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2022年12月3日土曜日

茨城ハウジング・アカデミ-,雑木林の世界27,住宅と木材,(財)日本住宅・木材技術センター,199111

 茨城ハウジング・アカデミ-,雑木林の世界27,住宅と木材,(財)日本住宅・木材技術センター,199111

雑木林の世界27

茨城ハウジングアカデミー

                        布野修司

 

 九月一日付けで京都大学に転勤となった。不思議な縁である。東洋大学には本当にお世話になり、育てていただいたのであるが、「面白いから行ってこい」と追い出された次第である。それほど気負いはなく、行ってみるか、の心境である。

 京都は一九九四年に建都千二百年を迎える。それを記念する事業の一環として京都駅が建て替えられる。そのコンペは、知られるように原広司案が一等当選、その高さをめぐって大きな議論が巻き起こりつつある。この間の再開発ブームで、町は急速に変化した。古都の景観問題は大きな問題であり続けている。難しそうだけれど、面白そうではある。

 出雲生まれの田舎者にとって、京都は京都であって、所詮他所者である。他所者の眼で京都の町もウオッチングして行こうと思う。そのうち、何かゴソゴソやりたくなるかもしれない。この半年は単身赴任で、東京と京都を行ったり来たりである。まだ、三度往復しただけで、何も報告することはないのであるが、いずれ京都や関西の様々な動きも紹介して行くことになろう。乞う、御期待である。

 以前、本欄で書いた(雑木林の世界14「カンポンの世界」 一九九一年十月)『カンポンの世界』(パルコ出版 九〇年七月)がようやく上梓の運びとなった。書き出したのが、昨年の八月だから、丁度一年である。まあ、早く出来た方ではないか。本をつくる過程を結構楽しんだ。

 その『カンポンの世界』を書くきっかけになった、スラバヤ工科大学のJ.シラス先生がこのほど日本住宅協会の国際居住年記念松下賞(第四回)を受賞された(十月四日)。実に嬉しい。久しぶりに会って、議論をした。相変わらず精力的で鋭い。いい先生に巡り会えてつくづく良かったと思う。

 

 京都へ赴任して、一度東京京都を往復した後、茨城へ赴いた。九月一一日。日本住宅木材技術センターの技能者養成プログラムのためである。茨木の「地域職人学校」(雑木林の世界12「地域職人学校ーーー茨城県地域木造住宅供給基本計画」 九〇年八月)もいよいよスタートである。名称は、まだ確定してはいないのであるが、仮に、「茨木ハウジングアカデミー」と称す。京都からだと水戸も遠くなるのであるが、折角の縁なので、可能な限りお手伝いしようと思っている。

 二百名もの高校生の前で話すのは難しい。一体何を話せば茨木ハウジングアカデミーの魅力を訴えられるか全く自信が無かった。僕のは、日本で初めての試みである、日本中が注目している、という一点だけをただただ強調するだけの気の抜けたアジテーションとなった。現場で何かを見ながら、しながらというのなら、もう少しなんとかなるのにと思いながら、そうもいかない。来年に向けてはプロモーション・ビデオをつくる必要があるかもしれない。

 僕のことはともかく、日本住宅木材技術センターの征矢さんはじめ、懸命になって木造住宅の魅力について訴えることになった。

 藤澤好一 「木造住宅の技術と生産について」

 谷 卓郎 「木造住宅の技術者について」

 布野修司 「木造住宅のデザインについて」

 安藤邦広 「木造住宅の技術とデザイン」

 以上が主なプログラムであったが、メインは、安藤邦広先生のスライド・レクチャーである。一度の研修では無理があろうが、木造住宅を自分の手でつくる楽しみが少しでも伝わればとの思いであった。

 「茨木ハウジングアカデミー」は、職業訓練大学の谷卓郎委員長を中心に来年四月開校を目指して急ピッチで準備作業を進めることになる。とりあえず、高卒者を対象にした認定職業訓練校を目指すのであるが、なかなか準備が難しい。幸いに「中小企業若年建設技能労働者育成援助事業」ということで労働省の補助がついたのであるが、それに従えばおよそ以下のような検討項目がある。

 A.職業能力開発実施のために必要な準備事業

  a.建設技能者育成方針の策定事業

      1.建設技能者育成推進委員会の開催

   2.各企業のニーズ調査

   3.情報収集(先端企業視察)

   4.建設技能者育成方針の策定

     ・職業訓練実施方針

     ・施設及び設備の整備方針、運営方針

   5.各企業のニーズ調査結果及び実施方針説明会の開催 

  b.建設技能者育成実施計画作成事業

      1.建設技能者育成推進委員会の開催

   2.職業訓練実施計画の策定

     ・対象者、訓練期間、教材、訓練時間、訓練カリキュラム、指導員、試験

   3.職業訓練施設、設備の整備計画の策定

     ・名称、所在地、面積、設備の構造、設備の内容及び規模

   4.職業訓練設備運営計画書の策定

     ・訓練開始後二ケ年の運営収支計画

   5.実施計画報告書説明会の開催 

  c.建設技能者育成実施準備事業

   1.職業能力開発推進者研修会の開催

   2.職業訓練指導員及び外部講師名簿の作成

   3.職業訓練マニュアルの作成

   4.職業訓練指導員及び担当者の研修会の作成

 B.認定職業訓練のプログラム

     ・括弧内は茨木ハウジングセンターの内容)

  a.訓練科目(養成訓練建築科)

  b.訓練課程(普通課程)

  c.対象者(高校卒業者)

  d.訓練内容(木造住宅技能者の育成)

  e.訓練期間(二年間)

  f.訓練時間(三二〇〇時間) 

  g.定員(一六人)

 随分と面倒臭い。しかし、既に三年の蓄積があるので、基本方針はほぼ固まっている。問題は具体化へ向けての実施計画である。それも多くは既にクリアしつつあるのであるが、最大の問題は、施設、設備である。どうせなら、どこにもない魅力的なものをつくりたい。しかし、いきなりはそうはいかないから、いろいろ工夫がいるのだ。続いて問題なのが指導員である。座学はなんとかなるにしても、OJTを担当するのにも資格がいる。しかし、なんとかスタートできる、そんな自信が茨城県木造住宅センターの推進グループとともに沸きつつある。