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2023年4月30日日曜日

2002年5月 12月号までのラインナップほぼ決まる。 『建築雑誌』編集長日誌 2001年4月25日~2003年5月31日

『建築雑誌』編集長日誌    布野修司

 

20025    

12月号までのラインナップほぼ決まる。

 

200251

 連休の谷間に授業。予め休講の大学も多いが、国立大学だとそうはいかない。朝一時間目の授業なのに結構な出席である。何度やっても授業は苦手である。でも今日は気持ちよくしゃべれた方だ。

「年報のデザイン界総括座談会の出席者は、その後どのような方針になりましたでしょうか?会長インタビューの日程、明日仙田先生に候補日を挙げて頂く予定です。宜しくお願いします。」小野寺さんからメールが届く。編集部も連休はない。しかし、世間は休みだからこの空白期間は頭が痛い。発行日をうんと早めるつもりが、なかなかそうはいかない。

「デザイン界総括座談会」については、編集委員から積極的意見がでないので、新居さんから提案のあった「大谷幸夫、渡辺豊和、山本理顕の鼎談はどうか」と返事する。「この座談会の組合せ、とても大胆な印象を受けました」と返事が来る。

 

200252

 栗原さんから第4回アジアの建築交流国際シンポジウムの公式ツアーについてメール。栗原さんも休みはないらしい。いくつかのオールタナティブを用意していただいた。海外へ行くときにはいつもお世話になっているKRK(関西旅行研究会)の井出さんにも検討いただき、見積もりにも参加いただいた。忙しいのに感謝感謝である。

以下、決定ということです。是非参加を重ねてお願いします。

 

□第4回アジアの建築交流国際シンポジウム 公式ツアー参加募集

 日本建築学会100周年を記念して出発した「アジアの建築交流国際シンポジウム」(ISAIA)は、1998年の神戸(第2回)、2000年の済州島(第3回)と回を重ね、今年917日~19日に中国・重慶で第4回大会が開催されます。アジアにおける建築交流をより深く実り多いものとするためにみなさまの奮ってのご参加をお願いします。

 中国のここ数年の変貌には眼を見張るものがあります。そして、北京オリンピック(2008年)に向けて中国は今すこぶる元気であります。中国の新しい息吹に触れるいい機会となると思います。中国建築学会も日中国交回復30周年ということもあり、日本との建築交流に大いに期待しております。

 エクスカーションとしては、重慶から武漢までの「三峡下り」を標準コースとして企画します。三国志の世界、漢詩紀行の世界は、三峡ダム完成へ向けての2003年の貯水によって永久にその景観を変えようとしております。残念でありますが、このラストチャンスに、中国世界の悠久の時をじっくりと感じたいと思います。

 このシンポジウムを、第5回日本開催へ向けて、中国、韓国、日本以外のアジアの友人たち、またアジアに関心をもつ欧米の友人たちもまた集う機会にもしたいと思っております。是非お誘い合わせの上参加いただけますよう、重ねてお願いいたします。     (アジア建築交流委員会委員長:布野修司)

<旅行企画>日本建築学会アジア建築交流委員会

※下記のツアー以外での個人参加も歓迎いたします。シンポジウム参加の際には事前に日本建築学会にご連絡下さいますようお願いいたします。

●参加ツアーA<三峡クルーズ>(最少催行人数:10名様)

団長-布野修司(アジア建築交流委員会委員長)

参加費用-266(シンポジウム参加登録費$120込み)

※お一人部屋御希望の方は、3万円追加

<国際線:日本航空,国内線:中国西南航空を利用予定>

月日

時間

スケジュール

9.16

10:00

10:40

17:55

 

関空発

成田発

北京経由重慶着(送迎バスで会場へ)

ウェルカムレセプション出席     <重慶泊>

9.17

9.18

9.19

 

終日シンポジウム出席(17.18日)

 

重慶市内視察(19日)        <重慶泊>

9.20

07:50

09:10

重慶発

武漢着 武漢市内視察→宜昌へ    <宜昌泊>

9.21

 

三峡クルーズ(高速船利用)     <武漢泊>

9.22

8:25

17:55

19:10

武漢発

上海経由関空着

北京経由成田着

●参加ツアーB<上海自由プラン:個別に対応いたします。

参加費用(例1)-914日発、921日帰国の場合

参加費用-166千円(シンポジウム参加登録費$120込み)

※お一人部屋御希望の方は、3万円追加

<国際線:中国国際航空,国内線:中国西南航空を利用予定>

月日

時間

スケジュール(例1

9.14

 

12:50

14:05

15:05

17:10

 

関空発

上海着(各自ホテルへ)

成田発

上海着(各自ホテルへ)

自由行動                           <上海泊>

9.15

 

終日自由行動                       <上海泊>

9.16

11:40

14:20

(各自空港へ)上海発

重慶着(各自会場へ)

ウェルカムレセプション出席     <重慶泊>

9.17

9.18

9.19

 

終日シンポジウム出席(17.18日)

 

重慶市内視察(19日)        <重慶泊>

9.20

13:45

15:45

(各自空港へ)重慶発

上海着(各自ホテルへ)        <上海泊>

9.21

 

08:55

11:50

09:00

13:10

(各自空港へ)上海発

関空着

(各自空港へ)上海発

成田着

●参加ツアーC①(最少催行人数:10名)

参加費用-188千円(シンポジウム参加登録費$120込み)

※お一人部屋御希望の方は、2万円追加

<国際線:日本航空,国内線:中国西南航空を利用予定>

月日

時間

スケジュール

9.16

10:00

10:40

17:55

 

関空発

成田発

北京経由重慶着(送迎バスで会場へ)

ウェルカムレセプション出席     <重慶泊>

9.17

9.18

9.19

 

終日シンポジウム出席(17,18日)

 

重慶市内視察(19日)        <重慶泊>

9.20

07:55

08:45

17:55

19:10

重慶発→上海経由関空へ

重慶発→北京経由成田へ

関空着JAL便)

成田着JAL便)

●参加ツアーC②(最少催行人数:10名)

参加費用-126(シンポジウム参加登録費$120込み、発着空港までの交通手段は各自負担)

※お一人部屋御希望の方は、2万円追加

<国際線:中国西南航空の直行便を利用予定>

月日

時間

スケジュール

9.16

14:00

17:40

 

成田発

重慶着(送迎バスで会場へ)

ウェルカムレセプション出席     <重慶泊>

9.17

9.18

9.19

 

終日シンポジウム出席(17,18日)

 

重慶市内視察(19日)        <重慶泊>

9.20

 8:10

12:50

重慶発

名古屋空港着(→最寄りの空港へ)

(名古屋駅→東京または大阪(新幹線))

 

募集人員 全30

申込締切 2002726日(金)

申込方法 事務局担当者までコース名,氏名,連絡先をメールまたは電話でご連絡下さい。お申込者へは,旅行社から関係書類を送付させていただきます。

先 日本建築学会事務局 栗原

     Tel 03-3456-2016 Fax 03-3456-2058 izumi@aij.or.jp

詳  細 http://www.aij.or.jp/jpn/symposium/2002/2002ISAIA.html

 

200253日~6日

 連休中は特に予定はない。共同生活者(相棒)が腰を痛めてどこかに出かける気分ではない。連休を利用して、北朝鮮に行ったのが1993年、ロンボク島(インドネシア)調査をしたのが1994年。なつかしい。昨年は引越の準備で大忙しであった。

いずれも近刊予定の『アジア都市建築史』(昭和堂)と『ヴィジュアル版 建築入門』(彰国社)、そして『図説テキスト 都市計画』の執筆を行う。いずれも教科書であるがそんな歳になったということか。早く仕上げて次の本にかかりたいのが本音。『ヴィジュアル版 建築入門』は企画から随分経つが、ようやく6月に2巻出ることになった。出版界もかなり不景気である。自分の担当巻はまだ原稿が集まらないが、他の巻について二本だけ仕上げた。『アジア都市建築史』については、Columnを何本か追加する。これから図、写真を選ぶのが大変である。

 

200258

 英文論文集が割り込んできたため、1500号となる2月号が小の月になる。それではまずい、と急遽、12月号を小の月とし、石田幹事を中心とする「光環境」関係の特集とすることにしたことは前にも書いた。おかげで繰り上がった野口先生を中心とする「建築の寿命」(10月号予定)に関する特集。17日には決定しないといけない。さすがに少し焦って、野口先生に進行状況についてメールを打った。すると以下のような返事。「誠に申し訳ありません。10月号に繰り上がって、焦ってます。3月以来、目次の検討が進んでいないので、これから全力で案を詰めてみます。その結果を委員会前(今週中)に先生にお送りいたします。」

まあ、心配ないと思う。

 

200259

 島根景観賞の審査で松江へ。松江は故郷だから、松江の仕事はできるだけ断らないようにしているのだが、昨年秋は作品賞の審査とかち合って失礼した。委員の先生方とは一年ぶりとなる。なつかしい。委員長の藤岡大拙先生(島根県立短期大学)は高校の時の恩師でもある。京都大学文学部の史学の出身で中世史が専門と聞くが出雲の古代についても第一人者である。出雲弁保存会会長を自負する出雲の大知識人でもある。議題はそう多くもないしややこしいこともなかったが、10年となると総括話も出る。担当もどんどん変わるから、初心を振り返るのも重要である。70万人に満たない県で毎年100近く応募があるから、よく続いている方ではないか。

 松江のまちづくりというと編集委員の脇田先生が大活躍中である。地元のテレビにはしばしば出てくる有名人という。残念ながら会う時間はなかった。

 帰りにいつも寄る松江駅の「今井書店」で郷土関連の本を見る。購入したのは、原武史『<出雲>という思想』(講談社学術文庫)、島田成矩『松江の歴史年表』(松江今井書店)、荻原千鶴『出雲国風土記』(講談社学術文庫)。原武史『<出雲>という思想』は、修士論文が元になって1996年に公人社から出たものが、昨年10月に文庫本になって、今年3月で第3刷である。読まれているようだ。岡山経由で京都まで、缶ビール片手に一気に読んだ。

 「近代日本の抹殺された神々」というサブタイトルが示すように、出雲論としては珍しく近代に焦点を当てている。まず、冒頭に「伊勢」と「出雲」、「天つ神」と「国つ神」、「顕」と「幽」をめぐって『記紀』のイデオロギーが整理される。この辺までは親しい議論だ。続いて本居宣長と<出雲>、平田篤胤と<出雲>が論じられ、篤胤神学の分裂と継承、さらに明治初期の神学論争が明らかにされる。二部構成になっていて第二部では「埼玉」(武蔵)が扱われるのがちぐはぐな印象だけれど、第一部は実に面白かった。

 出雲は二度敗北した、というのが結論。

 

 2001年度 しまね景観賞大賞 棚田


第9回しまね景観賞 優秀賞 安野光雅美術館 番匠設計

 

2002510

 帰ると、4月10日付で書いた、「2月号特集「公開空地 なんでこうなるの?」について、簡単な意見がメールで寄せられる。若干要領を得ないので、意見をまとめて投稿して欲しい旨伝えてもらう。」というのに返事が来たという。以下が千葉県八千代市の山田浩輝氏による投稿文である。

 

長岡大樹氏(東京工業大学大学院塚本由晴研究室)の論考「公開空地」(『建築雑誌VOL.117NO.1483.』[2002年2月]pp010011所収)は、総合設計制度(建築基準法第59条の2)の手続きについて述べられたものであるが、その中に「公開空地のレイアウトが事業者及び設計者により配置図上で検討される。」という記述がある。これに対し、建築設計事務所を主宰する立場として一言付け加えたいことがあるので投稿する。

 設計者の仕事とは即ち設計図面を書くことである、と勘違いしている方が多いが、設計者の業務とは、建築基準法第2条第13項の建築つまり建築物を新築し、増築し、改築し、又は移転することのうちの、設計または監理をすることである。建築士法第2条5項では、設計とは設計図書を作成することとされ、また設計図書とは建築物の建築工事実施のために必要な図面とされている。監理とは、工事を設計図書と照合し、それが設計図書のとおり実施されているかいないかを確認することである。

 ところで、私共では法で定められた定義はあくまで最低基準と考えている。総合設計制度を利用する、しないに関わらず、設計とは建築としての空間を創造するのである。図面はあくまで建築をするための手段の1つで、建築物の配置を配置図上だけで検討するのではなく、敷地に実際に行って現場で配置や周辺環境との調和を検討する物であり、その手段として図面を使うものととらえている。また、計画される建築による日影、ビル風等、市街地環境への影響とともに、周辺に与える住民等への影響や利用方法等を考慮して計画するため、模型、CG、ビデオ等で3次元化し、誰でも把握しやすいような形で空間をシミュレーションし検討する。そして建築士法で定義されている設計図書で行政の許可を受けるために確認申請、計画通知等を提出し、指導を受け協議する。並行して平面詳細図、展開図、建具表他を作成し設計図書とあわせて契約図書としてまとめる。契約図書より積算し工事費を決定し、その後入札等により施工者が決まる。着工後は通常の設計事務所による監理では、契約図書のほかに、詳細な現寸図や施工図または総合図及び詳細模型等を使用し検討され、事業主や周辺住民に説明しながら施工者と共に建築を行う。

 東京都の場合では特に、確認申請の提出に先立って敷地の前面道路に中高層申請(お知らせ看板)として、計画建築物の概要の公開が義務付けられていて、誰でも建築計画に対し問い合わせをしたり、異議を申し立てることができる。また、実際には、あくまで事業主は通常、投資として事務所ビル、集合住宅、商業施設やその他を計画するので、地元の承認が不可欠であり、単純に設計者の一存で計画が実行されることはほとんどない。特に最近は、地元の住民等に受入れられることが事業の成功と考え、地元に対する事業者、設計者が求められる倫理もしくは態度が一層求められている傾向にある。

  総合設計制度とは、細分化の傾向にある建築敷地の規模の拡大統合を推進することによって土地の有効利用を図り、併せて敷地内に日常一般に開放された空地(すなわち「公開空地」)を積極的に確保させることにより道路斜線の緩和を受け、機械的規制から実効型規制への置き換えを図り、市街地環境の整備改善を図ることを目的とするものである。総合設計制度を利用する場合の公開空地の配置やデザインは、通常の建築と同様に、敷地周囲の状況などを踏まえ、特定行政庁とも相談しながら、どのようなものが望ましいのか検討し、その上、建築審査会の特例許可が必要である。総合設計許可基準等のマニュアルを見て、公開空地の規模形状様態による係数をひろって、欲しい容積割増になるまで数字あわせをするように配置するような単純な作業だけで建築が行われることは無い。また本来ならば、制度上は必要ないが周辺の住民の参加するワークショップのような会を開いて、そこで周辺住民の要望などを取り入れながら公開空地のありかたや建築の形態を検討するのが計画の成功となり、トラブルを予防する最善の方法である。

 公開空地の使用され方の好例としては、 大阪市立大学助教授赤崎弘平先生が著作の「都市づくりのこころ ― 都市計画の手法と実践」(平成12年12月、三輪雅久+大阪都市計画(史)研究会発行)の中で紹介しているが、総合設計制度先端の地、大阪市では、建築基準法の前身である「市街地建築物法」の建築線制度を独自のアイデアで活用し、大阪市船場地区に「船場建築後退線」を指定した。その後、総合設計制度が確立し、周辺の建築物もこの後退線に沿う形で、それぞれ違う施主と建築設計事務所N社の努力により、N社の本社も含め歩道状公開空地を船場建築後退線と一体となるよう街づくりを進めている。

 一方で、諸々の規制緩和等の流れの中で、現在建築基準法の改正が検討されている。その中で総合設計制度の一部一般則化と呼ぶべき「第一種住居地域等における住宅容積率の緩和」、「斜線制限と同等以上の採光等を確保する建築物に対する斜線制限の撤廃」は、東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻教授大方潤一郎先生、同助教授小泉秀樹先生両氏が『建築基準法改正案に対する反対声明』と題しホームページhttp://up.t.u-tokyo.ac.jp/doc/statement020326.htmlにて平成14年3月26日反対を公表しているが、この法改正が実施されると総合設計制度が特例許可の対象から外され建築審査会の同意も必要なくなる可能性も生じ、「公開空地のレイアウトが事業者及び設計者により配置図上で検討される。」という建築計画の手法として本来あるべき姿ではなく、かつ地元住民の意識の反映が排除されかねない都市づくりの方向に進んでいってしまう恐れがある。

 総合設計制度では、公開空地により建築物が道路よりセットバックしタワー状の形態になることが多い。しかし地域によっては、すでに道路や歩道が充分に広く、街並みに統一感のある通り沿いであると、道路に面した正面に広場を設置し建築物を道路から大きく後退させて建てることは、むしろ街並みの連続性を破壊することにつながり、なんら市街地環境の向上に貢献しない場合もありうるとの見方もある。一方で、街並みの連続性ということは明確な定義があるわけではないので、それぞれの敷地およびその周辺の住民、町内会、自治体または商店街等とのコミュニケーションを図り、まちづくりの将来像を検討しながら建築計画や公開空地の計画等をすすめるべきである。

 したがって、どのような規模・形態・配置・質の公開空地その他の整備を行うべきか、また、どのような整備を行ったらどれほど容積率の緩和が得られるかについては、本来、単純な一律的基準が機械的に適用されるべきものではない。もちろん、ある程度の目安は必要であるから、推奨する整備形態と容積割増の関係は指針として事前に示されてしかるべきだが、これは、あくまで特例許可の条件であって、敷地の周囲の状況を無視して、機械的に適用されるべきものではない。だからこそ、総合設計制度とは、公開空地の利用方法と共に個別案件ごとに、周囲の状況に照らして精査した上で許可されるべきものなのである、との大方教授、小泉助教授、両氏の意見に賛同する。また、国土交通省が、平成1437日発表した建築基準法の一部を改正する法律案についての中で、まちづくりに関する都市計画の提案制度の創設、が提案だけに留まらず、より住民等が積極的な参加できるような形にして頂きたい。そのため、是非地元の住民と事業者、設計者の意見をまとめたような建築計画、まちづくりが行われる様な制度としてほしい。

 

 特に「特集」に対する批判ということではない。文章の前半では計画設計の手続きの説明であり、後段は総合設計制度の意義と問題点、建基法の一律規定の問題点の指摘である。「地域によっては、すでに道路や歩道が充分に広く、街並みに統一感のある通り沿いであると、道路に面した正面に広場を設置し建築物を道路から大きく後退させて建てることは、むしろ街並みの連続性を破壊することにつながり、なんら市街地環境の向上に貢献しない場合もありうるとの見方もある。」という指摘もあり、特に違和感はない。少し冗長か。

 午後、traverse編集会議。

 

2002511

 建築年報2002(9月号)の件で大谷先生に電話しようとして考え直した。11月号の「都市の行方」特集の方がいいと思ったことと、年報としてのデザインの総括だけではもったいないと思ったのである。代わりにと考えて、平良敬一さんの名前を思いついた。『造景』が終刊になるという情報が頭にひっかかっていたかもしれない。平良、山本、渡辺の組合せも面白いと思う。その旨、小野寺さんにメールする。

 

2002年5月14

「建築の寿命」特集案が野口先生から送られて来る。趣旨分は以下の通り。

築雑誌10月号編集企画(第三案)

特集タイトル「建築の寿命」

主旨

 最近再び、建築物の「寿命」がクローズアップされている感がある。過去にも、1980年代半ばに各種マスコミを通じて衝撃的な報道がなされた「コンクリート神話の崩壊」など、数年おきに建築物・土木構造物の早期劣化問題が浮上し、その都度、我々が長年掛けて培ってきた学術・技術体系およびその社会的還元方法に警鐘が鳴らされてきた。現在、徐々にではあるが、そうした早期劣化問題は沈静化の方向にあると言えよう。

 では、何故、今再び「寿命」なのか?それは、20世紀末に浮上した2つの事由が大きく関係しているのではないだろうか。

 建築生産活動における大量の資源・エネルギー消費に伴う地球温暖化物質・環境汚染物質の排出および景観・生態系の破壊、建築物の更新・解体に伴う大量の廃棄物発生など、建設産業の地球環境・地域環境に及ぼす影響の多大さに鑑み、建築物の長寿命化が志向されるようになったことを忘れてはならない。我が国の建築物の寿命の短さに憂慮し、199712月、日本建築学会は「会長声明」を発し、我が国の建築物の寿命を現在の3倍に延伸するために最善を尽くすことを社会に宣言した。

 また、建設関連規基準の国際整合化を模索していた1990年代真っ只中に発生した阪神淡路大震災は、規基準の性能規定化への移行を加速し、1998年に建築基準法の大改正がなされた。その動きと相前後して、建築物の耐久性確保に関しても活発な議論がなされ、2000年に施行された「住宅の品質確保の促進等に関する法律」の住宅性能表示制度では、「劣化の軽減に関すること」として、住宅の限界状態に至るまでの期間が3段階にランク分けされ、それぞれに対する劣化対策等級が示された。

 このように、地球環境・地域環境対策としての建築物の長寿命化、寿命というもの自体の性能概念化・性能指標化など、現在、建築物の寿命に対する社会的関心は高まっている。本特集号では、「建築の寿命」に対してあらゆる角度からスポットライトを浴びせているが、読者の皆様には、「建築の寿命とは何を意味するのか」、「寿命はどのようにして決まるのか、決めるべきなのか」といった命題に対する解の糸口を見つけていただけるであろうか。

 

2002517

11回編集委員会。特集は10月号の決定がメイン。目次構成は以下のようにまとめられ提出されたさすがである。

 

10月号特集「建築の寿命」目次構成(案)

 

1. 建築の寿命に対する考え方                            (4ページ)

執筆者:友澤史紀(北海道大学大学院工学研究科・教授)          承諾済み

2. 海外の建築の寿命                               (2ページ)

執筆者:Mr. Martin CookBREPrincipal Consultant          承諾済み

3. 資源環境問題と建築の寿命                            (2ページ)

執筆者:水谷 広(日本大学生物資源科学部・教授)          依頼中

4. 建築の寿命に対する建築主・設計者・施工者の意識                (2ページ)

執筆者:大久保孝昭(建築研究所)                    承諾済み

5. 建築の限界状態

(1) 構造上の限界

a. 木造                                    (2ページ)

執筆者:佐藤雅俊(東京大学大学院農学系研究科・助教授)          承諾済み

b. 鉄骨造                                  (2ページ)

執筆者:大井謙一(東京大学生産技術研究所・助教授)          承諾済み

c. 鉄筋コンクリート造                        (2ページ)

執筆者:壁谷沢寿海(東京大学地震研究所・教授)          承諾済み

(2) 機能・用途上の限界                               (2ページ)

執筆者:真鍋恒博(東京理科大学工学部・教授)           承諾済み

(3) 設備上の限界                                (2ページ)

執筆者:高草木明(NTT建築総合研究所・FM技術部長)          承諾済み

(4) 経済上の限界                                (2ページ)

執筆者:小松幸夫(早稲田大学理工学部・教授)           承諾済み

(5) 税法上の限界                                (2ページ)

執筆者:(遠藤先生)                        人選中

6. 寿命・余命設計(耐久設計)

(1) 建築物の耐久設計                            (2ページ)

執筆者:本橋健司(建築研究所)                      承諾済み

(2) システム・製品の寿命設計                      (2ページ)

執筆者:加藤 悟(東京大学大学院工学系研究科・助手)          承諾済み

7. 建築の診断

(1) 診断の役割                                  (2ページ)

執筆者:馬場明生(山口大学工学部・教授)              依頼中

(2) 診断・モニタリング技術                       (2ページ)

執筆者:磯畑 脩(いすか建築事務所・所長)            依頼中

(3) 診断資格者                                      (2ページ)

執筆者:吉田正良(BELCA・専務理事)           依頼中

 

8. 建築の寿命と損害保険の役割                       (2ページ)

執筆者:(三井住友海上保険                  人選中

 

9. 建築の寿命と保存                               (2ページ)

執筆者:後藤 治(工学院大学工学部・助教授)           承諾済み

 

10.

 

 10.は当然野口委員がまとめることになる。全体をどう構造化するかをめぐって若干議論になる。

11月号は特集「都市の行方」(仮)について北澤、黒野委員を中心に案が出る。「都市と都市以前」を5月号で特集したけれど、今度は都市の未来を展望することになる。しかし、バラ色の未来とはなりそうにない。「縮小都市を描く・・・都市像の系譜と展望」が今のところサブタイトルである。「成長拡大」路線ではなく「縮小」する都市の像をどう描くかがテーマである。

富安秀雄・大久保昌一・小森星児・住田昌二・広原盛明・片寄俊秀

12月号は「光環境」特集。順序が入れ替わったおかげでほぼ固まった。早いもので12号はほぼ目途がついたことになる。

2003年を展望すると1500年記念号(2月号)、建築年報(9月号)があるから、また、「公共建築」、「防災」「環境心理」などの特集企画が既に浮かんでいるのであっという間のような気がしないでもない。

1月号  公共建築を問う

2月号  1500号記念号 日本建築の行方

3月号  防災

4月号  (デザイン)

5月号  (開幕400年 江戸と京都)

6月号小 (環境・計画)

7月号  (計画)

8月号小 (構造デザイン)

9月号  建築年報2003

10月号  環境心理

11月号  (構造)

12月号  学と学会のあり方・・・建築学会はどこへ行く?

 

 懇親会の後、ハプニング。青井委員が鈴木成文先生の家に押しかけようと提起。岩下、山根、小野寺らで鈴木邸を襲う。ご無礼のほど平にお許しを。 

 

2002522

 SSF(サイト・スペシャルズ・フォーラム)の会合「室内装飾事業、室内工事業の現在」(日刊建設通信新聞社)で上京。12:00時まで授業、その後東京へ行って日帰りはいささかきつい。しかし、室内工事業の世界をめぐって収穫は大。

 

2002524

 送られてきた5月号特集「都市と都市以前・・・アジア古代の集住構造」を京都造形大学大学院の授業で院生諸君と早速読む。今期は、『周礼』「考工記」、『営造方式』を読んでいるからタイムリーである。

夕刻より第53回アジア都市建築研究会。トウ・イ君の「」。

 

2002526

ワールド・カップの年である。研究室メンバーに誘われて、日曜日の18:00からナイターでサッカー。何年振りであろうか。かつて浅川先生の奈文研と二度ほど試合をしたことがあるけれど、ここ6年ぐらいは身体を動かしていない。これでもサッカー少年だったのだけれど、今体力に全く自信がないので入念に身体をほぐして動く。案の定、18分ハーフを動くだけでリタイア。ぜいぜいはあはあ、得点してかっこいいところを!、というどころじゃなかった。

 

2002528

 思ったほど筋肉痛がない。一安心というところ。

 建築年報の研究レビューの雛型が大崎幹事より届く。仕事が速い。実に頼りになる。

 

 シェル・空間構造                             大崎

1. 耐震設計,免震・制振(震)

ケーススタディやパラメトリック解析から脱却し,アーチなどの単純モデルを通じて応答特性を理論的に把握して,汎用的な耐震設計法を確立するための研究が多くみられる。解析方法も,弾塑性,大変形,不安定性を考慮した精緻なものになっている。また,下部構造と上部構造物を統合的に設計するための簡易モデルも提案されている。しかし,空間構造物は,ビル形式骨組のようにパターン化するのが難しいので,静的地震荷重に基づく設計への発展は極めて困難である。免震・制振(震)に関しては,振り子,ボールその他の入力低減機構を用いた免震技術や,粘弾性体,可変剛性ばね,TMDなどによる機構が提案されている。空間構造物特有の問題として,上下動に対する対処法がキーポイントとなるであろう。

2. 張力構造物

形状解析・設計はほぼ完成され,最近は,非線形解析,性能評価,施工解析などへ移行しつつある。膜構造物では,暴露試験による耐久性評価,粘弾性特性のモデル化とそれを用いた解析・設計法,施工手順を模擬した解析法,張力再導入法,圧電ポリマーなど用いた計測技術などに関する研究が興味深い。テンセグリティでは,小規模モデルの理論解析から大規模実用モデルへの移行がみられ,ケーブル,膜,剛体を組み合わせた新しい形式も提案されている。

3. 非線形解析・座屈解析

耐震設計と同様に,特定のモデルの特性を把握しても,体系化が困難なので,結局は設計の際に個別に解析して検定しなければならない。従来の座屈設計法を発展させた断面算定法,簡易非線形解析に加えて,連続体置換,非線形振動解析,モード連成解析についても新しい方法が提案されており,部材検定に基づく座屈設計からの脱却へ向けての研究が期待される。

4. 形態・設計

パーツ方式によるハイブリッド単層ラチス,アイスシェルなど,新しい形式や形態が提案されている。展開機構についても,非線形解析,振動解析,不整の影響など,実際的な性能評価に関する研究が見られる。また,パラメトリック曲面によるトラスやシェルの形状最適化の試みや,典型的な架構形式から最適解を選択するための実用的手法も提案されている。

5. その他

全ての研究分野を列挙することはできないが,(1) 単層ラチス構造物の波動伝播特性,(2) アルミニウム,ガラス,GFRPなどの構造材としての利用,(3) コンクリートシェルの炭素短繊維補強,プレキャスト化,(4) 知識ベース,オブジェクト指向による設計支援システム,(5) 並列化による大規模構造の解析,などが興味深い。

 

2002529

 大崎幹事から次の企画が来る。小特集だと都合がいいと思う。

 

建築構造のかたちの数理

建築は芸術作品であるとともに,科学技術によって実現される人工物であるから,自然界の原理を無視したか形は許容されない。(仮に許容されたとしても美しいとはいえない)本特集では,空間構造物を中心に,建築構造の形を決定する力学や数理的手法を紹介し,芸術との接点をさぐる。

対談: 構造美とデザイン

川口 衛(法政大学),高松 伸(京都大学)

シェル・空間構造の分類と最近の発展:加藤史郎(豊橋技術科学大学,シェル・空間構造運営委員会主査)

連続体シェル,空間骨組,トラス,ケーブル構造物,膜構造物,複合構造物などの分類と特徴の解説。

膜構造:石井一夫(横浜国大名誉教授):膜構造の特徴,歴史,設計法の紹介。

張力構造:斎藤公男(日本大):テンセグリティー,ケーブルドームなどの張力構造の力学的特徴の解説

生物の生長を模倣した構造設計法

大森博司(名古屋大),本間俊雄(鹿児島大):遺伝的アルゴリズム,免疫アルゴリズムなどのいわゆる進化的手法の紹介

構造形態の最適化:三井和男(日本大),藤井大地(近畿大):構造最適化の中の形状最適化について,建築構造への適用例を紹介する

形の科学:高木隆司(東京農工大):「形の科学会」の活動の紹介と,「形」に関する科学的手法の体系的な概説。

生物成長の力学:田中正夫(大阪大学,機械系),山崎光悦(金沢大,機械系)

骨の成長,血管の分岐,植物の枝の分岐などのメカニズムとそれに基づく設計法

多面体:宮崎興二(京都大):多面体の分類,歴史と建築での利用について

美しさの定量化:感性工学:宇宙構造物の形態:海洋構造物の形態:展開構造物

 

夕刻より京都CDLの監督会議(理事会)。6月1日の断面調査「鴨川蛇行大南下」に加えて、今年は重点調査地区を決めて合同調査をやることを決定。

 

2002530

 日本建築学会総会。少し遅れて参加。いきなり、新名誉会員になられた鈴木先生にお会いする。先日の非礼をひたすら謝る。一緒だったのは、小川信子先生と松川淳子先生。松川先生からは建築の手ほどきを受けた僕の師匠である。松川さんはこの間、UIFA(国際女性建築家会議)で活躍だ。折りしも「女性と建築展」が学会のすぐ近くの「女性と仕事の未来館」で開かれているが、その組織者でもある。「是非見て欲しい」と言われる。「女性と建築」特集も考える必要がある。

  忙しい最中の仙田会長を捕まえて、建築年報インタビューを確認。作品レビューのイメージについて若干話す。山本理顕さんを捕まえて、建築年報鼎談の確認。ほとんどこのためだけに上京したようなものである。

 随分、なつかしい顔が並ぶ。受賞者の晴れ晴れしい顔も清々しい。論文賞を受賞したのはもう十年前だけれど、写真撮影が二度目の結婚式のようで気恥ずかしかったことを思い出す。


2002531

 FIFA World Cup 2002 Korea/Japan 開幕。フランス、セネガルに敗れる。