しまね景観賞
松江宍道湖温泉駅
なんともちっぽけなターミナル駅である。単線だから世界最小の終着駅かもしれない。でも、とても上品な駅だ。薄い軽快な屋根、細い柱、透明な箱、一見駅には見えない。待合室は洒落たカフェーの趣がある。天井が高くノビノビしているのがいい。継ぎ目がないDPG(ドット・ポインティッド・ガラス)の使用にしても、鉄骨の収まりにしても、とにかく、ディテールが綺麗である。かつての鄙びた駅の華麗なる変身である。と思うと、駅前には何やらほのぼのとしたお湯かけ地蔵があり、足湯に足を浸す人々がいて、宍道湖の北岸をゴトゴト走る一畑電車ののどかな雰囲気が漂ってもいる。どことなく気取った都会風の駅とのんびりとした足湯とお湯かけ地蔵、絶妙のアンバランスというべきか。
駅は、それぞれの場所で、それぞれ別の貌を持つべきではないか。一畑電鉄の試みは楽しい。新幹線の駅のようにどこでも同じじゃあ困る。足湯のある松江宍道湖温泉駅は、どこにもないユニークな終着駅である。(布野修司)
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