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2022年8月29日月曜日

2001年8月30日 『建築雑誌』編集長日誌 2001年4月25日~2003年5月31日

 2回編集委員会

2001830

2回編集委員会。帰国後、ばたばたと貯まった仕事を片づけるまもなく、大学院の入試、採点、その合間を縫って上京。出席は20名。夏休みのせいか。しかし、デザイナーの鈴木一誌さんが参加して下さる。議事は以下の通り。やはり時間が足りない。しかし、3時間は超えない、というのは鉄則にしているから、強引に議事を進行する。ゆっくり議論したい、というのは本音だが、懇親会に期待しよう。建築家の将来は、①国際化、②メンテナンス、③まちづくり・都市計画ではないか、というのは僕の発言である。

 

2回編集委員会 議事録

<日 時>2001830日(月)15:0018:00

<会 場>学会会議室202

<出 席>委員長 布野 修司

     幹 事  石田泰一郎・大崎  純・松山  巖

     委 員 浅川 滋男・伊香賀俊治・岩松  準・遠藤 和義・鈴木 隆之

                  高島 直之・田中 麻里・Thomas C.  Daniel  ・塚本 由晴

         新居 照和・野口 貴文・羽山 広文・八坂 文子・山根  周

         脇田 祥尚

   デザイナー 鈴木 一誌

議 事

□布野委員長より、議事録をもとに前回議論の確認を行った。

□特集企画について

1月号「建築産業のストラテジー(仮)」について

 遠藤委員から最終企画案が提出され、次のような説明がされた。

 建設業の問題は、『建築雑誌』19988月号(特集:建設業の将来)当時に比べ、いまや大きな政治問題になっている。公庫や公団の民営化など具体的な動きもあるなかで、新鮮な特集にできるかどうか。学会でも「建築市場・建築産業の現状と展望特別研究委員会」が発足した。特集の対象は建築分野“建築業”とし、土木分野は外す方針として立案した。出された意見は下記のとおり。

<全般について>

 ・建築業の将来は、①国際化、②メンテナンス、③まちづくり・都市計画ではないか。

 ・技能の問題(ものつくり大学など)は機会を改めて特集したい。

<対談について>

  ・対談は、下河辺淳氏・平島治氏で進める。→その後、下記の日時で対談が成立しました。(事務局)

    1115日(木)14:0015:00 建築会館にて

<論考について>

 ・「建築教育界の再構築」は今回外したらどうか(→教育問題は改めて特集する)。

 ・日本と海外の構造の違いは何か。

  →日本は無駄が多く生産性が低い。建設人口は労働人口の1割でITも進みにくい。

 ・近い将来ヨーロッパ型になることは自明。論考テーマのレベルをもう少し上げたらどうか。

  →現実の具体的な動向(数値)は意外に知られていないのではないか。広く一般会員に現状を明らかにするような特集のほうが良いのではないか。

<誌面について>

 ・顔写真の掲載は止めたい。

 ・字数は少な目に依頼して、レイアウトで見せる誌面にしたらどうか。

<デザイナー・鈴木一誌氏から)

 ・現在の『建築雑誌』は見開き進行で、しかも図・文比がどこを見ても似ているので、単調な印象を受ける。2468ページを織り交ぜ記事にメリハリをつるなど、特集のどこに重点があるかを明確にしたらどうか。

 ・仕上がりイメージを想定しながら、企画立案を心がけたらどうか。

 <タイトルについて>

  ・“動揺している建築業”が感じられるようなタイトルにしたらどうか。

   →「建築産業に未来はあるか」「建築産業をどうするか」「建築産業の未来を考える」「動き出した建築業」「どうする建築業」「建築産業はどうあるべきか」など

   →最終的には「建築業界に未来はあるか(仮題)」で依頼しました。(事務局)

 

2月号「建築デザインの最前線(仮)」について

 塚本委員から、古谷幹事、小嶋委員、貝島委員とのブレーンストーミングの内容として次のような報告がされた。

 全体方針として、「どういうデザインが最前線か」よりも、「どういう状況で出てくると最前線になるか」といった切り口の特集にしたい。最近は、一般雑誌が建築を大々的に扱っていて、建築デザインと一般人との距離が近くなっている状況もある。そこで、デザインの最前線を次のように分類できるのではないか。

  1)「買える」デザイン、2)建築の使い手が「読める」デザイン3)「ガスタマイズできる」デザイン

 具体的には、身の回りにあるウキウキ「しない」デザインを写真で示し、その発注者とデザイナーを明らかにすることを中心に据えたい。編集方法としては、デザイン・サーベイ的な手法を取り入れることも検討したい。

 以上を具体的な企画案にまとめていただき、関係委員でメールの議論を重ねていただくこととした。次回委員会で最終決定し、原稿発注を行う予定です。

3月号「IT革命は建築を変えるか(仮)」について

 大崎幹事から企画案が提出され、議論した。出された意見は下記のとおり。

 ・IT革命とは何ぞや。

 ・IT革命によって、変わるものと変わらないものを示せないか。

 ・CADやGISによってできるようになったことを示せないか。

 ・ITの社会では、「つくる」よりも、「使う」「買う」のほうが大事ではないか。

4月号「京都議定書と建築(仮)」について

 石田幹事、伊香賀委員から企画案が提出され、議論した。出された意見は下記のとおり。

 ・京都議定書になぜアメリカが反対するか。

 ・我々がとるべき具体的な行動が示されると良い。

5月号以降の特集テーマについて

 浅川委員から「考古学と建築史」が提出された。今後議論を継続する。

□連載について

  下記の連載について、担当委員は執筆候補のラインナップを揃えることとした。

<建築を考えるための24の言葉>

<表象としての建築>

<未完のプロジェクト><建築博物館> →扱いは未定。

 →建築博物館について、黒野委員からのメモをもとに議論した。学会が進めている「建築博物館構想」の紹介をしたらどうか、という案については、事務局が可能性を打診

  することとした。また、塚本委員から、海外の建築博物館を紹介するような連載の可能性も指摘された。

<建築のアジア>

<技術ノート>

 →「建築教育の情報化委員会」からの提案を4回程度連載することとした。

<遺跡漫遊><建築史のパラメータ>

 →浅川委員と青井委員が隔月交代で担当。

<地域の眼>

 →1月号は新居委員(徳島)、田中委員(群馬)が執筆することとした。

Foreign Eyes

 →1月号はダニエル委員、2月号はMichael Webb氏に依頼。執筆テーマは、Japanese Built Environment について。掲載は英文本文に抄訳をつける。アジアやアフリカの執筆者も積極的に探すこととした。

<用語集>

 →連載枠とは別枠として、誌面の空いたスペースに随時掲載することも検討する。

そのほか、<世界の住宅事情>は実現の可能性がある連載とされた。

□表紙デザインについて

<JABSの扱いについて>

 議論の結果、「いまさら横文字を使うのは、古い印象を受ける」という意見が大勢を占めた。ただ、完全に廃止することもどうかという意見が出され、JABSを前面に出さないような掲載を工夫する方針とした。

 関連して、デザイナーの鈴木一誌氏より、次の意見が出された。

 特集企画の議論を聞いていると、全体的に資料性を重んじるような編集方針のようだ。そうであれば、表紙にも思い切って資料性を出したらどうか。1月号に出てくる建築業を象徴的するような図(グラフ、数値)をグラフィックにデザインする方法もある。また、その読み解きを誌面で解説したらどうか。内容的には常識的な図(グラフ、数値)でも、グラフィックに見せることによって新鮮な印象になることもある。

□委員会ホームページについて

 公開は来年を目標にするも、出来れば早めに公開する方針とした。編集委員長の「委員長日記」は、編集後記代わりに毎月掲載する方針とした。今後は、管理、メンテナンスの問題をクリアにする必要性が指摘された。

 

例によって懇親会。議論はつきない。結局、新幹線の最終2118分の、のぞみに間に合わなかった。一体、何軒梯子したであろうか。結局、小野寺さんは朝までつきあってくださった。そのやさしさに言葉がない。

 

 

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