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2022年11月19日土曜日

建築フォ-ラム,雑木林の世界19,住宅と木材,日本住宅木材技術センター,199103

 建築フォ-ラム,雑木林の世界19,住宅と木材,日本住宅木材技術センター,199103

 フォーラムづいている。SSF(サイト・スペシャルズ・フォーラム)に続いて、建築フォーラム(AF)を発足(一九九一年一月一日)させることになった。ことさら忙しくしているような気がしないでもない。

 趣意はえらそうである。以下のように渡辺豊和さんによって格調高い文章が起草された。

 

 建築はグローバルに多様化の時代を迎え、種々様々の傾向がまさに百花繚乱の活況を呈しているようにみえる。ことに、私達の日本では、数年来の好況もあって、この状況は極限に達しているかのようだ。

 だがしかし、子細に観察すれば、この百花も実は極めて相似様相の花々が妍しさを競っているに過ぎない。単調すぎるほどの一様である。世界を覆う一様の倦怠、これは多様の幻想の中に埋没した一様である。建築家たちの多様性の自由の矮小化はいささか眼に余る。イデオロギーの喪失のせいだとは言うまい。ただ、建築の創造を衝き動かしてきた何かを私達が確実に捨て去りつつあることは見つめる必要があろう。

 時間は確実に過ぎ去り、否応なしに歴史は形成されていく。その過ぎ去る時間を、「建築の現在」は、ただ無為に見送っているように思える。あまりにも議論がなくなってしまったのはどういうことなのか。

 常に次代への兆しは、現在の内に見えているものだ。この兆しを察知しうるかどうか、それがいま生存する建築家たちの歴史参与の可否を握っているのだ。次代は次の世紀のはじまりなのか、それとも更にその次の世紀にまで及ぶのか判然とはしないが、その萌芽の兆しは、私達自身に宿っている筈である。私達自身に宿っているであろう兆しをこのフォーラムでは自己解剖したい。そして歴史に確実に参与して行く方法を発見したい。

 激しい議論の中から、根源的と言っていい、歴史創造の一歩を踏み出すことを願う。

 

 要するに議論の場をつくろうということなのだが、きっかけは、ひとつのシンポジウムの企画であった。この文章が読者の眼に触れる時には、無事(?)終わっている筈なのであるが、以下のような三日にわたる国際シンポジウム(二月二六日~二八日 東京・銀座 ヤマハホール 主催松下電器産業)をある経緯で行うことになり、その実行委員会をベースに建築フォーラムの発想がでてきたのである。

 

 「地球環境時代の建築の行方」ーポストモダン以後:徹底討論

 第1日 「環境のグランドデザイン」 

 基調講演 C.アレグザンダー パネラー 原広司 市川浩  コーディネーター 布野修司 渡辺豊和

 第2日 「都市のグランドデザイン」

 基調講演 M.ハッチンソン パネラー 木島安史 伊藤俊治

 コーディネーター 山本理顕 高松伸

 第3日 「住居のグランドデザイン」

 基調講演 L.クロール   パネラー 大野勝彦 小松和彦

 コーディネーター 安藤正雄 石山修武

 

 イヴェントだけでは安易すぎる。活動を記録に残すメディアが必要ではないかという話に自然になった。そこで思いついたのが建築年鑑もしくは建築年報のような年刊誌である。思いついたら早い方がいい、と建築ジャーナリズムの神様、平良敬一さんに相談に行った。面白そうだからやりなさい、協力するよ、『建築思潮』という名前を使ってもいい、とおっしゃる。植田実さんにも加わってもらって第一回の編集会議ももった。できるかどうかもわからないのにこうして書いているのは悪い癖だけれど、超ベテラン編集者の支援があれば大船に乗った気分である。五年間で五冊は出したいと考えている。『群居』だってまず四冊を(三刊本の汚名を逃れるために)、そして『デザイン批評』の一三冊を超えることを目標にしてきたけれど、もう二五号である。『建築思潮』もなんとかなるだろう、といたって楽天的である。

 建築フォーラムは、もちろん、全てのひとに開かれた場である。会員といっても、特別の資格がいるわけではない。会費も当面面倒くさいからとらない、とするとなんとなく参加意識がうまれてこないような気がする。そこで考えたのが建築フォーラム(AF)賞(仮)である。ノミネートされたいくつかの仕事を会員の投票のみで顕彰しようというのだ。それなら会員になろうという人もでてくるかもしれない。会員のみに投票権があることにするのである。まだ内容については、何も議論していないのであるが、作品賞でなくていいと思う。評論でも展覧会でも、運動でも意義ある仕事であればなんでもいい。五ないし一〇ぐらい、事務局で挙げて、あとは得票数が多いものが無条件に授賞するそんな仕掛である。日本建築学会賞をめぐって陰湿なポリティックスが毎年密室で展開されるのであるが、明るく楽しく一年を振り返り記そうという主旨である。

 もうひとつ、建築フォーラムでやりたいことがある。建築塾である。幸い、飛騨高山にある施設が確保できそうである。まずは、毎年恒例のインター・ユニヴァーシティーのサマースクールを拡大する形で開始できればと思っている。今夏スタートはほぼ決定である。サイト・スペシャルズ・フォーラム(SSF)とも協力していければと思う。

 あと活動プログラムとしては、以下のようなものが企画されつつある。

 ●フォーラム「深化する建築 住居未来論」 91開催

  ●出雲建築展’91支援

 ●日本建築セミナー支援

 ●木造建築研究フォラム支援

  ●茨城ハウジングネットワーク

 活動スタイルは、年刊『建築思潮』の発行を軸とし、適宜、集まりをもつ。また、その都度、出版、ニュース等 記録を残す。さらに、必要に応じて社会的アクションを行なう、という気楽なスタイルである。

 興味のあるかたは、是非、会員になってください。申し込みは以下の通りです。また、面白い企画があれば一報下さい。

 

●運営委員(コア・スタッフ)

 安藤正雄・石山修武・大野勝彦・高松 伸・布野修司・山本理顕 ・渡辺豊和

●アドヴァイザー(顧問)

 安藤忠雄・上田 篤・植田 実・内田祥哉・太田邦夫・大谷幸夫・平良敬一・高橋靗一・田中文雄・林 泰義・原 広司

● 建築フォーラム事務局

  (株)ADD

    大阪市西区南堀江1-11-1 栗本建設ビル8,9F

        TEL 06-534-4145           FAX 06-534-4198

    申し込みは、FAXでお願いします。住所、氏名、所属等を  お知らせください。





 

2022年11月18日金曜日

サイト・スペシャルズ・フォ-ラム,雑木林の世界18,住宅と木材,日本住宅木材技術センター,199102

サイト・スペシャルズ・フォ-ラム,雑木林の世界18,住宅と木材,日本住宅木材技術センター,199102

 サイト・スペシャルズ・フォーラムが発足した(一九九〇年一一月二七日)。サイト・スペシャルズとは耳慣れない言葉だが、もちろん、造語だ。優れた人格を備え、新しい技術を確立、駆使することが出来る、また、伝統技能の継承にふさわしい、選ばれた現場専門技能家をサイト・スペシャリストと呼び、そうした現場の専門技能家、そして現場の技術、工法、機材、労働環境まで含んだ全体をサイト・スペシャルズと定義づけたのである。

 建設現場で働く、サイト・スペシャリストの社会的地位の向上、待遇改善、またその養成訓練を目的とし、建設現場の様々な問題(サイト・スペシャルズ)を討議するとともに、具体的な方策を提案実施する機関としてサイト・スペシャルズ・フォーラムが設立された。

  設立主旨に次のようにいう。

 「国家の基幹をなす建設業の重要性と様々な問題を建設現場で働く者の立場から専門的に掘り下げて提案してみたい。

 建設技能者の不足が次第に深刻化しつつある。若年労働者の人口が減少基調にあり、また、若者の現場離れが進行しているからである。建設労働を支える現場技能者が急激に減少していくことは、建設業界にとって大きな問題である。また、建設業界のみならず、私達の生活環境のあり方に深く関わっている。

 何故、若者は現場を嫌うのか。私達は俗に言われる3K、6Kだけが原因ときめつけていないだろうか。大切なことは若者の目標とステータスを創り上げていくことである。

 若者をひきつけるためには、現場が何よりも魅力的でなければならない。また、専門技能家が社会的に尊敬される職業とならなければならない。人生の目標がひつようであり、学び修得する場が必要である。ハイレベルな専門技能家(スター)を世に送りだしていきたい。そのためには、何をすればいいか、本フォーラムでは考えてみたい。また、提言し、実行したい。

 どんな作品も、すぐれた現場技能者がいなければできるわけがない建設現場をないがしろにする建築に名作はない。 従って、サイト・スペシャリストの社会的な地位の向上を願い、実現し、生活環境を豊かに創造して行くことを本フォーラムの目的としたい。」

 理事長に内田祥哉明治大学教授、運営委員長に田中文雄真木建設社長、僕も、運営委員として加わることになった。もちろん、主旨に賛同して頂ける全ての人々に開かれたフォーラムである。運営委員のひとりとして、是非、積極的なご参加、ご協力、ご支援をお願いしたい*1

 内田先生から、現場の職人の問題について手伝うようにという話があったのは九月の初めであった。フォーラムの発足まであっという間であった。何か得たいのしれないエネルギーにつき動かされているような感じであった。

 中心になっているのは、今のところ、専門工事業、いわゆるサブコンの社長さんたちである。いずれも有力なサブコンであり、サイト・スペシャリストの育成、待遇改善に極めて意欲的である。そうしたサブコンの社長さんたちの熱意が一気にフォーラムの発足に結びついたと思う。

 サイト・スペシャルズ・フォーラムには三つのセンターが設けられた。SSFインフォーメーションセンター、SSFコミュニケーションセンター、SSFアカデミーセンターである。サイト・スペシャルズ・フォーラムは、何を目指すのか。全てはこれからなのであるが、ひとつの大きな軸となるのが「職人大学」の創設である。自前でどれだけ社会的に尊敬されるサイト・スペシャリストを育てることができるかどうかが、最終的な目的となるのである。

 SSFアカデミーセンター(藤沢好一担当)を中心に検討が行われることになるのであるが、どういうカリキュラムとするか、どういう資格をオーソライズしていくか、が問題である。もちろん、「大学」をつくればいいということではない。サイト・スペシャリストとして認定された人が、それにふさわしい報酬を得ることができる環境がつくられなければならない。サイト・スペシャルズ・フォーラムに参加する法人会員が主体的にそうした雇用条件をつくりあげていく努力が必要である。少しづつでも、そうした企業が増えていけば、建設業界も大きく変わっていく可能性がある。

 もうひとつねらいとするのは、情報公開である。重層的下請構造をとる日本の建設業界の大きな問題点は、工事単価などの情報がオープンになっていないことである。これをどうにかして一般公開できないか。報酬をきちんと見えるようにすることで評価する仕組みをつくりあげることが目指される。現状では、ゼネコンによってまちまちで、隔たりが大きすぎる。工事単価構成の公開による積算条件の統一が是非とも必要なのである。僕の担当するSSFインフォーメーションセンターが実態把握と情報公開を担当する。SSFニュースの発行が当面の軸となる。

 SSFコミュニケーションセンター(安藤正雄担当)では、サイト・スペシャリストのためのギャラリーなどサイト・スペシャリストの集う場を企画運営する。

 いずれも一朝一夕ではできないことである。しかし、すぐにでもできることがある。例えば、現場の労働環境についてはすぐにでも改善できることが多いのではないか。現場小屋などもうちょっとどうにかならないか。若者が3Kで現場離れをしているのだとすれば、余計、背広で現場に通うことができるぐらいの設備が必要なはずだ。現場への移動の車もサロンカー並であっていい。

 賃金体系、生涯モデルプランについては、サイト・スペシャルズ・フォーラム発足に参加した各法人メンバーは、既に様々な努力を始めている。職能給制度の実施、退職金制度の充実、互助会制度の導入、有給休暇の消化推進、寮、社宅の充実、持家制度の推進などである。しかし、個々の企業の努力だけでは限界がある。業界全体、少なくとも、サイト・スペシャルズ・フォーラム参加企業は、協調して待遇改善を行っていくことが問われるのである。そうした努力が、フォーラムのステイタスを高めていくことにもなるはずだ。

 サイトスペシャルズフォーラムは当面月一回の定例会のを中心に運営される。一九九一年の当初の予定は以下のようである。

 二月 六日 藤沢好一 「日本の建築生産と建設労働」

 三月一二日  谷 卓郎  「サイトスペシャリストの養成」

 今年の末には、大きなイヴェントが組めたらと思う。国際シンポジュームとか運動会とか、いろんな企画案が出始めている。とにかく、楽しくやらなくちゃ、と思う。

 

*1 サイト・スペシャルズ・フォーラムについての問い合わせは、事務局 千葉市中瀬1ー3 B12 ヒューマンインスティチュート内 電話 0472962700





2022年11月16日水曜日