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裸の建築家-明日なき建築家-日本の建築家の行方
布野修司
5月26日 5:00pm~7:00 INAX大阪 1Fサロン
●略歴
1949年 島根県出雲市生まれ/松江南校卒/1972年 東京大学工学部建築学科卒
1976年 東京大学大学院博士課程中退/東京大学工学部建築学科助手
1978年 東洋大学工学部建築学科講師/1984年
同 助教授
1991年 京都大学工学部建築系教室助教授
●著書等
『戦後建築論ノート』(相模書房 1981)
『スラムとウサギ小屋』(青弓社 1985)
『住宅戦争』(彰国社 1989 )
『カンポンの世界ーージャワ都市の生活宇宙』(パルコ出版199107)
『見える家と見えない家』(共著 岩波書店 1981)
『建築作家の時代』(共著 リブロポート 1987)
『悲喜劇 1930年代の建築と文化』(共著 現代企画室)
『建築計画教科書』(編著 彰国社 1989)
『建築概論』(共著 彰国社 1982)
『見知らぬ町の見知らぬ住まい』(彰国社 199106)
『現代建築』(新曜社)
『戦後建築の終焉』(れんが書房新社 1995)
『住まいの夢と夢の住まい アジア住居論』(朝日選書 1997)
『廃墟とバラック』(布野修司建築論集Ⅰ 彰国社 1998)
『都市と劇場』(布野修司建築論集Ⅱ 彰国社1998)
『国家・様式・テクノロジー』(布野修司建築論集Ⅲ 彰国社1998)
『裸の建築家-タウンアーキテクト論序説』(建築資料研究社2000)等々
○主要な活動
◇京都CDL(コミュニティ・デザイン・リーグ)
◇建築フォーラム(AF)
◇サイト・スペシャルズ・フォーラム(SSF)
◇アジア都市建築研究会
◇木匠塾
◇
◇
●主要な論文
『建築計画の諸問題』(修論)
『インドネシアにおける居住環境の変容とその整備手法に関する研究』(学位論文)
[1]布野修司,前田尚美,内田雄造:「インドネシアのスラムの居住対策と日本の経験との比較」 第三世界の居住環境とその整備手法に関する研究 その1,日本都市計画学会
学術研究論文集 19,1984年
[2]布野修司,前田尚美,内田雄造:「インドネシアのカンポンの実態とその変容過程の考察」 第三世界の居住環境とその整備手法に関する研究
その2,日本都市計画学会,学術研究論文集20,1985年
[3]Shuji Funo:Dominant Issues of Three Typical
Kampungs and Evaluation of KIP,1985, Peran Perbaikan Kampung dalam Pembangunan
Kota, KOTAMADJA SURABAYA ITS
[4]Shuji Funo:MINKA and Conventional Timber
House in Japan,HABITAT International
PERGAMON PRESS 1991
[5]Shuji Funo:The Regional Housing Systems in
Japan,HABITAT International PERGAMON
PRESS 1991
[6]布野修司:カンポンの歴史的形成プロセスとその特質,日本建築学会計画系論文報告集,第433号,p85-93,1992.03
[7]脇田祥尚,布野修司,牧紀男,青井哲人:デサ・バヤン(インドネシア・ロンボク島)における住居集落の空間構成,日本建築学会計画系論文集,第478号,p61-68,1995.12
[8]布野修司,田中麻里(京都大学):バンコクにおける建設労働者のための仮設居住地の実態と環境整備のあり方に関する研究,日本建築学会計画系論文集,第483号,p101-109,1996.05
[9]脇田祥尚(島根女子短期大学),布野修司,牧紀男(京都大学),青井哲人(神戸芸術工科大学),山本直彦(京都大学):ロンボク島(インドネシア)におけるバリ族・ササック族の聖地,住居集落とオリエンテーション,日本建築学会計画系論文集,第489号,p97-102,1996年11
[10]布野修司,脇田祥尚(島根女子短期大学),牧紀男(京都大学),青井哲人(神戸芸術工科大学),山本直彦(京都大学):チャクラヌガラ(インドネシア・ロンボク島)の街区構成:チャクラヌガラの空間構成に関する研究 その1,日本建築学会計画系論文集,第491号,p135-139,1997年1月
[11]布野修司,山本直彦(京都大学),黄蘭翔(台湾中央研究院),山根周(滋賀県立大学),荒仁(三菱総合研究所),渡辺菊真(京都大学):ジャイプルの街路体系と街区構成ーインド調査局作製の都市地図(1925-28年)の分析その1,日本建築学会計画系論文集,第499号,p113~119,1997年9月
[12]布野修司,山本直彦(京都大学),田中麻里(京都大学),脇田祥尚(島根女子短期大学):ルーマー・ススン・ソンボ(スラバヤ,インドネシア)の共用空間利用に関する考察,日本建築学会計画系論文集,第502号,p87~93,1997年12月
[13]布野修司,脇田祥尚(島根女子短期大学),牧紀男(京都大学),青井哲人(神戸芸術工科大学),山本直彦(京都大学):チャクラヌガラ(インドネシア・ロンボク島)の祭祀組織と住民組織 チャクラヌガラの空間構成に関する研究その2,日本建築学会計画系論文集,第503号,p151-156,1998年1月
[14]山本直彦(京都大学),布野修司,脇田祥尚(島根女子短期大学),三井所隆史(京都大学):デサ・サングラ・アグン(インドネシア・マドゥラ島)における住居および集落の空間構成,日本建築学会計画系論文集,第504号,p103-110,1998年2月
[15]布野修司,山本直彦(京都大学),黄蘭翔(台湾中央研究院),山根周(滋賀県立大学),荒仁(三菱総合研究所),渡辺菊真(京都大学) 沼田典久(京都大学):ジャイプルの住居類型と住区構成ーインド調査局作製の都市地図(1925-28年)の分析その2,第508号,p121~127,1998年6月
[16]布野修司,脇田祥尚(島根女子短期大学),牧紀男(京都大学),青井哲人(神戸芸術工科大学),山本直彦(京都大学):チャクラヌガラ(インドネシア・ロンボク島)における棲み分けの構造 チャクラヌガラの空間構成に関する研究その3,日本建築学会計画系論文集,第510号,p185-190,1998年8月
[17]田中麻里(群馬大学),布野修司,赤澤明,小林正美:トゥンソンホン計画住宅地(バンコク)におけるコアハウスの増改築プロセスに関する考察,日本建築学会計画系論文集,第512号,p93-99,1998年10月
[18]Mohan
PANT(京都大学),布野修司:Spatial Structure of a Buddist Monastery Quater of the City of
Patan, Kathmandu Valley,日本建築学会計画系論文集,第513号,p183~189,1998年11月
[19]山根周(滋賀県立大学),布野修司,荒仁(三菱総研),沼田典久(久米設計),長村英俊(INA):モハッラ,クーチャ,ガリ,カトラの空間構成ーラホール旧市街の都市構成に関する研究 その1,第513号,p227~234, 1998年11月
[20]黒川賢一(竹中工務店),布野修司,モハン・パント(京都大学),横井健(国際技能振興財団):ハディガオン(カトマンズ,ネパール)の空間構成
聖なる施設の分布と祭祀,日本建築学会計画系論文集,第514号,155-162p,1998年12月
[21]今川朱美(京都大学),布野修司:グラスゴー・シティセンターの街路とグリッド状街区の形成」,日本建築学会計画系論文集,第514号,147-154p,1998年12月
[22]竹内泰(三菱地所),布野修司:「京都の地蔵の配置に関する研究」,日本建築学会計画系論文集,第520号,263-270p,1999年6月
[23]韓三建(蔚山大学),布野修司:「日本植民統治期における韓国蔚山・旧邑城地区の土地利用の変化に関する研究」,第520号,219-226p,1999年6月
[24]山根周(滋賀県立大学),布野修司,荒仁(三菱総研),沼田典久(久米設計),長村英俊(INA):ラホールにおける伝統的都市住居の構成:ラホール旧市街の都市構成に関する研究
その2,日本建築学会計画系論文集,第521号,p219~226 ,1999年7月
[25]闕銘宗(京都大学),布野修司,田中禎彦(文化庁):新店市広興里の集落構成と寺廟の祭祀圏,日本建築学会計画系論文集,第521号,p175~181,1999年7月
[26]黒川賢一(竹中工務店),布野修司,モハン・パント(京都大学),横井健(国際技能振興財団):ハディガオン(カトマンズ・ネパール)の空間構成 その2 住居、ダルマサール、辻と住区構成,日本建築学会計画系論文集,第526号,p191-199,1999年11月
[27]闕銘宗(京都大学),布野修司,田中禎彦(文化庁):台北市の寺廟、神壇の類型とその分布に関する考察,日本建築学会計画系論文集,第526号,p185-192,1999年12月
[28]トウイ(京都大学),布野修司:北京内城朝陽門地区の街区構成とその変化に関する研究,日本建築学会計画系論文集,第526号,p175-183,1999年12月
[29]Mohan
PANT(京都大学),布野修司:Social-Spatial Structure of the Jyapu Community Quarters of the
City of Patan, Kathmandu Valley, カトマンドゥ盆地・パタンのジャプ居住地区:ドゥパトートルの社会空間構造 ,日本建築学会計画系論文集,第527号, p177-184, 2000年1月
[30]根上英志(京都大学),山根周,沼田典久,布野修司:マネク・チョウク地区(アーメダバード、グジャラート、インド)における都市住居の空間構成と街区構成,日本建築学会計画系論文集,第535号, p75-82, 2000年9月
[31]正岡みわ子(京都大学)),丹羽大介,布野修司:京都山鉾町における祇園祭と建築生産組織,日本建築学会計画系論文集,第535号, p209-214,
2000年9月
[32]トウイ(神戸大学),布野修司,重村力:乾隆京城全図にみる北京内城の街区構成と宅地分割に関する考察,日本建築学会計画系論文集,第536号,p163-170,
2000年10月
[33]闕銘宗(京都大学),布野修司:寺廟、神壇の組織形態と都市コミュニティ:台北市東門地区を事例として,日本建築学会計画系論文集,第537号, 219-225,2000年11月
[34]韓三建(蔚山大学),布野修司:日本植民統治期における韓国慶州・旧邑城地区の土地所有の変化に関する研究, 日本建築学会計画系論文集,第538号,149-156p,2000年12月
[35]山根周(滋賀県立大学),沼田典久,布野修司,根上英志:アーメダバード旧市街(グジャラート、インド)における街区空間の構成,日本建築学会計画系論文集,第538号, p141-148, 2000年12月
[36]布野修司,黄蘭翔(台湾中央研究院),山根周(滋賀県立大学),山本直彦(京都大学),渡辺菊真(京都大学) :ジャイプルの街区とその変容に関する考察ーインド調査局作製の都市地図(1925-28年)の分析その3, 日本建築学会計画系論文集, 第539号,p119-127,2001年1
[37]Mohan
PANT(京都大学),布野修司:Ancestral Shrine and the Structure of Kathmandu Valley Towns-The
Case of Thimi, カトマンドゥ盆地の町ーティミの空間構成と霊廟に関する研究 ,日本建築学会計画系論文集,第540号, p197-204,
2000年2月
裸の建築家・・・タウンアーキテクト論
目次
はじめに・・・裸の建築家
Ⅰ 砂上の楼閣
第1章 戦後建築の五〇年
1-1 建築家の責任
1-2 変わらぬ構造
a 都市計画の非体系性
b 都市計画の諸段階とフレキシビリティの欠如
c 都市計画の事業手法と地域分断
1-3 コミュニティ計画の可能性・・・阪神淡路大震災の教訓
a 自然の力・・・地域の生態バランス
b フロンティア拡大の論理
c 多極分散構造
d 公的空間の貧困
e 地区の自律性・・・ヴォランティアの役割
f ストック再生の技術
j 都市の記憶
第2章 何より曖昧な建築界
2-1 頼りない建築家
2-2 違反建築
2-3 都市景観の混沌
2-4 計画主体の分裂
2-5 「市民」の沈黙
Ⅱ 裸の建築界・・・・・・・建築家という職能
第3章 幻の「建築家」像
3-1 公取問題
3-2 日本建築家協会と「建築家」
3-3 日本建築士会
3-4 幻の「建築士法」
3-5 一九五〇年「建築士法」
3-6 芸術かウサギ小屋か
第4章 建築家の社会的基盤
4-1 日本の「建築家」
4-2 デミウルゴス
4-3 アーキテクトの誕生
4-4 分裂する「建築家」像
4-5 RIBA
4-6 建築家の資格
4-7 建築家の団体
4-8 建築学科と職人大学
Ⅲ 建築家と都市計画
第5章 近代日本の建築家と都市計画
5-1 社会改良家としての建築家
5-2 近代日本の都市計画
5-3 虚構のアーバンデザイン
5-4 ポストモダンの都市論
5-5 都市計画という妖怪
5-6 都市計画と国家権力ーーー植民地の都市計画
5-7 計画概念の崩壊
5-8 集団の作品としての生きられた都市
第6章 建築家とまちづくり
6-1 ハウジング計画ユニオン(HPU)
6-2 地域住宅(HOPE)計画
6-3 保存修景計画
6-4 京町家再生論
6-5 まちづくりゲーム・・・環境デザイン・ワークショップ
6-5 X地区のまちづくり
Ⅳ タウンアーキテクトの可能性
第7章 建築家捜し
7-1 「建築家」とは何か
7-2 落ちぶれたミケランジェロ
7-3 建築士=工学士+美術士
7-4 重層する差別の体系
7-5 「建築家」の諸類型
7-6 ありうべき建築家像
第8章 タウン・アーキテクトの仕事
8-1 アーバン・アーキテクト
a マスター・アーキテクト
b
インスペクター
c
環境デザイナー登録制度
8-2 景観デザイン
a ランドシャフト・・・景観あるいは風景
b 景観のダイナミズム
c 景観マニュアル
d 景観条例・・・法的根拠
8-3 タウン・アーキテクトの原型
a 建築主事
b デザイン・コーディネーター
c コミッショナー・システム
d シュタット・アルシテクト
e コンサルタント・・・NPO
8-4 「タウンアーキテクト」の仕事
a 情報公開
b コンペ・・・公開ヒヤリング方式
c タウン・デザイン・コミッティ・・・公共建築建設委員会
d 百年計画委員会
e タウン・ウオッチング---地区アーキテクト
f タウン・アーキテクトの仕事
8-5 京都デザインリーグ
おわりに
新たな空間形式の創造・・・土地と建物の根源的関係を見直すタウンアーキテクトとしての建築家の役割
布野修司(京都大学)
松山巌に『世紀末の一年』(朝日選書、2000年)という仕事があって、その仕事をもとに100年前の日本を考えたことがある(『GA』2000年春号)。20世紀は人類史上最も激しい変化の世紀であった。にも関わらず、あまり変わらない、というより、全く「金太郎飴」だ、という思いがした。人間そう変わりはしない。100年後も、おそらく僕らは同じことを繰り返しているだろう、という思いがある。
もちろん、この百年間における決定的な変化はある。百年前には飛行機も自動車もなかった。コンピューターについては、その変化を身をもって証言できる。パンチカードからカセット・テープ、CD-ROMまで、この間のめまぐるしい変化は想像を絶する。漢字をコード化して、ワープロソフトのプログラムを書いて喜んでいたのが馬鹿みたいだ。20世紀を主導し、支配してきたのは科学技術である。近代建築を主導してきたのも基本的には建築技術である。従って、来る世紀を占う上でも建築技術のあり方がひとつの鍵となるのであろう。情報技術(IT)が建築を変えるのだ!と扇動する建築家が既に跋扈している。しかし、百年後にも現在と同じような建築物が日本の町並みをつくっていることには変わりはあるまい。
建築家にとっての基本的テーマは空間の形式である。20世紀は、新たな都市や住居の形式を生み出してきた。その空間形式に未来はあるのか、が問われるべきだと思う。
20世紀において決定的となったのは土地と建築の関係である。すなわち、建築と具体的な土地や地域社会との関係が切り離されてしまったことが大きい。ひとことで言えば、「社会的総空間の商品化」の進行である。建築生産の工業化といった方がわかりやすいかもしれない。工場生産された部品や材料でどこでも同じように建築がつくられる。結果として、世界中で同じような都市景観をわれわれは手にした(しつつある)のである。近代建築は基本的にそうした世界を目指してきたのではなかったか。だから、建築家にとって中心的課題は、依然として、近代建築の理念をどう評価批判するか、なのである。
もちろん問題は産業社会の編成そのものである。問題は建築の領域を遙かに超えている。脱産業社会が呪文のように捉えられて既に久しいが、必ずしも行く先が見えたとは思えない。近代建築批判の課題は宙づりされたままである。
ひとつの大きな手がかりは、「地球」という枠組みである。一個一個の建築の設計においても地球のデザインが問われているということである。『戦後建築の終焉』(1995年)で少し考えたけれど、具体的な指針は定かでない。警戒すべきは、なんでもエコロジーと言いくるめるエコ・ファシズムである。自律的(セルフ・コンテインド)な空間単位はどのような規模で成立するのか。おそらく「世界単位」論の言う地域的な圏域がグローバルに確立される必要があり、その圏域の基礎となる空間単位を具体的に提示する役割が建築家にはある、というのが直感である。
日本の建築界については、戦後50年(1995)を契機に考えたことがある。休憩なしの3時間のシンポジウムを3回、司会を務めた。その記録『戦後建築の来た道行く道』(東京建築設計厚生年金基金、1995年)を読み返してほとんど付け加えることはない。この十時間に及ぶ真摯な議論を是非読んで欲しい。通奏低音となっているテーマは、建物の生命(寿命)である。端的に言って、建物をそんなに簡単に壊していいのか、ということである。資源問題、エネルギー問題など地球環境の存続が全体として問われるなかで建築と土地の関係は再度根源的に問い直されることになるであろう。
具体的な指針としては、『裸の建築家・・・タウンアーキテクト論序説』(建築資料研究社、2000年)を書いた。日本の産業社会の再編成が進行する中で、日本の建築界の構造改革(リストラ)も必然である。20世紀後半のスクラップ・アンド・ビルドの時代からストックの時代への転換が起きるとすれば、建築家の役割も変わらざるを得ない。はっきりしているのは、建築を維持管理していく仕事が増加していくことである。また、建築家がタウンアーキテクトとして地域との関係を強めざるを得ないということである。世紀半ばまでには死に逝く世代としては百年の展望は必要ないだろう。
建築雑誌2000年12月2001年1月 行く世紀、来る世紀
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裸の建築家-明日なき建築家-日本の建築家の行方
布野修司
5月26日 5:00pm~7:00 INAX大阪 1Fサロン
日本の建築家は半減してもおかしくない
新たな存在根拠を見据えない建築家に明日はない
戦後日本の建築家は何を課題として,何をなしえたのか
結論
建築家には、新たな空間の形式(基礎空間単位)を提出する役割がある。
日本の建築界は再編されざるをえない 日本の社会編成 産業構造の転換
単純化していうと日本の建築家はいらなくなる
移行期,過渡期において三つの方向
① 維持管理,改修,改築
② まちづくり
③ 海外
ネタ
A布野研究室のアジア都市建築研究
B京都CDL(コミュニティ・デザイン・リーグ)
C戦後日本の建築家
D建築界の現状
Ⅰ.建築デザインの潮流ーーー建築家と住宅の戦後史
1.初期住宅問題と建築家
●新しい目標としての都市と住宅ーーー住宅改良雑感(後藤慶二)/社会改良家としての建築家/市街地建築物法
●文化生活運動の展開ーーー住宅改良と文化住宅の理想/文化生活運動の位相/
●民家研究の出自ーーー今和次郎のことなど
●戦争と住宅ーーー西山夘三の国民住居論攷
2.戦後建築の課題としての「住宅近代化」
●ヒューマニズムの建築ーーー機能主義と素朴ヒューマニズム/近代建築論争/計画化
●住宅の近代化ーーーこれからのすまい/日本住宅の封建性
●伝統論争と住宅
3.住宅産業と建築家
●都市への幻想ーーー小住宅作家万歳/住宅は芸術である
●マイホーム主義と住宅デザインーーー「都市住宅」派
●都市からの撤退--- 最後の砦としての住宅 自閉の回路
近親相姦の住宅設計
●住宅デザインの商品化ーーー商品化住宅の様式化
Ⅱ.日本の住宅・・・住まいと町づくりをめぐる基本的問題
●住宅=町づくり
◇建築と都市の分離
◇大都市圏と地方
◇地域と普遍(国際化)
●論理の欠落ーーー戦後住まいの失ったもの 豊かさのなかの貧困
◇集住の論理
◇歴史の論理
◇多様性と画一性
◇地域性
◇直接性
参考
建築学生
1.背景
児童就学数変化、建築産業の動向、建築学科の将来像(大学院含む)を考慮し、建築学科では、今後10年間の中期的視野にたって、学部定員について検討した。
1-1.就学児童数の変化の分析(文部科学省主要教育統計1.学校基本調査 入学者数の推移)
(1)小学校入学者の数の減少
現在の大学1回生が小学校入学時(平成元年入学)の入学者数は1,511,870名、10年後(平成10年)の入学者数は約1,217,059名で、約20%の減少である(幼稚園でも同じ比率)。即ち、大学進学率に変化がないとすると、大学入学者の数は今後10年間で20%程度減少すると予測される。
(2)大学、大学院修士、大学院博士入学者数の過去5年の推移
大学入学者数、大学院修士入学者数、大学院博士入学者数のここ5年間の推移は表1のようであり、減少はしておらずむしろ微増ないし増加となっている。これらの学生が小学校に入学した当時には、すでに小学校入学者数は大きく減少している。高学歴化の進行や競争率の低下によって進学率が上昇し、実数が減少していないと考えられる。
表1 大学、大学院修士、大学院博士入学者数の過去5年の推移
大学入学者数 大学院修士入学者数 大学院博士入学者数
平成 8年 579,148 56,567 14,345
平成 9年 586,688 57,065 14,683
平成10年 590,743 60,241 15,491
平成11年 589,559 65,382 16,276
平成12年 599,655 70,336 17,023
今後の就学児童の大学進学率がどのように変化するかは分からないが、就学児童数の減少(20%)と大学進学者数の減少が同じとは言えない。上表からは、大学院進学者数の減少比率は、20%をはるかに下回るものと推定される。
1-2.建設(建築部門)需要の変化
(国土交通省総合政策局情報管理部建設調査統計課 平成13年度建設投資見通し)
(1)建設投資の動向
・平成13年度の建設投資
政府投資 29兆3,900億円(前年度比 5.8%減)
民間投資 37兆7,400億円( 同 3.6%減)
建築投資 32兆6,200億円( 同 5.7%減)
土木投資 34兆5,100億円( 同 3.5%減)
・平成13年度建設投資の実質ベース:68兆4,100億円(前年度比4.4%減)
政府 29兆8,900億円( 同 5.7%減)
民間 38兆5,200億円( 同 3.4%減)
建築 33兆2,600億円( 同 5.5%減)
土木 35兆1,500億円( 同 3.4%減)
・平成12年度の建設投資: 70兆3,600億円(前年度比 0.1%増)
政府 同 1.9%減の 31兆2,000億円
民間 同 1.7%増の 37兆7,400億円
建築 同 0.2%減の 34兆5,800億円
土木 同 0.4%増の 35兆7,700億円
・推移
昭和59年度以降、建設投資は前年度比プラスで推移し平成4年度には84兆円 平成6、7年度は80兆円台を下回った(バブル崩壊後の民間建設投資の減少)。
平成8年度は80兆円台を回復(民間住宅投資の増加による)
平成10年度以降は70兆円強で推移
平成13年度は、民間投資、政府投資ともに減少し、70兆円台を下回る見通し
・平成13年度の地域別(10ブロック)建設投資額
全ての地域で前年度の水準を下回る見通し
(2) 住宅投資の動向
・平成13年度の民間住宅投資
着工戸数 :120万戸程度(前年度並み)
投資ベース:19兆9,400億円(前年度比2.2%減:前年度第4四半期の着工の落込み)
・政府住宅投資と合わせた平成13年度の住宅投資全体
21兆 900億円 前年度比 2.1%減
・平成12年度の新設住宅着工戸数:121.3万戸(11年度122.6万戸)
持家 対前年比 8.0%減
貸家 同 1.8%減
給与住宅 同 12.8%減
分譲住宅 11.0%増
・平成12年度の住宅投資:21兆5,400億円(前年度比 1.2%減)
1-3.建築産業の変化の分析
社会の仕組みが、従来型のスクラップアンドビルトからストック有効利用型へ変化しており、そこに新たな建設産業が生まれつつある。(国土交通省の建設経済局調査情報課情報政策室 新建設市場予測検討委員会 平成10年6月報告書)
(1) 新建設市場の概念
建築物は竣工後、清掃・点検といった初期機能を維持するための作業を受ける。しかし、各種部材の経年劣化、或いは破損・故障などによって主として物理的耐用力が限界に達すると、修理・修繕等によって当該機能を竣工時点のレベルまで回復しようとする行為が行われる。また、社会潮流の変化に伴って求められる機能が質的に変化したり、要求レベルが高まることなどによって建築物の機能が社会的に陳腐化すると、竣工時点には備えていなかった新たな機能を付加するための工事が行われることが多い。
以上の観点から、新建設市場を以下のように定義し、さらに「機能の変化のレベル」によって維持・補修・改修の3分野が設定される。
・新建設市場の定義 建築物の機能の低下速度を抑制したり、機能を向上させることにより、建築物の物理的・社会的寿命を延ばす活動、およびその周辺活動により形成される市場
・3分野
○維持…機能のレベルの低下速度を弱める行為。
○補修…陳腐化した機能を竣工時点のレベルまで回復させる行為。
○改修…竣工時点を上回るレベルにまで機能を高める、或いは新たに付加する行為。
(2) 現在市場推計結果(1995年時点の市場規模)
・1995年時点の市場規模 総額19.9兆円(名目額)
民間非住宅 8.8兆円 全体の4割以上
住宅(官民計) 7.3兆円
政府非住宅 3.8兆円
・現在市場の分野別構成
改修 8.0兆円 住宅 3.5兆円 市場総額7.3兆円の半数近く
・民間非住宅 改修(3.4兆円)、維持(3.3兆円)
・政府非住宅 補修(2.0兆円)、改修 その半数程度
(3) 将来市場予測結果 〈アンケート 1997年11月14日~12月1日、有効回答数1,164
件 〉
(1)総括
・1995年時点で19.9兆円を形成する新建設市場は、今後年平均2.2%のペースで拡大
し、2010年には27.6兆円と、1.5倍にまで拡大する(1995年価格ベース)。
・市場分野別の推移
維持に比して補修・改修の伸びが高い。
改修 年平均1.9%で堅調に推移する。 既存建築物の機能付加ニーズ
補修 同3.0%で推移 今後政府非住宅ストックが補修適齢期を迎えるため
維持 1.6% 基本的に従来通りの傾向
(2)改修市場の詳細
1.住宅
スペースの有効活用が最大 約3割
イメージの向上
水まわり、空気環境、光・音環境などの快適性の向上 特に空気環境
バリアフリー化 急激な高齢化の進展
マルチメディア対応、ホームオートメーション化、セキュリティ 情報ニーズの拡
大、 家事効率向上の必要性や防犯ニーズの高まり
自然エネルギーの利用 これまでは太陽熱温水器が中心、太陽光発電が普及の兆し
縮小市場
震災への対応 新耐震基準で建設された81年以降の竣工ストックは耐震改修の母体
とはなりにくい
火災への対応 対象となるストックは限定的
2.民間非住宅
OA化・快適な空気環境・イメージの向上の市場規模が大きく、これら3分野だけで改修全体の過半を占める。
今後の推移では、他の二者に比してOA化の伸びは低い。一方、快適な空気環境・イメージ向上は、改修全体の伸び以上のペースで拡大していく。
この他の分野では、セキュリティ、自然エネルギーの利用、ビルオートメーション化などは年平均3%以上の比較的高い伸びを確保しうる。一方、震災・火災への対応は、住宅と同様にすでに対処済みのものが多いため、縮小していく市場である。
2.建築教育および研究の将来の姿と適正な学部定員
2-1.学部学生定員の変遷
昭和 年 45名
昭和 年 90名 高度経済成長、第一次ベビーブーム
昭和 年 95名 臨時定員増加、第二次ベビーブーム
平成 年 90名 臨時定員返還
2-2.学部定員減少への流れ
・就学児童数の減少
・産業構造の変化、特に旧来型の建築産業の縮小
・事項で述べる、学部教育から大学院教育への重点のシフトの必要性
・三回生からの編入枠を、従来からある高専のみでならず他大学にも広げ、目的意識の高い学生を受け入れる。
・京都大学との立場、役割 社会に先立って建築分野の今後の方向性を示すためにも,学部教育から大学院教育へのドラスティックな転換を行なうことが望まれる。
2-3.大学院の充実への要請
(1) 高度専門教育と先端的研究の推進
高度専門教育、特に京都大学は大学院大学としての先端的研究の推進が産業界・社会から強く要請されている。
建築を基本とした他分野への就職可能性が増大しており、建設産業への対応が出来ない(今年の例では、構造系は求人をこなしきれていない)。建設産業にも、新たな展開がある。高等教育の必要性が増している。
(2) グローバリゼーションに伴う建築家資格
グローバリゼーションに伴う建築家資格の国際共通化の観点からは、5年ないしは6年の建築家教育が世界的には標準となっており、これに比較的無理なく対応させるには4年の学部教育と2年の修士課程の教育を融合して対処するのが合理的であり、実状とも適合している。
(3) 新しい研究対象の発生
建築学の古典的分野に対する社会的要請は少なくなってきているが,環境問題,生活習慣の変化,人口集中化,情報化,グローバル化などにともない,多くの新しい研究対象が発生してきている。京都大学は,単に住居やビルを既定の方法にしたがって建設するための人材を育成するのではなく,上記の新しい要請に対して産業構造を再編し,新しい研究教育の分野を開拓するための人材を育成する使命を有している。
生活空間再生学 今後の発展のひとつの方向(新たな分野の必要性と大学院重点化)新建設産業
(4) 生涯教育,社会人教育
終身雇用制の崩壊,高寿命化,教育期間の増加(高年齢化)などの社会的状況を鑑みると,生涯教育,社会人教育あるいは再就職のための再教育の要請は今後高まるものと予想される。さらに,大学と産業界の関係の変化も考えると,社会人教育の充実は必要不可欠である。
(5) 留学生の受け入れ
グローバル化の観点からは,とくにアジア地域からの留学生のより積極的な受け入れが望まれる。
(6) 世界でも類を見ない高齢化社会の到来に伴う社会構造の変化
(7) 自己責任型社会への転換
政府主導の規制緩和が、安全に関する分野を含め推進されている。建築分野では、H10年改正の建築基準法において、構造基準、防火規準、衛生基準の一部が性能規定化され、安全に関する国の直接規制の一部分が民間へ委譲された。これにより建設技術の新たな展開が見込まれる一方で、民間が官に頼る体質から脱却し自己責任型社会へと転換できるのか危惧される。建築物の安全に関しては、地震、台風、火災、日常事故といった種々の危険に対して総合的にバランスよく安全計画を行う職能(安全計画コーディネーター)が求められている。このような人材は、大学院レベルの教育で養成すべきものと考える。
(8) 国際調和:グローバル市場の中での日本の建設技術のイニシアティブ
建設技術は土地に固着した技術ではあるが、一方で建築を構成する材料や部品についてはグローバル化が急速に進み、国内で使用される建築部品の多くは外国産である。これがスムーズに行われるためには、ISO(国際標準化機構)規格などの部品作りやその使い方に一定のルール化が必要である。建築技術としてルールをサポートし、日本の建築技術をルールに整合させるとともに日本の建設技術を国際的に認知させることにより、日本の国益を守り、グローバル化の中で経済摩擦の少ない国際社会を形成することができる。そのためには、学部レベルの建設技術を学んだ上で、規格、基準、規準の意味と目的などを調査・研究し、実践に適用することができる人材が必要であり、それには大学院における教育が適切と考える。
(9) 国際調和:発展途上国への/からの技術相互移転
いわゆる発展途上国への技術移転は、主として経済原理に基づいてなされてきた傾向があるが、国際倫理に適った在り方に従うべきであろう。それには、近隣諸国・地域と対等な立場で共存できる建設技術基盤づくりが必要である。そのための人材つくりは学部4年では十分とは言えず、修士・博士課程を通じて行うことが適切である。
また、発展途上国からの留学生を受け入れ、母国の建設技術の要となるに足る十分な教育を施すことにより、建設技術のグローバル化に必要な社会基盤を作る人材を輩出すべきである。
(10) 幅広く、全国から人材(大学院生)を受け入れ、新しい血を導入することによる京都大学の活性化を図る。
(11) 学部学生の要望
現状では、学内の学部学生ですら大学院に進学できず、自らの夢を実現するため大学院浪人をする学生が非常に多く存在する。
(12) 多領域・分野を統合する建築学
今後はいろいろな分野との交流が必要となり、建築学は(他の分野で活躍するというよりは)他の分野を建築学に引っ張り込むことになろう。建築学は,他分野を単に寄せ集め学際領域をつくるのではなく,包括的に消化できる分野と考えられる。最終的には多くの人々が建築を重要なものと捉え,また建築はそのための求心力として適当なレベルにある。従って、周辺領域での専門教育や実務経験を有する人材にも門戸を開き,建築学の包括性を活かして大学院を充実させることも求められる姿のひとつと考えられる。
3.最終提案
以上示したように、大学院教育に対する社会的要求は明らかであり、臨時定員の予算定員化(?)および入学定員増を提案するものである。大学院教育へのシフトを教官数を増やさずに実現するためには、同時に学部定員の削減が必要であり、以下のような提案をいたします。
3-1.改組案
(1) 学部定員について
・定員を10名程度削減する。
(2) 三回生からの編入枠を、高専のみでなく、他大学に広げ、10名程度確保する。
・入学試験は、高専編入と同時に、同じ問題で行う。
(3) 大学院定員の増加
・大学院修士定員を、とりあえず建築学専攻(新)で、10名程度増やす。
・大学院博士定員も増やせるとよいが、実状からみて可能性を検討する必要有り。
・幅広く、全国から大学院生を募る。
・増やすべき領域としては、生活空間再生学、環境・生産マネージメント、安全計画、環境保全、福祉、国際融合、生活環境情報、等々。
3-2.具体的な形
(1) 専任講座化
(2) 地球環境学専攻や国際融合創造センターへ異動する教官に対する学生定員を工学研究科にも配置する。
(3) 高等研究員
3-3.問題点
(1) 地球工学との連携
・環境地球工学の改組とのからみ
(2) 他大学への波及効果
・適正な削減数より控えめに設定するのが安全側か。
(3) 受験生への影響
・大学院における教育・研究の充実ということと合わせて入学定員の削減を説明し
ないと、建築に対して受験生が夢を持ちづらくする危険性がある。