奥出雲おろち号
布野修司
出雲横田駅の近くの踏切で待った。紅葉の季節がほぼ終わりかけ、明日には運転がお終いになるという日で、雪も降り出しそうであった。
やがてゆっくりと奥出雲おろち号が現れた。白とブルーに塗り分けられた車体は後ろの山の緑と紅葉によく映えて見えた。映えると言っても、自己主張をする映え方ではない。適度のスピードで通り過ぎるから、適度に刺激的である。このデザインが賞の対象だけれど、それよりこの企画自体が景観賞に値する。すなわち、景観を鑑賞する仕掛けがいい。
このトロッコ列車の存在によって鉄道沿線の景観は常に意識されるだろう。旅客たちは奥出雲の自然を楽しむと同時に奧出雲の歴史と伝統を思う。他に同様のアイディアはあるにせよ、いつまでも続けて欲しいと思う。
寒いから、トロッコ列車に乗っている人はいないのじゃないか、といささか心配であったけれど、やってきた奥出雲おろち号には紅葉を楽しむ少なからぬ客があった。
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