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2025年2月12日水曜日

ランシット・ハウジング・プロジェクト,at,デルファイ研究所,199309

  ランシット・ハウジング・プロジェクト,at,デルファイ研究所,199309


ランシット・ハウジング・プロジェクト                バンコク

                布野修司

 

 バンコクの近郊、ランシットのコア・ハウス・プロジェクトである。このプロジェクトは、C.アレグザンダーがリマのコンペで提案したものによく似ている。それもそのはず、このプロジェクトのアイディアは、C.アレグザンダーの共同者であり、『パターン・ランゲージ』の共著者でもあるS.エンジェル(当時アジア工科大学教授)によって提案されたものなのである。

 模型で分かるように、敷地が細長く短冊状に分けられている。そして、コア・ハウスが長屋建てで一列に建てられる。リマの場合、コア・ハウスは二階建てであるが、ここでは平屋だ。各入居者は、それぞれの資力と要求に応じて、自分の敷地に増築していくわけである。模型は居住者用につくられたもので、八つの増築パターンが示されていた。

 ここも何年か時間を置いて二度ほど訪れてみた。二度目にいってみると様々な増築がなされていた。すぐにペンキを塗る。絵を描く。日本にはないセンスである。一室増築したものがある。緑がすぐ育つから一年もあれば町らしくなる。敷地一杯に増築した例さえ見られたのであった。

 バンコクでも、他にいくつかのコア・ハウス・プロジェクトがある。PCパネルによるプレファブのコア・ハウスも試みられた。トゥン・ソン・ホンのハウジング・プロジェクトがそうである。

 コア・ハウス・プロジェクトには色々のタイプがある。インドネシアの例では、敷地を田の字型に分割し、その中央に四軒分のコア・ハウスを建てるものがある。材料も乾燥地域に行けば、当然、日干し煉瓦によるコア・ハウスがつくられている。

 ところが、こうして様々な建築的アイディアにみちたプロジェクトも、必ずしも成功したとはいえない限界があった。第一の理由は、コア・ハウス・プロジェクトが、リセツルメント(再定住)・プロジェクトの一環として行われてきたことである。リセツルメントとは、「スラム」居住者を都市近郊に移住させるプロジェクトのことである。インドネシアやフィリピンの場合、他の島へ移住させる場合もある。その場合、トランスマイグレーションとかイミグレーションと言われる。

 とにかくそうした場合、移住したのはいいが、生計をたてる手段が用意されていないのである。工場などが設置され、雇用を吸収する、そうした計画はなされても現実には困難が多かった。農業をやるにも条件の悪いことが多かったのである。

 いくら居住条件が多少よくなっても、生計を立てれないのであれば都心に戻るしかない。都心に住む事によって様々な収入が得られる。商売のネットワークも都心だから存在する。「スラム・クリアランス」が問題なのは、そうしたネットワークや経済基盤をずたずたにするからである。かくして、コア・ハウスの居住者も、それを放棄して都心へユーターンする、そんな現象が広範に見られたのである。

 

 

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布野修司 履歴 2025年1月1日

布野修司 20241101 履歴   住所 東京都小平市上水本町 6 ー 5 - 7 ー 103 本籍 島根県松江市東朝日町 236 ー 14   1949 年 8 月 10 日    島根県出雲市知井宮生まれ   学歴 196...