カラコロ工房
布野修司
旧日本銀行松江支店のリニューアル(更新)計画である。スクラップ・アンド・ビルド(建てては壊す)の時代から既存の建築資産、都市資産を再活用するストックの時代を象徴する先進事例として高く評価したい。もとの設計は長野宇平治、夏目漱石の同級生で全国的に知られた建築家である。しかし、こうした著名な建築家の作品であれ、建築史的価値というだけで保存される例はほとんどなかった。親しまれた街並み景観への要素を維持しながら、新たな機能を付加するのがこれからの手法である。
本館に接して増設された工房棟の中庭のスケールがいい。板張りの床がカラコロ鳴るのもいい。工房という設定が成功の要因かもしれない。今のところ予想を超えた利用がなされていると聞いた。銀行の本館地下金庫のギャラリーも不思議な空間に再生されている。
曽田邸
布野修司
国立公園内に建つ個人住宅である。
かなりの急斜面であり、冬にはかなりの強風が吹きつける、普通は宅地には相応しくない立地である。しかし、気候のいい、特に夏などは、そのまま海に降りていけそうな、うらやましくなるような敷地だ。
国立公園内ということもあって、豊かな樹木はそのまま残されている。建設に当たって新たな植栽もなされている。プランニングも地形に沿った形で樹冠のラインを大きく遮らないよう配慮されている。海を介して千酌港の岸壁から眺める景観がその設計意図をよく表しているように思えた。すなわち、この住宅は徒に自己主張することなく、豊かな緑の中に沈み込んでいる。また、緑に赤瓦が映えている。
こうした地形や緑、景観に対する配慮は、設計の基本であり、国立公園に限らないであろう。個々の住宅の設計においても景観は問われている。そのひとつの好例として評価したい。
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