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2023年9月15日金曜日

神宮外苑の銀杏並木伐採問題についての所見

 神宮外苑の銀杏並木伐採問題についての所見 布野修司

神宮外苑の銀杏並木伐採問題についての所見
                             布野修司

日本の都市計画の歴史とその崩壊については他に譲るが,東京オリンピック2020の誘致(新国立競技場コンペをめぐる右往左往,汚職,神宮外苑の銀杏並木伐採問題)の背後に当初からあったのは,不動産業界の露骨で貪欲な開発意志である。神宮外苑は,その名の通り,明治天皇を「祀る」明治神宮の外苑として造営整備されたものである。もとは青山練兵場の跡地であり,その葬儀の際には葬場殿の儀が行われ,棺が置かれた場所であるが,明治天皇・昭憲皇太后の遺徳を後世に伝える諸施設を「公園」という位置づけで整備したものである。当初は,聖徳記念絵画館,葬場殿址記念物憲法記念館,陸上競技場の4施設のみの計画(1918年)であったが,大正末のスポーツ熱の高まりから,野球場,水泳場,相撲場を加えてスポーツ公園としての性格を強めるかたちで設計変更された。この時,明治神宮造営局の主任技師であった折下吉延(1881~1966)によって植樹されたのが銀杏並木である。
第二次世界大戦後,神宮外苑はGHQに接収されるが,1951年に移管されると,東京都は風致地区として,緑地を保全する措置をとった。山手線の内側,東京の中心に広大な敷地が残されてきたのはこの風致地区としての規定が大きい。また,文科省が管理する国立競技場などを除いて,宗教法人としての明治神宮がほぼ一括管理してきたことが大きい。しかし,明治神宮は宗教法人として神宮と内縁を管理するのが本来である。もともと,神宮と内苑は国費で賄われたが,外苑はみ奉賛会が全国からの寄付金を取りまとめる形で資金を捻出したものであり,東京市の200万円を筆頭に,全ての自治体が目標額寄付したものである。
東京オリンピックのために新国立競技場を同じ場所に建替えられなければならなかったのか? 東京オリンピックの招致は,不動産業,商社,日本スポーツ振興協会,そして東京都(石原慎太郎知事,猪瀬直樹知事),安倍内閣全体の意志として,超高層ビル3棟を建設する容積率アップによる神宮外苑の再開発計画は前提であったのである 。


Akira Abe
ご指摘の様に、外苑維持の安定的資金不足を、デベロッパーの力を借りて補おうとした事が発端かと思います。50年前を知る立場のものとして江戸社長・氷室副社長体制の時代であれば、本件の様なプロジェクトに代償を求めて社会に逆らう様な考えは戒められていたのですが、その後の代替わりで社会のどの位置に身を置くべきかを考える企業理念が失われたと感じています。
反対活動がイコモスまで動かして強力になってきましたが、土俵から押し出される可能性は大きいと思います。
奉賛会を中心に神宮の森を守るクラウドファンドを立ち上げて、国内外の団体や企業に問いかけることが可能ではないかと考えます。

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