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2023年2月15日水曜日

Community Based Development & Sustainability, An International Symposium Urban Regeneration and Economic Development, 20071117:講演:「地域再生と持続的発展:Community Development and Sustainability」,AIA(アメリカ建築家協会)日本支部主催,テンプル大学日本校・国士舘大学アジア研究センター共催,国際シンポジウム「都市再生:環境サステナビリティと経済発展: Urban regeneration and and Economic Development」,新生銀行本店,2007年11月17日

講演:「地域再生と持続的発展:Community Development and Sustainability」,AIA(アメリカ建築家協会)日本支部主催,テンプル大学日本校・国士舘大学アジア研究センター共催,国際シンポジウム「都市再生:環境サステナビリティと経済発展: Urban regeneration and and Economic Development」,新生銀行本店,2007年11月17日

Community Based Development & Sustainability, An International Symposium Urban Regeneration and Economic Development, 20071117

































都市再生と経済発展

 地域再生と持続的発展

カンポンKampungに学ぶこと

布野修司

 


 
カンポンkampungとは、インドネシア(マレーシア)語で「ムラ」という意味である。カンポンガンというと「イナカモン」というニュアンスである。都市の居住地なのにカンポンという。このカンポン、実は、英語のコンパウンドcompound(囲い地)の語源なのである。カンポンのあり方を紹介する中でアジアの都市の共生原理と持続的発展を考えたい。 

 

自己紹介

・建築計画→地域生活空間計画→環境建築学/カンポン調査(東南アジアの都市と住居に関する研究)/アジア都市建築研究・植民都市研究

・タウンアーキテクト論 →近江環人(コミュニティ・アーキテクト)地域再生学座

    日本建築学会 建築計画委員会委員長 英文論文集委員会委員長 

    元理事 『建築雑誌』編集委員長 前アジア建築交流委員会委員長

        島根県景観審議会委員

        宇治市都市計画審議会会長 景観審議会委員

 主要著作

   [1]:戦後建築論ノート,相模書房,1981615(日本図書館協会選定図書)

   [2]:スラムとウサギ小屋,青土社,1985128

   [3]:住宅戦争,彰国社,19891210

   [4]:カンポンの世界,パルコ出版,1991725

   [5]:戦後建築の終焉,れんが書房新社,1995830

   [6]:住まいの夢と夢の住まい・・・アジア住居論,朝日新聞社,19971025

   [7]:廃墟とバラック・・・建築のアジア,布野修司建築論集Ⅰ,彰国社,1998510(日本図書館協会選定図書)

   [8]:都市と劇場・・・都市計画という幻想,布野修司建築論集Ⅱ,彰国社,1998610(日本図書館協会選定図書

   [9]:国家・様式・テクノロジー・・・建築のアジア,布野修司建築論集Ⅲ,彰国社,1998710(日本図書館協会選定図書)

   [10]裸の建築家・・・タウンアーキテクト論序説、建築資料研究社,2000310

   [11]曼荼羅都市・・・ヒンドゥー都市の空間理念とその変容,京都大学学術出版会,2006225

 

 

Ⅰ カンポンの世界

カンポンの語源については、ポルトガルのcampanha, campo(キャンプの意)の転訛、フランス語のcampagne(田舎countryの意)の転訛という説もあるが、マレー語のカンポンがその由来であるというのがOEDであり、その元になっているのが、ユールとバーネルのインド英語の語彙集である。Yule, H. and Burnel, A.C., “Hobson-Jobson: A Glossary of Colloquial Anglo-Indian Works and Phrases, and of Kindred Terms, Etymological, Historical, Geographical and Discursive, Delhi: Munshiram Manoharalal, 1903(1968)”

 

アジアの居住問題

人口問題、食糧問題、資源問題、居住問題

発展途上国の都市化の特質

  発展途上国の都市化  都市化の水準と速度

  過剰都市化とプライメート・シティ ランクサイズルール

都市化の構造的重層性

    植民都市 

    複合社会

    二重構造

    都市村落 

都市化理論と発展途上国

都市化の類型

 カンポンの特性

1.多様性

2.全体性

3.複合制

4.高度サービス社会 屋台文化

5.相互扶助システム

6.伝統文化の保持

7.プロセスとしての住居

8.権利関係の重層性

 カンポンに学ぶこと

   Urban Involution

   Shared Poverty(貧困の共有) Work Sharing

 カンポン・ハウジング・システム

カンポン固有の原理の維持/参加/スモール・スケール・プロジェクト

段階的アプローチ/プロトタイプのデザイン/レンタル・ルームのデザイン/集合の原理の発見/ビルディング・システムの開発/地域産材の利用/ワークショップの設立/土地の共有化/ころがし方式/コーポラティブ・ハウジング/アリサンの活用/維持管理システム/ガイド・ライン ビルディング・コード

 

 

Ⅱ アジア都市の伝統

アジア都市の伝統としての都市遺産を見直す必要があるだろう。今日の「世界」が「世界」として成立したのは,すなわち,「世界史」が誕生するのは,「西欧世界」によるいわゆる「地理上の発見」以降ではない。ユーラシア世界の全体をひとつのネットワークで繋いだのはモンゴル帝国である。火薬にしても,上記のように,もともと中国で「発明」され,イスラーム経由でヨーロッパにもたらされたのである。モンゴル帝国が広大なネットワークをユーラシアに張り巡らせる13世紀末になると,東南アジアでは,サンスクリット語を基礎とするインド起源の文化は衰え,上座部仏教を信奉するタイ族が有力となる。サンスクリット文明の衰退に決定的であったのはクビライ・カーン率いる大元ウルスの侵攻である。東南アジアにおける「タイの世紀」の表は「モンゴルの世紀」である。

こうして,ヒンドゥー都市(インド都城)の系譜が浮かび上がるだろう。それを,チャクラヌガラ(あるいはマンダレー)という実在の都市に因んで「曼荼羅都市」と名づけた(『曼荼羅都市―ヒンドゥー都市の空間理念とその変容―』、2006年、京都大学学術出版会)。

それでは,他の伝統はどうか。インド都城と対比しうる伝統として中国都城の伝統がある。大元ウルスが,『周礼』孝工記をもとにして中国古来の都城理念に則って計画設計したのが大都(→北京)である。中国都城の理念が,朝鮮半島,日本,ベトナムなど周辺地域に大きな影響を及ぼしたことはいうまでもない。日本の都城は,その輸入によって成立したのである。この中国都城の系譜を,ほとんど唯一,理念をそのまま実現したかに思われる大都に因んで,「大元都市」の系譜と仮に呼ぼう。「大元」とは,『易経』の「大いなる哉,乾元」からとったと言われる。「乾元」とは,天や宇宙,もしくはその原理を指す。

ユーラシア大陸を大きく見渡すと,こうして,都城の空間構造を宇宙の構造に見立てる二つの都市の伝統に対して,都市形態にコスモロジーカルな秩序を見いだせない地域がある。西アジアを中心とするいわゆるイスラーム圏である。少なくとも,もうひとつの都市の伝統,イスラーム都市の伝統を取り出しておく必要がある。具体的に焦点とすべきは,「ムガル(インド・イスラーム)都市」である。イスラーム都市の原理とヒンドゥー都市の原理はどのようにぶつかりあったのかが大きな手掛かりとなるからである。ムガルとはモンゴルの転訛である。ここでもモンゴルが絡む。モンゴル帝国は,その版図拡大の過程で,どのような都市の伝統に出会ったのか,13世紀の都市がテーマとなる。

 

Ⅲ 地域の生態系に基づく都市システム

 

 エコハウス・エコタウン

パッシブ・クーリング 冷房なしで居住性向 ミニマム熱取得/マキシマム放熱/ストック型構法長(スケルトン インフィル) リニューアブル材料 リサイクル材料(地域産出材料)/創エネルギー    自立志向型システム(Autonomous House)/PV(循環ポンプ、ファン、共用電力)   天井輻射冷房/水 自立志向型給水・汚水処理システム  補助的ソーラー給湯

ごみ処理 コンポスト 土壌浄化法 合併浄化槽

 

大屋根 日射の遮蔽二重屋根 イジュク(椰子の繊維)利用

ポーラスな空間構成 通風 換気 廃熱 昼光利用照明 湿気対策 ピロティ

夜間換気 冷却 蓄冷 散水 緑化 蓄冷 井水循環 スケルトン インフィル 混構造 コレクティブ・ハウジング 中水 合併浄化槽外構 風の道 

 

 アジアに限らず世界中で問われるのは地球環境全体の問題である。エネルギー問題、資源問題、環境問題は、これからの都市と建築の方向を大きく規定することになる。とにかく、遺産は遺産として大事にしろ、というのが筆者の意見である。スクラップ・アンド・ビルドの時代ではない。

 かつて、アジアの都市や建築は、それぞれの地域の生態系に基づいて固有のあり方をしていた。メソポタミア文明、インダス文明、中国文明の大きな影響が地域にインパクトを与え、仏教建築、イスラーム建築、ヒンドゥー建築といった地域を超えた建築文化の系譜が地域を相互に結びつけてきたが、地域の生態系の枠組みは維持されてきたように見える。インダスの古代諸都市が滅亡したのは、森林伐採による生態系の大きな変化が原因であるという説がある。地球環境全体を考える時、かつての都市や建築のあり方に戻ることはありえないにしても、それに学ぶことはできる。世界中を同じような建築が覆うのではなく、一定の地域的まとまりを考える必要がある。国民国家の国境にとらわれず、地域の文化、生態、環境を踏まえてまとまりを考える世界単位論の展開がひとつのヒントである。建築や都市の物理的形態の問題としては、どの範囲でエネルギーや資源の循環系を考えるかがテーマとなる。

 ひとつには地域計画レヴェルの問題がある。各国でニュータウン建設が進められているが、可能な限り、自立的な循環システムが求められる。20世紀において最も影響力をもった都市計画理念は田園都市である。アジアでも、田園都市計画はいくつか試みられてきた。しかし、田園都市も西欧諸国と同様、田園郊外を実現するにとどまった。というより、田園郊外を飲み込むほどの都市の爆発的膨張があった。大都市をどう再編するかはここでも大問題である。どの程度の規模において自立循環的なシステムが可能かは今後の問題であるけれど、ひとつの指針は、一個一個の建築においても循環的システムが必要ということである。

 アジアにおいて大きな焦点になるのは中国、インドという超人口大国である。また、熱帯地域に都市人口が爆発的に増えることである。極めてわかりやすいのは、熱帯地域で冷房が一般的になったら、地球環境全体はどうなるか、ということがある。基本的に冷房の必要のないヨーロッパの国々では、暖房の効率化を考えればいいのであるが、熱帯では大問題である。米国や日本のような先進諸国では、自由に空調を使い、熱帯地域はこれまで通りでいい、というわけにはいかない。事実、アイスリンクをもつショッピング・センターなどが東南アジアの大都市ではつくられている。

しかし地球環境問題の重要性から、熱帯地域でも様々な建築システムの提案がなされつつある。いわゆるエコ・アーキテクチャーである。スラバヤ・エコ・ハウスもその試みのひとつである。自然光の利用、通風の工夫、緑化など当然の配慮に加えて、二重屋根の採用、椰子の繊維を断熱材に使うなどの地域産財利用、太陽電池、風力発電、井水利用の輻射冷房、雨水利用などがそこで考えられている。マレーシアのケン・ヤンなどは、冷房を使わない超高層ビルを設計している。現代の建築技術を如何に自然と調和させるかは、アジアに限らず、全世界共通の課題である。


日本のまちづくりをめぐる基本的問題

◇集住の論理    住宅=町づくりの視点の欠如 建築と都市の分離   型の不在 都市型住宅

◇歴史の論理     

  スクラップ・アンド・ビルドの論理 スペキュレーションとメタボリズム 価格の支配 住テクの論理 社会資本としての住宅・建築・都市

◇異質なものの共存原理 

  イメージの画一性 入母屋御殿 勾配屋根

 多様性の中の貧困 

◇地域の論理 

 大都市圏と地方 エコロジー

◇自然と身体の論理

  人工環境化 土 水 火 木

  建てることの意味

◇生活の論理

 住宅生産の工業化 住宅と土地の分離

  物の過剰 家族関係の希薄化

 住宅問題の階層化 社会的弱者の住宅問題

◇グローバルな視野の欠如

 発展途上国の住宅問題

◇体系性の欠如(住宅都市政策)

 










 

2022年8月3日水曜日

2021年9月24日金曜日

21世紀のユ-トピア 都市再生という課題(10)「地下に眠るロ-マの都市遺構 ウォ-タ-フロント・バルセロネ-タ バルセロナ ガウディの生き続ける街」

 21世紀のユートピア・・・都市再生という課題

都市再生とは何か。何を再生するのか。都市再生デザインの行方を探る

布野修司 日刊建設工業新聞200111302002092710回連載

  この五年の間、「植民都市空間の起源・変容・転成・保全に関する調査研究」(文部省科学研究費助成研究)と題する研究プロジェクトに携わってきた。〈支配←→被支配〉〈ヨーロッパ文明←→土着文化〉の二つを拮抗基軸とする都市の文化変容が主題である。自ずから、世界史的なスケールにおいて、都市の未来を考える機会となった。

二一世紀の鍵を握る今日の発展途上地域の都市は、ほとんどが植民都市としての歴史をもつ。各都市は、人口問題、環境問題に悩む一方で、共通の課題を抱え始めている。植民地期に形成された都市核の再開発問題である。植民都市遺産を否定するのか、継承するのかはかなり大きなテーマである。

顧みるに、我が国は、「都市再生」の大合唱である。一体「都市再生」とは何か。再生する都市遺産とは一体何か。世界中のいくつかの事例に即して、様々な角度から考えて見たい。

 21世紀のユ-トピア 都市再生という課題(10)

地下に眠るロ-マの都市遺構 ウォ-タ-フロント・バルセロネ-タ

 バルセロナ ガウディの生き続ける街 地下に眠るローマの都市遺構


布野修司 




バルセロナと言えばガウディである。今年はガウディ生誕150周年、ガウディ年ということで、とりわけ街はガウディ一色の感があった。グエル公園のガウディ博物館のみならず、バルセロナ市歴史博物館、カサ・ミラなど至る所でガウディ展が開かれているのである。バルセロナは三度目、前回訪れたのはフェリペⅡ世生誕四〇〇年の一九九八年だが、四年経ってサグラダ・ファミリアは随分と工事が進んだ。グエル邸もカサ・ミラも世界遺産に登録されて随分と整備が行われた。ふたつとも初めて内部を見ることができたけれど、やはりガウディはただものではない、と思う。

ところで、着工後100年を超えて猶未完であるサグラダ・ファミリアのようなシンボルを持ち、カテドラルや王の広場の地下にはローマ時代の都市核遺構を埋蔵するバルセロナのような都市において、再開発はどのように考えられるであろうか。どこかに再開発プロジェクトはないかと探していて、たまたま『バルセロナ・プラス』(二〇〇二年夏 No.22)という雑誌の中に「ラ・バルセロネータ:海の見える地区」という小さな記事を見つけた。一九九二年のバルセロナ・オリンピックを機にウォーター・フロントの再開発が開始され、様々な施設の建ち並ぶ海岸線が甦ったという。確かに、新しいガイドブックを覗くと、ニュー・スポットとしてウォーター・フロントが紹介されている。

早速、「コロンブスの塔」辺りから歩いた。まず、14世紀の王立造船所を改造してつくられた海洋博物館の規模と展示の質の高さに舌を巻いた。バルセロナは海に開かれた街であったのだと今更のように思う。モンジュイックの丘から海を望むとコンテナヤードが延々と広がっている。ウォーター・フロントは、濃密な中世のゴシック・クオーター、また、セルダが計画した整然としたグリッドの新市街とはまた別のバルセロナの顔だ。

バルセロネータを地図で見ると、平行に建物が並んで、まさにコンテナヤード、あるいは貨物車の引込線のようだ。記事(無署名)によるとバルセロネータは市壁外に出来た最初の街区だという。一四七七年に始まる港の建設とともに宅地が築かれてきたが、スペイン継承戦争の際の都市陥落に伴い、フェリペⅤ世によって中心街から移住させられた人々が住みついたのが地区の始まりである。一八世紀前半、一五列の住居列を直行する三本の通りが分割する、味気ない地区設計に当たったのは軍事技師フアン・マーチン・セルメーニョと建築家フランシスコ・パレデスである。

最初の一家族用住居は八.四メートル四方の敷地に二階建てであった。現在もいくつか残っているというが確認はできなかった。しかし、人口増加に伴い、敷地は二分割され、さらに二分割された。それぞれ半分住宅(カサ・デ・メディオ)、四分の一住宅(クアルト・デ・カサ)と呼ばれた。一八三八年に高さ制限が取り払われ、五階建てまで可能となる。かくして建詰まった地区は極く最近まで通風や日照など居住環境の悪化に悩んできたのであった。

二世紀以上の歴史を持つこのバルセロネータは大きくその姿を変えつつあった。かつては漁業や手工業が中心の地区であったというけれど、マリーン・スポーツやレクレーションのための施設が増えつつある。また、今のところパセイグ・ホアン・デ・ボルボとパセイグ・マリティンの二つのプロムナードが中心であるが、シーフード・レストランが数多く建並び多くのツーリストを引きつけている。尤も、変貌は海岸線沿いの一皮のみで、地区の居住環境改善の課題は残されている。しかし、海との関係をツーリズムとリンクさせて確実に回復展開させるプログラムがバルセロネータにはあった。

 

[01] 21世紀のユ-トピア 都市再生という課題(1)「バブリ-なオランダ建築」,日刊建設工業新聞,20011130

[02] 21世紀のユ-トピア 都市再生という課題(2)「問われる歴史的都市核の再開発」,日刊建設工業新聞,20020111

[03] 21世紀のユ-トピア 都市再生という課題(3)「元気なロンドン・テムズ川・サウス・バンクス」,日刊建設工業新聞,20020201

[04] 21世紀のユ-トピア 都市再生という課題(4)「再開発の壮絶なる失敗ケ-プタウンのディストリクト・シックス」,日刊建設工業新聞,20020222

[05] 21世紀のユ-トピア 都市再生という課題(5)「バ-ドウォッチングのできる都心 ジャカルタのニュ-タウン・イン・タウン」,日刊建設工業新聞,20020315

[06] 21世紀のユ-トピア 都市再生という課題(6)「アイデンティティとしての空間形式(街区と町屋) マラッカ オ-ルドタウン」,日刊建設工業新聞,20020531

[07] 21世紀のユ-トピア 都市再生という課題(7)「「中国共産党第一次全国代表大会会址」が「スタ-バックス」に 超高層の谷間に「里弄住宅」 上海 新天地」,日刊建設工業新聞,2002615

[08] 21世紀のユ-トピア 都市再生という課題(8)「大雑院から高層マンションへ 歴史的大改造 北京 消えゆく胡同 消えゆく四合院」,日刊建設工業新聞,200207 12

[09] 21世紀のユ-トピア 都市再生という課題(9)URA(都市再開発機構)の挑戦 甦るショップハウス・ラフレシア シンガポ-ル チャイナタウンの変貌」,日刊建設工業新聞,20020830

[10] 21世紀のユ-トピア 都市再生という課題(10)「地下に眠るロ-マの都市遺構 ウォ-タ-フロント・バルセロネ-タ バルセロナ ガウディの生き続ける街」,日刊建設工業新聞,20020927

 

2021年9月23日木曜日

21世紀のユ-トピア 都市再生という課題(9)「URA(都市再開発機構)の挑戦 甦るショップハウス・ラフレシア シンガポ-ル チャイナタウンの変貌」

 21世紀のユートピア・・・都市再生という課題

都市再生とは何か。何を再生するのか。都市再生デザインの行方を探る

布野修司 日刊建設工業新聞200111302002092710回連載 

 この五年の間、「植民都市空間の起源・変容・転成・保全に関する調査研究」(文部省科学研究費助成研究)と題する研究プロジェクトに携わってきた。〈支配←→被支配〉〈ヨーロッパ文明←→土着文化〉の二つを拮抗基軸とする都市の文化変容が主題である。自ずから、世界史的なスケールにおいて、都市の未来を考える機会となった。

二一世紀の鍵を握る今日の発展途上地域の都市は、ほとんどが植民都市としての歴史をもつ。各都市は、人口問題、環境問題に悩む一方で、共通の課題を抱え始めている。植民地期に形成された都市核の再開発問題である。植民都市遺産を否定するのか、継承するのかはかなり大きなテーマである。

顧みるに、我が国は、「都市再生」の大合唱である。一体「都市再生」とは何か。再生する都市遺産とは一体何か。世界中のいくつかの事例に即して、様々な角度から考えて見たい。

 21世紀のユ-トピア 都市再生という課題(9)

URA(都市再開発機構)の挑戦  甦るショップハウス・ラフレシア 

シンガポ-ル チャイナタウンの変貌



シンガポールは1979年に初めて訪れて以来何度も歩いた。海外に出掛ける度に立ち寄ることが多く、チャンギ空港での滞在時間は相当の日数!になる。この四半世紀のシンガポールの変貌は実に著しい。

二〇年前、チャイナタウンには、種々の屋台が建ち並び、多くの人々が溢れていた。崩れ落ちそうなショップハウスの窓から数多くの顔が通りを見下ろす、活気ある地区であった。一方、街には既に高層の集合住宅が林立しつつあった。再開発の波が押し寄せ、チャイナタウンは風前の灯火のように思えた。

実際、八〇年代には数々の公共住宅建設事業、再開発事業が実施されることになる。高層住宅の下に店舗を配置する下駄履き型のピープルズ・タウン・センター、そして、チャイナタウン・ポイントがそのモデルである。シンガポール建設当初の一八二二年に遡るチャイナタウンの歴史もさすがにその命脈を断たれたかに見えた。現在、チャイナタウンのすぐ北に隣接するシンガポールの中心、ボート・キーの周辺には超高層のオフィスビルが建ち並んでいる。シンガポールは、美しく現代的な都市へと変貌を遂げたのである。

昨年九月、そしてこの七月にシンガポールを歩いて、街が変わりつつあることに気がついた。街のあちこちでショップハウスが改装されているのである。パステルカラーで塗り替えられたショップハウスのファサードが、日本人には多少違和感があるかもしれないが、トロピカルな雰囲気を醸し出して、通りを明るくしているのである。

急速に再開発を進めてきたシンガポールが、都市建築遺産の保存をテーマにするのは一九八〇年代の終わりである。シティ・ホールやラッフルズ・ホテルのようなモニュメンタルな建造物に限らない。チャイナタウンやリトル・インディア、そしてカンポン・グラム(アラブ・ストリート)のような地区全体もまた保存地区に指定(一九八九年)されるのである。もちろん、指定されたからといってすぐさま街が変わるわけではない。投資の対象にならなければ、あるいは保存がなんらかのメリットにつながらなければストックに手は入らない。しかし、ようやく動き出したというのが実感である。チャイナタウンの一画に建つURA(都市再開発機構)ギャラリーには様々な改修保全の資料やマニュアルが用意されており、多くの人々が訪れていた。

スタンフォード・ラッフルズは、民族毎に居住区を分けるセグリゲーション(棲み分け)を計画方針とする。一八二二年にタウン・コミッティを組織し、チャイナタウン、ブギス・カンポン、アラブ・カンポンなどを計画した。基本にしたのがショップハウスである。ヨーロッパのアーケード、中国の亭子脚(ていしきゃく)をルーツとすると言われる、ファイブ・フット・ウエイ(カキ・リマ)を前面にもち、ぎっしり建ち並ぶ店舗併用住宅は各地区共通でバック・レーン(サーヴィス用裏道)を持つのが特徴である。ある意味ではラッフルズの考案であり、マラッカやペナン(ジョージタウン)、バンコクなどにも持ち込まれている。

六〇年代から八〇年代にかけての再開発圧力にも関わらずシンガポールには多くのショップハウスが残されている。その中心がリトル・インディアであり、カンポン・グラムであり、チャイナタウンである。その理由のひとつは敷地割りと合ったショップハウスというしっかりした建築の型があったからである。

『植えつけられた都市・・英国植民都市の形成』(京都大学学術出版会)を書いたR.ホームは、これをショップハウス・ラフレシアと呼ぶ。ラフレシアとはラッフルズが発見した世界最大の花の名前だ。ショップハウスを建築のラフレシアというセンスに僕は共感を禁じ得ない。

 

     

[01] 21世紀のユ-トピア 都市再生という課題(1)「バブリ-なオランダ建築」,日刊建設工業新聞,20011130

[02] 21世紀のユ-トピア 都市再生という課題(2)「問われる歴史的都市核の再開発」,日刊建設工業新聞,20020111

[03] 21世紀のユ-トピア 都市再生という課題(3)「元気なロンドン・テムズ川・サウス・バンクス」,日刊建設工業新聞,20020201

[04] 21世紀のユ-トピア 都市再生という課題(4)「再開発の壮絶なる失敗ケ-プタウンのディストリクト・シックス」,日刊建設工業新聞,20020222

[05] 21世紀のユ-トピア 都市再生という課題(5)「バ-ドウォッチングのできる都心 ジャカルタのニュ-タウン・イン・タウン」,日刊建設工業新聞,20020315

[06] 21世紀のユ-トピア 都市再生という課題(6)「アイデンティティとしての空間形式(街区と町屋) マラッカ オ-ルドタウン」,日刊建設工業新聞,20020531

[07] 21世紀のユ-トピア 都市再生という課題(7)「「中国共産党第一次全国代表大会会址」が「スタ-バックス」に 超高層の谷間に「里弄住宅」 上海 新天地」,日刊建設工業新聞,2002615

[08] 21世紀のユ-トピア 都市再生という課題(8)「大雑院から高層マンションへ 歴史的大改造 北京 消えゆく胡同 消えゆく四合院」,日刊建設工業新聞,200207 12

[09] 21世紀のユ-トピア 都市再生という課題(9)URA(都市再開発機構)の挑戦 甦るショップハウス・ラフレシア シンガポ-ル チャイナタウンの変貌」,日刊建設工業新聞,20020830

[10] 21世紀のユ-トピア 都市再生という課題(10)「地下に眠るロ-マの都市遺構 ウォ-タ-フロント・バルセロネ-タ バルセロナ ガウディの生き続ける街」,日刊建設工業新聞,20020927