画である。スクラップ・アンド・ビルド(建てては壊す)の時代から既存の建築資産、都市資産を再活用するストックの時代を象徴する先進事例として高く評価したい。もとの設計は長野宇平治、夏目漱石の同級生で全国的に知られた建築家である。しかし、こうした著名な建築家の作品であれ、建築史的価値というだけで保存される例はほとんどなかった。親しまれた街並み景観への要素を維持しながら、新たな機能を付加するのがこれからの手法である。

 本館に接して増設された工房棟の中庭のスケールがいい。板張りの床がカラコロ鳴るのもいい。工房という設定が成功の要因かもしれない。今のところ予想を超えた利用がなされていると聞いた。銀行の本館地下金庫のギャラリーも不思議な空間に再生されている。

 


曽田邸

布野修司

 

 国立公園内に建つ個人住宅である。

 かなりの急斜面であり、冬にはかなりの強風が吹きつける、普通は宅地には相応しくない立地である。しかし、気候のいい、特に夏などは、そのまま海に降りていけそうな、うらやましくなるような敷地だ。

 国立公園内ということもあって、豊かな樹木はそのまま残されている。建設に当たって新たな植栽もなされている。プランニングも地形に沿った形で樹冠のラインを大きく遮らないよう配慮されている。海を介して千酌港の岸壁から眺める景観がその設計意図をよく表しているように思えた。すなわち、この住宅は徒に自己主張することなく、豊かな緑の中に沈み込んでいる。また、緑に赤瓦が映えている。

 こうした地形や緑、景観に対する配慮は、設計の基本であり、国立公園に限らないであろう。個々の住宅の設計においても景観は問われている。そのひとつの好例として評価したい。

2025年2月8日土曜日

出雲市まちづくり景観賞 1996、講評、出雲市、1996

 出雲市まちづくり景観賞 96年度講評

 布野修司

 

 応募総数は47件と昨年より一件多く、まちづくり景観賞もすっかり定着したようである。例年応募作品を見て回るのがいささかあわただしかったのであるが、今年は丸一日時間をとってじっくり見て回ることができた。 今年も3点に絞るのはなかなか大変であった。結果として、これまでに景観賞を受賞してないものを優先することとなった。

 緑台町内会は、民間の町並み形成の努力が高く評価された。住宅メーカーや大手のディベロッパーの事例は多いが、数戸でも町並みに寄与することができる貴重なモデルケースになっている。

 住田邸は、公共空間に庭を開放している処理が高く評価された。また、新しい素材感覚と軽快な屋根形態が新しい町並み形成の可能性として評価された。

 板垣邸の前の空間は実に楽しい設えになっている。通りを通る人の眼を和ませてくれる。

 以上のようにこれまでの6回の受賞作とは異なったタイプのものを取り上げたために当然受賞していい作品が選から漏れたことは心苦しい限りであった。続けて応募していただけるようお願いする次第である。

 

2025年2月7日金曜日

しまね景観賞 松江宍道湖温泉駅 選評、島根県

 しまね景観賞

松江宍道湖温泉駅

 

なんともちっぽけなターミナル駅である。単線だから世界最小の終着駅かもしれない。でも、とても上品な駅だ。薄い軽快な屋根、細い柱、透明な箱、一見駅には見えない。待合室は洒落たカフェーの趣がある。天井が高くノビノビしているのがいい。継ぎ目がないDPG(ドット・ポインティッド・ガラス)の使用にしても、鉄骨の収まりにしても、とにかく、ディテールが綺麗である。かつての鄙びた駅の華麗なる変身である。と思うと、駅前には何やらほのぼのとしたお湯かけ地蔵があり、足湯に足を浸す人々がいて、宍道湖の北岸をゴトゴト走る一畑電車ののどかな雰囲気が漂ってもいる。どことなく気取った都会風の駅とのんびりとした足湯とお湯かけ地蔵、絶妙のアンバランスというべきか。

駅は、それぞれの場所で、それぞれ別の貌を持つべきではないか。一畑電鉄の試みは楽しい。新幹線の駅のようにどこでも同じじゃあ困る。足湯のある松江宍道湖温泉駅は、どこにもないユニークな終着駅である。(布野修司)

2025年1月4日土曜日

宇曽川(愛知川・犬上川・芹川)下流域の環境(空間・景観)形成についてのメモ, 滋賀県立大学、2007

 宇曽川(愛知川・犬上川・芹川)下流域の環境(空間・景観)形成についてのメモ

2007528

布野修司

特記無き図版は、『新修 彦根市史 第一巻』(2007年)より

地形

南東から北西にかけて流れる4つの河川(芹川、犬上川、宇曽川、愛知川)によって形づくられた流域は、山裾から広がる扇状地、それに続く氾濫原(後背湿地)、そして琵琶湖岸に形成された砂堆(さたい)浜堤(ひんてい)とその背後(すなわち、砂堆と氾濫原の間)に形成された三角州からなる。

砂堆(浜堤):河川によって流されてきた砂が琵琶湖の沿岸流によって堆積することによって形成された湖岸の微高地 松林 松原、大藪、八坂、須越、三津屋、薩摩、柳川などの集落が立地する

内湖:(松原内湖)、野田沼、曽根沼、(じん)(じょう)沼 葦地の形成

 自然堤防:三角州と氾濫元の間に洪水堆積によって形成された微高地:集落が立地

 独立丘:彦根山、佐和山、雨壺山、鳥籠山、荒神山、  多景島

水系

 取水口:扇状地の扇頂部  犬上川の一の井、二の井

 湧水:扇状地の末端部

 旧河道:

 付け替え:彦根城下町の縄張り

 自噴式井戸 ドッコイショ地帯 出水 生水(しょうず

古代遺構

 縄文遺跡 黒曜石

 弥生遺跡 環濠集落と高地性集落 妙楽寺遺跡、屋中寺廃寺、長野遺跡、普光寺遺跡、芝原遺跡、

 古墳時代 荒神山古墳 大和政権 渡来系氏族 遣隋使・遣唐使

 律令国家と近江 大津宮 古代寺院 

  国ー郡―里(=50戸)  国司―郡司―里長

  坂田郡・犬上郡・愛知郡・神崎郡

   郷 

  ()()と荘園支配

    東大寺、水沼村覇流荘

 

 

交通

 東山道 律令国家  道と(うまや)30里に1駅)  ()(この)駅 横川駅 不破関

    古代東山道 中世東海道 近世中仙道 

  宿

 朝鮮人街道 海道筋 下海道筋

 

 湖上水運 湊 朝妻湊  琵琶湖回船

  市  八坂商人 保内商人 五箇商人

 地割

 条理制: 三世一身法(723) 班田図の整備(742) 墾田永年私財法(743

   町(60(109m)四方 約1.2ha) 6町×6町=里 条=東西6町

   高橋誠一他、「滋賀県犬上郡における条理と灌漑システムー芹川中流域右岸を中心として」、『滋賀大学教育学部紀要』、1985

   高橋誠一、『日本古代都市研究』、古今書院、1994

   谷岡武雄、『平野の開発』、古今書院、1964

   中野栄夫、「近江国愛知荘故地における開発と潅漑」、『地方史研究』1381975

   田中勝弘、「残存条里と集落遺構」、『滋賀考古学論叢』21985

 

 荘園制:律令制(公地公民)→私有地 売券 荘園整理令902 1069 

     犬上荘、清水荘、善理荘、後三条勅旨田

 

 太閤検地1591(天正19)年   検地帳 大橋村(芹川町)と下平流村(稲里町)が残る

名請人(耕作者) 一地一作人  村請 村切り

      一反(段) 360歩→300

集落

 国領遺跡:11世紀―12世紀

 八坂東遺跡:12世紀-13世紀

 妙楽寺遺跡:弥生 古墳―平安 平安―室町  戦国都市 港町

 古屋敷遺跡:14世紀―16世紀 

 甘呂城 蓮台寺城 

日夏村 1950年 彦根市に合併  筒井・五僧田・安田・泉・寺・妙楽寺・中沢・島 ・・・村 

  朝鮮人街道 海道筋 下海道筋

 甘呂

 開出今





2024年11月25日月曜日

しまね景観賞 審査表、島根県、1996

 

メテオプラザ

布野修司

 

 隕石の落ちたというハプニングを積極的に町おこしに生かしたいということもあって、また、隠岐島への玄関口であるということもあって、通常の機能を超えた象徴的な表現が強く求められた建築作品である。公開ヒヤリング方式の設計競技(コンペティション)によって設計者が選ばれたのであるが、その際、周辺の漁港の風景に調和的に連続する案とこの実施案とが最終的に残り、議論となった。最終的に象徴性を最大限に表現するこの作品が選定されたのであるが、決め手となったのは隠岐への行き帰りに必ず眼にする海側からの景観である。

 景観というのは、時に、新しく創り出されるものである。また、敢えて自然と対立する表現としてすぐれた景観が成立する場合もある。記憶に残る景観創出の新しい意欲的な試みとして大いに評価したい。

 

 

羽須美村立羽須美中学校

 

 山間に建てられたしっとりと落ちついた中学校である。指名コンペ方式で選定され実施された作品だという。校庭に面して設けられた緩やかにカーブした二層の回廊がやわらかな雰囲気を醸し出している。打ち放しのコンクリートの仕上げが主体である中に、木材が使用されているのも効果的で、柔らかな空間の印象を与えるのに寄与しているように思えた。周囲の景観に溶け込む秀作である。 

  ただ、落ちついた雰囲気の中庭に対して校庭側の色彩の扱いが少し中途半端で徹底しないように個人的には思った。すなわち、青、赤、黄色、緑といった原色が鉄骨部分に塗られるのであるが、そう効果があがっていないように思えたのである。色を絞るか、面積をもう少し増やすか、少しものたりないのである。景観を考える上で色彩は難しい。生成(きなり)の色が日本人の感覚に合うというのであるが、もう少し、大胆に色を使う例があってもいいとも思う。

 

布野修司 履歴 2025年1月1日

布野修司 20241101 履歴   住所 東京都小平市上水本町 6 ー 5 - 7 ー 103 本籍 島根県松江市東朝日町 236 ー 14   1949 年 8 月 10 日    島根県出雲市知井宮生まれ   学歴 196...