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2022年11月18日金曜日

サイト・スペシャルズ・フォ-ラム,雑木林の世界18,住宅と木材,日本住宅木材技術センター,199102

サイト・スペシャルズ・フォ-ラム,雑木林の世界18,住宅と木材,日本住宅木材技術センター,199102

 サイト・スペシャルズ・フォーラムが発足した(一九九〇年一一月二七日)。サイト・スペシャルズとは耳慣れない言葉だが、もちろん、造語だ。優れた人格を備え、新しい技術を確立、駆使することが出来る、また、伝統技能の継承にふさわしい、選ばれた現場専門技能家をサイト・スペシャリストと呼び、そうした現場の専門技能家、そして現場の技術、工法、機材、労働環境まで含んだ全体をサイト・スペシャルズと定義づけたのである。

 建設現場で働く、サイト・スペシャリストの社会的地位の向上、待遇改善、またその養成訓練を目的とし、建設現場の様々な問題(サイト・スペシャルズ)を討議するとともに、具体的な方策を提案実施する機関としてサイト・スペシャルズ・フォーラムが設立された。

  設立主旨に次のようにいう。

 「国家の基幹をなす建設業の重要性と様々な問題を建設現場で働く者の立場から専門的に掘り下げて提案してみたい。

 建設技能者の不足が次第に深刻化しつつある。若年労働者の人口が減少基調にあり、また、若者の現場離れが進行しているからである。建設労働を支える現場技能者が急激に減少していくことは、建設業界にとって大きな問題である。また、建設業界のみならず、私達の生活環境のあり方に深く関わっている。

 何故、若者は現場を嫌うのか。私達は俗に言われる3K、6Kだけが原因ときめつけていないだろうか。大切なことは若者の目標とステータスを創り上げていくことである。

 若者をひきつけるためには、現場が何よりも魅力的でなければならない。また、専門技能家が社会的に尊敬される職業とならなければならない。人生の目標がひつようであり、学び修得する場が必要である。ハイレベルな専門技能家(スター)を世に送りだしていきたい。そのためには、何をすればいいか、本フォーラムでは考えてみたい。また、提言し、実行したい。

 どんな作品も、すぐれた現場技能者がいなければできるわけがない建設現場をないがしろにする建築に名作はない。 従って、サイト・スペシャリストの社会的な地位の向上を願い、実現し、生活環境を豊かに創造して行くことを本フォーラムの目的としたい。」

 理事長に内田祥哉明治大学教授、運営委員長に田中文雄真木建設社長、僕も、運営委員として加わることになった。もちろん、主旨に賛同して頂ける全ての人々に開かれたフォーラムである。運営委員のひとりとして、是非、積極的なご参加、ご協力、ご支援をお願いしたい*1

 内田先生から、現場の職人の問題について手伝うようにという話があったのは九月の初めであった。フォーラムの発足まであっという間であった。何か得たいのしれないエネルギーにつき動かされているような感じであった。

 中心になっているのは、今のところ、専門工事業、いわゆるサブコンの社長さんたちである。いずれも有力なサブコンであり、サイト・スペシャリストの育成、待遇改善に極めて意欲的である。そうしたサブコンの社長さんたちの熱意が一気にフォーラムの発足に結びついたと思う。

 サイト・スペシャルズ・フォーラムには三つのセンターが設けられた。SSFインフォーメーションセンター、SSFコミュニケーションセンター、SSFアカデミーセンターである。サイト・スペシャルズ・フォーラムは、何を目指すのか。全てはこれからなのであるが、ひとつの大きな軸となるのが「職人大学」の創設である。自前でどれだけ社会的に尊敬されるサイト・スペシャリストを育てることができるかどうかが、最終的な目的となるのである。

 SSFアカデミーセンター(藤沢好一担当)を中心に検討が行われることになるのであるが、どういうカリキュラムとするか、どういう資格をオーソライズしていくか、が問題である。もちろん、「大学」をつくればいいということではない。サイト・スペシャリストとして認定された人が、それにふさわしい報酬を得ることができる環境がつくられなければならない。サイト・スペシャルズ・フォーラムに参加する法人会員が主体的にそうした雇用条件をつくりあげていく努力が必要である。少しづつでも、そうした企業が増えていけば、建設業界も大きく変わっていく可能性がある。

 もうひとつねらいとするのは、情報公開である。重層的下請構造をとる日本の建設業界の大きな問題点は、工事単価などの情報がオープンになっていないことである。これをどうにかして一般公開できないか。報酬をきちんと見えるようにすることで評価する仕組みをつくりあげることが目指される。現状では、ゼネコンによってまちまちで、隔たりが大きすぎる。工事単価構成の公開による積算条件の統一が是非とも必要なのである。僕の担当するSSFインフォーメーションセンターが実態把握と情報公開を担当する。SSFニュースの発行が当面の軸となる。

 SSFコミュニケーションセンター(安藤正雄担当)では、サイト・スペシャリストのためのギャラリーなどサイト・スペシャリストの集う場を企画運営する。

 いずれも一朝一夕ではできないことである。しかし、すぐにでもできることがある。例えば、現場の労働環境についてはすぐにでも改善できることが多いのではないか。現場小屋などもうちょっとどうにかならないか。若者が3Kで現場離れをしているのだとすれば、余計、背広で現場に通うことができるぐらいの設備が必要なはずだ。現場への移動の車もサロンカー並であっていい。

 賃金体系、生涯モデルプランについては、サイト・スペシャルズ・フォーラム発足に参加した各法人メンバーは、既に様々な努力を始めている。職能給制度の実施、退職金制度の充実、互助会制度の導入、有給休暇の消化推進、寮、社宅の充実、持家制度の推進などである。しかし、個々の企業の努力だけでは限界がある。業界全体、少なくとも、サイト・スペシャルズ・フォーラム参加企業は、協調して待遇改善を行っていくことが問われるのである。そうした努力が、フォーラムのステイタスを高めていくことにもなるはずだ。

 サイトスペシャルズフォーラムは当面月一回の定例会のを中心に運営される。一九九一年の当初の予定は以下のようである。

 二月 六日 藤沢好一 「日本の建築生産と建設労働」

 三月一二日  谷 卓郎  「サイトスペシャリストの養成」

 今年の末には、大きなイヴェントが組めたらと思う。国際シンポジュームとか運動会とか、いろんな企画案が出始めている。とにかく、楽しくやらなくちゃ、と思う。

 

*1 サイト・スペシャルズ・フォーラムについての問い合わせは、事務局 千葉市中瀬1ー3 B12 ヒューマンインスティチュート内 電話 0472962700





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