デザインを売る新商売
布野修司
このところずっとデザイン・ブームである。ポストモダニズムのデザインが喧伝されて久しいのであるが、それを支えてきたのは、まずは、ファッション界やアパレル産業など流行に敏感な先端部門であった。そして、様々な商業部門が続いた。すなわち、商業建築のデザインがポストモダニズムのデザインを採用することにおいて、建築デザインは脚光を浴びてきたのであった。
ところが最近すこし様子が代わってきたようにみえる。大手企業、商社がデザインの専門部署を設立したり、異業種同士が手を結んでデザインを研究するネットワークをつくったり、デザインがこれまで以上に商品として着目されつつあるのである。雑誌『室内』(2月号)が「「デザイン」を売る新商売」と題してデザインビジネスの新たな動向を紹介している。
建築関連の様々な企業がデザイン・スクールを設立したり、デザイン情報誌を出したり、デザイン・ミュージアムを開設したりするのは自然であろうが、商社が何故デザインなのか。総合商社はなんでも扱うのであるから不思議はないともいえる。しかし、その商社がデザインに眼をつけ始めたということは、モノばかりでなく、デザインが一般的な商品となることを確実に示していよう。確かに、今や、はるか以前からモノよりイメージの時代なのである。
では何故、異業種や大企業がデザインをテーマにするのか。デザインのもつ統合力が求められているからである。異業種や大企業の各部門を統合するイメージが求められ、コーポレート・アイデンティティー(CI)としてデザイン戦略が必要とされているのである。
デザインがビジネスになることは、建築家にとっていいことかもしれない。事実、幾人かの建築家は方々で売れっ子である。しかし、全体としてみるとどうか。建築の分野がありとあらゆる分野から蚕食されつつあることを意味してはいないか。
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