読書アンケート 2022年上半期
布野修司
❶稲村哲也・山極壽一・清水展・阿部健一編『レジリエンス人類史』京都大学学術出版会2022年3月❷秋吉浩気『メタアーキテクトー次世代のための建築』スペルプラーツ2022年3月❸アラップ+日経アーキテクチャー『ARUPの仕事論 世界の建築エンジニアリング集団』日経BP2022年1月❹水田恒樹『産業革命の原景 英国の水車集落から米国の水力工業都市へ』法政大学出版局2022年5月❺小川格『日本の近代建築ベスト50』新潮新書2022年1月
❶は、わが国を代表する知性たちによる人類と地球の歴史とその未来についての論考である。全体は25章からなるが、もとより単なる論集ではない。徹底した議論が基になっており(QRコードでその総合討論・座談会も読むことができる)、人類史を5つのPhaseに分け、主概念レジリエンス(危機を生きぬく知)について3つのキー・コンセプトが立てられている。「人新世」の転換を展望するのはPhaseⅤの5本の論考である。❷は久々に現れた建築理論書である。小冊子であるが、ShopBotという木材加工機を手に入れて以降の各種木工品、家具、そして建築への実践活動の展開をもとに、これまでの建築家の試みを含み込む建築の生産流通消費の壮大な理論が組み立てられようとしている。今後の展開が楽しみである。❸は、世界を股にかける建築エンジニアリング集団ARUP東京事務所の仕事。❷と❸に大きな位相の差異はない。❹は、産業革命の原点を問う。R.オウエンのニューラナークの実態がよくわかる。❺はヴェテラン建築編集者による日本の近代建築ガイド。若い世代には最早知られない建築家も多いか?(建築批評)
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