書斎の私 布野修司
この半年は東京と京都を往復する生活が続いたから、随分と本を読んだ。といっても、新書が中心である。東京・京都間はざっと目を通すのに丁度いい時間なのである。新刊の新書はほとんど全部読んだ。『デパートを発明した夫婦』、『芭蕉の門人』、『現代アフリカ入門』、『産業廃棄物』、『竹の民俗誌』、『東京の都市計画』、『キャッチフレーズの戦後史』、『客家』、『漫画の歴史』、『国境を越える労働者』・・・、要するに乱読である。鞄の中に3、4冊の本が入ってないとなんとなく暇を持て余しそうで、つい軽くて重ばらないものを買い占めて乗車することになる。従って、この間の私の書斎は専ら新幹線の車中ということだ。
本来の書斎たるべき研究室は、着任早々インドネシアに出かけたこともあって、未だそれらしい相貌をしていない。そこで、かなり意識的に読んでいるのは京都に関する本である。不案内な土地についての情報が欲しいという直接的な動機がある。もともと古代史には興味があるので、具体的な土地の雰囲気を肌で感じながら、京都や奈良の歴史の本を読むのは楽しい。春からは京都の町を歩こうと思う。いつの日か我流(がりゅう)の京都論が書ければと思う。
専門的に読むのは、アジア、それもインドネシア関係の本が多いのだけれど、最近病みつきになりそうなのが、風水、マナサラ(インドの建築書)、プリンボン(ジャワの風水書)に関する本である。『風水思想とアジア』(渡邊欣雄 人文書院 一九九〇年)、 デ・フロート、『中国の風水思想ーー古代地相術のバラードーー』(牧尾良海訳 第一書房 一九八六年)、『朝鮮の風水』(村山智順 朝鮮総督府 一九三一年 国書刊行会・覆刻 一九七二年)、『龍のすむランドスケープ』(中野美代子 福武書店 一九九一年)、『中国人のトポス』(三浦國雄 平凡社)・・・、随分と風水に関する本がある。秘かなブームになっているのかもしれない。マナサラ、プリンボンとの比較が楽しみなのである。
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