2023年度下半期読書アンケート
①八束はじめ、汎計画学 ソヴィエト・ロシア篇、東京大学出版会。②桑子敏雄、風土の中の神々 神話から歴史の時空を行く、筑摩書房。③政木哲也、本のある空間採集 個人書店・私設図書館・ブックカフェの寸法、学芸出版社。④斎藤幸平、マルクス解体 プロメテウスの夢とその先、講談社。①は、700頁にも及ぶずしりと重い大著である。扱われるのはロシア革命からスターリンの独裁体制の確立までのわずか20年。帯に曰く「20世紀の夢が実現したように見えた時代の、政治・文化の諸局面における内的力学、闘争の現場」を描く。ロシア革命は人類史の壮大な実験であった。その試みは失敗に帰し、グローバル資本主義の世界制覇(歴史の終わり)が実現したかに思われてきた。しかし、帝国主義時代に逆戻りしたかのような権威主義vs自由主義の対立あるいは自国第一主義の抬頭によって、今、世界史は大きく転換しつつある。本書は、社会主義体制下における「計画」に焦点を当てながら歴史を大きく振り返る。④は、学位論文『大洪水の前に マルクスと惑星の物質代謝』ととともに、新資料MEGAをもとにマルクスの物質代謝論を掘り起こし、資本主義を超えていく脱成長コミュニズムを展望する。②は、日本各地の公共事業の合意形成に関わってきた著者によるユニークな日本神話論、風土論。著者は『環境の哲学』で知られる哲学者。招かれた現場は、高千穂、日向、出雲・・・など記紀神話に縁の深い場所であった。その「空間の履歴」を読み解く。③は、日本列島を歩き回って採集した「本のある小さな空間」集である。ネットで頼めばすぐさま本が届く、スマホで本が読める時代に、実に貴重だと思う。韓国版、台湾版が続編として企画されているという。
布野修司(建築批評)



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