作法の美しさ―「昭和設計のアイデンティティと明日を拓く設計活動」―
平成十九年五月二十二日
【布野】まずは、五十周年おめでとうございます。ちょうど十年前、四十周年記念のときにも、「なみはやドーム」などいくつか見せていただいて、昭和設計への期待のようなことを書いたことがございます。今日も五作品ほど見て、大変楽しませていただきました。組織事務所としてプログラムをきちっと解いた作品ばかりですね。「八尾市民病院」は、実に刺激的でした。建築計画学の出なんですが、新しい病院のあり方を感じます。「フジテック」も新しいオフィスのあり方を提示されています。「あべのルシアス」も、大変な仕事だと思います。組織事務所は、まずは組織力が第一です。しかし、十年前にも書きましたけど、組織事務所には、常に組織と個人、組織のアイデンティティと個性という、テーマがある。まずは、最年少の竹内さんから、昭和設計のアイデンティティとは一体何かということで口火を切っていただけますか。
組織の総合力
【竹内】 建築部門と水工部門、土木部門とが一緒になっている事務所は、そうないことなんですよね。水処理施設にしても、上屋はどんなものをつくれるんだろうとか、期待を持って入社したんです。土木の中でも構造とか電気設備、機械設備とか、いろんな分野が部門としてちゃんあって、それで仕事が成り立っているというところに、昭和のアイデンティティを非常に感じます。下水処理場なども、新しいものを整備するのではなく、つくったものをどう長生きさせるか、耐震診断やリニューアルがテーマです。昭和設計は自社ですべて対応できるんです。
【布野】 総合性、総合力に魅力を感じている。そこを押していけばいい。
自由と哲学
【石井】 入社した一九九〇年頃は、比較的若い社員がわりと自由にできる雰囲気がありました。それがまだあるとしたら、アイデンティティにつながると思います。また、前社長の三宗顧問の文章をたまたま目にしたんですが、建築を現象学とか哲学でもって語るそんな人がいるのも魅力的でした。組織事務所ですので、ある一定のレベルを保つことは当然必要なことですが、作品のテイストとかカラーみたいなものはばらばらでいいと思っています。それぞれの個性が出ればいい。
柔軟性と寛容
【久保】 自由にある程度できる環境は、十分感じます。提案に対する柔軟性というか、寛容さをこの事務所は持っている。顧客のおっしゃられることに対してもそうです。何か案をつくって出すと、全否定されることはない。もうちょっとこのほうがいいとか、あかんもんはあかんとか言われるけれど、改善すればいい。コンセプトの立て方が間違っていれば、違いますよと言われるけれども、全部が全部外されるわけではない。これはおもしろいんじゃないか、これは生かしていったらいいんじゃないか、これはこう生かせるねと発展的にどんどんできる。
【石井】 彼が入ったときに私が上にいたものだからほっとしているんですけど、頭ごなしに脅かすということはまずなくて、私がそうされてきたので、私も下にはそうしようと思っていたんです。
ほっとする楽しい空間
【布野】 提案して、全否定はされないけど、まとまっていくものの中にどういうテイストとかカラーが残るかですね。
【久保】 そこに来ていただく人が楽しいと思ったり、ほっとしたり、感覚の部分に訴えられるものが一番いいと思います。何か迫力を感じても素通りするものじゃなくて、ちょっと足をとめるようなほっとした空間。
【小平】 僕はちょうど入った年が四十周年の年で、まさに、新入社員の君たちは昭和設計をどんな会社と思っているかと質問されまして、何も考えていなかったのか素直なのか、会社の名前が軽いというイメージですねといったんです。当然、どういうことかと突っ込まれました。会社の看板が重たく感じられるとか、そこから受けるプレッシャーとか、あまり感じないと言いたかったんです。具体的な作風とか、それ以前の話ですけれども。創業者の岡本会長がそもそも岡本設計を昭和設計にしたと後から聞きました。
【布野】 最近は、一年でやめちゃうとか、そういう学生がいますけども。
【小平】 そういう意味では、楽しく仕事はできますし、ぼろかすに言われることはありません。
手堅い水工分野
【布野】 水工分野を持っていらっしゃるというのは強みだと思うんです。
【水田】 水工は、土木、建築、電気、機械、あとプラントの機械、電気という部門が一緒になって一つの仕事をつくり上げていくわけです。上の方も下の方も一つのチームになるといろいろまざりますので、意見のやりとりもやりやすい。水処理施設なので、どれだけ水をきれいに処理できるのか、機械とか設備がうまく機能するか、運転できるか、そこが重要なんですよね。維持管理する人については動きやすさとか、動かしやすさというのがある。公共事業ですので、できるだけ無駄がなくて必要最小限、どちらかというと創造性というよりは機能的なものを満たす。それで顧客に満足してもらう。そういった機能重視の設計にはなってきますね。
建築は悪?―地球環境というキーワード
【布野】 これからの建築のテーマということでは何をめざしますか。
【矢澤】 建物を建てていく上で地球環境問題に何かできるかと思います。再生材料を使うとか、環境に優しい材料を使うとか、リサイクルですね。環境問題から見ると、建築をつくること自体すごい悪だと思うんです。破壊する側にしかいない。設計にどう生かしていったらいいのかすごく難しい。自分でも答えがちゃんと出ていないですけれども、じゃ、建築は建てないほうが地球にとって優しいと言い切ってしまえるのかとは思います。人は生きていかなきゃいけないですから、建築はシェルターとしての必要最小限の建物としてではなくて、もっと人の精神面みたいなところに働きかけていけるような、そんな建物をつくっていく。それを構造設計としては、それをいかに見せるかとか、壊れないで長く使っていけるかとか、環境問題に間接に役に立っていけるのかなという思いはあります。
【布野】 すごいことを言いますね。確かに建築するということは地球を傷つけることですね。ただ、人類にとって建築は必要だし、ずっと建ててきた。しかし、それが地球環境にも決定的なインパクトを与えるほど巨大化したり、高度化したりすることが問題ということでしょうか。
【石井】環境問題については、ISOの14000をとって、会社として紙を節約するとか、照明を節約するだけじゃなくて、設計手法の中に環境配慮手法を組み込んで、どんなプロジェクトでも一通りの環境の負荷を下げるような手法を検討するというのが、一応設計のプロセスの中には組み込まれています。
景観形成の仕組み
【岸田】 都市計画をしばらくやって、最近ランドスケープをやるようになってきたんですが、一つは、ものとか形をつくるだけじゃなくて、そこではぐくまれる営みとか、それを支える仕組みみたいなものも考慮しながら景観をとらえていかなければいけないのではないかと思います。もう一つは、時代の流れの中で変容していったある空間の佇まいを再構築することが大事だと思います。都市景観は、小さなきっかけを大事にしていかなきゃいけないと思っています。
【布野】 仕組みとは?
【岸田】 でき上がった場所を、時間の流れの中でどう維持管理していくのかという仕組みです。また、最近の言葉で言うと協働ですね。実際の設計ではなかなかそこまで踏み込めないけれども、空間の支え手というものを頭の中に置きながらやっていく。時間とともに変わっていくことに関しては、ルールを規定するということよりも、むしろ使い方を固定し過ぎない、そういう場所のつくり方が重要だと思います。
周辺環境を取り込む再開発
【大古田】 地方都市の再開発計画に携わってきました。一つ一つの建物はみんなそれぞれ違うけれど、まち全体として見たときには、何となく画一化されて、イメージの似通ったまちが多い。経済性とか合理性とかを極端に追求し過ぎているというところがある。普段仕事をしながら実感することは、事業性がいつも問題。極端な話、建物の形を単純化して、既製品のパネルを使ったり、量産部材を使ったり、乾式工法で組み立てたり、そういった大きな流れがある。特に地方都市で中心市街地とか駅前とかの再開発ビルは、そのまちにとっては大プロジェクトで、景観に与える影響とか、まちのイメージをつくる上ではとても重要なんです。再開発事業は、鹿屋市のように、敷地内だけではなくて、周りを取り込む、手づくり感のあるような、その敷地ならではの施設を心がけています。
【矢澤】 確かに、合理性とか経済性を追求するばかりに、設計工期ですとか工事工期、工事費がものすごく絞られたり、ゆっくり取り組みたいけれども時間がなくて、目の前の仕事に追われて流れ作業的になったり、類似物件をそのまま使っていくようなことがとてもさみしく思ったりもします。そうしたことは、結局、そのまちの建物、景観がつまらなくなっているのにも影響していると思います。あとは、建築を建てようとする人の意識をもうちょっと変えていけるようなPRができたらいいなと思います。地球環境問題に関しても、特別な工法とか材料を使うのはすごいコストアップにつながることばかりですので、お施主さんの理解がないと採用できないことが多いんです。
【布野】 事業性は設計計画にとっては基本的問題ですね。
【大古田】 お施主さんの求めているものは、事業が成り立つかどうかということです。それにこたえていくというのはもちろん根底になければならないですが、うまいさじ加減で、どうするかですね。
【布野】 社是というのはあるんですか。あまり大上段に、大言壮語はしないということでしょうか。
【石井】 強いて言えば、顧客満足度という指針があります。しかし、計画をしていく上でこういうものを目指せとか、上からどーんと降ってくることはなくて、まさにプロジェクトごとにそのチームで考えてやっていく。
【小平】 一つ一つをこつこつとしっかりやっていこうというスタンスですね。
曖昧な空間とフレキシビリティ
【石井】 プロジェクトごとに決めていくのですから、会社のアイデンティティとしては、変な言い方ですけど、緩さみたいなものがあると思う。学校で、例えば、教室と廊下の間仕切りを自由に変えられるようにする。ここを増やしたいとか、この部屋はこっちからも使うけどこっちからも使えるとか、そういうフレキシビリティ。都市に対しても完全にかたく閉じるんじゃなくて、境界というのはできるだけ緩くして、曖昧にしていくというところで魅力みたいなものが出てくるんじゃないか。
【布野】 再開発前の、ごちゃごちゃしていたスラムみたいなほうがよかったり。
【石井】 するんですね。再開発しちゃうと、大体味気なくなってしまう。この線からこっちが自分の家とか、そういうのはあまりなくて、道に植木鉢が置いてあったり、洗濯物を干していたり、そういうのがまちの活気とか魅力をつくっていたりする。防災面の問題とかはあるんですけど。
【久保】 具体的には、自然環境をどのように取り入れるかということがあります。博物館、美術館は、エントランスホールがあって、徐々に閉じていって、展示室が一番閉じられた空間になる。部屋の間に共用部、アトリウムを設けて直接外気に接するように建物のすき間をとる。
【布野】 緩さとか曖昧さとかすき間とか、大分キーワードが出てきました。
【小平】 個人的に常々思っていることは、中心でないもの、独立でないもの、名乗り出る必要がないもの、自己中心的なものはとにかく腑に落ちない。それは、往々にして事業主さんの意図とは反する場合もあります。例えば、自社のアイデンティティの高いものが要求される。
【布野】 そういう場合はどうするんですか。
【小平】 まだ模索中なんです。
設計者の責任
【石井】 姉歯問題で建築基準法が改正されて、確認申請の審査が厳しくなる。建築士の責任というのがますます重くなる。ただ、変な方向に行っているなという気がする。建築士が責任を果たすのは当然ですが、果たすだけの権利が与えられていないというのが現状です。権利というのは、すなわち設計料、それから設計期間ですね。義務を果たすのなら権利も保障しろというのが本音です。国に頼っていても絶対何もしてくれないというのがわかりましたので、設計者みずから働きかけていくしかないと考えています。設計事務所単体では無理なので、業界団体が力を持つしかないすね。業界が今すぐ統合するのは無理としても連合するということは可能だと思います。経済界のように連合会みたいなものを早急につくって発言力を持つということが非常に重要です。初代会長は安藤忠雄。
【布野】 面白いですね。ただ、設計者に責任を果たす能力があるかどうかですね。設計瑕疵が起こったときに、昭和設計はある程度担保できるかもしれないけど、一般的には責任がとれない。基本的に保険のシステムを入れないと駄目だと思う。ユーザーも、設計者も、ゼネコンも保険に入る。そういう仕組みにしない限り、もろもろ起こる事態にとても対応できなくなっている。
【石井】 セットだと思います。
公共性の問題
【岸田】 最近自治体の財政状況が悪化してくる中で、例えば、公園なんていうものにはもうお金を出さないことが一方である。ほんとうに必要なものとそうでないものとの仕分けで、次の世代とかのことを考えたときにほんとうはやらなきゃいけないのに、今できていないんじゃないかということがある。民間の会社としてはそれが設計料とかに当然はね返ってきますので、そういう中でどこまでできるのかという問題がありす。
【大古田】 再開発は業務範囲がほんとうに広い。図面をかく時間は全体の二割とか三割程度で、それ以外のことがほとんどですね。資料づくり、お金の調整、権利者の調整、住民説明、そういったもろもろです。発注者は公共、自治体です。何でもとりあえずは設計者のほうに依頼してという考え方を当然とります。何でもかんでもというのはしんどいですね。
PFIの問題
【布野】 組織事務所も設計者も、相当今曲がり角に来てますね。公共発注がPFI的なものになってきて、コンペもなかなか成立しない。
【小平】 PFIに参加したことがあるんですが、我々の立場として一番微妙だなと思ったのは、設計者の存在する意義がどんどん薄れているということです。主導権はゼネコンに移行していっている。我々は基本設計レベルぐらいしかタッチできない。
【石井】 まさしくそうですね。アドバイザリーに入っているコンサルタントが、まずポンチ絵をかく。そのポンチ絵に基づいて要求水準書をつくりますから、それに従っていくと、ポンチ絵に近づいていくわけですね。ものすごくもったいないですね、時間と能力が。何をやっているんだろうと思いながらいつもやっているわけですけど。それでいいものができるわけがない。要求水準を緩めたらどんなものが出てくるかわからない。結局、価格で勝負をしたところがとってしまう。PFIにすごく疑問を感じています。
まちづくりの限界
【岸田】 まちづくりは地元に入っていくやりかたが本来ですけど、組織事務所ではまず無理だと思っています。計画とか調査のフィーが実は曖昧なルールぐらいしかない。出てくる地元の方は、いわばボランティアというような立場で関わってこられる。きっちりとした職能として社会的に認められるようなシステムがないと駄目です。もう少し小回りのきくような事務所であれば可能でしょうけど。
【布野】 でも、やらざるを得ない。
【岸田】 そうです。昔は営業的な要素があるのである程度はやらざるを得ない。
デザイン・レビューと個性
【布野】 デザインレビュー(DR)をやられているそうですが。
【石井】 ここ一年ぐらい、デザインレビューのが明確化されまして、一つのプロジェクトに対して何回かやらないといけない。まず、プロジェクトが始まった時、何をテーマにしないといけないか、どういうことに気をつけないといけないかということをやる。基本設計の最後にもう一回。初期でに摘されたことがちゃんと確認されているか、生かされているか、この段階でやる。次は、実施設計の段階で、七〇%DRで、図面が七割方かけた段階でさらにやる。図面チェックです。最後、成果品DRで合計四回。
【布野】 DRで個性が消されていくようなことはないんですか。
【石井】 技術的にこういうことを検討しないといけないのにしていないじゃないかとか、そういうチェックはあるわけですけど、これは四角になっているけど、丸いほうがいいなとか、そんなチェックはないんですね。
【布野】 最近は、各事務所ともデザインレビューを厳しくやっておられますが、どれぐらい個人のテイストが生きていくかというのが興味ありますね。
組織事務所の顔
【布野】 例えば、チーフアーキテクト制は採ってないんですか。
【石井】 。私は採ればいいと思います。もっと設計者の顔が表に出るべきだと思う。組織事務所なので、一つのカラーで事務所の作品をつくるのはちょっとどうか、逆に選べるというのがいいところかなと思う。お客さんが、今回はだれだれ君に設計してほしいなとか、名指しで仕事が来るようになれば一番いい。
【久保】 上司によってテイストは違いますし、仕事のやり方も全然違う。そういう面ではやっぱり個々人が研さんしていく中で、チーフになれるだけの技術なり、デザイン力なり、そういうことを含めてですけども、持たないといけないというのはありますね。
【小平】 会社組織としては、誠実だとか堅実だとか、そういう対外的なイメージを持たれているという意識はあるんですが、今、大きな問題は、競争力ですね、企業としての。はっきりした顔が、だれかの考えが明快に出ているほうが信頼感が増しますし、発注する側も頼りがいがあるんじゃないかと思います。
美しい国土、美しい地域を目指して
【布野】 デザインの地域性をどう考えますか。これから目指していく地域の景観、都市のランドスケープのあり方、美しい国土づくり、美しい地域づくりというような時代のキーワードの中で、時代性をどうとらえて作品化していくか、その姿勢というか、攻め方はいかがですか。
【岸田】 都市景観の美しさというのは何かというと、それは作法の美しさだと思います。アート的な美しさではない。多分漠然とした感じなんですが、つくり込み過ぎないとか、周辺環境を犯さないような空間のあり方とか、そういうふうなことというのが大切なんじゃないかなという気がします。
【布野】 作法の美しさって、キャッチフレーズとしていいですね。アート的な美しさじゃなくて作法の美しさ。
【石井】よく言うんですけど、社会人は人間性の勝負なんです。いかに格好いい絵がかけても、それを実現しようと思ったら、人間性がないとだめなんですね。実現できない。絵にかいたもちでしかな。施主にちゃんと説明して、納得してもらって、現場が始まったら工事業者に説明して、そのとおりにつくってもらわないといけない。そのコミュニケーション能力、つまり人間性がないと、実現できない。クライアントと話をするのは、医者が患者さんに問診をするのと同じで、会話をすることによって、この人は何に困っているかを引き出すわけです。何が問題かがわかれば、あとはそれに対する解決方法を考えればいい。
【布野】 最後に、五十周年を迎えて、あと五十年昭和設計はどう仕事をしていくのか、社長のつもりになって、お願いできますか。
関西からの発信
【小平】 五十年先じゃなくて、今、昭和設計の抱えている課題の一つとしては、東京に支社がありますが、そのウエートをどうするか。僕は、神戸発祥、関西、大阪に拠点を置いた会社というスタンスを一つアイデンティティとして持っていったらいいんじゃないかと思う。一つのカラーとして、それを売りにして何かを構築できないか。それを持って、東京なり、海外なりに出ていくという方法はないか。東京一極集中で、世の中が平均化している。我々は東京だけじゃなくて地方のほうにどんどん出ていこうとしている。東京に対する大阪という一地方にいて地方の可能性を見出して、こんなことをやれている。よその地域に行っても、あなたのところではこういうことができるんじゃないですかと、そんな話をしていけるようなスタンスを持てたらいいなと考えています。
軽いフットワーク
【大古田】異論があるかもしれないですけど、僕が個人的に思っているのは、いろいろ仕事をとって、ばりばりやって、会社の規模がどんどん大きくなって、例えば、日建設計とか日本設計みたいにどんどん大きくなっていくという方向性よりも、組織事務所としてのある程度の規模を保ちながら、フットワークが軽くて気がきいて、技術的にもしっかりして、ちょっと一目置かれるような、そういった専門家集団というか、そういった組織になっていけたらいいんじゃないかなと思っています。
一本の柱
【水田】 昭和設計は、内部では個人的な意見が通ったり、いろいろアイデアも出るような事務所ではあるんですが、外に対して考えると、もう少し一本柱があるような感じで攻めるような会社になったほうがいいかなと思っています。個人が表に出るんじゃなくて一つ中心をつくって、その人がやっぱり表に立っていくほんとうの組織として、一つのグループとして仕事に当たっていくというようなスタイルがとれたらと思っています。
提案力
【竹内】 昭和設計というか、水工設計の将来像としては、これからはやはり地球環境が重要なキーワードになってくるので、そういった面で新たな提案力をつけていけたらと思います。
コラボレーション
【矢澤】 技術力という点で言いますと、ゼネコンさんとか、土の専門とかコンクリートの専門とか、ほんとうに狭い範囲の専門家がたくさん寄り集まっている大きい団体がありますが、組織事務所は、それだけの人材は確保できない状況だから、浅く広くやらないといけない。新しいものを提案していこうとなると、やっぱり外の人たちとか、異業種の方とかとの交流を大事にしながら新しいものを提案していきたい、目指していきたいと思っています。
クライアントとの協働
【久保】 クライアントの要求を聞くのは当然なんですけども、クライアントも一緒に建物をつくっているんだという意識を持ってもらえるような仕事の進め方をしたい。もちろん専門家として我々が持っているものというものを提供しながら一緒になってつくり上げていく、そのつくった建物に愛着を持っていただいて、ずっとその建物を育てていけるような関係というのをそこで構築できるような仕事の仕方をしたいなと考えています。
国際化―アジアのフィールドへ
【岸田】 これから要求されてくる能力の幅とか水準はどんどん複雑になったり、多様化していくと思うんです。コラボレーションは当たり前の話になっていると思いますし、いろんな分野の人間が関わってくるようなつくり方というのが長い目で見た方向性としてある。もう一つは、中国の仕事を幾つかやってきたんですが、会社の経営的なことは別にして、一技術者として、日本という国が体験してきたことを中国に伝えてあげる、失敗とかですね。それが何かの役に立つというのはすごい、私はうれしいことだと思う。むしろそういうことを積極的にやっていきたい。今後、昭和設計という組織の中でもいろんな越えなきゃいけないハードルはあるけれども、どんどんアジア圏とかに出ていってもいいんじゃないかと思います。
競争力
【石井】 設計者の顔をもっと出して、お客さんに選んでもらえるような体制というのが望ましい。コラボレーションも絶対重要です。一昔前は、同じものを大量につくる時代だったけれども、最近は複雑で多様なものをより短い時間でつくらないといけない。それを実現できるための体制をすぐ構築できる。しかもそれが安くできる。安くできるというのは、工事費が安くできることと同時に、設計料も安くできるというのが競争力だと思っています。そのためには、社内の専門分化みたいなことも必要ですけども、ほかの専門業種との連携というのが欠かせない。そういうネットワークというのが素早く組織でできる体制、それをまとめ上げるだけの知見を持った人間がどんどん育っていくことが必要だと思います。
【布野】 ありがとうございます。最後から始めればよかったですかね。皆さんほんとうに仲がよさそうで、楽しそうで、長々とお話して頂いて、ありがとうございました。
(午後五時十九分終了)
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