石窟寺院トゥガリンガ,at,デルファイ研究所,199304
石窟寺院 トゥガリンガ バリーギャニャール 布野修司
アジャンタ、エローラ、エレファンタ、カーリなどインドの石窟寺院には及ぶべくもないのだが、ジャワやバリでも石窟のチャンディー(ヒンドゥー寺院)がつくられている。
バリ島の石窟寺院というとゴア・ガジャ である。バリを訪れる人であればこの「象の洞窟」は誰でも知っているのではないか。洞窟そのものはTの字形の平面をした小さなものだが、何よりも、異形の怪物が口をあんぐりと開けたそのエントランスが強烈だ。バリの芝居に出てくる魔女ランダの顔を思わせる。あるいは、バロック的石窟寺院といってもいいかもしれない。
全体としてこじんまりと谷になった境内は実にいい雰囲気である。豊かな水が流れ落ちる沐浴場もいい。その沐浴場が発見されたのは戦後のことだというから、ちょっと驚く。
しかし、シチュエーションの妙といったらグヌン・カウィ だろう。ゴア・ガジャよりはるかにダイナミックなスケールがある。すり鉢状に棚田が囲む谷を降りていくと、谷底を流れる川を挟んで石窟のチャンディー(ヒンドゥー寺院)が建ち並ぶのであるが、そこへ至るアプローチがすばらしいのである。
王と女王の墓地にはそれぞれ数基のチャンディーが掘り出されようとして中断したままになっている。プロポーションをみると、縦に細長い東部ジャワのチャンディーに近い。一一世紀後半とみられるから、東部ジャワのヒンドゥー王国の影響が既に及んでいたということだろうか
0 件のコメント:
コメントを投稿