「新都市の論理」(仮)へ向けて
ZOOM Talk⓪ 20220531 10:00~10:30
ZOOM Talk① 20220607 10:00~10:30
スマートシティ1(佐藤→布野) 2022 0613
布野さん
大学卒業後は殆ど会うこともなかったですが、還暦近くになって、年に一度、大学の教養学部のクラスの同窓会が開かれるようになりました。ワイワイガヤガヤ、酒を飲みながらの交歓ですが、布野さんが、世界の都市をあちこち訪ねながら、いろいろな本を書いていることを知りました。私は、まともな就職もせず、自分で会社を立ち上げました。「乗換案内」で有名な「ジョルダン」です。
①
[ジョルダン]鉄道駅間の経路、運賃を案内するパソコンソフト「乗換案内」のデビューが1993年です。その後、機能の拡充を続け、今現在は、スマートフォン上で、地図も搭載、ドア
to ドアで、鉄道、航空機、高速バス、バス、タクシーを利用した経路案内を実現しています。その稠密さ、時間の正確さ、Suicaも、日本の公共交通は、世界一進んでいる、と思っていました。最近では、TAXIアプリ、レンタカーの予約、乗車もスマートフォンでできるようになってきています。
②[Maas]しかし、2016年6月、フィンランドのMaaS Global社は、「Whim」というアプリを開発、世界展開を開始し始めました。出発地、目的地を指定すれば、電車、バス、タクシー、レンタカー、レンタサイクルを利用した経路が表示され、予約、決済まで完了する。定額で乗り放題までをも含めてます。MaaS (Mobility as a Service)という新しい動きです。 触発されて、ジョルダンも日本国内でのMaaSの実現に向けて、いろいろな試みを始めました。また、国もMaaSの普及に向け、さまざまな実証実験への応援を開始してます。
③[Smart City]MaaS Global社の動きとは別に、数年前から、自動車メーカーは、自動運転の実現に向けて開発を急いでいます。自動運転ができれば、車は所有するものから利用するものへと変化していく。駐車場が要らなくなれば、街が大きく変わっていきます。スマートシティという言葉が注目されています。
④[GAFA]インターネットの登場で、小売、メディア等あらゆるサービスのメインのプレイヤーの交代が起こり、GAFA(Google,Amazon,Facebook,Apple)が一気に力を得てしまった。インターネットの次は、移動に焦点が当たり、その先のスマートシティという視点から全体が見直され始めている、というのが現状でしょうか。
⑤[トロント・ウォーターフロント再開発/Sidewalk Labs/都市OS/]カナダのトロントのウォーターフロント地区の一部を再開発するプロジェクトに向けて、グーグルの親会社アルファベット傘下のSidewalk Labs(サイドウォーク・ラボ)が、5,000万ドル規模を投じると発表したのが2017年。都市OSなる言葉が現れ、都市のモビリティやインフラのさまざまな問題に取り組んできたが、一旦このプロジェクトは中断してしまいます。
⑥[デジタル田園都市/スマートシティ]岸田内閣もデジタル田園都市を政権の主要テーマと位置づけ、スマートシティ、コンパクトシティといった言葉が飛び交い、さまざまな実証実験が開始されてます。日本でもFIWARE(ファイエア)という都市OSをベースに据え、膨大なデータの蓄積が始まってます。
⑦[鉄腕アトムの世界]スマートシティを考えるとき、移動はその基本であり、ジョルダンにも声がかかります。布野さんとのビジネス上の接点が見つかったように思い、内閣府のホワイトペーパーや日経ビジネスのスマートシティの特集を送りましたが、何かこう、根っこのところで釈然としない思いがあります。子供の頃、手塚治虫の漫画での未来都市、まさしく今のスマートシティはそういった視点の延長のような気がしてなりません。コンピュータ、デバイス、IOT‥、我々の世界からみると未来はまさに鉄腕アトムの世界なのですが、何かこう根本的に間違えているような‥。
ZOOM Talk② 20220614 10:00~10:30
スマートシティ2 (布野→佐藤) 2022 0614
佐藤さん
⓪43S15Bの会で、再会したのは2014年でしょうか? 2015年に四半世紀ぶりに関西から東京に戻ってきて、毎年の同窓会を楽しみにしてきました。建築の道を選んで半世紀、建築の世界は大体わかったような気がしていますが、佐藤さんからジョルダンの仕事を聞くにつれ、日本の社会のあり方、都市のあり方について、根本的に考え直す機会を与えられたような気がしています。
① ジョルダンのパソコンソフト「乗換案内」のデビューが1993年ということですが、さすが先見の明があったということでしょう。我々の世代は、この間のICT技術の発展は人生の軌跡と密接に結びついているわけで、佐藤さんがその先頭を走っていることは自慢でもありました。僕も工学部の出身ですからパンチカードの時代から知っています。卒論(1973)では、建築の設計プロセスをいかに論理化するかというテーマで、C.アレクサンダーという建築家の書いた“Notes on the Synthesis of Form”(『形の合成に関するノート』)を読んで、多くの設計条件を単純化するプログラムHIDECS(要するに複雑なグラフを解くプログラムです)を書いたんですが、朝、大型計算機センターに入力すると、夕方、Error!というプリントが1枚出てくる時代でした。1987年に、遅ればせながら(38歳)学位論文(『インドネシアにおける居住環境の変容とその整備手法に関する研究-ハウジング計画論に関する方法論的考察』(東京大学,1987年),日本建築学会賞受賞(1991年))を書くのですが、ディジタイザーとパソコンFM8をつないだ独自のワープロ・ソフトで印字したのは先進的だった?と思います。
② 1979年に東洋大学のプロジェクト(「東南アジアにおける居住問題の理論的実証的研究」)でジャカルタに行って以来、アジアの都市を歩き出すのですが、1991年に京都大学に異動して、最初にロンボク島(インドネシア)で臨地調査(フィールドワーク)を行ったのですが、Faxが使えるようになって便利になったと思ったことを覚えています。だから「乗換案内」の先進性は実感できます。振り返れば、昭和から平成への転換、ベルリンの壁崩壊(1989年11月),ソ連邦の崩壊(1991年12月)、1980年代から1990年代への移行は世界史的大転換の画期でした。インターネットの歴史は1960年代に遡るかもしれませんが,1989年に地球規模のインターネット(TCP/IP)ネットワークが成立し,1995年には商用利用が開始される。インターネットの利用は瞬く,間に世界津々浦々に普及し,パソコン,携帯電話(モーバイル・フォン)の進歩と普及がネットワーク社会の実現に大きく寄与することになったわけです。
③ 佐藤さんからMaasの話を聞いたのは、コロナ禍、東京オリンピックの前だったと思いますが、初心に戻って交通革命を起こす、やる気になった、といったことを覚えています。
フィンランドのMaas Global社が世界展開を開始し始めたのが2016年ということですが、流れを読んだ直感だったと思います。佐藤さんも地方出身ですけど、僕は出雲の出身です。本州にあって、東京からの時間距離はおそらく最大です。東京一極集中で移動の負担が大きい理不尽についてはかねがね大きな問題だと思ってきました。
Maasについては、世界中どこに移動するにも瞬時に選択できるというのは素晴らしいのですが、日本国内でも航空各社、JRなど鉄道各社、バス、タクシーなどメディア(モード)の間に壁があると佐藤さんから聞きます。移動料金などグローバルなシステムの理想はどのようなもので、どこに問題があるのか知りたいと思います。移動については、自動運転、コミュニティ・バス、UBERシステム、カー・シェアリング、空中(ドローン)タクシー・・・など様々な進化が期待されますが、その未来はどうなるでしょうか?
④ 電気、水道、下水道など従来の都市インフラ、そして、物流、小売り、宅配・・・そして医療、教育・・・など、あらゆるサーヴィス・システムを支配するGAFAのようなグローバル企業と国民国家とその経済ブロック化については今後の世界の行方を大きく左右していくことになると思います。インターネット(メタバース)によって世界中が緊密につながる一方、空間的には分散して居住する、そんな世界が想定されているのでしょうか?
⑤ スマートシティとは何か?について、政府は、「①3つの基本理念(市民(利用者)中心主義、ビジョン・課題フォーカス、分野間・都市間連携の重視)と5つの基本原則(公平性,包摂性の確保、プライバシーの確保、運営面,資金面での持続可能性の確保、セキュリティ,レジリエンシーの確保、相互運用性・オープン性・透明性の確保)に基づき ②新技術や官民各種のデータを活用した市民一人一人に寄り 添ったサービスの提供や、各種分野におけるマネジメントの高度化等により ③都市や地域が抱える諸課題の解決を行い、また新たな価値を 創出し続ける ④持続可能な都市や地域
、”都市“での取組ばかりではく、里山里海などを有する地域における豊かな自然と共生した地域づくり(スマートローカル)もスマートシ
ティの仲間です。」と、もっともらしい言葉を羅列しますが、具体的な都市のイメージは不明です。
⑥ 野村総研が「スマートシティとは、「都市内に張り巡らせたセンサー・カメラ、スマートフォン等を通じて環境データ、設備稼働データ・消費者属性・行動データ等の様々なデータを収集・統合してAIで分析し、更に必要に応じて設備・機器などを遠隔制御することで、都市インフラ・施設・運営業務の最適化、企業や生活者の利便性・快適性向上を目指すもの」です。世界各国では今、中央政府や地方自治体だけでなく、GAFA(Google、Amazon、Facebook、Apple)やアリババなどIT系プラットフォーマーなどもスマートシティに取り組んでいます。」というのはまだわかりやすいかもしれませんが、佐藤さんの言う「鉄腕アトムの世界」のイメージにもなっていないんじゃないでしょうか?
⑦ 建築の世界で生きてきたので、あくまでもリアルな都市のあり方に関心があります。アジアの街を歩きながら、地域の生態系に基づく自立循環都市、都市村落(アーバンヴィレッジ)的なコミュニティといったかたちを漠然と考えてきましたが、地球全体のシステムについてはつきつめて考えてきませんでした。エネルギー、資源、食糧、・・・そして人口の空間的配分が問題になるわけですが、MaaSなど新たなICTが可能にするシステムを構築できればと思います。稲村哲也・山極壽一・清水展・阿部健一編『レジリエンス人類史』(2022)が、「スラバヤ・エコハウス」を取り上げて「農業システムと同じように、近代都市にも今「介入」を行えばレジリエントで地域の個性が反映された都市システムにすることができる」と書いてくれています(第25章 阿部健一「ヴァナキュラー・グローバリゼーション」)。都市の規模、配置、かたち・・・をめぐって、「新都市の論理」を展開できればと思います。
スマートシティ3(佐藤→布野) 2022 0620
>世界各国では今、中央政府や地方自治体だけでなく、GAFA(Google、Amazon、Facebook、>Apple)やアリババなどIT系プラットフォーマーなどもスマートシティに取り組んでいま>す。」というのはまだわかりやすいかもしれませんが、「鉄腕アトムの世界」のイメージに>もなっていないんじゃないでしょうか?(2⑥)
①「都市OS」
このくだりは痛快です。そうなんです。そういった中で、まずは、データを収集すること、そこに猛烈なパワーが注がれています。「都市O S」という言葉が力を持ち、ありとあらゆるデータを収集し始めている。コンピュータで「O
S」と言えば、Operating Systemオペレーティングシステムの略、コンピュータ全体を管理し、制御し、人が使えるようにするものです。都市とは何なのか、それがきちんと定義されてなくて、どうして「都市OS」なるものが語れるか。IT系プラットフォーマーの驕りだと思います。
2017年10月、カナダのトロントでスマートシティを実現しようという構想がスタート、2019年にスマートシティプロジェクト「IDEA」が立ち上がった。Googleの兄弟会社のサイドウォーク・ラボが、「都市OS」を掲げ、街中のありとあらゆるデータを取得することとあわせ、デジタル技術を駆使した未来都市構想を進めていった。
しかし、世界中から注目を集めたこのプロジェクトは、2020年5月中止される。個人情報が筒抜けになることが恐れられたことが最大の理由とされてはいますが、そもそも都市とは何か、という大きなコンセプトが欠けていました。SDGs(Sustainable
Development Goals)持続可能な開発目標には最大限留意していましたが、2020年5月は世界中で新型コロナウィルスが問題になり始めた時期でもあります。疫病とどう対峙するか、という視点も全く盛り込まれていないようなので、止めて良かったと思います。
②雇用、環境、住居、モビリティ、データ活用といった項目でスマートシティのプランは語られていきます。モビリティも大きな要素なので、ジョルダンも頑張れる領域でもあります。もっとも、ここでのモビリティは、LTRの拡張のみならず、信号コントロール、貨物の配送と廃棄物の収集、歩行者等の概念が盛り込まれています。
日本でも世界でもスマートシティというものが大きな話題になっている今、都市とは何か、を語ることが、布野さんに求められているように思います。
>稲村哲也・山極壽一・清水展・阿部健一編『レジリエンス人類史』(2022)が、「スラバヤ・>エコハウス」を取り上げて「農業システムと同じように、近代都市にも今「介入」を行え>ばレジリエントで地域の個性が反映された都市システムにすることができる」と書いてくれています(阿部健一「ヴァナキュラー・グローバリゼーション」)。
このあたりのところ、私はあまり知りませんが、気になっています。
>移動については、自動運転、コミュニティ・バス、UBERシステム、カー・シェアリング、>空中(ドローン)タクシー・・・など様々な進化が期待されるが、その未来は‥
自動運転はもし出来上がると、鉄道からコミュニティ・バス、UBERシステム、カー・シェアリングといったものにも大きな影響を与えるはずです。今からしばらくの間は、自動運転が徐々に進みながら、モビリティが大きく変わっていくときだと思います。
UBERについては、サービスが普及し始めた頃、書いたものがあるので、ここに転記します。安い、便利だ、ということに尽きると思います。出会うまで私は日本の公共交通は世界で一番進んでいる、と思っていました。しかし、体験してみると、蟻の軍団が稠密な公共交通のネットワークに挑み始めている、という時代の変化にギョッとしたことを覚えています。
■ライドシェアを初体験
2017年1 ⽉、サンノゼのダウンタウンにある社宅にいた私は、電⾞を乗り継いでサンフランシスコ空港まで⾏こうと、スマートフォンで電車の発車時刻を検索していた。
シリコンバレーに行ったときには、レンタカーを借りるのが常だった。あちこち移動するのに便利だし、経済的だからだ。だがこのときは違った。2⽇前の夜遅くラスベガスから社宅近くのサンノゼ空港に着き、また翌⽇は特に⼈と会う約束もなかったので、社宅までタクシーを利用していたのだ。
調べてみると、社宅から徒歩5 分位のところにライトレールのサンノゼ駅がある。そこまで歩いて10
分ちょっと。その後、サンフランシスコ空港までは、カルトレイン、地下鉄と乗り換えて⾏くのだが、乗⾞時間はカルトレインが50
分程度、地下鉄は5
分もかからない。本数は少ないが、天気は快晴、たまには電⾞で⾏くのもいいかな。
そう考えていたとき、ふと自分のスマートフォンに「Uber(ウーバー)」のアプリをダウンロードしていたことを思い出した。
Uberとは、配車サービス会社であるUber(ウーバー)
Technologies(テクノロジーズ)が提供している、ドライバーと利用者をマッチングさせるサービスである。
もともと欧米では、ライドシェアリングがソーシャルサービスとして広がりを見せていた。一般ドライバーが他者を自分の車に相乗りさせ、ガソリン代などを負担し合って交通費を節約しようという文化だ。
その背景には、「地球温暖化を食い止め、環境汚染を減らすためには車の利用を減らすべきだ」という世界的風潮の高まりもあった。Uberはそれをうまくすくい上げ、ビジネス化に成功していた。
私はよもや自分が使うことはないとは思っていたが、仕事柄興味があったので、アプリをダウンロードするだけはしておいたのだ。
サンノゼの社宅からサンフランシスコ空港までおよそ34
マイル、54
㎞である。タクシー代が⽇本もアメリカもほぼ同じだとしたら、恐らく3万円くらいかかる。
Uberは安いとは聞いていたが、仮に半額になるとしても1万5000円だ。貧乏性の私には縁のない交通⼿段だが、調べるだけはしてみよう。私はそんなことを考えながら、スマートフォンにUberのアプリを立ち上げた。
すると、まず近くにいる⾞が表⽰された。結構な数である。画面に表示された各⾞の位置は刻一刻と変わっていく。
アプリ画面の⽬的地の欄に「SFO」と入力した。すると、「サンフランシスコ国際空港」と表⽰され、到着予想時間と料⾦が表⽰された。
料⾦は、⾞種、相乗りかどうかなどで異なるが、相乗りだと31.27ドルと表⽰される。当時、為替レートは1ドル=115円程度だったから、わずか3600円ほどにすぎなかった。あまりの安さにびっくりした。
それなら試してみるかと、乗⾞を選択した。すると、⾞種、ナンバー、運転⼿名が表⽰されて、3分で来るという。慌てて家を出るとほぼ同時に⾞が到着した。
私が乗車すると、特に相乗りの相⼿も現れないまま、一気にサンフランシスコ空港に到着した。かかった時間は40分ちょっとだったし、運賃は最初に決定された額のままで増えることも減ることもなかった。また、現⾦での受け渡しもなく、予め登録していたクレジットカードで決済された。
これは実に鮮烈な体験だった。そしてこの日以降、私はアメリカ出張の際、一切レンタカーを使わなくなった。電⾞が使えるところは電⾞を使い、それ以外の場所ではライドシェアを利⽤するようになったのだ。
ウーバーテクノロジーズは、2009年3月にアメリカで誕⽣した企業である。モバイルアプリを通じて配⾞を依頼すると、端末のGPS機能を通じて現在位置が発信され、付近の迎⾞可能なドライバーが⼿配される。
⼿配した側は⼿軽に迅速に⾃動⾞を利⽤することができ、⾃動⾞を運転する側は暇な時間を使って⼩銭を稼ぐことができる。その利便性から⼀気に普及していったわけだが、それゆえ、既存のタクシー業界の強い抵抗や運輸当局の規制にあうこととなった。
都市によっては、ライドシェアが禁⽌されているところもあったし、許可されていても空港とかホテルでは厄介もの扱いされてもいた。
例えばサンフランシスコでは、許可されてはいたものの、空港からウーバーを利⽤しようとしても乗り場はわかりにくいところにあったし、ホテルから乗ろうとしても⼤分離れたところまで歩かねばならず、かなり不便だった。
ラスベガスではライドシェアは禁⽌されていた。空港からホテルに行くタクシー乗り場は⻑蛇の列で、30分以上並ぶのが当たり前であった。
それがどうだろう。3年経った今2020年、ラスベガス空港のタクシー乗り場はガラガラになった一方で、ターミナルと隣接したパーキングの2階にはライドシェア専⽤の広いスペースが用意されている。
そればかりか、そこまでの行き⽅が空港の要所、要所に掲⽰されているし、ホテルの入⼝からも普通にライドシェアを利⽤することができるようになっている。
ライドシェアがタクシー業界の妨害や運輸当局の規制を乗り越えて、あって当たり前のサービスとなったのだ。
それは、利便性と料金の安さを多くの利用者が支持した結果であり、ライドシェアが社会に受け入れられていったのは当然のことだったと言えよう。
■湧き上がってきた疑問
アメリカにおけるこうしたライドシェアの急速な普及に加えて、EV(Electric
Vehicle:電気⾃動⾞)にチャレンジするテスラ社や、⾃動運転に取り組むグーグルなどのアグレッシブなアメリカ企業の動きを見るにつけ、私はある疑問を感じるようになっていった。
それまで私は⽇本の公共交通に大きな誇りを持っていた。
⽇本は、世界一、公共交通が充実した国である。東京、⼤阪などの⼤都市では、網の⽬のように公共交通のネットワークが張り巡らされ、正確な時間通りのダイヤで運⾏されている。朝の通勤時は、2~3分に⼀度の頻度で電⾞が正確に到着する。⾞での移動よりもはるかにスムーズである。
そればかりではない。例えば、所沢から横浜まで⾏こうとしたとき、⻄武鉄道、副都⼼線、東急電鉄と電⾞は会社の枠を超えて乗り入れている。乗客の利便性を考えてのことだ。こんな素晴らしい国は他にない……。
ところが、そんな私に、「何かがおかしい」「このままでいいのか」という感覚が、芽⽣えてきたのである。
アメリカの物価は高い。シリコンバレーではちょっとしたビジネスホテルに泊まっても一部屋300ドル以上かかる。食事も高い。さほど美味しくないのに、⽇本の倍くらいの感じがする。
それなのに、サンノゼ市内からサンフランシスコ空港まで、ライドシェアで40
ドルもかからない。そして、新登場してきたこの新たなサービスは、あっという間に多くの人々に受け入れられ、大きな存在感を示すようになっている。
誕生したばかりの頃のライドシェア業者は、既存の公共交通機関にしてみれば、まるで“蟻の軍団”のようにちっぽけな存在にすぎなかった。だが、その蟻の軍団が瞬く間に、⽇本の公共交通と同じような利便性の高いサービスを提供するまでになったのだ。
そのウーバーテクノロジーズは、2019年5月にニューヨーク証券取引所に上場した。
2019年第1四半期の取扱⾼は前年同期比34%増の146億ドル、売上⾼は31億ドルで、最終損益は10億ドルの⾚字だった。だが、経営陣は「やがて⾃動運転の時代が来て、⼀気に収益は改善する」とは強気である。
実際、3か⽉間で1兆円以上の取扱⾼をあげているし、70の国と地域の450都市以上に展開している。
今後、さらに成長していくことは間違いないだろうし、ライドシェアが投じた一石は、社会に大きな変化を生んでいく可能性を秘めている。
*1) IoTNEWS小泉耕二 スマートシティにおいて、データ収集は悪なのか? ートロントとサイドウォーク・ラボが失敗したワケ
ZOOM Talk③ 20220621 10:00~10:30
スマートシティ4 (布野→佐藤) 2022 0621
①「都市OS」
「都市OS」というけれど、都市とは何か、都市が具体的に定義されていないのに「都市OS」とは何かというのが当初からの佐藤さんの提起だと思います。IT系の巨大なプラットフォーマーのみならず、携帯電話、交通機関による移動、消費活動、預貯金・・・など人間の活動に関わる世界規模のデータが瞬時に集められ、活用される世界が到来しています。毎日、スマートフォン、パソコンをつなげば、自分自身に関わる情報が飛び込んできます。先日、朝日新聞の記者が、Facebookに自らについての情報開示をもとめたら、どんな記事に「いいね!」を押したかまで膨大な情報が蓄積されていることに驚いたという記事を書いていましたが、Amazonで本を買えばお勧めの本の情報が届きますし、Netflixでドラマや映画を見れば、一押しの映画や音楽が案内されます。科学技術について、Academia.eduという研究者向けの商用Webサイトが立ち上がっています(2008年9月~)。3000万もの論文がアップロードされており、日本語の論文でも自動翻訳で拡散されているらしく、毎日、誰がアクセスしたのかが報告されます。本の企画、論文執筆、レビュー要請も頻繁です。
問題は、このOSを誰が管理運営するのか?ということだと思います。
トロントのスマートシティプロジェクト「IDEA」が頓挫したのはある意味当然だと思います。国家があるいはGAFAのような巨大なプラットフォーマーが特権的にOSを運営するとすれば、とてつもない監視社会が実現すること、既に実現していることは明らかだと思います。
先ごろも中国でコロナ対策と絡んで銀行からの引き落としが出来なくなる事態が引き起こされましたが、国家主義(権威主義)的社会は、既に、「国家OS」を実現していると思います。科学技術安保といいますが、Academia.eduをみていると、随分と能天気だとは思います(実に便利です)。
「都市OS」を本気で考えるとすれば、『都市の論理』に遡って、都市の自治を考えることになると思います。わが政府が、スマートシティ、デジタル田園都市構想といいながら、マイナンバーカードの普及、保険証や銀行口座との紐づけ、それ以前の20万人のデジタル技術者の育成と地方派遣のレヴェルにとどまっているのは情けない限りです。
②「ソサイアティ5.0」&「デジタル田園都市」
前安部・菅政権は、SDGs(Sustainable Development Goals)、そして、「ソサイアティ5.0」ということを施策の柱としてきました。狩猟社会Society1.0、農耕社会Society2.0、工業社会Society3.0、情報社会Society4.0といった人類がこれまで歩んできた社会に次ぐ第5の新たな社会を、デジタル革新、イノベーションを最大限活用して実現するという意味で「Society
5.0(ソサエティー5.0)」と名付けた、といいます。
情報社会の到来ははっきりしていて、1990年がその閾になることも、2①で確認したように実感できます。1990年代初頭は、ロシア革命(1917)による社会主義世界の実現の試みが失敗した世界史的大転換の区切りでもあります。しかし、Society5.0が何かはわかりません。自動運転やドローン・タクシ、AIの世界がSociety5.0、すなわち「鉄腕アトム」の世界かもしれませんが、情報、メタバースだけでは食べていけません。
それに対して、SDGsは、それなりに考えられた指針だと思っています。ただ17の世界的目標、169の達成基準、232の指標は多すぎますし、Developmentという概念はもう放棄した方がいいのではと思います。
EvolutionではなくInvolution(内向進化)という概念に可能性を抱いてきています布野修司(1991)(『カンポンの世界』、布野修司(2021)『スラバヤーコスモスとしてのカンポン』)。
③定住革命と都市革命
「日本でも世界でもスマートシティというものが大きな話題になっている今、都市とは何か、を語ることが、布野さんに求められているように思います。」(3②)と言われるとちょっと構えますが、採集狩猟社会→農耕社会→工業社会→ →という流れで整理するより、定住革命・農耕革命→都市革命→産業革命→ (近代建築革命(高層建築革命))→ ?という流れで理解した方がいいと思っています(理解しています)。
通常は、農耕革命(ドメスティケーション(栽培化・家畜化))→定住革命と理解されていますが、定住革命が農耕革命に先立つという説もあります。日本の縄文時代のように食糧が豊富であれば移動の必要はないわけです。採集狩猟のその日暮らしは疲れるわけで、人類はその能力を失ってきたという主張もあります。
そして、農耕革命によって、食糧生産に従事しない、支配者層、神官、職人が成立します。それが都市の成立ということです。4大都市文明の成立をめぐっては省略します。藤田弘夫(1993)『都市の論理 権力はなぜ都市を必要とするか』は、都市は農村の搾取によって成立したとしますが、都市は後背の農村との一定の関係で成立するわけです。また、地域で調達できない物資(黒曜石、金、奢侈材・・・)について遠距離交易が不可欠です。都市はヒューマン・ウエブ(人と人の結びつき)のネットワークの結節点でもあります。
定住化以降 馬、駱駝、船、自動車、飛行機・・・といった交通革命の未来を考える必要があります。
「雇用、環境、住居、モビリティ、データ活用といった項目でスマートシティのプランは語られていきます。モビリティも大きな要素なので、ジョルダンも頑張れる領域でもあります。もっとも、ここでのモビリティは、LTRの拡張のみならず、信号コントロール、貨物の配送と廃棄物の収集、歩行者等の概念が盛り込まれています(3②)。」について、もう少し説明ください。
都市と農村の関係が根底から崩壊するのが産業革命です。並行して、西欧列強のアジア、アフリカ、アメリカの植民地化が開始するわけですが、食糧に限らす、世界中から物資が調達される世界となります。
ロシアのウクライナ侵攻によって、ウッドショック、半導体不足、小麦不足・・・など、あらためて、世界のサプライチェーンを認識させるところです。
④[UBER]&[RIDE SHARING]
UBERについては、僕はインドで体験しました。2016年です。就業構造によると思いますが、タクシー運転手の層は厚く、えらく便利だと思いました。中国でも同様のシステムがそれ以前からあり、随分便利になったと思いました。しかし、RIDE SHARINGというのは、自電車のシェアを含めてあまり進んでないように思います。何故でしょう?
⑤日本の公共交通―鉄道
明治の鉄道網の開発が日本の産業革命を支えるインフラストラクチャーになったことは多大な功績だったと思います。モータリゼーションの普及以前に鉄道網を完成させたことは、アジアの他の国に先駆けた地位を確立できた理由だと思います。インドネシアにしても、鉄道以前に車社会が到来したために中途半端な整備しかできなかったという問題があります。しかし、一方、鉄道網については、大きく2つ問題があります。ひとつは新幹線、中央リニア新幹線に至るまで、東京一極集中を目的として、それを強化し続けてきたことです。その裏返しの現象が地方の赤字路線の廃止です。ふたつ目は、ひとつ目と同じと言っていいのですが、東京の都市開発と鉄道各社の競合が移動の経路を歪にしていることです。佐藤さんは、「所沢から横浜まで⾏こうとしたとき、⻄武鉄道、副都⼼線、東急電鉄と電⾞は会社の枠を超えて乗り入れている。乗客の利便性を考えてのことだ。こんな素晴らしい国は他にない……。」といいますが、国分寺から横浜に行こうとすると、距離的には近いはずなのに新宿・渋谷周りの方が早いのです。各社はバスで南北をつないできましたが、空間利用の交通ネットワークとしては効率がいいとは言えないと思います。佐藤さんが「ところが、そんな私に、「何かがおかしい」「このままでいいのか」という感覚が、芽⽣えてきたのである。」というのは、これは関係ありますか。
⑥全球都市化
人類の歴史は,地球全体を人工環境化していく歴史です。人口環境すなわち都市です。H.ルフェーブルの『都市革命』(1974)は,人類社会が全て都市社会(都市化率100%)へ向かうことを大きな危機として予言したわけですが,その予言通り,今や人口1000万人を越えるメガシティがここそこに出現し(38都市,2019年),都市化は地球の表面を悉く覆いつつあるかのようです。人類のエクメーネ(居住域)の歴史的形成と変容の過程は,都市とそのネットワークが地球全体をウェブ(蜘蛛の巣)状に覆っていく過程として叙述できるわけで、地球上に居住してきた全人類にGPS(全地球測位システム)が埋め込まれて記録されていたとすれば(Big Data!),エクメーネの空間的変動を動画としてみることができると思います。今、われわれはそうした道具を手に入れているということでしょう。
ワールド・ワイド・ウェブWWWの成長,変化の最も大きな要因となるのは交通手段(ウマ,船,蒸気機関車,蒸気船,自動車,飛行機)であり,情報伝達手段(言語,文字,電信,電話,インターネット)です。また、アーバン・ウェブは,都市間の抗争によってしばしば切断され,また連結される歴史を繰り返してきた、そうした意味では,戦争,軍事技術(武器・武具,二輪戦車,騎馬戦術,火器(大砲),空爆,ミサイル)(そしてかつては築城術も)も大きい、さらに,環境条件の変化,自然災害,飢餓,疫病によって,都市の歴史は大きく変わってきたわけです(マクニール,W.H.・マクニール,J.R.(2015)『世界史 人類の結びつきと相互作用の歴史』Ⅰ,Ⅱ,福岡洋一訳,新潮社)。
稲村哲也・山極壽一・清水展・阿部健一編『レジリエンス人類史』(2022)は、人類誕生の起源に遡って、地球のサステイナビリティを問うものです。次回以降、具体的主張を検討できればと思います。また、ウィルスと人類についても考えたいと思います。
⑦グローバリゼーションと金融資本主義
経済は弱いのですが、弱いというよりわかりませんが、国家を超えた仮想通貨による金融システムを構築できたら面白いと思いましたが、つぶされたようですね?
・・・・
スマートシティ4+ 補足(布野→佐藤) 2022 0702
前回(20220621)、前々回(20220628)、コロナについて話したことを補足します。
⓪「新都市の論理」、「スマートシティ」なるものが前提とすべき「都市とは何か」、目指すべき都市のあり方は何か、というのが佐藤さんの根本的な問いですが、これまで、羽仁五郎の『都市の論理』(1968)藤田弘夫の『都市の論理』(1993)さらに都市を対象とする諸論考が前提としてきた共同体(コミュニティ)としての都市、自治体(コミューン)として都市という理念、そのあり方は果たして現在も有効なのか?という問いでもあるわけですね。
上述のメモ、③定住革命と都市革命、⑥全球都市化、⑦グローバリゼーションと金融資本主義は、やや急ぎすぎたかもしれませんが、都市をめぐる大きく状況が異なってきたことの確認です。
定住革命=農耕革命によって都市が成立するわけですが(都市革命)、その起源において成立した都市と農村の一定の関係(後背の農村が都市へ食糧を供給する)が決定的に分裂するのが産業革命ですね。蒸気機関車、蒸気船、自動車、飛行機・・・・という交通革命が進行し、さらに情報伝達技術ICT革命の時代に至ります(②「ソサイアティ5.0」&「デジタル田園都市」)。
都市は基本的に人と人が結びつくヒューマン・ウエブの結節点に成立してきたのですが、今や、瞬時に世界中の人々と瞬時につながることができるそういう世界が実現しています。
そして、もうひとつ現出してきたのが、全球都市化、メガ・アーバニゼーションの地球全体への拡大です。
要するに、これからの都市のあり方を考えるために、都市の「適正」な規模、その「秩序ある」ネットワークを考える必要がある、それとCovid-19は無縁ではない、ということです。
①都市化=三密化=人口環境化
Covid-19をめぐっては、この間、様々なことが語られてきたのですが、理解したのは以下です。話したように、山中大学さんのレクチャー「Covid-19で顕在化した人間活動偏在による災害・環境リスク」(A-Forum 20200821)が大きな刺激になっています。
Aウイルスと人類
世界はウイルスに満ちている 人のゲノムにもウィルス由来のものがある ウイルスは生物の進化の一環に取り込まれてきた。
ウイルスvirus(ラテン語で毒の意、中国語では病毒)は、一般的に0.1μm(マイクロメーター10-6)程度の大きさの粒子で, 0.5μmで遺伝子数が1000個程度の巨大ウイルスも発見されつつあるが、通常遺伝子の数は100個以下である[1]。
ウイルスは、生物と無生物の両方の特性をもっている。ウイルスは、自ら分裂して増殖する微生物、細菌と異なり、それ自身単独では増殖できず、他の生物の細胞内に感染して初めて増殖可能となる。偏性細胞内寄生性と呼ばれるが、たんぱく質を合成する装置をもたず、宿主の細胞に感染して装置を借用し、増殖に必要なものをつくって外に飛び出す特性をもつ。ウイルスは、自己複製の仕組を内在化しているという意味では生物であるが、代謝も呼吸も自己破壊もない、それ自体では存在できないという意味では無生物である[2]。人の全ゲノム情報は解読されたが(2003)、人の身体をつくるたんぱく質を生み出すのに関わる部分はわずか1.5%で、大半はよくわからない「ジャンク」DNAで、さらに全体の8%はウイルス由来である。
要するに、人類はウィルスとともに生きてきたし、これからも生きていくことになる。ウイルスはあらゆる場所に膨大に存在している。海には膨大な数のウイルスが存在しており、プランクトンを宿主とするウイルスの存在も確認されている。海の中に生息するバクテリアや藻類はウイルス感染による増殖と死滅を繰り返していると考えられる。海から誕生した人の身体にも多くのウイルスが存在している
B 疾病の世界史
病気を引き起こすウイルスは「氷山の一角」であるが、しばしば、世界史に大きなインパクトを与えてきた。マクニール,W.H.(1985)は、Covid-19以前に『疫病と世界史』(佐々木昭夫訳,新潮社(上下,中公文庫,2007)書いている。14世紀にヨーロッパを襲った「黒死病(ペスト)」や16世紀にクリストバル・コロンが新大陸に持ち込んだ梅毒などが知られるが、今日の感染の速度はそうした時代に比べるべくもない。おそらくは中国起源のペスト菌がシルクロードを通じてヨーロッパに伝わるのに1年はかかったのである。コロナ直前には世界人口の2割が移動する流動性の高い世界が現実化していたのである。ウィルスが生物の100万倍の速度で進化、変容することをこの間のCovid-19は示してきた。
悪性ウィルスの出現は、地球全体のある種の調節機能の駆動とみなすことができるかもしれない。
(図 別ファイル)
C 人口密度(ソーシャル・ディスタンス)と感染
都市化は、人と人の結びつきの密度を高くする社会変容である。三密(密集、密閉、密接)化は、まさに都市化、全球都市化、人口環境化(画一化、無国籍化、無季節化)である。
感染者数はビッグ・データとして、都市の密度の指標となっている。日本の都道府県の感染者数の推移は、人口密度と人の移動の結果を示してきた。
東京、ジャカルタ、ニューヨークは人口規模はほぼ同じような感染動向を示す。ロックダウンなどの行動規制は、人口密度を減らすことに他ならない。満員電車で通勤する際には、毎日超過密状態を一定時間経験するということである。
D 幕藩体制モデル? 地域の生態系に基づく都市
地域単位としては江戸時代の「藩」がベースになる(山中大学)。
都市の分散:地方分権、施設・専門家・人材の分散
都市空間の分節。
スマートシティ5 (佐藤→布野) 2022 0627
布野さんから、いくつかの問いが投げかけられているので、それに答えながら、説明不足なところを補っていこうと思います。
>もっとも、ここでのモビリティは、LTRの拡張のみならず、信号コントロール、貨物の
>配送と廃棄物の収集、歩行者等の概念が盛り込まれています(3②)。」について、もう少>し説明ください。
「モビリティ」という言葉の使い方が曖昧でした。移動に関しては、「歩行者ファースト」の歩きやすい道をデザインし、隣接地域との接続性も考えた、ライトレールトランジット(LRT)と呼ばれる鉄道のような移動手段を提供するとしていました。自家用車の利用は認められず、基本的に歩くか自転車に乗る必要があります。遠くへの移動に関しては公共交通機関を使う必要があるのです。
しかし、都市の機能を維持するためには、町中のありとあらゆる取得可能なデータを取得して、都市生活を最適化することを考えました。交通の流れや騒音レベル、大気汚染、エネルギー使用量、ゴミの排出量などありとあらゆるデータです。
誰が、どこで、どういうことをしたか、道を渡るのに何分待ったか、といったことまで収集することを考えました。
AIカメラを使うと、街の様子も可視化することができるようになる。例えば、新しい遊具が公園に設置されたとして、それを多くの人が楽しく使っているか、といったことや、街角にできた新しい案内板が多くの人にとって必要な情報を提供できているか、などさまざまなこともわかるようになるはずです。
Googleの兄弟会社、サイドウォーク・ラボが、トロントで未来型の街、いわゆるスマートシティで考えたことです。
>距離的には近いはずなのに新宿・渋谷周りの方が早いのです。各社はバスで南北をつな>いできましたが、空間利用の交通ネットワークとしては効率がいいとは言えないと思い>ます。佐藤さんが「ところが、そんな私に、「何かがおかしい」「このままでいいのか」>という感覚が、芽⽣えてきたのである。」というのは、これは関係ありますか。
乗換案内の開発を始めたころ、会社、路線、駅という大きなくくりを考え、データを収集していったことを覚えています。最初は、「東京乗換案内」というタイトルで、首都圏の鉄道の2つの駅を指定して、ルートと料金を表示しました。駅名を入力するのは大変なので、シンボリックなマップを表示し、大体のエリアをクリックすると、路線名のリストが現れ、該当の路線をクリックすると今度は駅名のリストが現れるようにしました。マウスだけで動かせる、という操作性が良かったのでしょう、乗換案内は注目されました。
全国の鉄道駅を網羅し、次いで特急、新幹線の時刻表を、さらに全国全駅の時刻表を搭載していきました。コンピュータの心臓ともいえるインテルのCPUが、8086、80286,80386、80486、ペンティアムと進化していった頃です。機能を拡張し続けた乗換案内は、コンピュータメーカーに喜ばれました。ひとつ前のパソコンでは時間がかかるのが、新しいのでは、あっという間に結果が出てくる。乗換案内は、コンピュータにバンドルされ、なくてはならないソフトとなっていきました。
所沢から横浜までの例で、電⾞は会社の枠を超えて乗り入れていると讃えましたが、実は時刻表を搭載するようになったとき、開発の現場では大きな問題が発生したのです。「会社>路線>駅」という概念が、運行を考えたとき、路線が会社の上位にきたのです。システム屋の私としては、何と素晴らしいことと感激したのを覚えています。
布野さんの言うように、東京では、鉄道で東西、バスで南北をつないできましたので、空間利用の交通ネットワークとしては効率がいいとは言えないのです。ただ、かつての私は、路線が会社の上位にきていることをユーザー本位と思っていたのです。
私に、「何かがおかしい」「このままでいいのか」という感覚が、芽⽣えてきたのは、ライドシェアが、“蟻の軍団”よろしく公共交通に代替しうるような利便性の高いサービスを提供し始めたからです。
そうこうしている間に、フィンランドのMaaS Global社です。今度は、スマートフォンで、電車、バス、タクシー、レンタカー、レンタサイクルを利用した経路が表示され、決済までしながら、さらに定額で乗り放題までです。MaaSの登場です。
素晴らしいと思ってきた日本の公共交通も、これまでに作られてきたルールをひたすら守っているのが今日です。老人が増え、人口は減少し始めています。地方の鉄道は次々と廃線になっています。コロナウィルスの影響で、廃業に追い込まれたタクシー会社も多く、ドライバーも高齢化しています。高齢者の事故もよく報じられ、運転免許証の返納が話題にされています。地方に住んでいて車が移動の手段だとしたら、今の状態で免許を返納すれば、移動のすべを失います。
結局は、都市問題なのでしょう。
学生時代に戻ります。我々が学生の頃、羽仁五郎の「都市の論理」という本が流行っていました。東京都知事、美濃部亮吉が圧倒的な都民の支持を集めていた頃の思想的バックボーンだったことのような気がしています。
交際していた女子学生と次のデートの約束を取り付けようと、10円玉を何個も握りながら公衆電話まで行き、親の不在を期待しながら自宅に電話をかけた頃の話のことです。あの頃の情報通信環境は、今とは比べものになりません。今の時代にもこの本は有効なのでしょうか。
さらにこの二年余、私たちは、コロナウィルスの脅威に晒され続けました。二年前の1月、プリンセスダイヤモンド号で新型コロナウィルスの患者が発生し、客船は横浜港の沖に停泊し続け、続々と感染者が増えていったことを覚えています。
プリンセスダイヤモンド号を縦に立てたらタワーマンションでないか、とゾッとしたことを覚えています。タワマンが立ち並ぶ近代都市は、疫病に全く無防備ではないのか。突如登場した新型コロナウィルスは、とんでもない問題提起を私たちにしているのではないか、そんな思いにとらわれています。
また、布野さんの話に出てきた
>「スラバヤ・エコハウス」
とは、何なのでしょう。
>「農業システムと同じように、近代都市にも今「介入」を行えばレジリエントで地域の個>性が反映された都市システムにすることができる」
これは、移動とはどう関わってくるのでしょう。
ZOOM Talk④ 20220628 10:00~10:30
スマートシティ6 布野→佐藤) 2022 0704
ちょっと行き違いがありました。スマートシティ5を受け取ってない気がします。それはともかく、都市を考える上では、都市ネットワークを考えるのは当然です。そもそも、都市の成立には希少物質の入手のために遠距離交易が不可欠であり、交易拠点であることが都市成立のひとつの根拠です(市場起源説)。そして都市ネットワーク交通と都市内交通の2つが問題になりますが、馬、駱駝、船の世界では、都市内交通は徒歩圏、せいぜい馬車の世界でした。問題は、蒸気機関車、自動車、飛行機の出現以降です。
①Tramと車社会
都市内移動を考える場合、LRTというのは公共交通システムとして賢明な選択であり、脱石化燃料を考えれば、その復活は当然だと思います。ヨーロッパでTramが生きているのは(NHKエンタープライズがTram紀行のような番組をつくっていますが)、モータリゼーション以前に、交通システムが完成したからだと思います。日本では、京都など取り入れてきましたが、東京の荒川線?、広島、高知・・・ほかに維持している都市があるでしょうか?LRT復活、自動運転、免許返上、交通体系の再編成は「新都市の論理」の大きなテーマです。アメリカ型の車社会になって、書店も、レストランも郊外化し、中心が空洞化してきたのが日本の地方都市ですね。
②都市OS&Big Data
都市のありとあらゆる取得可能なデータ(交通の流れや騒音レベル、大気汚染、エネルギー使用量、ゴミの排出量・・)を取得して、都市生活を最適化すること、これは都市自治体がやるべき基本方針だと思います。誰が、どこで、どういうことをしたか、道を渡るのに何分待ったか、といったことまで収集すること、AIカメラを使うと、街の様子も可視化することができるようになる、新しい遊具が公園に設置されたとして、それを多くの人が楽しく使っているか、といったことや、街角にできた新しい案内板が多くの人にとって必要な情報を提供できているか、などさまざまなこともわかるようになる、これは既に実現可能な未来です。問題は、このデータがオープンにして、合意形成できるかどうかだと思います。Maasを都市内交通で実現することは、コミュニティ・バス、ライド・シェアリングさらに自動運転で早晩実現に向かうのではないでしょうか(財政的問題については?)。Maas Globalに向けては、乗り越えがたい壁が幾重にもあるような気がします。
③羽仁五郎『都市の論理』
羽仁五郎の本については当時読みました。100万部売れたそうです。美濃部都政、蜷川京都府政、飛鳥田横浜市政など革新自治体誕生の流れの中で、大きな力を持ったと思います。
その後、書棚にあった『都市の論理』を手に取る機会があったのですが、ちょっとピント来ないと思った記憶があります。東南アジアの都市を歩き始めていたからだと思います。佐藤さんに言われて、アマゾンで文庫本を取り寄せ、読み直ししたのですが、「日本のコンミュニティの問題」というのは、筋だと再確認しています。羽仁五郎がモデルにしたのは西欧流のコミューン(コムーネ)であり、「自由都市」の理念です。都市の武装、警察権の強化(獲得)も主張しています。一方、日本の地方自治体はその財政基盤を中央政府に牛耳られ、3割自治体の実態に甘んじてきています。「新都市の論理」を再構築する大きな意義があると思います。
④プリンセスダイヤモンド号とタワーマンション
プリンセスダイヤモンド号を縦に立てたらタワーマンションというのは全くその通り。若干の補足をスマートシティ4+ 補足(布野→佐藤) 2022 0702にしました。都市の規模と自治、そして都市ネットワークは「新都市の論理」の中心的テーマになると思います。
⑤スラバヤ・エコハウス
「スラバヤ・エコハウス」が具体的にどういうものかは、『スラバヤ』に書いています。
基本的には、パッシブシステムといいますが、冷暖房(アクティブシステム)を使わない住居の提案です。さらに、エネルギー、食糧など自給自足する住居(オートノマス・ハウス)を世界中の建築家が提案しています。それが如何に可能か、都市全体で可能かというのが、「新都市の論理」で問われると思います。
⑥『レジリエンス人類史』と移動
『レジリエンス人類史』については、つい先ほど、『図書新聞』の読書アンケートに原稿を送ったのですが、「わが国を代表する知性たちによる人類と地球の歴史とその未来についての論考である。全体は25章からなるが、もとより単なる論集ではない。徹底した議論が基になっており(QRコードでその総合討論・座談会も読むことができる)、人類史を5つのPhaseに分け、主概念レジリエンス(危機を生きぬく知)について3つのキー・コンセプトが立てられている。「人新世」の転換を展望するのはPhaseⅤの5本の論考である。」というのが概要です。
移動という点については、むしろ、移動が人類の歴史にとって大きかったという論考が少なくありません(「第13章 遊牧社会の特性を活かす」など)。しかし、直接的な異文化交流よりもネット社会を前提にしながら、地域と地球をどうつなぐかを問題にしているように思います(第25章 再び地に足を付け地球を思う ヴァナキュラー・グローバリゼーション)。ジャンボ機で大量にツーリストを移動させるシステムも再考の要があるかもしれません。ヨーロッパでは飛行機を使わない動きも起こっています。ICTがコミュニケーション・トゥールとしてカヴァーできる領域も拡大していくでしょう。
対面の世界とメタバースの世界をどう位置づけるかは「新都市の論理」の大きなテーマですね。
ZOOM Talk⑤ 20220705 10:00~10:30
スマートシティ7 (佐藤→布野) 2022 0711
>対面の世界とメタバースの世界をどう位置づけるか
布野さんの前項は、この言葉で終わっています。そう言えば始めの頃の
>インターネットの次は、移動に焦点が当たり、その先のスマートシティという視点から全体が見直され始めている(スマートシティ1④)
という私の言葉に、布野さんは、
>インターネット(メタバース)によって世界中が緊密につながる一方、空間的には分散して居住する、そんな世界が想定されているのでしょうか?(スマートシティ2④)
と答えています。
布野さんの頭の中では、未来を対面の世界とメタバースの世界から見ている、ということなのでしょう。私もそこはそうなのですが、ただひとつこの間やたら気になっていることがあります。シングラリティです。AIが進み、2045年にはコンピュータが人間の脳を超えるというレイ・カーツワイル(Ray Kurzweil)の予想です。
布野さんと違って、駒場の頃、私はろくに勉強もしないで、本郷で化学工学科に進学しました。そこで核融合のための膜の勉強をしたりするのですが、なぜ核融合なのかというと、もうじき石油はなくなる。早く次のエネルギー源を見つけないと偉いことになる、というのが1970年頃の認識です。
石油を巡っては、オイルショックとかいろいろなことが起こりました。現役の通産官僚の堺屋太一が「油断」を出版し、話題になったりもしました。「油断」をきっかけに、堺屋太一の本は発売されるとすぐ読みました。世の中の価値観は、実は経済構造の支配下にある。ものをどんどん購入し使い捨てる当時の生活は、やがて石油がなくなり、ものを大事にする時代がくる、と堺屋太一が言っていたのをよく覚えています。
年功序列という当時の会社のスタイルも単に若い社員が多いからにすぎなく、そんなものはベビーブームの社員が多い間のことだけ、とかいろいろ書いていました。堺屋太一から学んだことと、学生時代にコンピュータに出会い、これはすごい。世の中が変わる、と思いこんだことが、私がまともな就職をしなかったことにつながっていきます。
ほどなく無くなるはずの石油は、新しい油田の開発や採掘技術の進歩でその後もふんだんに供給され続けました。世の中はますます派手になります。モータリゼーションは進み、新幹線網は整備され、誰もが海外に出かける時代になります。それでも資源は有限ですからこんなことがいつまでも続くわけはない。そう思っていました。
凄まじい勢いでコンピュータが進化し、通信もまたどんどん進む。その現実を見るにつけ私の頭の中にはある未来図が浮かび始めました。やがてエネルギーがなくなり、人は華奢な生活をやめ、敬虔な考える時代が来る。新幹線で街がつながり・・。会社を設立して、月に一度全体会議という全社員が集まる会議を開いていましたが、そこで私は「2020年の予測」を全社員の前で何回か話しました。「ハイテク中世」という言葉をよく言いました。
いつの間にか、2020年に近づいてきました。ところが世の中はさらに豪奢になっていくだけです。完全に外れた、と思っていたら、SDGsが言われ始め、いきなりコロナです。テレワークです。もちろん、私のは勘のようなもので、論理的な裏付けはありません。
石油から始まった世の中の変化は、やはりそうだったのだ、と思いますが、実はもう一つ、今度は予想が全く外れたものがあります。それがコンピュータの進歩です。2015年、囲碁の世界チャンピオンのイセドルがGoogle傘下にある人工知能研究所DeepMindが開発したAlphaGo(アルファ碁)と対戦、負けてしまいます。私の目の黒いうちに囲碁でコンピュータが人間に勝つことはありえない。私はそう断言していたのです。
この間のコンピュータと通信の発展は異常です。科学技術的には次のようになる。コンピュータの基礎となる集積回路上のトランジスタ数は2年で2倍になる(ムーアの法則)。性能が2年で2倍、価格は2年で1/2である。つまり性能価格比は、1年で2倍という状況が1960年代から継続しているのである。通信に関しては、アメリカの経済学者ジョージ・ギルダーは、2000年に「通信網の帯域幅は6ヶ月で2倍になる」というギルダーの法則を提唱する。実際にはそのスピードからするとかなり落ちるが、これもまた1年で2倍くらいの性能価格比が継続しているのである。
1年で2倍というのは、10年で1000倍、20年で100万倍、30年で10億倍、指数関数的な異常さである。現に今や誰もが持っているiPhoneも50年前、東大計算機センターにあった日本で最高のコンピューター以上の性能である。まさに異常とも言えるICTのとどまらない進展に合わせ、AIが進化しています。その先がシングラリティです。
リアルとヴァーチャルで未来を、という前に、この現実をきちんと把握しておかないと大変なことになる。私の勘です。
スマートシティ8 (布野→佐藤) 2022 0712
佐藤さん、これまでのやりとりをつなぎ合わせるのは、発言のダブりをチェックするためで他意はありません。PCで作業をするので、図表入りで一冊分Wordで書くのは容量的に不自由はほとんどない状況です。佐藤さんは、自由に提起してもらえばいいと思います。
①スマートシティをめぐって、まず、その柱とされているディジタル社会の究極的なあり方とは何か(Society 5.0?メタバース?)がテーマになります。
そこで、シンギュラリティ、2045年にはコンピュータが人間の脳を超えるというレイ・カーツワイル(Ray
Kurzweil1948年2月12日~ )の予想ですが、正直に言えば、初めて聞きました。慌ててネットで調べると、ほぼ同世代のようですね。スティービーワンダーとシンセサイザーを開発したというので、なんとなくシンパシーを感じます。レイ・カーツワイルはAIが人間を超えたらどういう世界になると考えているんでしょうか?シンギュラリティとは何か、説明してもらえますか?
つい先日、朝日新聞で「サラダ記念日」で著名になった俵万智にAIがつくった短歌を評価する記事を読みましたが、文学、詩、音楽、絵画・・・などアート(芸術)と言われる分野でAIが人間を超えるということはないんじゃないでしょうか?
先週、熱海のガストでロボットが注文を運んでくるという話が出ましたが、味気ないんじゃないかと思いましたが、我々が食べるものはロボットがつくったのと既に同じですね。中国でラーメンを頼むときに、こうこうこういう味でというと、ロボットがつくるそんな店ができているというニュースをTVでみました。
佐藤さんは、私の目の黒いうちに囲碁でコンピュータが人間に勝つことはありえないと断言していたけれど、囲碁の名人が、人工知能研究所DeepMindが開発したAlphaGo(アルファ碁)と対戦、負けてしまったといいますが、名人が絶対負けるということであれば、囲碁はなくなるんじゃないでしょうか?ジョルダンを一緒に創業した本田さんは囲碁のアプリを開発したと先日聞きましたが、人間がゲームをするから意味があるんじゃないでしょうか?将棋は僕はやりませんが、最近よく観戦します。AIの判断と棋士の判断はやはり違います。AIの限界をむしろ強く認識します。AIは最終勝利のための直線的な勝利の手を指しますが、人間が限られた時間でそれを読むのは不可能なのです。
② 堺屋太一の『油断!』が出たのは1975年で、第一次オイルショック(1973年末)直後です。堺屋太一は、その直前の大阪万博(1970)に関わった通産官僚として、建築界では知られています。僕も晩年会ったことがあります。佐藤さんも僕も同学年ですから、1973年のオイルショックで、東大出身といっても就職口がまったくなくなります。1972年卒は4月にずれ込みますが、まともな会社に就職することを考えるまで、ギャアギャア言っていたら、大学院に行き、博士課程にいく羽目になったのは、佐藤さんとあんまり変わらないと思います。43S15Bのみんなに昔話を聞いて、みんなそれぞれ頑張っていきてきたんだなあ、と確認してきました。
スマートシティ論のもう一つの柱になるのはエネルギーだと思います。実は、スラバヤ・エコハウスの原点は、第一次オイルショックにあります。
③核融合、原発の問題については、佐藤さんも覚えていると思いますが、「第三の火」ということを教科書で教えられました。被爆国で何人も命を落としたわけですが、核融合、原子力によるエネルギーには「いい火」と「悪い火」がある、平和利用すべきだと刷り込まれたわけです。事後、勉強したところによると、原子力発電の推進には巨大な思惑が働いていたと思います。スリーマイル原発事故が1979年、チェルノブイリ原発事故が1986年です。広瀬隆の「東京に原発を!」が出たのが1981年です。槌田敦の『石油と原子力に未来はあるか 資源物理の考え方』が1989年ですね。原発は石油の缶詰というのは事実ではないでしょうか?槌田さんはその後CO2地球温暖化を批判したりしますが、当時、直接話を聞いたりしました。
「フクシマ」を経験して、人間が制御できない技術は使うべきではない、廃棄物処理に10万年を要する技術は用いない、というのが僕の意見です。
④石化燃料、石化素材については、地球温暖化の問題が最終的に確認されたことにおいてOUT!だと思います。しかし、代替素材の開発は容易ではないかもしれませんね。
「ハイテク中世」、直感的にOK、素晴らしいと思います。「新都市の論理」に使えそうな気がします。
⑤この間のコンピュータと通信の発展は異常です、というのは、正直に言うと、あんまりピントきません。AIが進化していくとシンギュラリティ(技術的特異点)に至る、すなわち、AIが人間の人間たる根拠である能力を、人間が作り出した何者か、すなわちAIが凌駕する世界が実現するというのは、佐藤さんほどリアルにイメージできません。是非、議論を深化させましょう。
先週、話題にした、KDDI, a+uのネットワーク遮断についても整理しておいた方がいいと思います。システムは多重のバックアップシステムが必要ではないか?、AIにそこまで期待できるのか?
ZOOM Talk⑥ 20220712 10:00~10:30
スマートシティ9 (佐藤→布野) 2022 0716
シンギュラリティとは、「人工知能(AI)」が人類の知能を超えるときのことです。アメリカの人工知能研究のレイ・カーツワイルが2005年の著書で、2045年には人間の脳とAIの能力が逆転するシンギュラリティに到達すると提唱しています。
「ムーアの法則」の、コンピュータの性能価格比は、1年で2倍という状況が1960年代から継続しています。2020年ごろには限界とも言われてきましたが、昨今は量子コンピュータが注目されていて、まだまだ続きそうなのです。
アルファー碁のことを話しましたが、2015年に世界チャンピオンのイセドルを破った後、今度はコンピュータどうしでの対戦を繰り返し、さらに強くなっていきます。2017年5月、世界レーティング1位の柯潔が人類の「最後の砦」として対戦します。しかし、この対戦もコンピュータの3戦全勝、以後、DeepMind社は人間との対戦をやめ、新たなバージョンとなるAlphaGo Zeroを開発、一旦は開発を終了させます。
布野さんの言うように、
>名人が絶対負けるということであれば、囲碁はなくなるんじゃないでしょうか?
私は、囲碁に対する熱は冷めてしまいました。会社を始めてからは殆ど囲碁はしなくなっていますが。
将棋も囲碁よりも早く、コンピュータが人間を超えたように思います。しかし、将棋では最年少の藤井聡太が中学生で四段に昇格後、タイトルを獲得、勝ち続けています。コンピュータ将棋で学習しているようですが、こちらは人気が沸騰しています。所詮、人間はコンピュータには勝てないのだから、そこは気にしない、というようになってきている感じがします。
AIが人間の知能を超えたとき、そこからがコンピュータは早いのです。またも1年で2倍です。10年もしたら人間よりも1000倍賢いのです。そのときのコンピュータは、人類のしもべなのか、仲間なのか、あるいは人類を統治する神なのか、さまざまな議論がなされています。
不用意にシングラリティという言葉を持ち出してしまったような気がしています。あまり究極の未来の話を持ち出すと収拾がつかなくなりそうです。とりあえず今は、コンピュータは凄まじい勢いで進化し続けている、ということを確認しておくことにとどめましょう。その一例として囲碁の話を出しました。あり得ないと思ったAIの進化が起こっている、ということです。
エネルギーは枯渇しつつある、ということに戻りましょう。
>実は、スラバヤ・エコハウスの原点は、第一次オイルショックにあります。
頂いた布野さんの本に詳しく書かれているのかも知れませんが、スマートシティを考える上で、そこにつながる視点で教えてもらえると助かります。
コロナ禍、私たちの生活は大分変わりました。テレワークが当たり前になってきました。テレビ会議にも慣れてきました。もちろん、まだ、フェイス
ツー フェイスが一番です。重要な初対面の人と会うときには、私は直接会います。それでも、例えば沖縄まで出張しなくてはいけない、といったとき、顔見知りの人たちとの東京の会議にはテレビ会議で沖縄から参加する、といったことが可能になりました。
微妙な表情の変化が読めない、といった今現在の不満も、ICT技術の進歩で、じき、等身大の相手がホログラム上で目の前に現れる、ということが可能になると思われます。私はまだ体験していませんが、ゴーグルをつけてテレビ会議に参加している人の話では、全く感覚が異なる。リアルな会議のように思えるということです。ICT技術の発展は、人の移動を減らすことになる、ということです。
ゲームの世界では、自分のアバターで参加することが一般的ですが、アバターのファッションに、例えばグッチのデジタルなブランド品を購入する、ということも始まっています。コロナで外出せずに部屋に閉じ籠り、ネットで何時間もゲームをしている。ゲームで稼いだお金で、宅配で食べ物が届く、といったことも始まっています。しかし、宅配で食べ物が届くというのは、ある程度の規模の街ではないと難しい話です。
バーチャルな世界とリアルな世界、これがどう関わってくるのか、これも押さえておかなければならない大事なことのように思います。
スマートシティ10 (布野→佐藤) 2022 0718, 0722
シンギュラリティ、AIが人間の知能を超えたとき、それは人類のしもべなのか、仲間なのか、あるいは人類を統治する神なのか、についてもう少し考えてみたい気がしますが、しばらく置きましょう。基本的に、AIもトゥールだと素朴に思っていますが、ユヴァル・ノア・ハラリ『ホモ・デウス テクノロジーとサピエンスの未来』は、最後に「第3部 ホモ・サピエンスによる制御が不能になる」と言っています。佐藤さんの直感もハラリに近いんだろうと思います。自動運転など、ロボットが人間のやる仕事をはるかにうまくやることは具体化されつつありますし、意識をもたないアルゴリズムがパターン認識で人間の意識を凌ぐのも近いかもしれません。佐藤さんによれば、シンギュラリティに達したら一気に加速するということですね。
スラバヤ・エコハウスについて、具体的に説明します。
基本的に石化エネルギー、原子力エネルギーに依存しない住居を目指すということですが、その集合体、エコ・ヴィレッジ、エコ・シティ(スマート・シティ?)について、具体的に検討したことはありません。
ウクライナ戦争もあり、これを機会に、エネルギー需給の問題をグローバルに考えてみる必要があると思います。
2022 0722
スラバヤ・エコハウスについては0719の説明でおよそ理解していただいたと思います。メモのために画像を貼りつけておきます。
エコハウスEco Houseは、一般的に、カーボン・フットプリント(二酸化炭素排出量)、エネルギー使用、環境への負荷を削減する住居をいうわけですが、それだけでは、何の定義にもなっていません。具体的には、太陽光発電、風力発電、地熱発電など再生可能エネルギー利用、屋根面・壁面緑化、空気層を挟んだ2重ガラス窓による遮熱、断熱、・・・野菜栽培など様々な要素技術、総称すればパッシブ・テクノロジーを用いていればエコハウスというわけですが、スラバヤ・エコハウスもその類です。考えられる要素技術を可能なかぎり盛り込んだものと考えてください。
全ての生産物、排出物を二酸化炭素排出量に換算するカーボン・フットプリントは評価基準、達成目標として一般的に認められていると思いますが、理論的には、いくつかの重要な概念があります。そのひとつがオートノマス・ハウス(ビル)完全自立住居です。すなわち、全ての公的インフラストラクチャーから独立した住居をいいます。
オフ・ザ・グリッドあるいはオフ・グリッドという概念がその基本概念になります。
グリッドとは,一般に、少なくとも建築都市計画の分野では,格子(状のもの),方眼(状のもの)をいいます。グリッドアイアンgridironというと,肉や魚を焼く格子状の金網ですね。メッシュ(網目)という言葉もありますが、格子状,碁盤目(チェス盤)状,方格状の街路体系をとる都市をグリッド都市と呼んで、世界中のグリッド・パターンの都市(スペイン植民都市がその代表です)についての本も書いています(布野修司・ヒメネス・ベルデホ,ホアン・ラモン:グリッド都市ースペイン植民都市の起源,形成,変容,転生,京都大学学術出版会,2013年)。
しかし、グリッドという概念は,一般には拡張して用いられますね。拡張というか、一般的な定義としては、多様体や2次元表面を一連の小さなセル(細胞)で充填し,セル単位に識別子を付け,インデックスに利用するひとつのシステムがグリッドですね。
地球全体の表面を覆うようなグリッドは、グローバル・グリッドと呼ばれるわけですが、要するに,グリッドとは世界を覆う空間システムをいうわけです。
ここでいう、すなわち、オフ・ザ・グリッドという場合のグリッドは、電力系統、送電網を言うわけです。そして、なんと、そこで議論され提起されるのがスマートグリッドという次世代送電システムなのです。
しかし、オフ・グリッドという場合、全体システムをどう構築するかは不明です。これについてはさらに考えたいと思います。
ZOOM Talk⑥ 20220719 10:00~10:30
スマートシティ11 (佐藤→布野) 2022 0727
スマートグリッドについては、不案内ですので、慌ててネットで調べ始めました。サウジアラビアで巨大スマートシティ「NEOM」の計画が進んでいること。ビル・ゲイツが、スマートシティ・ベルモントを作るため、アリゾナ州バックアイの郊外にある土地を購入したこと。コペンハーゲンが世界一のスマートシティとも言われていること等。いろいろ面白いことが起こっているのですね。
トヨタの未来都市「ウーブン・シティ」については知っていましたが、サウジアラビアの「NEOM」はもっとスケールが大きい先端技術を駆使した実験都市ですね。しかし、何も無いところに新しい都市を作る。発想は素晴らしいのですが、どうも私には馴染めません。確かに何も無いところに新しいものを作るというのは、アメリカ的発想からすると普通のことのようにも思います。始めは何も無かったからできたのでしょう。今はそうは言っても500年くらいの歴史があるわけです。ニューヨークは捨てよう、と決めても、そう簡単にいくのでしょうか。
ビルゲイツの土地購入は、たった1万ヘクタールです。東大の駒場と本郷を合わせたくらいではないですか。街ではなく砂漠です。世界一のお金持ちにしては、つましいです。これはスマートシティの対象外です。
サウジアラビアの「N E O M」も壮大な実験だとは思いますが、本当に人が喜んで住む街ができるのでしょうか。いろいろなトライがされていくのでしょうが、多分、コスト的に割が合わないような気がします。
コペンハーゲンは、これまでの街をいかしつつ、IOTをフルに活用して頑張っている。好感は持てます。どんな街でもこのくらいはできる、という例なのでしょう。これだけでなく、世界中のいろいろなところでさまざまなトライアルがされているのでしょうが、これからのスマートシティ、コンパクトシティということを考えたとき、まず、都市とは何なのか、人間とは何なのか、そこから始めるべきなのではと思います。その上で、エネルギーは大丈夫なのか、感染症には強いのかといった要素を加味し、最新のICT、IOT技術を盛り込んでいく、そういうことのような気がします。
私は、このゴミゴミした東京が好きです。都市の空気は自由にする。大学入学とともに福島から東京に出てきたとき、毎日が楽しくて仕方ありませんでした。毎日がお祭りです。そんなレターを出した記憶があります。
それから50年余、ずいぶん長く住み続けました。飯はうまいし、仲間はいるし、移動も便利だし、できればこのまま住み続けたい、そう考えています。階段の昇り降りがしんどくなったカミさんのこともあり、上野の近くのマンションに越したら、今度は徳川の跡地です。徳川慶喜の墓もある。不忍池の隣には、蓮池があり、今は蓮の花が満開です。
東京には東京の良さがあるし、地方には地方の良さがある。ただ、だんだん我々の足腰も弱ってくるので、移動を何とかしたい。我々の提供している乗換案内は、そこまで拡張できないか、そう思って、MaaS、スマートシティと範囲を拡大し始めています。
スラバヤ・エコハウスの話を聞き、エネルギー消費量が半分以下、ということに驚きました。砂漠に新しい都市を作るのには、どのくらいコストがかかるのでしょうか。過去とつながっている今の都市のリノベーションでどうにかなるのではないでしょうか。
ZOOM Talk⑦ 20220728 10:00~10:30
スマートシティ12(布野→佐藤)2022 0730
佐藤さん 7月28日に話そうとしたことを補足します。
エコハウスとは何か、ということで、理念的には、オートノマス・ハウス(完全自立住居)そしてオフ・グリッドというのがキー・コンセプトだとまず書きました。問題は、それが如何に可能か?全体システムはどう計画されるか?ということになります。
如何に可能か?については、小規模な範囲で、自給自足を行う、自力発電を行うことはもちろん可能ですね。かつてはそういう生活をしてきたからです。これは原始的な生活に戻るのか!ということになるのですが、一定の資産があり、Wifiがつながり、アマゾンで必要なものが配送されるのであれば、自然の中で暮らせることになります。
佐藤さんが調べてくれた、サウジアラビアの巨大スマートシティ「NEOM」の計画が、ビル・ゲイツが、スマートシティ・ベルモントは、要するにオフ・グリッドになっても生活していける環境を確保しておこうとことです。地球が滅んでも自分たちは生き延びようということです。
最後に、佐藤さんが「砂漠に新しい都市を作るのには、どのくらいコストがかかるのでしょうか。」と書いていますが、実際に、アリゾナに「アーコサンティ」というエコシティをつくり続けたパオロ・ソレリという建築家がいます。1982年に学生を連れて行ったのですが、今どうなっているか知りたくなりました。今ネットを調べると続いているようです。
アルコサンティ|世界初のアークロジープロトタイプ&アーバンラボラトリー (arcosanti.org)
モデルになるのは佐藤さんが言うようにコペンハーゲンではないでしょうか?これはじっくり調べてみる必要がありますね。
都市とは何か、というのは、「新都市の論理」で予め議論が必要ですね。
思いついたので、『世界都市史事典』の序論を送りました。
まず、日本語の「都市」が翻訳語であること、中国では「城市」ということ、ギリシャ語のポリスpolisがポリティックス(政治)、ポリス(警察)の語源であること、ローマのキウィタスcivitasが文明civilization、市民citizenの語源であること、その他の地域での都市という言葉が整理してあります。
そして、都市の起源ですが、布野は都市の起源は国家の起源と同じ、すなわち都市国家の起源、権力の発生と同時と考えています。それは、藤田弘夫『都市の論理』の骨子です。
都市の定義をめぐっては、「都市革命Urban Revolution」を書いた考古学者のG.チャイルドの議論が参考になります。一定規模の遺構が出土したときに、これが都市か、農耕集落かを判定する必要があります。これまで、世界最古の都市遺構は、紀元前7500年前に遡るトルコ、アナトリア南部のチャタル・ヒュユクと言われてきましたがーいまでもネットにはそういう説明もありますがー、巨大な農村であって、最古の都市遺構は、メソポタミアのウルクということのようです。
G.チャイルドも含めて都市の定義については多くの指標があげられますが、都市の基本特性は,
Ⅰ.高密度の集住,
Ⅱ.分業,階層化と棲み分け,
Ⅲ.物資,資本,技術の集中とそのネットワーク化,
Ⅳ.権力(政事・祭事・軍事・経済)の中心施設と支配管理道具(文字・文書,法,税,・・・)の存在,
の4つにまとめられるというのが僕の整理です。
都市は,高密度の集住体(定義Ⅰ)として,物資,資本,技術の集中するネットワークの結節点(定義Ⅲ)に成立する。都市は,社会集団を制御する権力(政事・祭事・軍事・経済)の所在地である(定義Ⅳ)。そして,都市の内部空間の構成を規定するのは,社会集団の分業,階層化,そして棲み分けである(定義Ⅱ)。
そして、都市の世界史として、いくつかの画期が問題になると思います。決定的なのは、産業革命で、都市と農村との分裂だといいましたが、少し補足すると、以下のようなことを書いています。
・都市間のネットワークを大きく規定するのは交通手段(ウマ,船,蒸気機関車・蒸気船,自動車,飛行機)であり,情報伝達手段(言語,文字・電信・電話,インターネット)である。
・ネットワークを通じて交換されるのは,食糧,物資,情報だけではない。人とその集団の移動とともに,宗教,文化,技術,制度などの交換も含んでいる。
・そして,都市間の優劣関係を支配し,都市のかたちを具体的に規定してきたのは,軍事技術であり,建設技術である。
都市のかたちを大きく変える要因となるのは,まず,
A 火器の出現-攻城法の変化である。火薬そのものは中国で発明され,イスラーム世界を通じてヨーロッパにもたらされ,1320年代に火器が誕生する。そして,火器は,西欧列強が非西欧世界に近代植民都市を建設していく決定的な武器となった。
並行して,
B 航海術,造船技術の革新が大きい。そもそも世界認識(宇宙観)の転換(コペルニクス革命)が大きいというべきであるが,世界都市史としては「世界」の拡張,地球の発見が決定的である。西欧の海外進出,さらに世界周航を可能にしたのは,ラクダやウマ,そして舟といった交通手段に変わる,航海の技術である。
そして,次の世界都市史の最大の画期となるのが,
C 産業革命である。産業革命によって都市と農村の分裂が決定的になる。農村から流入する膨大な人口を受け入れることで,都市は急速に拡大し,19世紀後半には城壁は撤去されることになる。また,蒸気機関車,蒸気船によって,諸都市間のネットワーク関係を大きく転換していくことになる。
そして,都市生活のあり方とともに都市景観のあり方に決定的となるのが,
D 近代建築の成立―建築生産の工業化―である。建築が工場生産化(プレファブ化)されることによって,建築と土地との関係が切り離される。また,鉄筋コンクリート(RC)造,鉄骨(S)造によって高層建築化が可能になったことが大きい。都市が立体化することが可能となるのである。
E 自動車,飛行機の出現が大きい。時間距離が大幅に短縮されることにおいて,人と人の交流,物流システム,住居と都市の関係,住居と世界の関係を支えるシステムが大きく変わるのである。
そして,現在,都市のあり方を大きく変えつつあるのが,
F 情報通信技術ICTの革新である。
交通手段、コミュニケーション手段、に加えて、エネルギー、資源、食糧問題について、都市の論理をつきつめたいと思いますが、布野が苦手でわからないのが、経済です。金融資本主義、仮想通貨・・・経済学にノーベル賞が与えられるのが不思議なのですが、佐藤さんに解説してもらえるとありがたい。
スマートシティ13(佐藤→布野)2022 0802
金融資本主義、仮想通貨・・・の解説と言われても、私も門外漢のようなものです。ただ、昨年でしょうか、世界最大級の投資銀行ゴールドマンサックスのニューヨーク本社で、2000年のピーク時には600人いたトレーダーが2人になっていることが発表されたことに唖然としたことを覚えています。人のトレーダーは要らない。AI任せです。
100%人工知能に任せるヘッジファンド、センティエント・テクノロジーズというのも誕生しています。世界中の国がお金を刷りまくっている。日本もMMTとか言いながら、税収以上の予算を組み、借金は世界最大です。政治家は予算のカットは言い出しにくい。今や、最大の事業家は国です。
もの凄いお金がばら撒かれ、昔ならとうに国家破綻のはずなのが、怪しげなテクノロジーが世界中のお金を動かしている。科学技術の発展で、少なくとも先進国では、人々が必要とする以上の生産能力を持ち始めているので、こんなことができるのでしょう。
ロシアのウクライナ侵攻でグローバルなサプライチェーンがうまく機能しなくなり、やれ食料品が上がった、と話題になってはいますが、軍需産業の在庫一斉セールのようなものが裏にあるようにも思え、メディアの報じることをそのまま信じられない気もしています。
要は、世界経済は新しいステージに入っている、ということなのでしょう。戦国時代の頃、戦いの後の論功行賞は土地でした。ほぼ日本統一が視界に入ったとき、織田信長はお茶に注目します。茶器が価値を持つ、というのは、土地に代わる新しい褒美が現れた訳です。
その後、区分所有法ができ、離散的な所有が認められるようになりました。連続した2次元の分割の戦国時代から、離散した3次元での区分の管理ができるようになった訳です。割拠した戦国大名のようなものが今の大企業なのでしょう。土地、建物、株、債権、美術品、預貯金・・・、システムはどんどん複雑になり、平面分割の戦いは遠い昔のことになってしまいました。今では、コンピュータシステムの高度化が、全く新しい金融取引の世界を作り始めています。
分散型のデータベース、ブロックチェーンを応用して、2008年サトシ・ナカモトがビットコインを発表し、あっという間に総発行量2100万ビットコインの9割を超えるところまできました。今現在の取引価格は300万円ですから総額は57兆円、東証の時価総額の10%くらい、日銀券の50%くらいにはなっています。2009年の1ビットコインは0.7円だったので、5千倍といったところでしょうか。
値上がり期待が大きく、投資としてやっている人が多いのですが、海外から出稼ぎに来た人が送金するのに用いられてもいます。一番送金コストが安いのです。銀行というインフラがない国もありますし、あったとしても、SWIFTという銀行間国際送金でやろうとしたら膨大な時間とコストがかかりますが、ビットコインなら相手の口座にすぐ移せます。
数学的な説明をされてもなかなかわかりにくいです。すべてを一元的に管理するこれまでのやり方をやめ、皆が取引の記録を作っていくというやり方がブロックチェーンという技術です。ネットワーク上で記録作りに参加する人たちをマイナーと言い、参加することで手数料が得られます。
ビットコインの運用後、1年ほどしたとき、アメリカフロリダ州でプログラマーがピザ2枚を1万ビットコインで購入しました。これが、ビットコインで商取引が成立した最初の例です。ここで始めて金銭的な価値を持ちました。
要は皆が信じるか否かです。仮想通貨は、他にもいろいろあります。ブロックシェーンの技術を活用し、ビットコインに次いで、イーサリアムという仮想通貨が普及しています。そのイーサリアム上でNFTというものが、デジタルデータの本物の証明といった用途で拡大しています。インターネットの高速化とコンピュータの処理能力の飛躍的な向上は、これまでの事務的な管理そのものを大きく変え、また私たちの生活をも大きく変えようとしています。
ゲームの世界で考えてみましょう。我々が20台の頃、コンピュータゲームが登場します。喫茶店のテーブルが、インベーダーゲームのゲーム機(テーブル)に変わりました。そのインベーダーゲームをやるために、百円玉を何枚も用意したことを覚えています。テーブルゲームとして始まったゲームは、カートリッジを変えれば何種類ものゲームがやれるファミコンにつながっていきます。ファミコンでは、「ドラクエ」が爆発的にヒットします。ドラクエの発売日には、社員がほとんど休みを取ったものです。
ゲームの主人公(自分)が、原っぱを動き回り、いろいろな敵を倒さないと次のステージに進むための強い敵と戦えません。次から次へと強い敵が現れ、最後にボスキャラを倒すとゲーム終了です。休んだ社員は一日中頑張って最後までやります。原っぱを動き回り、いろいろな敵を倒すのが私にはかったるく、そこのところを子供に任せたりしました。勉強しろと子供がゲームをやるのを制限していた妻には呆れられたりした記憶があります。
ゲームの発売日にヨドバシカメラに行列ができる、という熱気は、今は無くなりましたが、それでもゲームは根強く、スマホやP Cでゲームは相変わらず流行っています。子供に頼まなくとも強いキャラクターを購入する、ということが普通にもなっています。
コンピュータの性能は良くなり、3Dの精緻なキャラクターが、これまた3Dの世界で自由に動き回る、ということが始まっています。ゲームの主人公(アバター)が、ゲームの世界で売られているファッションで着飾ることが普通に始まっています。あのグッチがアバター用の洋服を販売する、ということが起こっています。新しいデザイナーが自分の作品を売ったりもできる訳です。ここでNFTの出番です。本物の証明が必要になってきます。
ユーチューブでも動画をUPし、収入を得られる時代です。年収1億円以上のプレイヤーが続出しています。好きなことをやって稼げる。バーチャルな世界での知り合いができる。部屋から一歩も出ずに、恋愛もでき、またウーバーイーツで食事を頼むこともできる。私たちの世界は、そこまで変化し始めています。
Web3、メタバース、NFTというキーワードがこれからの時代を先駆けています。働き方も大きく変わろうとしていて、プロジェクトを開始するのに、参加者をネット上で募集し、出資者もネット上で募集、お金のやりとりは仮想通貨でやる、ということが始まっています。
信長の茶器の話から、この項は始めましたが、膨大なマネーが動き回る世界は、いつになっても破綻せず、実は新しい金融の世界が始まっているのかもしれません。頑張れ日本、国債の破綻など気にせず、それこそ仮想通貨の世界で再び世界一になれ、そんな気もしてきます。
ZOOM Talk⑧ 20220805 10:00~10:30
スマートシティ14(布野→佐藤)2022 0808
ゴールドマンサックスのトレーダーがたった2人になったいうのはびっくりしましたが、納得するところもあります。毎日、株価、為替相場を数年毎日メモしたことがあります。冗談ですが、1億円くれたら儲けて見せる!などと言っていたんですが、AIには勝てませんね。(MMTなどという)「怪しげなテクノロジーが世界中のお金を動かしている」ということについて聞きたかったわけです。
MMT(現代貨幣理論Modern Monetary Theory)は全くわかりませんが、ちょっとわかったような気がしたのは、「ペーパー・ハウス(La casa de papel)」観てからです。脚本家揃いの韓国で「ペーパー・ハウス・コリア」がつくられたことが示すように、世界的にヒットしたスペインのTVドラマ(2017~、2019~Netflix)です。教授と呼ばれるリーダーに率いられた8人がスペインの造幣局を占拠し、人質を楯に籠城しながら、金庫に収められた紙幣には手をつけず、占拠中に印刷した紙幣のみ強奪するのです。リーダーの教授曰く、EUは、富める者の利益を紙幣の増刷によって穴埋めしているではないか!です。続編では、スペイン銀行本店を襲うことになりますが・・・ここでは省きましょう。
日銀がいくらでも発行できる紙幣で国債が買われています。財政規律など関係なく、国家財政は維持できるのでしょうか?国債を諸外国のファンドが買い占めたりする事態は想定できないのでしょうか?また、日本国民が保有する資産(1000兆円?)を超える借金がある事態で日本の国家財政は破綻しないのでしょうか?
実にプリミティブですが、経済学、経営学などまともに勉強したことはありません。我々の時代は、マル系と近系があって!というぐらいで、駒場の教養時代も、東大闘争の時代でろくに講義を受けていません。塚本健の「経済学」を聞いたんじゃないでしょうか?
僕らの世代は、かってにマルクスを読んだ?『共産党宣言』とか『自然弁証法』とか、赤茶けた文庫本をまだ持っています。大人数の講義で若い先生が(長尾先生?)、とにかく岩波文庫を全部読め!といったアジテーションがまだ耳に残っていて、新書、文庫は今でもよみます。『資本論』にもトライしましたが、御多分にもれず、1章で挫折しています。ただ、使用価値、交換価値、商品、貨幣・・・現代社会を支えている基本的原理について、知的な関心を開かれた気がしています。
問題を明確化するために、さらに、プリミティブな質問をしますと、現代資本主義社会の成立は、株式会社の出現だと考えます。要するに、株を所有(投資)することで利益を得るシステムの成立です。世界最初の株式会社と言われるのはオランダ東インド会社VOCです(1602年設立)。イギリス東インド会社EIC(1600年)の設立が2年先行しますが、出資金の規模も少なく(1/8)、VOCが海外における軍事権も含めて全権を付与されていたのに比べて、EICは海賊まがいの略奪行為もあり、行き当たりばったりの交易活動であったようです。この世界最初の株式会社について、大塚久雄が資本主義の発生をめぐって以下のような論考を初期に書きますが、彼の共同体論は、佐藤さんのいう「コミュニティ」「コミューン」の問題に関わっています。
『株式会社発生史論』有斐閣, 1938年/中央公論社, 1959年ほか/『欧州経済史序説』 時潮社, 1938年/『近代欧州経済史序説』 時潮社, 1944年 改訂版『近代欧州経済史入門』講談社学術文庫, 1996年/『近代資本主義の系譜』 学生書房, 1947年/『近代化の歴史的起点』
学生書房, 1948年/『共同体の基礎理論――経済史総論講義案』岩波書店, 1955年/岩波現代文庫, 2000年
VOC、WIC(オランダ西インド会社)については、布野修司編(2005)『近代世界システムと植民都市』でかなり調べました。
我々は、毎日、ニュースとして、株価と為替レートを知らされます。これは、株式会社の発展、そのシステムの一般化として理解できます。資本主義の潜在力には計り知れないものがあり、グローバリゼーションも必然です。
ただ、ちょっと脱線しますが?、資本主義の基本原理は差異化であり、差異が亡くなれば資本主義システムは解体されます。これがマルクスの予言であり、それに代わるシステムとして実現しようとしたのが共産主義社会であったと理解しています。コミュニズム(コミューン主義、共同体主義、コミュニティ主義)です。国際共産主義運動はその理念を共有してきたと思われますが、その最初の世界史的実験がロシア革命であり、中華人民共和国もそれに追随します。共産党を名乗る政党は、今や中国共産党と日本共産党だけでしょうか?
僕の理解するところによれば、世界資本主義は、各(国民)国家による経済政策、経済規制によって、その自己実現を阻まれています(しかし、それ故、延命し続けるというアイロニーというか基本原理があります)。各国家、企業家にとって、株価と為替レートが日々の関心事になっているわけ、円高円安が日本の産業にどういう影響を及ぼすか、このあたりの経済学はまあ理解できます。1億円くれたら儲けて見せる!などと言っていたのは、そのレヴェルです。しかし、どう考えても株価が下がっていいのにそこそこ持ち直します。金融資本主義=MMTですね。ヴァーチャルな世界でお金が動いている。実体経済と全く切れているのではなく、先物買いとか―よくわかりませんが―複雑な国際政治と絡んだ株価の動きで世界を動かす力をもっているのがヘッジファンドということでしょう。ほとんど石油生産のみというサウジアラビアは国家そのものがヘッジファンドですね。日本の年金も、金融市場での運用で維持されているわけですね。ロシアのウクライナ侵攻で食糧、石油、天然ガスのみならず「軍需産業の在庫一斉セールのようなものが裏にある」というのは鋭いですね。僕もそう思います。
SWIFTという銀行間国際送金システムがあることを今回初めて知りましたが、これすら手続きが面倒くさいということでしょうか?ビットコインなど仮想通貨の発想の原点は?分散型のデータベース、ブロックチェーンというのがいまいち理解できないのですが、佐藤さんの説明だと、取引履歴を暗号化して改竄できないかたちで記録するシステムということですが、要するに仮想通貨発行主体が誰であれ、あらゆる取引が瞬時に可能になるということでしょうか?NFT(非代替性トークン Non
Fungible Token)、本物の証明というのも、このシステムの維持に関係しますか?国際通貨のようなイメージをもつのですが?
「要は皆が信じるか否かです」というのは、やはりそうか、という感じですが、国家を超える可能性をもっているのではないすか。
一転、織田信長の話は興味深いですね。彼は「楽市楽座」という市場経済を導入するわけですが、「お茶」「茶器」を「土地に代わる新しい褒美」としたというのは新鮮です(知りませんでした)。信長の死後、秀吉は「太閤検地」を実施、基本的に土地の管理を基本に据えたわけですが、「区分所有法ができ、離散的な所有が認められるようになりました」というのは、どういうことでしょう?「連続した2次元の分割の戦国時代から、離散した3次元での区分の管理ができるようになった訳です・・・」というのは、もう少し、聞きたいと思いましたが、現在の話ということで了解しました。3次元の空間の分配には、鉄とガラスとコンクリートによる近代建築の技術が大きく関わっています。
ゲームの世界の話は、ジョルダンの創業に関わることですね。インベーダーゲームから「ドラクエ」まで、「妻に怒られた」まで全く同じです。「ドラクエ」はVer.7までやったかな?「ドラクエの発売日には、社員がほとんど休みを取ったものです」というのもさすがジョルダンですね。いま、夏休みで孫が来ているのですが、マイン・クラフトに夢中で、将来はユーチューバーになると言っています。
Web3、メタバース、NFTというキーワードについてはさらに議論できればと思います。
スマートシティ15(佐藤→布野)2022 0815
インターネットが普及し始めた頃のWebがWeb1.0、読むだけのWebの時代です。FacebookやTwitterが登場、双方向になってきてからがWeb2.0の時代です。GAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)が、膨大なデータを保持、圧倒的な競走優位な立場に立ってしまいました。これに立ち向かおうとしているのが、Web3です。
グーグルを例に、GAFAがどう動いているか、見てみましょう。プライバシーに関して言えば、検索履歴はずっと保存されています。携帯では、居場所までが保存されています。自分がいつ何を調べ、どこにいたのか、履歴を追うのには便利かもしれませんが、私は嫌なので過去の履歴を全て消去、何も取らせないようにしています。デフォルトはすべて記録するモードです。設定をいじるのも一仕事ですから、殆どの人はプライバシーも何もあったものではありません。
プライバシー以外にも、情報を提供する会社との協調、競合戦略には凄まじいものがあります。アメリカではYelpという地域のレストランの口コミサイトが流行っていました。検索窓でdinnerと入力すれば、結果の画面に幾つかのサイトが出てきて、表示されたYelpのサイトをクリックして店を選ぶ、という流れになります。
ところでこの表示順が曲者で、上のいくつかは広告枠になっています。支払い総額と一回表示の単価を入札、どの広告を出すかはオークションで決める仕組みになっており、お金のある限り広告が表示されます。本来のサイトは画面をスクロールしないと見えないということもよくあります。そうこうしているうちに、今度は、グーグルが自社で類似サービスをリリースすることになり、自社のサービスにつながる画面を出すようになってきています。
お孫さん、ユーチュウーバーになりたい、ということですが、うまくすると子供でも稼げるのです。もちろん殆どの取り分はGoogleだと思いますが。ユーチューブもテレビ局をはるかに凌ぐ存在になってしまいました。グーグルは、ありとあらゆる分野に進出、競合を全て消して自分の世界を拡大しています。そのパワーは凄まじいものです。
ビッグテックは、強くなりすぎました。アメリカ大統領さえ、ツイッターに投稿できなくされてしまうのです。この状況を変えよう、という新しい動き、それがWeb3です。ブロックチェーンの技術が背景にあり、中央集権ではなく分散化を目指しています。今は、個人の情報はビッグテックに握られているだけなのですが、個人情報をビッグテックに渡さないで、ブロックチェーン技術を利用して発行された仮想通貨の「トークン」を介してやり取りします。
中央のサーバーが存在せずに、草の根的に取引履歴を記録する。その記録は誰もが閲覧可能というのが、ブロックチェーンです。この一番根っこに、仮想通貨、ビットコインやイーサリアムがある、という構造です。コンピュータ用語に、アプリケーションとかプロトコルというのがあります。アプリケーションに相当するのが、グーグル、ツイッター、フェイスブックで、プロトコルというのはそれらのサービスを展開するインフラともいうべきもの、それが仮想通貨なのです。土台が新しくなるのですから、その上に立つものも一新される。金融から仕事の形態から働き方まで一新される。すべてが変わるのです。
いくつかの大きな流れをざっとみていきます。DAOという新しい働き方のスタイルが模索されています。一つの目的のためにDAOを立ち上げ、仲間を募り、プロジェクトが遂行されていく。ブロックチェーンに基づく組織の形態で、メンバーになるにはイーサリアム等の仮想通貨で「ガバナンストークン」という意思決定に参加するための権利を取得する。これまでのようなトップダウンな会社のスタイルとは、大幅に異なる運営の仕方を考えています。
仮想通貨を貸したり借りたりするためのDefi(デファイ)という新しい金融も始まっています。仮想通貨を持っている人が、ブロックチェーン上で貸したり、借りたりができるような新しいシステムです。これまでは、銀行のように介在する組織や管理者がいましたが、Defiではブロックチェーン上に全ての履歴が残っています。
ゲームやデジタルアートでN F Tが広がっています。ゲームはわかりやすいですよね。Axie Infinity(アクシーインフィニティ)という、遊びながらお金を稼ぐことができるベトナムでローンチされたNFTゲームが人気を博しています。ゲームを始めるにはイーサリアムを購入し、マーケットからAxieを3体購入します。Axieというモンスターを戦わせる対戦型のゲームとなっており、成績によってSLP(Smooth Love Potion)という通貨を獲得することができます。SLPはビットコインなど他の仮想通貨と交換することもできるので、ゲーム内で獲得した通貨がそのまま収入となることを意味しています。1日のアクティブユーザー数が280万人を超えるなど、大きな盛り上がりを見せています。
NFTで本物の証明ができるデジタルアートも大きく盛り上がってきています。2021年4月、BAYC(Bored Ape Yacht Club)が、猿をモチーフにしたNFTコレクション、パーツを自動的に組み合わせて生成されたジェネラティブと呼ばれるタイプのNFTをイーサリアム上で10000点限定で発行しました。NFTを購入した人は、Bored Ape主催のイベントに参加したりすることができ、単にデジタルアートを所有するということよりは、コミュニティに参加といったようになってきています。
私自身がよく理解していないことを延々と書くのは、しんどく、いつもの直感で行きましょう。この間のコロナで在宅で仕事をする人が増えました。特にソフトウェア開発の人たちは、今までなぜ満員電車に揺られて通勤していたのか、わからなくなってきています。もともとメールやスラックでのコミュニケーションが多かったし、ときどきテレビ会議を交え、たまにはフェイスツーフェイスがあれば何の問題もありません。ICT環境はこれからもさらに飛躍的に進むのでコミュニケーションはもっともっと改善されていくでしょう。テレワークでは、何時間働いたかということより、何を成し遂げたか、ということに焦点が絞られます。こういう作業の仕方に慣れ始めてきた結果、自分に興味があるDAOに参加するのもごく自然です。こちらは、上下関係はなく、自分もプロジェクトの主要な一員です。
マインクラフトにはまっているお孫さんたち、ほっておけば1日何時間もゲームをし続けているでしょう。これもそのうち、NFT化されていくような気もします。ユーチューバーになりたい、というのは、ゲームのいろいろなことを教えてもらえるので憧れるのです。あの熱気で何時間もやるのです。今度はいくらでも稼げる要素があります。
布野さんが前に言っていたインターネット(メタバース)によって世界中が緊密につながる一方、空間的には分散して居住する、そんな世界が想定されているのでしょうか?そんな世界になろうとしているような気がします。
ZOOM Talk⑨ 20220818 10:00~10:30
スマートシティ16(布野→佐藤)2022 0822
◎Web3についてはそれなりに理解できたような気がします。それと、ICT技術、仮想通貨が依拠しようとするプロトコル?OS?―次から次へと提案される新しい概念には正直ついていけてませんが―が目指しているのがDAO(Decentralized
Autonomous Organization)分散型自立組織であることは、「新都市の論理」を考える上で大きな手掛かりになります。これまで触れてきた自立住居Autonomous House、自立コミュニティAutonomous
Community, 自立村落Autonomous Village(都市村落、エコ・ヴィレッジ), 自立都市Autonomous City(エコ・シティ)と親和性があります。
ネットでは、MakerDAO(メイカーダオ) BitDAO(ビッダオ)Compound(コンパウンド) BitCoin(ビットコイン)などが人気のDAOとされ、専ら資金調達、投資・金融システムのコミュニティとして喧伝されているようですが、佐藤さんがいうように、都市がDAOになればいいわけです。
前回、株式会社の起源に触れましたが、多くの業態で株式会社ではなくDAOで運営される組織が増加していくとすれば、株式会社の終焉も見えてくるでしょうか。また、銀行を通じての資金調達、決済システムの変化も必然ですねーところが日本のシステムがそれについていかない、絶望的な現実をなんとなく感じます-。
分散型自立都市が国境を越えてブロックチェーン、NFT(非代替性トークン Non Fungible Token)―ガヴァナンス・トークン?―でネットワークされる世界がイメージされます。
しかし、国家あるいは産業界との関係をどう考えるかが問題になりますね。
中央集権ではなく地方分権、民主的組織運営、参加の平等性、透明性の担保といった理念は、これまで繰り返し議論されてきたことではあります。一国内での法的枠組みでどう位置づけられることになるんでしょうか?
◎ここまで書いたところで、NHK特集「欲望の資本主義 2022 特別篇 メタバースの衝撃 デジタル経済のパラドックス」(2022年8月21日 22:00~23:50)を見ました。見ましたか? NFT,ブロックチェーンについてさらに理解が深まり、論点もいくつか見えたような気がします。
・国家とDAOの関係についての上の問いについては主要テーマの柱のひとつであったのですが、最も印象的だったのは、E.トッドが「メタバースには(フリードリッヒ)リストを!」と発言したことです。フリードリッヒ・リスト(1789~1846)は、国民国家(国民的体系)をベースにした経済理論家として紹介されましたが、欧州統合の理論的先駆者とも言われているようですからもう少し調べる必要があるかもしれません。E.トッドがメタバースよりウクライナの現実を見よ!若者の貧困を見よ!というのは当然で共感しましたが、彼の主張は、世界的な規模で産業界の再編成をすべきだ、ということです。いかに実現するかが問題ですが、リストの理論は自由貿易と保護貿易の関係をめぐっているのですが、E.トッドは保護貿易を主張してきています。
・もうひとり、貨幣論の岩井克人(『ヴェニスの商人の資本論』)が、貨幣によって個人は共同体の束縛から自由になったという持論に加えて、DAOはディストピアであると発言したことです(これは番組ではナレーションのみでした)。
・さらに、何人かの経済学者の発言がありましたが、仮想通貨の出現は、やはり、国家にとって、中央銀行にとって脅威になるということです。だから、国よっては一部仮想通貨を発行しながらDAOを取り込もうとする動きがある。佐藤さんは中国でもそういう動きがあると言っていませんでしたか? E・トッドが国民国家を持ち出したのは驚いたわけですが、別の次元で、国家がデジタル通貨を国家内に封じ込めようとするのは当然ですね。
番組では、「いくつもの月が幻惑する」という章があって、「いって見れば、人々が月を欲するために失業が生ずるのである。̶̶欲求の対象(すなわち、貨幣)が生産することのできないものであって、それに対する需要も簡単に抑制することができない場合には、人々を雇用することはできないのである。救済の途は、公衆に生チーズが実際には月と同じものであることを説得
し、生チーズ工場(すなわち、中央銀行)を国家の管理のもとに おくよりほかにはないのである。」という月=貨幣についてのケインズ『一般理論』への言及もありました。現在は、いくつもの月が回っている事態が起こりつつあるというわけです。
・しかし、この「欲望の資本主義」のシリーズはわりと見てきているのですが、いつも後味の悪い経済学についての不信感が残ります。全てはフィクションである、全てがヴァーチャルになる、幻想としての資本主義、全ての経済的価値はヴァーチャルである、・・・と言われると経済学ってなんなの?という感じですね。
Defi・・・など、もう少し、勉強したいと思います。
・巨大な市場となるメタバースMetaverse、仮想現実VRの世界の「覇権」をめぐって乱立するメタバースが競争が繰り広げているようですが、どうもピントきませんでした。VIゴーグルが手放せないものになるとは到底思えませんし、番組で紹介された百貨店の仮想売り場、自治体の観光宣伝、エンタメ業界のパーフォーマンス・・・など、いずれ淘汰されるように思います。アバターにしても、マインクラフトにしても同じですが、3D、CG技術が高度に進んでいるのですから、もう少しリアル?(笑)にならないかと思うのですが、ひとり注目すべきだったのは、佐藤さんが言っていた人じゃないかと思うのですが、福島出身の佐藤航陽(メタックス)ですね。Google Earthで世界中見て回れるわけだし、3D技術もあるから、メタバース(メタ・ユニヴァース)をよりリアルに10人ぐらいで、作成中、できたら無料で公開するというのです。その先駆となる?フィリップ・ローズの「セカンドライフ」には好感をもちました。
◎Web3以前に、Web2.0の現在の問題を佐藤さんは指摘しています。ひとつはビッグデータの特権的保有と利用とプライバシーの問題ですね。これはWeb3で解決できるのでしょうか?
前にも書きましたが、ビジネス世界にも公的な責任ある世界からほぼリタイアしていて、とりたてて秘匿すべき個人情報もない身にとって、自分が発信した情報に基づいた情報が送られてくることに、気味悪さは感じますが、それなりに重宝するところもあります。おっしゃるように、時々送られるセキュリティチェックに応答するぐらいで、自ら設定をあれこれいじるのは面倒くさいと思っています。
企業となると、そうはいかないと思いますが・・・
戦争、革命、破壊活動、テロ、・・・をめぐるスパイ活動は、KGBとかCIAとか、内閣調査室・・といった諜報機関は、必要な情報を集めているし、集めるであろうと思っていて、監視カメラやSNSの記録で、その情報収集は容易になった・・・監視社会はかなり伸展していると思います。
ZOOM Talk⑩ 20220901 10:00~10:30
スマートシティ16+(布野→佐藤)2022 0903
NHK特集「欲望の資本主義 2022 特別篇 メタバースの衝撃 デジタル経済のパラドックス」を見て、まもなく、羽鳥モーニングショー(テレビ朝日8:00~9:55)を見ていたら(見るというより、毎朝、つけっぱなしにして聞いているんですが)、成田祐輔という若手経済学者がコメンテーターとして登場、見た顔だなあと思ったら、「欲望の資本主義」に登場した(ガラス窓に図を描いて解説した)その人でした。彼の書いた『22世紀の民主主義 選挙はアルゴリズムになり、政治家はネコになる』(SB選書)は18万部売れたんだそうです。
MITでPh.Dをとったとかで、データ・アルゴリズム(AI)を使って政策立案すれば政治家なんか要らない、ということのようです。民主主義制度の再生?改善?のために、闘争、逃走、構想という3つのオールタナティブを検討しますが、興味深いと思ったのは、「逃走」の処方箋です。彼は、タックス・ヘイブン(ケイマン諸島、ヴァージン諸島、・・・)を比喩としてあげて、国家と国家の隙間に、あるいは全く新たに国家を設立することを示唆します。
DAO(分散型自立都市)が国境を越えてブロックチェーン、NFT(非代替性トークン Non Fungible Token)―ガヴァナンス・トークン?―でネットワークされる世界がイメージされます。と書いたのですが、彼は具体的な事例があるといいます。
ひとつは、「海上自治都市協会The Seasteading Institute」という新国家設立運動です。他に「青いフロンティアBlue
Frontiers」という団体(現在活動停止中)もあるといいます。公海は、無主で、自由航行が可能な場である、そこに眼をつけたプロジェクトですね。知らなかったのですが、1968年にイタリア沖合、公海に独立国家「ローズ島」を建設した事例があると言います(Netflix“ローズ島共和国”)。また、イギリスの沖合に1967年に建設されたシーランド公国Principality
of Sealandは、現在も存在しているといいます。
もうひとつは、住民を大量に移住させて、市町村など自治体を乗っ取るレシピをあげますが、これは創価学会、旧統一教会がやってることですね。自治体乗っ取りの例が1980年代にあって、インドの新興宗教家Oshoがオレゴン州の町に大量のホームレスを移住させて過半数を握ったそうです(Netflix “Wild Wild Country”)。
また、富裕層のGated Communityも独立しうると言います。
そして、3番目に挙げるのが、ブロックチェーン技術に支えられたオンラインコミュニティで、これは既に様々に存在しているというわけです。
天下第一村=華西村については、説明してください。Netにはまだ破産とまでは書いてないようですが?村が株式会社(村営コングロマリット「華西集団」)になるというのは中国で可能なんですか?
公海、メタバースがその場所になるわけです。今、『アジア海域世界の港市―異文化共生の原理―』(仮)という本を書いており、かなり興味を持った次第です。
「自由私立都市Free Private City」という概念が提出されるのですが、成田祐輔は、この逃走の処方箋にはやや冷ややかな(この本の主旨は真面目な?「構想」にある)ようです。
問題は、「逃走」の目的地が、閉じた「独立国家」「独立都市」「ゲイティッド・コミュニティ」で、その間のネットワークは考えていないようなのですが、ブロックチェーンはDAOをゆるやかに結びつけるんですよね?
成田祐輔は、既存の国民国家を超えたグローバルな資本主義が支配する世界が前提としているようです。「国家・都市「間」の多元性と競争性が自由私立都市のアイデンティティだ」といいます。そこでは「自由私立都市は政治的成果報酬の究極形態」であり、その「成果」?の報酬は、「自由私立都市」の存続か、滅亡だといいます。一か八か、勝つか負けるか、億万長者かホームレスか、というイメージのようです。
「21世紀後半、億万長者たちは宇宙か海上・海底・上空・メタバースなどに消え、民主主義という失敗装置から解き放たれた「成功者の成功者のための国家」を作り上げてしまうかもしれない。」。一方、対置されるのは、「情弱な貧者の国のみに残る、懐かしく微笑ましい非効率と非合理のシンボル」「私たちが憫笑する田舎町の寄り合い」といいます。彼の育ちと基本的スタンスがわかります。「旧国家を置き換えるには、新国家はいずれ平民も包み込むセカイイデオロギーや世界福祉にならなければならない。」「そのために、貧民たちを抽選などで受け入れていく可能性が高い。」と言ってはいますが・・・。
日本で、実際に独立運動を展開すると、「刑法78条」の内乱予備罪にあたる可能性があるらしいです。
「構想」については、布野には???が多いので、ここでは省きます。
先のNHK「欲望の資本主義」で岩井克人の発言(貨幣によって個人は共同体の束縛から自由になった)に触れたのですが、気になるのは共同体論、コミュニティ論、コミューン論の行方です。成田のいう「私たちが憫笑する田舎町の寄り合い」の行方です。民主主義と資本主義の連合の失敗をどう克服するか、「逃走」は、徹底した資本主義の追求(資本主義革命)を検討するわけですが、権威主義国家とされるロシア、中国についての分析は成田の本にはありませんし、ここで確認したいのはマルクスの初心です。
斎藤幸平の『大洪水の前に』『人新生の「資本論」』もそうですが、K.マルクスの後期思想に注目する佐々木隆治の一連の著作(『カール・マルクスー「資本主義」と闘った社会思想家』『マルクス 資本論』・・・)に触発されるところがあります。「新都市の論理」のためには、成田祐輔とは異なるヴィジョンが必要だと思います。DAOに期待を持ちましたが、彼によれば世界資本主義の自己運動のような位置づけのようです。
佐々木隆治によれば、「マルクスにとって「可能な」共産主義とは、国家による計画経済などではなく、労働者たちのアソシエーションである協同組合が互いに連合し、社会的生産を調整する、そのようなシステムであった」といいます。
もう少し読んで整理しますが・・・
「貨幣は、人間の労働と人間の現存在とが人間から疎外されたものであり、この疎遠な存在が人間を支配し、人間はそれを礼拝するのである。」(K.マルクスは「ユダヤ人問題によせて」)と理解するのが一般的だと思ってきたのですが、貨幣は「自由」をもたらし、今や沢山の月(仮想通貨)が地球を回っているというわけですね・・・
スマートシティ17(佐藤→布野)2022 0913
仮想通貨でこのところ話題になっているDAO(分散型自立組織)の話を持ち出したら、成田祐輔が出てきて、一気に「海上自治都市協会The Seasteading Institute」という新国家設立運動まで話が拡がりました。何かおかしいということで、佐々木隆治に話が及びました。だんだん話の範囲が広くなり、収束しなくなってきたような気がします。
天下第一村=華西村については、古くからの私の友人である張佶さんが無錫市江陰に事務所を開いたことがあり、そこに遊びに行ったときに、上場した村がある。面白いから行かないか、と誘われ、一緒に行きました。「村が上場」ということが理解できませんでしたが、タクシーに乗り、そこまで行きました。
江陰の街を歩きホテルに行ったとき、びっくりしたのは、これが中国?という感覚でしょうか。まるで西洋と見間違える程のきれいな街でした。村が上場と言っても、政府公認なのです。発展の歴史を展示した建物に入ると。党の幹部が訪れたときの写真があちこちに掲げてありました。そのときに買ってきたガイドブックは今も手許にあります。
2010年11月18日の時事通信社の記事に、「同村は、村の共産党委員会書記が村民を率いて金属製品工場を設立。大胆な取り組みは成功し、次々と企業がつくられた。収入が増え生活水準が飛躍的に向上した村民は、豪華な戸建て住宅やマンションに住み、マイカーを所有している。村は周辺の20村を吸収し、人口は3万人を超えた。主要産業の鉄鋼、繊維に加え、観光業にも力を入れており、ハイテクを駆使した観光果樹園などレジャー施設も急増中で、村はリッチな街並みの「新農村」への観光を国内外にアピールしている」と記載されています。
ところが、今、ネットで調べると2021年4月4日の日経産業新聞には、中国、工業化成功の先兵「天下第一村」の落日、という見出しで、「1980~90年代にいち早く工業化に成功し、暮らしぶりの豊かさから天下第一村と呼ばれた江蘇省華西村が苦境にある。村をけん引してきた鉄鋼業や繊維業は競争力を失い、2月には村営企業に払い込んだ資金の返還を求める長い列ができた。華西村が属する無錫市が救済に入っているもようだが、「独裁と責任」という共産党に内在する問題には手つかずのままだ。」との記載があります。
グーグルで検索すると、2022/06/14付で、「中国第一村宣告破产,负债超400亿!谁的华西村? - 网易」と出てくるので、破産したのではないでしょうか。要は、優れたリーダーがいて、村民からお金を集め、村を運営していたが、そのリーダーが亡くなってから、村はどんどんおかしくなってしまった、ということのようです。鉄鋼業を軸に発展してきた街なので変化に遅れてしまった、ということのようです。
仮想通貨でDAOなんていう仕組みを使わなくとも、いろいろなやりようがある、ということなのでしょう。日本でもふるさと納税という仕組みができました。地方交付税に頼らなくとも、自治体が収入を得る方法がある。そのごく小さい試みが始まったということなのでしょう。人口減少で地方都市の消滅が騒がれていますが、日本でもいっそ地方都市を株式会社化する。住民がお金をもらうことばかり考えずに、株主になり、私の運営に口を出す。株価が上がる楽しみもあるし、配当をもらえる。株主優待で動物園の入場券がもらえる、そんなことがあっても良いわけです。
DAOというのは、そういうことにピッタリの新しい流れなのでしょう。円安が騒がれ、日本が倒産するのでは、とまことしやかに騒がれ始めていますが、確か高橋洋一さんだったと思いますが、インフラを小口債権化すればいくらでもやりようがある、というようなことを言っていた記憶があります。
ここまで書いてきて、学生時代のことを思い出しました。駒場が封鎖されていた頃、倉本さんたちと読書会をやっていました。最近亡くなった見田宗介さんが、雑誌「展望」に
真木悠介の名で「コミューンと最適社会--人間的未来の構想」という連載をしていました。「気流の鳴る音」という本にもなっています。
個々の構成員の欲望を全体最適化で解決しようとするとどうなるか。複雑な方程式をコンピュータで解いたとしてもうまくいかない、ということを論理的に明解に導いています。いくつかのモデルを提示し、そのすべてに問題があることを明確に証明しています。
モデルの一つに「良きエリートのユートピア」というのがあリました。うまくいくときの唯一の可能性は独裁者なのです。ただ、これが最悪に転ぶことも必然という流れだったと思います。
だんだん大人になってくると、世の中は時間の積分値、ということがわかってきます。こうすれば良いとわかっていても、関係者に力のある人がいてその人の利権を損なうので、結局、何も変えられない。こんなことばかりです。独裁者は強いです。ヒトラーのことが思い出されます。
成田祐輔の言うデータ・アルゴリズム(AI)を使って政策立案すれば政治家なんか要らない、というのはAI独裁者を作ろう、ということなのでしょうか。その世界は、人間にとってユートピアなのかデストピアなのか。それとも人間が全て消滅して、AIどおしが戦っている世界なのかもしれません。
NHK特集「欲望の資本主義 2022 特別篇 メタバースの衝撃 デジタル経済のパラドックス」での話は、私からすると我々が学生の頃、つまり50年前に議論し尽くされていたような気がします。そう言えば、倉本さんも小蒲さんも仏教にハマってますね。我々の議論も、2千年以上も前に実は議論し尽くされていた、ということかも知れません。
少し、話が広がりすぎたように思います。ブロックチェーン、仮想通貨、DAO、Defi・・等の新しいICTの技術の延長上で、経済的にも、都市の再生が可能である。そう割り切り、議論を前に進めませんか。
ZOOM Talk⑪ 202209⑪ 10:00~10:30
スマートシティ18(布野→佐藤)2022 0919
佐藤さん
冒頭にも、最後にも、「だんだん話の範囲が広くなり、収束しなくなってきたような気がします。少し、話が広がりすぎたように思います。」とありますが、布野としては、必ずしもそう思っていません。むしろ、かなり見えてきたという感じがしています。
しかし、「ブロックチェーン、仮想通貨、DAO、Defi・・等の新しいICTの技術の延長上で、経済的にも、都市の再生が可能である。そう割り切り、議論を前に進めませんか。」というのは賛成です。
ネットの解説だと「ネットワークの各ノード(結節点)に同じデータが時系列的に記録されることで、全てのノードで追跡可能で、改ざんは不可能、全ての情報は共有される。そして、ブロックチェーンには、管理者が不在で、誰でも自由にノードを立てて、参加できるパブリック型、管理者が複数の組織で許可制のコンソーシアム型、管理者が単一の組織で許可制のプライベート型の3つのモデルがある。」ということですが、「新都市の論理」のモデルのヒントになりそうです。ブロックチェーン技術に確信が持てれば、DAO, Defiは必然で、結構面白い提案ができるような気がします。議論を進めるための、佐藤さんのレクチャーお願いします。
そもそもは布野が経済はわからない、ろくに勉強していない、だけど、18歳で資本論は読んだ、一巻の1章で挫折したけど・・・というところから出発しています。もちろん、それは「新都市の論理」として、都市は経済的にいかに自立するか、という問題意識につながっているわけです。マルクスは、資本主義社会の根源的批判を考えていた、若い世代(に限りませんが)のその読み直しの作業についてはここでは置きましょう。
キーワードは「物質代謝」と「アソシエーション」です。
布野が見えてきた、というのは、問題の根本は都市共同体のありかたということです。そもそもそこから出発したのですが、羽仁五郎『都市の論理』は、ヨーロッパの自治都市、自由都市をモデルとしています。「共同体」は、ドイツ語のゲマインデGemeindeの訳語ですね。ゲマインシャフトGemeinshaftに「共同態」,ゲマインヴェーゼンGemeinwesenに「共同組織」という訳語が与えられます(大塚久雄)。英語では,コミュニティCommunity(GemeindはCommunity, GemeindeはLocal Communityと訳される)ですが、もとはイタリア語(ラテン語?)のコムーネcomuneですね。コミューン、コミュニズムも同根ですね。コムーネは,現在のイタリア語では地方自治体(市町村)を意味します。コムーネ、コミューン、コミュニティ、コミュニズムは同根です。
ヨーロッパの中世社会は, ローマ教会を中心とするキリスト教団のネットワークと各地域の王,領主を中心とする領主制のネットワークの2つの支配のネットワークによって成り立っていました。この2つのネットワークを揺るがすかたちで出現するのがコムーネ(自治都市)です。コムーネ誕生の起源は11世紀後半に遡るとされますが、きっかけとなったのは,ローマ教皇と神聖ローマ皇帝との間の聖職叙任権闘争による都市領主としての司教や伯の権威の失墜であり,決定的となったのは神聖ローマ帝国の大空位時代(1256~73)で、このローマ王の空白を埋めるようにコムーネが誕生したとされます。以下、省きますが、一般に都市共同体が指名するコンソリ(複数の執政官)が都市を統治する形がとられて、領主家臣(都市貴族),商人,職人,さらに都市に居住する周辺地域の小領主,農民も参加するレプブリカ(共和政)が代表的な政体となります。まあ、なり手がいないなどいろいろあって(コンソリの選出をめぐる家系や門閥間の抗争,先住者と移住者との利害対立など)、他のコムーネから政務に長けた人物をポデスタと呼ばれる最高執政官として任期つきで雇用することが行われるようになったりします。このコムーネの出現,ヨーロッパにおける都市の「再生」が文字通りのルネサンスですね。羽仁五郎がモデルとして理念化したのは、このルネサンスのコムーネです。興味深いことに、イタリア北・中部は,15世紀に君主政,シニョリーア,共和政を政体する中小の諸国家の競合する地域となって以来、イタリア全域が国民国家として統合されることはなかったことです。今日のイタリアが成立するのは1866年です。明治維新とほぼ同じですね。ドイツなどをみても、分散的自立組織DAOの伝統は西欧世界には伝統的にあるわけです。
しかし、資本主義社会の成立は、共同体を解体してきた・・・現代社会に「新都市の論理」は如何に可能か、スマートシティとかデジタル田園都市構想というけれど、それは一体何か、というのがこのやり取りのテーマということですが、マルクスの再評価の流れにヒントがあるというのが、世界的潮流としてあるということです。
真木悠介「コミューンと最適社会--人間的未来の構想」「気流の鳴る音」については倉本、松本、小蒲・・・先生も含めて議論したいと思います。これは、まさに「新都市の論理」の核心にある問いとおもわれます。さらに説明ください。
―NHK特集「欲望の資本主義 2022 特別篇 メタバースの衝撃 デジタル経済のパラドックス」で、岩井克人の発言が気になり、なぜか手元に持ち続けていた『ヴェニスの商人の資本論』をぱらぱらと見直したら、なるほど経済学というのは結構な学問だなーしかし、ノーベル賞は要らない!-と見直しました。
「ヴェニスの商人の資本論」は、シェイクスピアの『ヴェニスの商人』―ユダヤ人高利貸しのシャイロックがヴェニスの商人アントーニオに金を貸し、返せない場合はアントーニオの肉1ポンドを切り取っていいという証文をとった・・・返せない事態となって裁判沙汰になり、証文は有効だけれど、血の一滴も流してはいけない、という判決が下される―を経済学的に(マルクスの資本論的に)読み解いたものですが、要はこうです。
ヴェニスには、キリスト教社会(共同体)とユダヤ人社会(共同体)があって、利子(利潤、剰余価値)は共同体の内部では発生しないー実際、例えば、イスラーム社会(クルアーン(コーラン))には利子の観念はありません。いまはイスラーム銀行はあります。Time is Money-、ふたつの価値体系の狭間に利潤(剰余価値)が発生する、ということです。遠隔地交易をめぐる物語ですが、商業資本の場合は、わかりやすいですね、西欧における産業革命、資本主義の成立は、非西欧世界の植民地化による収奪がもと(本源的蓄積)になっている(ぼったくり史観)は、岩井克人が執筆にあたって刺激を受けたという『ハムレットの方へ』の著者関廣野です(『プラトンと資本主義』(1982)『資本主義―その過去・現在・未来―』(1985))。産業資本の場合、まさに、マルクスの資本論の商品、使用価値、剰余価値・・・の分析が持ち出されます。資本主義が差異化のメカニズムによって成り立っており、差異はやがて解消されるから、崩壊するという基本テーゼが岩井の基本に据えられています。
「閉じられた市場(流通の場)においては原則的に不可能であった剰余価値の創造は、二つの閉じられた市場(流通の場)において成立している異なった価値体系どうしが仲介されることによって可能となる。・・・剰余価値の創造は〔閉じた〕流通からは不可能であり、それと同時に流通から離れて不可能である。」(遅れてきたマルクス)
岩井克人への違和感は、共同体からの解放によって自由を手に入れたということを彼がどうやらポジティブに考えて論を組み立ててきたことにありそうです。資本主義によって、個人は自らの労働力を賃労働として売る自由、生産手段の桎梏から自らを解き放つ自由の2重の自由を手に入れたというのですが、資本による搾取、収奪、疎外というのがマルクスであり、実態ですよね。それをそう感じさせない最も巧妙なシステムが資本主義システムだとマルクスは19世紀半ばに喝破しているのですが、「マルクス主義」の単純化、図式的適用が人類史の経験として失敗に終わったのが20世紀だったわけです。さあ、権威主義か、民主主義か、混迷を極めている中でのプーチンのウクライナ侵攻です。
岩井克人はいまや文化功労者で学士院会員ですが、「ミクロ経済学的基礎に基づくマクロ的不均衡動学理論を体系化した。さらに、進化論的なシュンペーター動学理論とサーチ理論的基礎に基づく貨幣論や株式会社が二階建て所有構造から構成されるとする会社論を提唱した」ということです。聞いたことがありますか?
経済学がいいかげんだけど、そういうものだと少しわかったような気がしたというのは、岩井の「はじめの贈与と市場交換」(『ヴェニスの商人の資本論』所収)です。
中央銀行券(不換紙幣)は、形式的には中央銀行の負債である。しかし、個人や私企業の債権と違って、中央銀行は返済する必要はない、銀行券をもってきたひとには同じ銀行券を渡せばいい、銀行券は返済する必要のない負債である。ということは、国民は予め中央銀行に一方的に贈与をしているということである。
兌換紙幣の場合、金銀を採掘する鉱山主、金銀を鋳造する君主などが順に検討されていますが省きます。そう単純ではないでしょうが、MMT(現代貨幣)理論が成立する根拠がそもそもあるということですね。
「仮想通貨」も十分成立根拠があるということです。手元に黒田明伸(2014)『貨幣システムの世界史 <非対称性>を読む』があります。前に熱心に読んだらしく、珍しく線がいっぱい引いてあります。おそらく、地域通貨の可能性への関心から読んだんだと思います。ふるさと納税も関係あると思います。
地域で流通する貨幣と地域を超えて流通する貨幣が多元的に存在する例は歴史上至る所にあることがわかります。冒頭に、20世紀初頭の揚子江中流域では1元銀貨=1300文銅貨が相場であったにもかかわらず、1元銀貨ではなく1000文銅貨を要求したという事例が挙げられ、第1章では、18世紀末にオーストラリアで発行されたマリア・テレジア銀貨が20世紀に入っても西アジア・アフリカで使われていたという事例が分析されています。ケインズやハイエク、M.ウェーバーも論じているらしいですが、地域空間を超えて環状に展開する回路の存在がマリア・テレジア銀貨が存続した理由であるというのが著者です。20世紀に紙巻タバコや木片が通貨になったり、びっくりするような事例が数多く挙げられていますが、要は、制度として確立しなくても、地域の人々の間に緩い合意が自ずとできてその基礎的システムが貨幣現象を下支えしていた、地域内通貨と地域間決済通貨の関係は歴史的には様々あるということのようです。しかし、「世界経済は国ごとの管理通貨制採用という方法で兌換性を制御しようとし、現在に至っている」ということです。
ZOOM Talk⑫ 20220927 10:00~10:30
スマートシティ19(佐藤→布野)2022 1001
DAO(分散型自立組織)の話を始めたら、布野さんがNHK特集「欲望の資本主義 2022 特別篇 メタバースの衝撃 デジタル経済のパラドックス」の話をしました。貨幣論の岩井克人(『ヴェニスの商人の資本論』)が、貨幣によって個人は共同体の束縛から自由になったという持論に加えて、DAOはディストピアであると発言したと書いています。私は私で、真木悠介の「コミューンと最適社会--人間的未来の構想」という連載に触れ、如何なる社会システムを考えようが、どれもうまくいかず唯一の可能性は独裁者、しかしこれが最悪に転ぶことも必然という話を紹介しました。
そうするとDAOとは言っても、真木悠介には既に否定されていることなのかも知れない。いや、当時の分類にはそもそもDAOのようなものは入ってないかも知れない。布野さんから「「新都市の論理」の核心にある問いとおもわれます。さらに説明ください。」と言われたこともあり、どうあれ、真木悠介の本を読み直そうと思いました。
別荘の本棚にある筈と思い、別荘まで来て探しましたが、肝心のものが見つかりません。ネットで調べたら、私の思っていた本は、「人間解放の理論のために」でした。アマゾンのマーケットプレイスで1971年発売1650円のものが、中古品で5500円、保存状態の良いものは1万円以上します。どこかにある筈なのでネットで買うのも馬鹿馬鹿しくなっています。
読んだ本が捨てられなく、並べておくために別荘を建てたようなものです。本はどんどん多くなり、2列になったりしていて探しにくくなっています。アマゾンが古本まで売るようになっているのは、さすがと思います。古本屋もアマゾンに自分の扱っている本を登録し、1円の本が沢山並んでいます。配送料が別途取られるので、その中から幾許かの戻しを得ているのでしょう。出版社、取次店には敬意を払い、本を買うときはできるだけ本屋で買うことにしています。一度読んだものはアマゾンのマーケットプレイスもあり、とときどき利用していますが、プレミアムが付くものもあるのですね。
時代は変わったものだとつくづく思います。断捨離については私は否定的ですが、小説の類、1円で買えるのなら、読んだ本のタイトルと表紙くらいはサーバー上に上げておいて簡単に検索できるようなサービスがあると良い、と思います。別荘にある本をそのサービスに入力できるなら、暇なら自分で、暇がないならブックオフがそんなサービスをすれば有料でも成り立つのではないか、と思ったりもしていますが、プレミアムの付くような本は、それこそデジタルで自分のタブレットで読める貸本屋のようなものがあれば良い、と思います。
少し脱線しましたが、この件、スマートシティを考える上でも面白いところがあるので、続けます。「人間解放の理論のために」は、月刊誌「展望」に連載されていたので、展望はどうなっているのだろう、と気になり始め、調べました。するとあるのです。大学の図書館にあったり、国立国会図書館にもあるのです。大学は利用者IDが得られませんが、国立国会図書館は登録できるので折角だから登録しました。ただ、IDをもらえるのが5日後。どうも今データベースに入れているところのようです。そうすると閲覧はできるが、大変そうです。コピーをとったら、プレミアムの本よりも高くなるかも知れません。
グーグルが全ての書籍をデジタルにしようとして、顰蹙をかったりしていますが、利用者にとっては便利かも知れません。私は、本はモバイルだと思っているので、漫画以外はデジタルでは読みません。結局、著作権とかそういうところをどう保護するか、そこがキーの筈です。それでも大学が大学で書籍のデータベースを作り、国は国で作っている。そのどれもが中途半端、というのが、今の日本の典型的な状況を示しています。無駄な投資はやめ、日本全体でグーグルに対抗しよう。そういった気構えでやらないと本当にこの国には未来がない。
夏休みの軽井沢である集まりがあり、たまたま山本康正さんという方とテーブルを共にしました。東大を出た後、ニューヨークの銀行に就職、ハーバード大学、グーグル入社。今はコンサルやベンチャーキャピタリストとして頑張っています。話したのが縁でいくつか彼の書いた本を読みましたが、今現在、「銀行を淘汰する破壊的企業」という本を読んでいます。「ここは2025年12月12日、アフターコロナの銀行の近未来」というページから始まります。グーグル、アマゾン、フェイスブック(メタ)、アップル、ペイパル、ストライブ、アント、アファーム、コインベース、キャベッジ、ロビンフッドの11社が、銀行を破壊する、ということです。手数料0、24時間365日営業、金利も安いし、スピーディだし、ということです。
ここまで書いてきて、いろいろなモヤモヤがスッキリしてきました。地方創生ということは、住んで楽しい、行って楽しい、ということに尽きるのではないか。幸いにも日本は我々団塊の世代が、後期高齢者になろうとしている。我々が、モルモットになって、新しい日本を作るためのわがままを言う。ただし、汗もかく。こういうことではないでしょうか。
ZOOM Talk⑬ 20221004 10:00~10:30
スマートシティ20(布野→佐藤)2022 1011
①真木悠介『人間解放の理論のために』は1971年ですね。読んだような気がしますが、もう建築に頭が行っていたのかもしれません。確かに古本で5~6000円してますね。『気流の鳴る音―交響するコミューン』 (ちくま学芸文庫) 文庫 – 2003/3/1が文庫本(990円)ですからみてみましょうか。今年、4月1日に亡くなって、直後にあった倉本さん、松本さんが話題にしていましたがついていけませんでした。著作集が出てるんですね。
●『定本 見田宗介著作集(全10巻)』 岩波書店、2011年-2012年
「現代社会の理論」「現代社会の比較社会学」「近代化日本の精神構造」「近代日本の心情の歴史」「現代化日本の精神構造」「生と死と愛と孤独の社会学」「未来展望の社会学」「社会学の主題と方法」「宮沢賢治――存在の祭りの中へ」「晴風万里――短篇集」
●『定本 真木悠介著作集(全4巻)』 岩波書店、2012年-2013年
「気流の鳴る音」「時間の比較社会学」「自我の起原」「南端まで――旅のノートから」
弟子の大澤真幸の本はほとんど全部読んでいるんですが、まあ、レクチャーしてください。
気になったのは亡くなる直前の対話集『超高層のバベル』(講談社新書)です。読んでみます。実は、『高層建築の事典』の編集に引っ張り込まれていて「バベルの塔とバブルの塔(仮)」を書いているところなのです。
②銀行の手数料は要らなくなる、と思うのですが、山本康正『銀行を淘汰する破壊的企業』は、それをよしと言ってるんですか?破壊企業(グーグル、アマゾン、フェイスブック(メタ)、アップル、ペイパル、ストライブ、アント、アファーム、コインベース、キャベッジ、ロビンフッドの11社)はけしからんといってるんですか?
◎
③新・都市の論理―スマートシティ?をめざして
これまでの対話をもとに目次らしきものを考えてみます。
序 スマートシティとは?
Ⅰ デジタル革命―Web.3?
巨大プラットフォーマー
メタバースの世界
ブロックチェーンとDAO
Ⅱ 新しい資本主義?
中央銀行と金融資本主義 ケインジアンvs新自由主義
仮想通貨と国際通貨
グローバリゼーションと〇〇ファースト(ナショナリズム)
民主主義と権威主義
資本論の再評価―マルクス再考
Ⅲ 地球環境・食糧・エネルギー・産業
気候変動 人新生
物質循環
食糧生産
サプライチェーン
Ⅳ 都市自治体(コミューン)・共同体(コミュニティ)・アソシエーション
様々なDAO 分散型自立組織
都市行政・都市経営・都市組織
Ⅴ 空間 住・交
MaaS
Eco-House Eco-Village Eco-City
Ⅵ 教育・医療・ 再生産
これはダメだ、中身のない大著になりそうだと思ってやり直そうと思ったら、見田宗介『現代社会の理論』『気流の鳴る音』『超高層のバベル』が届いた。1日かからない、朝注文したら夕方に一冊届いた。すごい時代ですね。宅配でどのぐらいの人がいくらで働いているんだろうか?無人配達、ドローン配達なんて時代がくるんだろうか?
④また、夕刊に「「暗号資産を通過に」裏目 中米エルサルバドル 価格下落・信用力も低下」というニュース。中央アフリカが続いて世界2番目に法定通貨とするという。国家(中央銀行)を超える可能性???しかし、ドルや円などの国際通貨と交換できるというということはこういうことが起こる?ビットコイン時価総額55兆円ということだけど、暗号資産は結局利用者の予めの贈与?ということだと、55兆円はだれが受領しているのか?発行するのか?さらに勉強が必要ですね。
●『気流の鳴る音』は1977年刊行、『展望』の連載をまとめたものですね。サブタイトルは「交響するコミューン」―原題「欲求の解放とコミューン」で『朝日ジャーナル』1973年1月に書かれたもので最後に置かれています―、序は「「共同体」のかなたへーコミューン構想のための比較社会学・序説―」です。序だけ斜め読みしましたが、最も原始的な生活を保っているメキシコ南部のラカンドン族の生活、「山岸会」「紫陽花邑」(このコミューンについては知りませんでした)などについて触れています。「コミューン論は、人間と人間との関係のあり方を問うばかりでなく、自然論、宇宙論、存在論をその中に包括しなければならない」などとあります。
テーマとして意識されているのは以下です。
権力と差別の問題、分業と所有の問題、育児と教育(人間の再生産)の問題、食べること、着ること・住むことの意味の問題、幻想と反日常性の問題、生と死の基礎的イメージの問題、時間と空間の枠組みの問題、宇宙感覚と自然への基礎的な態度の問題、狩猟と農耕・農耕と都市の問題、共同体相互の関係の問題、といったたがいに重層し関連しあうさまざまな主題の耕作する主題の総体
実際には、文化人類学者カルロス・カスタネダの4部作『Ⅰドン・ファンの教え』『Ⅱ分離された現実』『Ⅲイクストランへの旅』『Ⅳ力の物語』です。
真木悠介はやや文学的なのですが、見田宗介の『現代社会の理論―情報化・消費化社会の現在と未来―』はわかりやすそうな気がします。1996年に出され、2018年に改訂されています。参考文献をみても、ボードリヤール、ロラン・バルト、リースマン、ガルブレイス、マクルーハン・・・結構読んでいて、いささか古臭い感じもします。目次も、1 情報化/消費化社会の展開―自立システムの形成、2 環境の臨界/資源の臨界―現代社会の「限界問題」Ⅰ、3南の貧困/北の貧困―現代社会の「限界問題」Ⅱ、4 情報化/消費化社会の転回―自立システムの透徹、です。わかりやすいといえばわかりやすい。自立システムという言葉が使われていますが、情報化/消費社会の現在に「自由な社会」の可能性を見るということのようです。大澤真幸には『不可能性の時代』(岩波新書、2008)があるのですが・・・
まあ、大きく4章ぐらいでまとめるのがいいのかなあ、と思います。
◎
③新都市(スマートシティ)の論理
起 デジタルICT革命 コミュニケーション・トゥールの未来 道具 技術
Web3 メタバース
AI
承 都市コミューン 人・集団 社会
家族・共同体・都市国家
転 地球環境 物質循環 経済
食糧・エネルギー
結 Happy Life 豊かな生活の近未来 自由・自律と共生・共存
衣食住交
教育 医療
以上を送ろうと思ったら、対話集の『超高層のバベル』の最後に、一足先に亡くなった加藤典洋(1948~2019)との対話「現代社会論/比較社会学を再照射する」があり、見田=真木の仕事がよくわかります。
『気流の鳴る音』(1977)と『現代社会の理論』(1996、2018)がメインに取り上げられています。真木悠介名で最初に書いたのが『展望』の連載「欲求の解放とコミューン」(1968~)『人間解放の理論のために』(1971)のようです。この後、メキシコ、インドを放浪、帰って書いたのが『気流の鳴る音』で、著作集のトップに置かれますが、『人間解放の理論のために』(1971)は省いたようです。
●『気流の鳴る音』は、簡単に言ってしまえば(怒られますが)、「近代合理主義批判」知の枠組み批判、気流の鳴る音を聞け、ということですが、『現代社会の理論』は、以下のような人類史についての認識があるようです。生物学のロジスティックス曲線が下敷きですが、第Ⅰ局面は、発生以降少しずつ増殖していく局面、環境条件によく適合した生物種の場合に急激な大増殖期を迎えるのが第Ⅱ局面、環境容量の限界に近づいていくと、うまくいく生物の場合、周囲の環境に適合、共存して安定平衡期に至る、これが第Ⅲ局面です。日本の高度成長期、近代社会、貨幣経済が第Ⅱ局面、現在が第Ⅲ局面というわけです。しかし、2 環境の臨界/資源の臨界―現代社会の「限界問題」Ⅰ、3南の貧困/北の貧困―現代社会の「限界問題」Ⅱの滅亡への問題を考察するわけです。
◎
③羽仁五郎の『都市の論理』第二部 現代の闘争の目次は以下です。
まあ、数章でまとめるのがいいとは思います。
序 今日の都市問題 → スマートシティとは?
パリ・コンミュン →コミュニティの復権
自治体と家族制度の問題 → 自助・共助・公助
Ⅰ 都市の破壊 → 空家、・・
Ⅱ 中央集権のなかの自治体 → デジタル田園都市構想
Ⅲ 独占資本主義下の自治体 → 新しい資本主義? グローバリゼーション
Ⅳ 自治体の復権 Ⅴ 都市連合 → 分散型自立都市
『都市の論理』のロジックは、単純で、人間は、家族から、地域から、農村から、解放されなければならない、その受け皿となるのが都市で、その構成員は市民だ、ということです。
★★
・スマートシティ2-1(佐藤→布野)2022 1124
章立てを考えた前回の布野さんのメールを見ながら、これからの進め方がひどく大変なことのように思えてきました。怠惰な学生生活を送りながら、塾の講師をし、その後、コンピュータソフトの開発会社を経て起業し・・、好き勝手にやってきたのが私です。東京の電車のネットワークは複雑すぎてどう行ったら良いかわからない。会社の旅費精算も日がすぎるととても大変。自分が欲しかったのが、「乗換案内」です。
時刻表があれば便利。誰もやらないのなら自分たちでやろう。バスもわかればもっと便利。バスまで広げよう。バスはものすごい量です。10年経ってもまだ9割くらいでしょうか。バス停がどこにあるかもよくわからない。行き先を指定し、バスが必要になれば、バス停までの道順、バス停からの道順が分からないと使い物にならない。地図も必要になります。明るい日中、スマホの画面は見にくいので、音声で右、左と案内できればもっと便利。要は自分が欲しいものを自分で作ってきただけです。
乗換案内からJRの予約ができればもっと便利なのに、JRはうんと言わない。JALもANAも同じです。各社、自分たちのことしか頭にない。インターネットが登場し、随分便利な世の中になりましたが、こと予約になると自社のサイトでユーザー登録をし・・、となってしまう。自分だけでできることはスピーディーに進めることができましたが、相手がいることはなかなか進まない。この辺から、世の中の壁にぶつかってきました。フィンランドのMaaS Global社は国土交通省の応援のもとに、スマホだけで予約・決済・移動できるMaaSのサービスを開始しました。
いつの間にか、自分も結構歳になり、ということは、我々団塊の世代が歳になってきているのです。安く自由に移動できるやり方を見つけないと大変なことになる。地方に住んでいるともっと大変です。車がないと生活できないのに、運転免許を返納しろといわれる。二、三日前、福島県で97歳のドライバーが人身事故を起こしました。この事故を機に、また、高齢者免許返納の大きなうねりになっていくのでしょう。しかし、地方では、車に乗らなくなると移動の手段がないのです。
タクシー、都内は走っていますが、高いです。地方に行けば、全然、タクシーが走っていないところもあります。ドライバーの高齢化も始まっています。バスが走っているとはいえ、ほとんど本数がない。近所の人が、あるいは暇な人が500円とか千円の謝礼で送ってあげても良いと思うのですが、ガソリン代相当以上のものはもらっていけないとかいろいろなルールがあります。
この間、相乗りタクシーの実証実験に参加しましたが、これまた規則でがんじがらめです。4条が、21条がと、もう大変です。ミニバスみたいなものをうまく走らせれば、と思い付いても、地域公共交通会議で合意を得なければなりません。利用者が少なくなったバス路線のために自治体が補助金を出す。本数が少ないバスは利用者からそっぽ向かれます。それでも補助金でバス路線は維持されている。会議に参加している人たちは現状を変えたくない。そういう寄合ができているだけです。
誰もがスマホを持つ時代です。うまい仕組みを作れば、それこそ全く新しい移動手段ができるはずです。もっと根本的に変える発想を持つべきなのに、誰も現状を変えようとしない。ウーバーの初期の頃の体験を「スマートシティ3」で書きました。サンフランシスコ空港からサンノゼ市内までのタクシー代を1/10に下げたのです。位置情報がわかるスマホを皆が持っている、というテクノロジーは、ギグワーカーという新しい労働者を登場させたのです。
平成元年の頃、世界の企業のトップ10は、日本電信電話(NTT)、日本興業銀行、住友銀行、富士銀行、第一勧業銀行、IBM、三菱銀行、エクソン、東京電力、ロイヤル・ダッチ・シェルでした。令和元年4月末トップ10は、マイクロソフト、アマゾン、アップル、アルファベット(グーグル)、フェイスブック、バークシャー・ハサウェイ、アリババ、テンセント、JPモルガン、ジョンソンジョンソンです。平成元年にはベスト10に7社も入っていたのが、今は0です。
どうしてこんなことになってしまったのでしょう。国全体がこれまでの秩序の維持に走り、何も変えようとしないからです。日本の劣化がどんどん進んでいても、誰も必死に動こうとしません。行くところまで行けば、強制的にいろいろな力が働き、リセットされ、日本も変わるだろう、とそんな声をときどき聞きます。冗談じゃない。前回のリセットは、第二次世界大戦を挟み、国土が破壊され、多くの命が失われ、国民皆食うや食わずのところまで追い込まれました。リセットというのはそのくらいの痛みを伴うものなのです。
まだ間に合います。国の予算の使途を見ても、同じようなことを全くバラバラにやり、本気でなく消化のための使い方があまりにも多いように見受けられます。省庁も縦割り、獲得できる予算が役人のパワーです。GAFAに国全体が立ち向かおうと思えば、いくらでもやれるはずです。
我々団塊の世代は、その人数の多さでいつも時代を引っ張ってきました。小学校のときも一クラス50人以上、中学校も1学年10クラス以上。我々が結婚する年齢になると今度は第二次ベビーブームです。そして今や順に後期高齢者です。我々が全員年金に依存し始めたら、もう日本は持ちません。どうせそのうち日本が破産するなら、先に元気よく動き回った方が勝ちです。
高齢化はこれからの世界の大きなトレンドでもあります。ここで上手い仕組みを考えたら、その横展開は世界中を相手にできます。この30年の大きなトレンドは、インターネットを軸としたサービスの組み替えとしたら、これから30年のトレンドは、高齢化社会を軸とした世の中のありようの組み替えだと思います。そこに SDGsも含まれるように思います。
布野さんにこれからの新都市の論理を書いてほしい、と切り出したのは、その時代に旗振りとなる理屈が要る。それを考えるのが、布野さんにぴったりだと思ったからです。私は、意表を突く尖ったことを思いつき、動き出すのが向いています。どうあれ動いてしまうのです。
布野さんとのメールでのやりとり、それなりに面白く、20回も続きました。文字数をカウントしたら、6万文字、原稿用紙150枚でしょうか。あと6万文字あれば、本にもできますね。折角ここまでやってきたのだから、同じくらい継続し、本にする可能性を残せたら、と思います。その上で、布野さんは、扇情的な「新都市の論理」を書き上げてくれれば嬉しいですね。論理的に厳密でなくて良いのです。今は、私たち一人一人、動き出すことが必要なのです。
私も妙に知識人の振る舞いをし、うんちくを述べたりしましたが、ダメです。体を動かさないとじれったくなってきました。今回から第二章とし、シンプルに私はこれはどうなんでしょう、と聞いていくことにします。布野さんが端的に結論を言ってくれると助かります。
岩井克人、見田宗介、山本康正等、話を続けたい人もいるのですが、ここで少し方向転換して、先日隠岐島に一緒に行って思ったこと、その辺から話を始めようと思います。海釣り、牛付きが良い体験でした。ちょっと足を伸ばせば釣りができる環境、なかなか良いものです。布野さん、大きいのを釣りましたね。牛付きも面白かったです。集落ごとに牛付きをやっている。豊かな自然とコミュニティでしょうか。
小学生の授業も面白かったです。彼らの憧れは、コンビニ、スタバ、マグドナルド。コミュニティが破壊された都市、それが子供の憧れでしょうか。都会に住んでいて、隣人が誰かもわからない生活。そこをどう考えるか。その辺をどう割り切っていけば良いのでしょうか。
さらに、メタバースではとんでもない発見をしました。高校生のサークルが、マイクラで隠岐島を作っていたということ。unity とか、unreal engine でやれば云々と私はうんちくを垂れましたが、マイクラは小学生から参加できます。その後、上田さんが、徳島県上勝町のメタバースを体験した、とLINEで書いていましたが。あれは、unreal engineでやっています。最初は面白いと思いますが、本当にその後も続くのでしょうか。「スマートシティ17」で布野さんは、NHK特集「欲望の資本主義 2022特別篇」のことを書いていましたが、バーチャル渋谷で頑張っているクラスターは、unity上で自治体、企業が自分たちも参加できるような仕組みを描いていますが、案外、隠岐島の部活が良い線行っているのでは、と思い直したりしてます。
・スマートシティ2-2(布野→佐藤)2022 1201
佐藤さん、再スタートの文章、実にわかりやすく整理していただきました。
『新都市の論理』(仮)については、ひとつは佐藤さんが最初にイメージした羽仁五郎の『都市の論理』そして布野が思い浮かべた藤田弘夫の『都市の論理』(1993)などこれまでの都市論を振り返りながら、いま、それらは通用するのかという問い、また、今、日本政府が言う「スマートシティ」「デジタル田園都市構想」とは何か、何を目指しているのか?という問いを念頭に置いてきたような気がします。また、Covid-19、ロシアのウクライナ侵攻、中国の習近平第三期体制の発足、資本主義と権威主義の対立、自国第一主義とグローバリゼーション、気候変動、地球温暖化問題など世界、地球全体の行方をどう考えるかということも並行して頭にあったと思います。この対話のおかげで、斎藤幸平、佐々木隆治といった若手論客の未来論、例えば、真木悠介の弟子といっていい大澤真幸の『新世紀のコミュニズムへ 資本主義の内からの脱出』(NHK出版)、また、世界共和国へ向けて考え続けている柄谷行人『力と交換様式』などもこの間読んできました。
しかし、佐藤さんの言うように、具体的な問題から組み立てないと迫力がないと思います。佐藤さんの乗換案内、MaaS、Uber・・・は実に具体的です。交通(コミュニケーション手段、交換様式)をどう再構築するかは大きな柱です。佐藤さんには何度かいったことがあると思いますが、中国では、古来、衣食住に加えて交(交通、交わること)を人間の生存のために必須条件とします。都市自治体(コミューン)論、共同体(コミュニティ)論が軸になると思いますが、衣食住+交を考えていったらいいのではないかと、とりあえず、思います。
具体的に、隠岐の島町あるいは白河市について考えていったらいいと思います。
明日(11月29日)のデザイン会議で、建築家・都市計画チームに言おうと思っていますが、彼らのアプローチはいささか古いと思います。空家問題、空地問題、少子高齢化など全国の地方都市で同じ問題を抱えているわけですが、それぞれの人生のプログラムを読みながら全くユニークな街ができればいいと思うのですが、現行のアプローチは、先進事例?あるいは予め考えられるパターンを提示して、形式的なワークショップをしているだけのような気がします。子どもたちの方がよっぽど発想が自由です。これまでにない、都市再開発手法が必要で面白いことが出来そうな気がしています。
また、自動運転までいかなくても、Walkableな都市というテーマについて、是非、山科区の社会実験について教えてください。デザイン会議には、岡山大の橋本先生(都市工出身)がおられます。隠岐の島町でも取り組みたいと言っています。
メタヴァース(https://hubs.mozilla.comモジラ・ハブス)会議には布野も2回参加しましたが、ZOOMに毛が生えた程度かな、という印象でした。ヴァーチャル店舗、ヴァーチャル観光、ヴァーチャル美術館であればすぐにできると思います。マイクラ・ベースで子どもが参加するというのは、佐藤さんが言うように、面白そうな気がします。関係があるかどうかわかりませんが、昨日孫(6年生)が電話(SMS)してきて、「北極についてなんか知ってる?」と聞くので「なんで?」というと、極地研究所?に見学に行って、「探求学舎」(三鷹市)の仲間でコンテストに応募するんだ、といいます。適当にやりとりしたら、仲間のひとりがマイクラで北極を再現するといってる、ということでした。
◎
これまでに、いくつかのテーゼらしきものが思い浮かんでいると思います。
①インターネット(メタバース)によって世界中が緊密につながる一方、空間的には分散して、自然の中で生活する、そんな都市ネットワーク世界。
②欲望、富、資本をめぐる投機の世界、金融資本主義はメタヴァース空間に限定し、地球の資源、食糧、・・・など物質循環に関わる空間はその対象にしない(もう少し、緻密に考えます)。
経済、都市経営(仮想通貨、地域通貨、故郷納税)、エネルギー問題(自立循環)、食糧問題(自給)は大きな問題になると思います。
以下、この間、気になった記事、出来事などをメモしておきます。
・「暗号資産を通貨に」裏目 中米エルサルバドル 価格下落・信用力低下(『朝日新聞』20221007) 中央アフリカが世界で2番目に法定通貨として導入。
・暗号資産 大手の破綻が市場直撃 伸びぬ取引額 規制強化の流れも FTXトレーディング破綻(『朝日新聞』20221113)
・ノーベル経済学賞 FRB議長ベン・バーナンキなど3氏
・経済学の「物語」 アベノミクス 虜となった日銀 多事奏論 原真人
・スマホ前提に 一回リセットを 青野慶久(『朝日新聞』20221115)マイナンバーカード
・佐伯啓思想 アベノミクスの功罪 デフレが最大論点 矛盾はらむ矢でも放たぬ選択肢なし カネ超えた価値見失う近代主義加速させた日本 聞き手 原真人(『朝日新聞』20221113)
ZOOM Talk2① 20221201 10:00~10:30
・スマートシティ2-3 (佐藤→布野)2022 1217
京都山科区とのプロジェクトのことから始めます。iPhoneならApple storeで、Android なら Google playで「山科アプリ」と入力すれば、「山科区公式アプリやましなプラス+」というのが出てきます。区のホームページには、以下のように紹介されています。
~ 政令市の行政区で初の総合的な地域密着型スマートフォン・アプリ
~
京都市では,平成28年3月に策定した「共汗で進める新たな区政創生」において,ICT(情報通信技術)を活用したスマートな区役所の実現を目標に掲げ,地域情報の受発信や市民サービス向上に資する区民等向けのアプリケーションの開発・運用など,新たな情報発信の充実に取り組んでいます。
この度,そのモデル事業として,政令市の行政区で初の総合的な情報を発信する地域密着型スマートフォン・アプリ「やましなプラス+」の運用を開始しますので,お知らせします。
もう10年前になるでしょうか。京都市から、観光シーズンになると道路渋滞がひどい。公共交通を利用させることで何とかしたいので協力して欲しい、という要請がありました。ジョルダンが京都市職員の旅費精算システムを請け負っていて、バスの路線を熟知していることが契機です。また、乗換案内でバスの時刻表搭載を始めていたこともあります。
それで「歩く街京都」というアプリを開発しました。
公益財団法人のASTEM(京都高度技術研究所アステム)と一緒になって作りました。当時は受託作業で始めたのですが、継続のための予算が取れなく、今は関係者でコンソーシアムを作って維持しています。
そのときの縁が、山科区のアプリにつながっています。ジョルダン社内では、未来のメディアはどうあるべきか。移動はどうあるべきか。街はどうあるべきか、といったことでの私の思いつきを話したりしています。一人一台スマホを持つ時代が始まっているのですから、もうスマホで全てできるようにすべきだ、ということでしょうか。
地域の情報は地域の人が集めてくれば良い。今アプリを見てみるとニュースの先頭は、「京都橘大学「冬冬夜」を開催します(12/21)」とあります。京都橘大学、私は初めて聞く名前です。まさしく地元メディアにピッタリです。ニュースを書いてくれる住民がいます。読ませるのにどうすれば良いだろう。読んだらポイントが貯まり、景品と交換できるようにしてはどうだろう。弊社のスタッフと山科区のスタッフの間で盛り上がってきたようです。その原資はどうすれば。地元の飲食店の広告を載せ、掲載料をとってはどうだろう。自治体にお金がないことは歩く街京都でよくわかっているので、関係者の発想はベンチャーです。
スマホには万歩計が付いていますから、歩いたらポイントが貯まるようにできないか。国民健保での支払いの医療費が安くなるのだから、これには区も協力してくれるのでは、・・・。スタンプラリーはどうだろう。ゲームを入れてみたらどうだろう。
よく考えるとこれで会社が成り立っているから不思議です。でもこういうことからいろいろなアイディアが出てきます。ポイントの交換をどうしようか。ベルマークの商品交換は一昔前、電子マネーに変えたり、マイレージに変えたりができればベターでは。そんなことを話していると実はGポイントというのがあり、売り込みに来ているという。
実際アプリに組み込んでみたら、ポイント交換はややこしい。もっとすんなり誰もが使う電子マネー、例えばPayPayあたりに交換できないものか。それもすごくスマートに。
漠然とした地域マネー構想が私の頭にあります。高齢者の車を若者が運転したらポイントがもらえるようにしたらどうだろう。高齢者の足問題を解決するには、いくつかの方法がある。高齢者の所有している車を他人が運転してあげる。用事が済んだら、帰りの運転をしてくれる人が名乗りを上げてくれれば良い。車を所有してない高齢者の場合はそれこそUberのようなものなのでしょう。もともとUberも家に帰るときに誰かを乗せて帰ってちょっと小遣い銭を稼ぐという発想から始まっています。
実は、山科モデルは、じわりと広がっています。神戸市、兵庫県、姫路市とか。もっとアプリを洗練し、自治体も増やしていくことを考えています、PayPayやEdyとも繋がるところに来ています。ポイントを管理するためのサーバーはもうできています。自治体でのみ使えるような地域通貨にして、地元のお店のスマホで決済できるようにもできます。
もうそこまでできているのですが、お金が絡むとややこしいです。資金決済法というこれまたややこしいのがあります。マネーロンダリングをどう考えるか、どうも私には苦手な問題がいっぱい出てき始めました。
スマホもそろそろ変わる頃と感じ始めています。大きなスマホで話す姿は滑稽です。通信を担う部分が分離し、見る部分、聞く部分、話す部分は別になっていきます。メガネとの連動とか指輪、タイピンとの連動とかが始まります。
顔認証と組み合わせればもっと便利になります。そういう時代を日本が総力を上げてやっていけば、再びパワフルな日本が出来上がるのではないでしょうか。
ZOOM TalkX 隠岐の島町デザイン界 20221218 9:00~11:00
ZOOM TalkX 隠岐高校総合探求学習 20221219 16:00~18:00
ZOOM Talk2② 20221220 10:00~10:30
・スマートシティ2-4 (布野→佐藤)2022 1228
◎「山科区公式アプリやましなプラス+」
「山科区公式アプリやましなプラス+」見ました。隠岐の島関係者に紹介しました。
単に広報・情報メディアとしてでなく、地域生活を豊かにしていくインフラになりそうな気がします。地域活動が地域独自の価値(介護、清掃、・・・)地域通貨に換算されるまでいければ素晴らしいと思います。
←布野の関心としては、中央銀行、ヘッジファンドが株価、為替レートを指標として世界経済を動かしていく資本主義システムに代わるシステムの可能性を見たいわけです。佐藤さんの教示で、仮想通貨(暗号資産)、WEB3,ブロックチェーン、DAO分散自立組織、NFX・・・の世界に俄然興味がわいたわけです。実際、WEB3の開発者の中には、世界資本主義の「脱構築」を目指している「革命家」がいると思いますね。そして、国家として、エルサルバドル、中央アフリカが仮想通貨を法定通貨として導入したことになるほどと思いました。しかし、ブロックチェーン・システムが共有化される前に、世界は、帝国主義段階、冷戦時代に逆戻りの様相です。また、税制、規制逃れのシステムと化しつつあるようです。FTXトレーディング破綻とか、株価と為替レート、利率で生きる投機的投資家がいて、それを食い物にする組織者(詐欺師?)には水をかけられる思いです。
300万人のメンバーがいれば、独立国が可能だと思うのですが。「全共闘時代」、その本質的提起に反応していたのは2割だと言われていました。今年、世界人口は80億人を超えましたが、その2割は16億人ということになりますが、国家の数は196ですから2割だと40ヶ国がブロックチェーン・システムに切り替えればいいわけです。中国とインドが組めば、28億人となるわけですから、世界が支配できます。G7とかG20とかいっているのはGNPの総和ですね。これを支配しているのが資本主義システムということでしょう。北朝鮮が暗号資産の売買で一日でミサイル何発分を手に入れたというニュースには一筋縄ではいかないなという思いもあります。
→「新都市の論理」としても、同様の構造、仕組みが第一に問題になります。日本という中央集権国家における3割自治と言われる予算配分が問題になります。スマートシティ、デジタル田園都市構想といっても、中央政府によって、その施策に合致する自治体にのみ助成金を交付するという仕組みは変わりません。ふるさと納税に期待できそうとは思うのですが、国に一定程度吸い上げられるのは同じでしょうか?
Q「山科区公式アプリやましなプラス+」については、佐藤さんが言うように次の一歩に壁がありそうですね。「PayPayやEdyとも繋がるところに来ています。ポイントを管理するためのサーバーはもうできています。自治体でのみ使えるような地域通貨にして、地元のお店のスマホで決済できるようにもできます。」ということですが、Gポイントは、誰が運営してるんでしょうか?。確かに「誰もが使う電子マネー、例えばPayPayあたりに交換できないものか。それもすごくスマートに」と、思います。
←「地域マネー構想」「地域Uber」構想、また、「資金決済法」について、さらに教えてもらえばと思います。
◎AIと社会・経済・ビジネスのデザイン
先日話したんですが、年賀状をやりとりしている小長谷一之さん―実は文化人類学の小長谷有紀[3]さんに先に出会ったのですが―が最近何をしてるんだろうと思ってネットをみたのですが、大阪市立大学の都市経営研究科初代研究科長で「都市経営研究叢書シリーズ」を刊行していて、その3に『AIと社会・経済・ビジネスのデザイン』(村上憲郎・服部桂・近藤彦・小長谷一之)が2020年に出て、今年、増補されています。教科書になっているんだそうです。
佐藤さんもよく知っている村上さんが「第1章 AIの誕生と今後の展望」で、京大工学部を出て、日立電子・・・Googleなど履歴を披露しています。われわれより2歳年上でしょうか?この対話の最初に、フォートラン、カード時代からのコンピューターとの関係の歴史を振り返ったのを思い出しました。
小長谷さんは「第11章 AIの発展と課題の総括」「第12章 AIと社会・経済のデザイン」を書いています。AIの発展には、第一次(1950~1960年代)、第二次(1980年代)、第三次(2000年代後半~)の段階があるといいますが、結局、SNSの進化(Web2.0以降)ビッグデータの利用が可能になって以降のことなんですね。AI元年は2012年としています。アルファ碁がイ・セドルに勝ったのが2016年。
基本は検索機能、情報整理の知恵と考えれば、なんとなくわかるような気がします。因子分析とか多変量解析、数量化Ⅰ類~Ⅳ類など一応使ったんですが、何かプリミティブな感じがしていました。ところが、言語、ワープロの変換機能から、音声、画像の認証、類型分類整理へ、ビッグデータの処理技術がいかに発展してきたかということが、この教科書を斜め読みしてわかります。機械学習、ニューラルネットワーク、ディープラーニングなどなんとなく理解できそうです?。
Q佐藤さんの仕事で使っておられるような気がしますが、具体的に教えていただければと思います。
実は、一年ぐらい前にボケ防止にプログラミングの世界をのぞいてみようとPythonの教科書?(コーリー・アルソフの『独学プログラマー』)を買ってみたんですが、Fortranと同じかなと思って、最初の50頁ほど読んでわかった気になっていました。この教科書には、Googleのテンソルフロー(Colab)、Python,を使うプログラム例があります(第4章 AIソフト:テンソルフローの使い方)。隠岐の島をケースになんかプログラム(なんかのマーケティング)を書いてみようかという気に一瞬なりましたー多分できませんが!-。ニューヨーク市は、タクシーの乗車データをcsvファイルの形式でオープンにしていて、サンフランシスコ市はレンタル自転車の稼働データを公開しているようです(https://s3amazonaws.com/fordgobike-datAIndex.html)。
問題は、AIを用いて目指す都市のあり方ですね。
村上憲郎さんは、日本のこれからについて様々な提言しているのですが、その中で、スマートハウス、スマートシティの重要性を指摘しています。AIは家電になり、その集積がスマートハウスであり、AI自動車によるAI交通システムがスマートシティになるということのようです。小長谷さんも、自動運転(スマートシティ)が日本を救う、「個人公共交通」としての自動運転超小型EV(エコカー)、「自動車単体」「家電単体」から「都市インフラ」産業へ、コンパクトシティーからスマートシティへ・・・と力説しています。
Q AI-EV自動車、自動運転による交通システムはどう考えればいいですか。Walkableの都市のあり方と矛盾するような気がしますが・・・?
スマートシティについてはもう一度、その基本理念を整理しようと思います。
◎この対話のまとめのアイディアとして、隠岐の島を念頭に、ある架空の島(地域)についての様々な仕組みを考えるスタイルはどうかと、先日佐藤さんと話しているときに思いつきました。
この島(地域)は、分散自立組織DAOとして、ネットワーク(ブロックチェーン)で繋がっていて、それぞれの島については民主的に運営されるというのが設定です(大都市も基本的にDAOのネットワークで成り立っているととりあえず考えます)。
うまく書けるかどうかは別として、思い浮かんだのは、プラトンの理想都市(『国家』)、トマス・モアの『ユートピア』[4]、カンパネッラの『太陽の都』・・・井上ひさしの『吉里吉里国』(のスタイル)です。
トマス・モアの『ユートピア』は,トマス・モアがアントワープ滞在中に知り合ったラファエル・ヒスロディの物語として語られます。ヒスロディとは,「おしゃべりが得意」という意味で、このヒスロディは,アメリゴ・ヴェスプッチの4回の航海に全て参加したのち,最後の航海で帰国せずにいろんな国を見て回ったあげく,ついにユートピア島に至ったという設定になっています。トマス・モアは,プラトンの『国家』,そしてアウグスティノの『神の国』を徹底して読んでいます。古代以降の哲学者や神学者のテーマであった「理想国家」について考え抜いたうえで,彼自身が構想する「理想国家」を描きます。桑子さんはギリシャ哲学が専門ですから、聞いてみたいと思います。 ユートピア島およびその首都アモロートは,イングランド島、ロンドンを想定しているわけですが、『グリッド都市』(Column6 トマス・モア「ユートピア」)で、僕が復元案[5]を書きました。反応はありませんが。首都アモロート市は,約2マイル(3.2km)四方[6]で, 30戸(世帯)×200=6000戸(世帯)からなるといいますから、人口12000~30000人、隠岐の島町ぐらいです。現代都市としては小規模すぎるかもしれませんが、日本の地方都市の今後のモデルとしてはいいのかもしれません。
20世紀に最大の影響力をもった都市理念は、E.ハワード(1850~1928)田園都市Garden Cityの理念ですーまさにデジタル田園都市構想!―その衛星都市の規模はやはり3万人程度だったと思います。田園調布、田園都市線は田園都市論に由来します。その基本理念は,①都市における農業用地の確保(都市ー農村の結合),②緑地帯(農業用地)によるスプロールの制限と人口抑制(自治体による成長管理),③自立的産業育成(自給自足),④公的土地所有,⑤職住近接です。しかし、世界中の田園都市建設の試みはわずかの例外を除いて実現しませんでした。実現したのは田園郊外Garden Suburbです。必要なら補足します。
最初に、『都市の論理』「スマートシティ論」「田園都市論」・・・などを対話で論ずる(整理する)のはどうでしょう。まあ、思い付きですが・・・・。
再掲しますが、結の部分の具体的提言を可能な限り豊富化するということでしょうか?
新都市(スマートシティ)の論理
起 デジタルICT革命 コミュニケーション・トゥールの未来 道具 技術
Web3 メタバース AI/承 都市コミューン人・集団 社会 家族・共同体・都市国家/転 地球環境 物質循環 経済/結 Happy Life 豊かな生活の近未来 自由・自律と共生・共存
衣食 食糧・エネルギー 住 交 地域Uber 自動運転とWalkable City 教育 医療
ZOOM Talk2③ 20221228 10:00~10:30
Jordan 20221228 18:00~
東條巌 ジョルダン取締役、藤原博文タイムインターメディア 知識工学センター 執行役員とPython,
Deep Learningについて教えを乞う。
スマートシティ2-5 (佐藤→布野)2023 0107
昨日から、ラスベガスです。CESです。ちょうど3年ぶりでしようか。3年前に来た直後にコロナです。いったいこの3年は何だったのでしょう。アメリカはすっかり日常に戻ったようです。
いつものように空港に着いて、Uberでホテルまで行く。ライドシェアも利用者との出会いがスムーズにできるよう、空港の待ち合わせ場所が広い駐車場で、1から10くらいまでの番号が付いている。あと何分というのは携帯でわかるのですが、着いたときに4番で待っています、というメッセージが来ます。
3年前と同じくらいの時間に同じホテルまで、でも料金は5割増しです。円安でもあるので、倍というのがアメリカの物価の感覚でしょうか。日本人は少なく、韓国人が目立つ。CESの出展企業もそうですね。家電は、日本よりも韓国、中国。数年前から車関係の展示が増え、今年はコンベンションセンターに新しい棟ができ、そこが車専門です。
5年前くらいでしょうか、コネクティッドカー、自動運転がテーマでした。大きなブースで、トヨタはコネクティッドカーをテーマにして、ベンツは2025年には自動運転を市場に出すと豪語していました。ところが今年は、トヨタ本体はトヨタ紡織の小さいブースだけ、ベンツは昔同様のブースを構えてはいますが、自動運転の話題は無い。自動車関係は、EVとデザインが軸です。
そういえば、去年のCESでは、あのイーロンマスクがハイパーループという新交通システムの実証実験をラスベガスで始めようとしていて、その一部をCESの会場でやる、と言っていました。何としても体験したいとギリギリまで迷いましたが、コロナ禍、諦めましたが、実際には、会場間をハイパーループを模したトンネルで結び、運転手付きのテスラで運ぶ、というアホみたいな話でした。
今年は、全く、その話はなくなっていました。コンベンションの主催者から、ラスベガス市までが一緒になって、大きなヨタ話で動く、というのがアメリカの素晴らしいところですね。さすがにトヨタ本体が出てないのは寂しく、今現在の利益からすれば、嘘でも良いから
Woven city はこうなるといった話をでっち上げ、EVより先の水素カーでも出して欲しかった、というのが私の正直な感想です。
布野さんから「> Gポイントは、誰が運営してるんでしょうか?。」という問いが前回ありましたが、Gポイントの運営会社ジー・プラン社はパソコン通信のビッグローブ株式会社の子会社です。ビッグローブは、今はNECではなくKDDIの子会社です。ただ、ポイント交換は、ジョルダンでもPayPayや楽天Edyとつないでいます。
「資金決済法」は、期限付きであれば問題ない、ということを、金融庁からもお墨付きをもらっているので、「地域マネー構想」はもう出来上がっています。スマホで決済は、お店の店主のスマホでもできますので、地域ポイントはもう出来上がっているようなものです。
店主のスマホでというハードルを考えたとき、PayPayや楽天Edyを活用できますが、これは全国区なので地域を超えても使える、ということになります。しかし実際には、この交換は手数料を払わなくてはいけないので、地域のポイントよりは割高になるので、運用上は、あまり問題にはならないようにも思います。
>隠岐の島を念頭に、ある架空の島(地域)についての様々な仕組みを考えるスタイルは
>どうか
この布野さんの考えに賛成です。隠岐島とか、私の関わっている白河市とか、移動の問題は大きな問題ですが、Uberとはどうにも結びつかないように感じ始めています。
Uberは公共交通のネットワークがないアメリカの都市にはピッタリのものです。日本の大都市には流しのタクシーが走っているのですから、これはどうしても喧嘩になります。しかし、隠岐島とか、白河市とかは、高齢者に移動のニーズがあってもタクシーも十分では無いのです。そこをミニバスのようなものでタクシー会社が客のいる時間帯で定時運行するとか、ボランタリーベースの助け合いで、無償はお互い気が引けるので、地域ポイントでやり取りをする、というやり方で実現していけば良い、と思います。皆がスマホを持ちメッセージのやりとりができる状態になれば、このボランタリベースの助け合いを実現するには今のICT技術で十分可能です。
バスに乗るのもスマホ決済で乗るようにすれば、ビッグデータがとれ、シェアサイクルとかのデータと合わせれば、理想的なバス路線を組み立てることも可能です。
ブロックチェーン絡みもどう応用するのか、いろいろ考えていたら、CESで投票に応用する、というベンチャーの展示を見ました。電子投票の一番の問題は、システムを握る会社が悪さをしたとき、検証する術がない、ということです。ブロックチェーンなら大丈夫です。頻繁に住民の意見を聞く、ということもできます。これはとんでもない思いつきです。
Pythonの本を持ってアメリカに来ています。このあとサンノゼに寄り、何人かの知人と会う予定がありますが、合間を見て、どこまでできるか、少しチャレンジする気でいます。Mac上でpythonのプログラムを書き、実行することまではできたので、あとはやるだけです。ただ、そこで要求される集中力と時間は、他にも動かなければならない自分とどこまでマッチするかはありますね。
最後に、アダム・ファーガソンの「ハイパーインフレの悪夢」という本の存在を知り、kindleでダウンロードして、今、読んでいます。ラスベガスで存在の薄くなった日本、とんでもない借金の大きさの国に企業も個人もお金を求める。その先に来るのは、ハイパーインフレしかないのではないか。そう思ったとき、ひょっとして地域通貨こそ危機に備えた解決法になるのでは、と考えたりしています。
スマートシティ2-6 (布野→佐藤)2023 0117
暮れの(20221228)の東條さんと藤原さんとの忘年会は実に刺激的でした。とくに東條さんが宮内康さんに「数理技研 オープンシステム研究所」の設計を頼んだ話は不思議な因縁を想いました。
宮内康さんは、研究室の先輩で、同時代建築研究会を結成(1976)、亡くなるまで(1992)、一緒に活動していました。彼は、当時有名な建築評論家で『怨恨のユートピア』(井上書院、1971)は建築の学生はほとんどが読んでいました。理科大の講師(1968~)だったのですが、造反教師として解雇通告を受け(1971)、裁判闘争を強いられます。結局、裁判には勝つのですが(1974)、以降、全国の造反教師の裁判闘争支援で苦労されました。その経緯は『風景を撃て』(相模書房、1976)にまとめられています。布野は、1978年に東洋大に講師として赴任、非常勤であった宮内さんと研究室活動を一緒にしてきました。同時代建築研究会編『悲喜劇・1930年代の建築と文化』(現代企画室, 1981)、宮内康・布野修司編・同時代建築研究会著:ワードマップ『現代建築ーーーポスト・モダニズムを超えて』(新曜社,1993)は一緒に出しました。いくつか設計も一種にしています。「山谷労働者福祉会館」は研究室挙げての自立建設です。これについては、山谷労働者福祉会館運営委員会『寄せ場に開かれた空間をー山谷労働者福祉会館建設の記録』(社会評論社, 1992)があります。
亡くなった後、怨恨のユートピア刊行委員会『怨恨のユートピア 宮内康の居る場所』(れんが書房新社、2000)を出しました。これを東條さんに送りたいと思っていますが、余部があるはずが、一冊しか手元にありません。ネットにはあるようですので、なんとかします。
ラスベガスのCES(Consumer Electronics Show: ConsumerTechnology
Association)については、日本では、SonyとHondaのEV車Car Theater?Afeelaのみの報道でしたが、トヨタのWoven city も、??ということですね。メタ(ヴァース)の行方はどうなんでしょう?
メダヴァースについては、上勝町のミーティングに2度参加して、現状をなんとなく理解しましたが、ヴァーチャル観光案内所、特産品販売所、地域博物館などで使えると思いましたが、ICTとしては、ZOOM、TV電話等で十分という気がしました。
「新都市の論理」の交通システムについては、地方都市と大都市と2つのヴァージョンがいるということでしょうか?前者については、ヴォランタリーベース+地域貢献ポイント制のスマホ決済で実装可能ということですね。隠岐の島、白河で具体化できればと思います。「ビッグデータがとれ、シェアサイクルとかのデータと合わせて、理想的なバス路線を組み立てる」ことを考えましょう。プログラミングの演習にもなりますね。他に先進事例はあるんでしょうか?
コミュニティバスは、多摩地区ではいろいろ走っていますが、大都市のUberシステム、都市間交通網については、国土計画の問題になりますが、とりあえず、置いておきましょう。
地域マネー構想はもう出来上がっている、というのは心強いです。
やるだけですね。と思っていたら、島前の海士町で大学生が実装しているというニュース(朝日新聞記事)、サステイナブルな仕組みを構築しましょう。
ただ、地域経済の持続性については、しっかりした裏付けが必要だと思います。
先の記事にも、暗号資産(仮想通貨)の可能性について経済学の先生の名前が出てますが、暗号とか、仮想という名前がよくないですね。貨幣システムの問題であり、手交貨幣、預金貨幣は別であり、手交貨幣の時代が去りつつあるということだと思います(黒田明伸『貨幣システムの世界史』(岩波書店、2014))。
アダム・ファーガソンの「ハイパーインフレの悪夢」の結論も知りたいと思います。「ひょっとして地域通貨こそ危機に備えた解決法になるのでは」ということを深めたいと思います。ブロックチェーンが使えるのではないか、というのが、佐藤さんにWEB3を教えてもらった時の直感です。
ブロックチェーンを投票に応用するというのが、とんでもない思いつきというのはどういう意味ですか?スマホベースの社会を前提にすれば、ありうると思いますが、ポピュリズムの問題とか、様々な議論があると思います。先に触れた成田祐輔『22世紀の民主主義』は、AI(ビッグデータ)に政治を任せればいいといっています。
Python、Deep Learningについてはなかなか時間がとれません。ただ、暮れから正月にかけて孫からMinecraftの手ほどきを受けて(まともに教えてくれない、質問攻めにして、ようやくJiJiがやりたいことを理解してくれた段階で時間切れ)、だいたい理解しました?
Pythonについて、あとはやるだけ、というところまでいっていません。Anacondaはインストールできたんですが、いくつかのパッケージがさらに必要なようです。
とにかく具体的なプログラムを設定したいですね。ボケ防止ですが。
ZOOM Talk2④ 20230117 10:00~10:30
・スマートシティ2-7(佐藤→布野)2023 0129
宮内康さん、私は面識がありませんが、(ひょっとしたら「オープンシステム研究所」の落成式でお会いしているかもしれません)東條さんも布野さんも親しかったようですね。二人の話を聞いていて「六次の隔たり」という言葉を思い出しました。友達の友達を辿っていくと、全世界の人はすべて6人目でつながる、ということです。ただ、私たちの日常は狭く、2次でつながっているような気がします。それ故、良い仕事をしなければいけないね、と社員には言います。
ブロックチェーンのこと、前回、CESでとんでもないベンチャーを見つけた、と伝えました。電子投票の一番の問題は、システムを握る会社が悪さをしたとき、検証する術がない、ということです。ブロックチェーンなら履歴が関与している全てのサーバーに残るので、誤魔化しようがないです。誰が誰に投票したか、ということがわかるので、そこをどうするか、ということだけは考えなければいけませんが。
そんなことを考えながら、私自身、果たしてブロックチェーンのことがどこまで理解しているのか、どんどん不安になってきています。これまでの常識を破る革命的な手法、ということで話題になっています。しかし、ホストコンピュータの中にデータを格納する、ということではなく、そのプロジェクトの関係者全員のコンピューターにトランザクションデータを格納する、ということは、考えただけでも気の遠くなるような処理が発生しているわけです。
ビットコインなどの仮想通貨を作る作業をしながらならわかります。仮想通貨に関わるトランザクションデータを蓄える作業をしながら、自分も仮想通貨を発掘しているわけですから。しかし、世界中で何人の人、あるいは何台のコンピュータがこの作業に関わっているか考えるだけでゾッとします。とてつもない電力の消費です。
話題の最大のNFTマーケットプレイス OpenSeaでデジタルコンテンツを買ってみれば、ブロックチェーン上で仲間に入ることのコストがわかります。まず仮想通貨を所有するために、自分の口座を開かなければなりません。色々な業者がありますが、国内で最大級なのは、コインチェクでしょうか。年齢制限があります。75歳を超えると口座が開ません。取引を開始するには、Wallet(ウォレット)を持たなければいけません。MetaMask(メタマスク)あたりがポピュラーでしょうか。そこまで準備をして、実際に取引を開始します。
購入するということは、仮想通貨のトランザクションに自分が購入した、という履歴を残すことです。世界中、一体、何台のコンピュータが動いていることでしょう。その全てに履歴を蓄えることに対する支払いが発生します。これを「ガス代」と言いますが、それが2千円もかかります。
仮想通貨に関わりもなく、プライベートな空間でブロックチェーンを使うこともできます。こうなると限られたサーバーで運用することになります。ホストコンピュータで処理をする方がずっと安いような気もします。
BitCoinが後進国で流行っている、ということは、例えば海外送金での有効性を考えれば納得がいきます。大久保でアルバイトをしている外国人が祖国にお金を贈ろうとしたとき、銀行経由だと大変です。数十万円のお金を送るのに半日、最低でも5千円以上の費用がかかります。今はそれ以上にマネーロンダリングに関与していない、という証明までしなければなりません。BitCoinならすぐ送れ、すぐ引き出します。ただ、これは冷静に考えれば、仮想通貨でなくとも、例えばそういう世界的なノミ屋さんがあればローテクでも済む話です。
要は、新しい技術、新しい制度には全て胡散臭さがある。本当にどういった局面で今のサービスを超える素晴らしさがあるのか。メタバースもWeb3も全てそういう視点で考えていかないといけないのではないか。最近になってそんなことを考え始めています。
「新都市の論理」の交通システムについては、布野さんのおっしゃる通り、地方都市と大都市と2つのヴァージョンがいるということだと思います。大都市も大きく変わらないといけないと思いますが、地方は急がないといけない、と思います。
新都市交通網については、ドイツに本社があるPTV
GROUPが、交通・モビリティ・ロジスティックスの3本を柱とし、交通・輸送ソフトウェアの開発や交通計画・都市計画プロジェクトの支援コンサルティングをしています。日本の大学でも研究している人たちはいます。
アダム・ファーガソンの「ハイパーインフレの悪夢」、ドイツでのハイパーインフレのことが克明に書かれています。戦後の日本でも1946年に新円の発行時に預金封鎖がありました。最大の要因は戦時国債の発行により、終戦時の日本の債務がGDPの約2倍にまでなったことです。預金封鎖と併せて、預金、不動産に最高90%という過酷な「財産税」が課され、国の債務が減少していきました。
藤巻健史は、今発売中の週刊ダイヤモンドで日銀債務超過に陥る可能性に触れている。Twitterを見ると、「そうなると外資系の金融機関が日銀との取引を中止する。米国の金融機関がすべて円での決済から撤退してしまうと、円とドルの交換、取引ができなくなります。円を誰も持ちたがりませんから。円の大暴落は避けられません。」
私は、狼おじさん、藤巻健史に毒されているのはないか、という思いもあり、その後、高橋洋一の「新・国債の真実」という本を取り寄せて読みました。財務省は税金を増やしたい。財政問題があるなら、政府資産を売れば良い。日銀は政府の子会社なのだから、統合バランスシートを作れば良い、と威勢は良いです。
それでも市中に出ている膨大なキャッシュは、インフレを加速冴えていくようにしか思えません。
日経の1月26日には、次のような記事が載りました。
>債券のインデックス(指数連動)運用に使う指数から日本国債を除外する動きが加速し
>ている。英指数算出会社のFTSEラッセルは2月、算出する世界的な国債指数「FTSE
>世界国債インデックス(WGBI)」から日本の10年物国債の3銘柄を除外し、新発国債
>についても組み入れを見送る。
来年には、新しい紙幣が発行されます。この機に、今の紙幣の流通を止め、例えば十分の一の比率で交換された新しい紙幣しか流通させなくする。財政破綻を一気に解決するにはまたとない機会のように思えてなりません。そのとき、キャッシュレス決済はどう動くか、企業はどう対応すれば良いのか、そんなことを考えています。
「新・都市の論理」を急ぐのも、そういう事態になったとき、大きく日本社会は混乱します。しかし、それ故に、今の日本を根本から変えるのは、またとない機会でもあります。備えあれば憂いなし、という消極的な意味からばかりでなく、この機に乗じて全てを変える、そういった積極的な意味からも知恵の出しどころのように思います。残された時間はほとんどありませんが。
ZOOM Talk2⑤ 20230131 10:00~10:30
・スマートシティ2-8(布野→佐藤)2023 0203
「六次の隔たり」ということは、社会学者(大澤真幸)が使っていて読んだことがあります。SNSで瞬時に世界中の誰ともつながれる社会が実現しているということですが、フィリピンの入管施設で数々の強盗を指揮することもできるわけです。犯罪ネットワークでなく、新たなコミュニティ・ネットワークを重層的にどう作り上げるかが大きなテーマで、DAO(Decentralized
Autonomous Organization)分散型自立組織、ブロックチェーンへの関心、すなわち、「新都市の論理」の核だというのが直感でした。
朝日新聞の客員論説委員の神里龍博教授(1967生、千葉大、科学史)がブロックチェーンを革命的なトゥールだと書いていますが(「Web3.0から見える世界 中心なき運営 革命の序曲」(『朝日新聞』2023年1月27日))、ほぼ同感です。ところが、実際に先行する事例には胡散臭さがあり、佐藤さんがいうように、何か決定的な問題がありそうな気もしないでもない。特に、莫大なデータを格納しておくためにどれだけのエネルギー(電力)が必要なのかという問題―処理はAIに任せるとして―は大きそうです。毎日のようにFacebookに写真や録画をUPするのですが、このデータを格納するのにMetaはアリゾナの砂漠?巨大なサーバー施設をつくっている?と聞いたような気がしますが、そのエネルギー、コストは無視できない気がします。DAOを金融、投資、貨幣、すなわち経済的交換ネットワークのなかで成立させるためには、一定の規模が前提されるということでしょうか。
Open Sea、コインチェク, Meta Mask(メタマスク)など様々な業者があるようですが、問題は誰が運用するか、そのネットワークが重層化しているイメージでしょうか?そうするとDAOは、様々なブロックチェーンに重層的に参加するネットワークを構想すればいいということですね。それぞれ、手数料がかかる。
Web3の革命性という場合、国家の枠組(通貨、輸出入管理)と国際機関のネットワークとは別のネットワークが期待されるわけで、それが先行的には、様々な規制、税制逃れ、Tax Haven・・・などが追及されているのが実態ということですね。それが胡散臭い理由ですね。
素朴には、隠岐の島や白河で、すなわち、ある都市(DAO)で、地域通貨によって、地域循環の仕組みをつくる、そして、世界中の理念(新都市の論理)を共有する都市(隠岐の島の場合は離島)とブロックチェーンで繋がる、さらにクラウド・ファンディングなどを重層化させる、ということではないかと思います。
ブロックチェーンの真の可能性を検討したく、プライベートな空間でブロックチェーンを使うためにどのようなプログラムが使われているのか知りたい、Pythonで書きたい気がします。
経済学は、駒場で経済学原論(塚本靖)のような講義を聞いただけで、全く学習していません。資本論を我流で読んで資本主義の基本原理を理解したつもりで、近代経済学なるものに全く興味をもたず、理解せずに来たのですが、佐藤さんのおかげで、多少新聞の経済欄にも眼を通すようになりました。経済人類学や貨幣の世界史、経済学を出自とする柄谷行人の仕事(近作『交換様式と力』も読みました。国際的にすごい章をもらったようですが、疑問もあります)にはかねてから興味がありますが、新しい資本主義などというのはさっぱりわかりません。経済学にノーベル賞があるのはおかしいとたびたび書いてきたところです。「欲望の資本主義」に関連して触れましたが、岩井克人(『ヴェニスの商人の資本論』はそれなりに評価しています)のインタビュー記事(資本主義NEXT会社はだれのために「目的は金もうけじゃなくていい 資本主義の修理法 「株主中心」は誤り」 『朝日新聞』2023年1月22日)というのはやっぱりわかりません。「株主資本主義」は誤りで「ステークホルダー資本主義」が勢いを得ている、最終的には株主の利益にならなくても会社は別の目的を持てる、というのですが(この会社=二階建て論は彼の持論)、果たして、このシリーズのデスクがいうように、時代の経済を考える土台になるんでしょうか?不動産資本主義は間違いといった理論が必要だとかねがね思います。土地、地球は人類のコモン(共有財産)です、最近のマルクスの読み直しもこのコモンに関わっていると理解しています。
佐藤さんが、藤巻健史、高橋洋一に興味をもつのはわかります。MMT(現代貨幣理論Modern Monetary Theory)批判ですね。しかし、破綻のシナリオは、日本、日銀の信用、格付けがさらに下がれば、一気に起こるということでしょうか?さらに説明お願いします。
アルゼンチンとブラジルの通貨統一のニュースもありましたが、新たな通貨の発行は、莫大なストックに結びつきます。前に書きましたが、スペインのTVドラマ「ペーパー・ハウス(La casa de papel)」、造幣局を占拠中に印刷した紙幣のみ強奪しますが、リーダーの教授曰く、EUは、富める者の利益を紙幣の増刷によって穴埋めしているではないか!です。
「日銀がいくらでも発行できる紙幣で国債が買われています。財政規律など関係なく、国家財政は維持できるのでしょうか?国債を諸外国のファンドが買い占めたりする事態は想定できないのでしょうか?また、日本国民が保有する資産(1000兆円?)を超える借金がある時点で日本の国家財政は破綻しないのでしょうか?」と書きました。
来年の新しい紙幣の発行に着目する佐藤さんはさすがですね。しかし、今の紙幣の流通を止め、例えば十分の一の比率で交換された新しい紙幣しか流通させなくする、なんてことが可能でしょうか?財政破綻を一気に解決するにはまたとない機会といいますが、これまでの借金(国際)はだれが負担することになるんでしょう。先の『ペーパーハウス』では、増刷されたお金は富裕層が吸い上げてきたという設定でしたが、企業の内部留保がチャラになるなってことが可能ですが。国債の国民負担はどのていどなんでしょうか?
この対話のおかげで、「新都市の論理」の骨格が見えてきたように思います。
ただ、DAOの物質的基盤(食糧、エネルギー、・・・)をどう考えるかについての理論が必要だと思います。自律分散型組織ですから、自給自足の都市が理念化されますが、それは如何に可能か、ということです。国単位では、食糧自給率、エネルギー自給率、資源の確保、サプライチェーンのネットワーク化・・・の問題で、世界史を振り返れば、これが全て戦争の原因になってきています(それだけではない、権力者の妄想もあります)。
食糧問題、エネルギー問題を考える最大の枠組として、気候変動、地球温暖化の問題があると思います。
前回のZOOMでちょっと話しましたが、別の原稿のために、グレタ・トゥンベリの『クライメイト・ブックClimate Book』(グレタ・トゥンベリ編(2022)『気候変動と環境危機 いま私たちにできること』河出書房新社)の分厚い本をパラパラと眼を通し(見)ました。気候変動と地球温暖化問題について最前線で提起を続ける科学者、専門家、活動家、ジャーナリスト、著者に原稿を依頼して編集したものですが、彼女自身18章(全五部102章)を自ら執筆しています。8歳にして気候変動について知り、アスペルガー障害(自閉症スペクトラム)を病みながら、15歳にして声を上げた、以降、学んだことを吐き出すように書いています。彼女は、今20歳、考えてみれば、彼女も、われわれの孫たちも21世紀後半までは生きている可能性が高いですね。
「人新世」という言葉が一般化するのは、21世紀に入ってからですが,グレート・アクセラレーションといわれるのは石油が使われ出した20世紀後半ですね。われわれが生まれた頃、1950年に25億人であった世界人口は、2000年には3倍の75億人になり、昨年80億人を超えました。2050年には100億人に達すると予測されてきましたが、さすがに合計特殊出生率TFR(Total Fertility Rate)は世界平均では下がりつつあり,そこまではいかないとも言われ始めています。世界一の人口大国中国も人口減に転じ、インドにそと地位を譲りました。しかし一方で,医療技術の進歩や人工環境化による高齢化の進行があります。地球全体が、風船が弾けるように同時に破綻することはないわけで、北極圏の海氷、氷床、永久凍土の融解、北方林の立ち枯れ、アマゾン雨林の旱魃、サンゴ礁の死滅、アジア・モンスーンの変化、エルニーニョの南北振動・頻度の変化、南極氷床の損失など、既に、様々な兆候が現れています。海面上昇によって国土が失われる危機にある島嶼国家など破綻は既に各地で起こりつつあって、隠岐の島も無縁ではありません。そんななかで、「新都市の論理」をどう展開するか、という問題があります。都市の物質的基盤です。それと、交通運輸関係が二酸化炭素排出量の4分の1を占めるという問題があります。トゥンベリは、「飛行機に乗るな」とアピールしますが、自動車、船舶も含めた交通運輸業の化石燃料消費が莫大であることの指摘です。彼女は「地域の公共機関を無料にする」「交通手段を考え直す」(EV車、カー・シェアリング・・)というオールタナティブをしっかり提案しています。
要するに、全ての生命はCO₂から生み出され、太陽光(光合成)によって酸素が造られた。40億年前に大気中の水蒸気H₂Oが凝結し、雨として地表に降り注いだことで最初の海(原始海洋)が作られた。この海は大量の二酸化炭素を吸収していくが、それから約2億年が経って最初の生命が誕生するのはこの二酸化炭素の海においてである。そして、生物に取り込まれて固定化されたCO₂は地球の火山活動などによって大気中に放出される。植物がこのCO₂をO²に変換する。CO₂が固定化されなければ、大気中のO²は全て消費されることになる。地球の生物環境はこのCO₂とO²の実に微妙なバランス(炭素循環)の上に成り立ってきた。大気中にも開放された酸素は、紫外線と反応してオゾンO³をつくる。オゾン層は当初は地表に近いところに形成されたが、酸素の供給量が増えると次第に成層圏にまで移動する。このオゾン層は、DNAを破壊する紫外線を減少する役割を果たしている、ということのようです。そして、この間生物は大量絶滅を繰り返した来た。この絶妙のバランスは、最終氷期の終焉後、農耕が開始されて以来の1万年ほどの間(完新世)で、都市の起源は数千年前のことです。
地球環境は果たしてどうなっていくのか?このあたり、倉本さんの見解を聞きたいような気がしています。
スマートシティ2-9 (佐藤→布野)2023 0213
「日銀がいくらでも発行できる紙幣で国債が買われています。財政規律など関係なく、国家財政は維持できるのでしょうか?国債を諸外国のファンドが買い占めたりする事態は想定できないのでしょうか?また、日本国民が保有する資産(1000兆円?)を超える借金がある時点で日本の国家財政は破綻しないのでしょうか?」
この問いを、今、話題のchatGPTに投げてみます。返事はすぐきます。
金融緩和のプロセスを通じて中央銀行 (この場合は日本銀行) が国債を購入するという概念は、中央銀行が経済に影響を与えるために使用する一般的なツールです。それは政府が債務を賄うことを可能にしますが、財政規律に関係なく国家財政が維持されることを保証するものではありません。政府は依然として予算のバランスを取り、歳出と歳入を管理し、長期的に財政の安定を維持するために経済の構造的な問題に対処する必要があります。
外資による国債買い入れに関しては、確かにあり得る。実際、外国人投資家は日本国債のかなりの部分を保有しており、日本政府の資金源となっています。しかし、海外資金への依存は脆弱性を生み出す可能性があります。資本の流入はセンチメントや市況の急激な変化に左右される可能性があるからです。
債務が国民の保有する資産を超えると、日本の財政が破綻する懸念があるが、政府債務の価値は、国民の保有する資産だけで決まるのではなく、経済の全体的な強さと政府の債務返済能力によって決まります。経済が成長すれば、政府の税収が増え、債務の返済が容易になります。さらに、日本銀行の金融政策は、債券市場の安定を維持し、政府財政の持続可能性を確保する上で役割を果たすことができます。
しかし、高水準の政府債務が持続すると、政府支出のための財政余地の縮小、債務に対する利払いの増加、市場の信認の潜在的な低下など、将来の財政問題につながる可能性があります。したがって、政府が財政規律を維持し、長期的に債務を削減するよう努めることが重要です。
chatGPT、日本語でも語りかけることができますが、今ひとつなので、Google翻訳を使います。日本語から英語はなかなかなものです。chatGPTの英語で返ってきたものを今度は、日本語に訳します。G oogle翻訳もときどき上手くない部分が出ます。今度は、それを私が直す、というやり方での対話です。
藤巻健史は、日本銀行の債務超過の可能性を指摘します。ハイパーインフレになる。第二次対戦後の新円切替えのことに思い至ると、来年の新円発行にヒヤリとします。でも、よく考えると、日本銀行は日本国の子会社です。債務超過になったとしても、親会社が破綻していない限りは、減資、増資というプロセスで、債務超過は解消します。chatGPTの言うように、政府が財政規律を維持し、長期的に債務を削減するよう努めることなのでしょう。
折角ですから、いくつかの問いをAIに投げかけましょう。
「莫大なデータを格納しておくためにどれだけのエネルギー(電力)が必要なのかという問題―処理はAIに任せるとして―は大きそうです。毎日のようにFacebookに写真や録画をUPするのですが、このデータを格納するのにMetaはアリゾナの砂漠?巨大なサーバー施設をつくっている?と聞いたような気がしますが、そのエネルギー、コストは無視できない気がします。DAOを金融、投資、貨幣、すなわち経済的交換ネットワークのなかで成立させるためには、一定の規模が前提されるということでしょうか。」
はい、大量のデータを保存するには、特にデータがリモート
サーバーに保存されるクラウド ストレージの場合、かなりの量のエネルギーが必要です。エネルギー消費は、サーバーの実行、データセンターの冷却、およびデータの保存と送信に必要なネットワーク
インフラストラクチャへの電力供給によって発生します。
データ ストレージ施設に関しては、Facebook や Google などの企業がデータを保存するために世界中に大規模なサーバー
ファームを構築しています。これらの施設は通常、電力コストの低い地域に配置されています。これは、エネルギー消費がデータセンターの運営コスト全体の主要な部分を占めているためです。一部の企業は、アリゾナ州で言及されたような砂漠の場所にデータセンターを建設して、自然に涼しい気候を利用して、冷却システムの必要性を減らし、エネルギー消費を削減しています.
近年、データ ストレージの環境への影響に対する意識が高まり、多くの企業が二酸化炭素排出量を削減する方法を模索しています。これには、再生可能エネルギー源への投資とデータセンターの効率の改善が含まれます。
あなたが言及した経済交換ネットワークに関しては、分散型自律組織 (DAO) を含むブロックチェーン技術のエネルギー消費もかなりのものになる可能性があることに留意することが重要です。分散型ネットワークを実行するには、トランザクションを検証してデータを保存するために多数のノードが必要であり、大量のエネルギーを消費する可能性があります。ただし、エネルギー集約型のプルーフ
オブ ワークの代わりにプルーフ オブ ステーク コンセンサス アルゴリズムを使用するなど、ブロックチェーン テクノロジのエネルギー効率を高める取り組みも進行中です。
プルーフ オブ
ステーク コンセンサス アルゴリズム、私ははじめて聞きました。ネットで調べると確かにそういうのが出てきます。
「Web3の革命性という場合、国家の枠組(通貨、輸出入管理)と国際機関のネットワークとは別のネットワークが期待されるわけで、それが先行的には、様々な規制、税制逃れ、Tax Haven・・・などが追及されているのが実態ということですね。それが胡散臭い理由ですね」。
Web3 とブロックチェーン テクノロジの分散型の性質は、従来の金融システムを混乱させ、国境を越えた取引と交換の新しい機会を生み出す可能性があります。ただし、この技術が脱税やマネーロンダリングなどの怪しい目的に使用される可能性があることも事実です。
規制や法律は、これらの技術の急速な発展に追いついていません。多くの国は、市民と企業の保護とイノベーションの促進との間の適切なバランスを見つけるのに苦労しています。より寛容なアプローチをとる国もあれば、より厳しい規制を課す国もあります。
これらの新しい金融システムの完全性を維持し、違法行為を防止するためには、政府と国際機関が協力して明確な規制を確立し、効果的に施行することが重要です。これにより、リスクと悪影響を最小限に抑えながら、Web3 とブロックチェーン テクノロジの利点を確実に実現できます。
また、Web3 とブロックチェーン テクノロジのすべての使用が疑わしいわけではないことも注目に値します。これらのテクノロジーに基づいて構築されている多くの正当なアプリケーションとビジネスがあり、価値を交換してトランザクションを実行するための新しくより効率的な方法を作成することを目的としています。重要なのは、合法的な使用と不正な使用を分離し、違法行為を防止するための対策を講じることです。
chatGPTは、なかなか饒舌です。
「1950年に25億人であった世界人口は、2000年には3倍の75億人になり、昨年80億人を超えました。2050年には100億人に達すると予測されてきましたが、さすがに合計特殊出生率TFR(Total Fertility Rate)は世界平均では下がりつつあり,そこまではいかないとも言われ始めています。
一方で,医療技術の進歩や人工環境化による高齢化の進行があります。地球全体が、風船が弾けるように同時に破綻することはないわけで、北極圏の海氷、氷床、永久凍土の融解、北方林の立ち枯れ、アマゾン雨林の旱魃、サンゴ礁の死滅、アジア・モンスーンの変化、エルニーニョの南北振動・頻度の変化、南極氷床の損失など、既に、様々な兆候が現れています。海面上昇によって国土が失われる危機にある島嶼国家など破綻は既に各地で起こりつつあって、隠岐の島も無縁ではありません。」
はい、世界の人口は急速に増加しており、今後数十年間、ペースは鈍化しますが、増加し続けると予想されています。合計特殊出生率 (TFR) の低下は、この人口増加の鈍化に寄与する要因の 1 つです。
同時に、世界人口の高齢化も大きな懸念事項であり、医療制度、年金制度、経済全体に課題をもたらしています。
また、気候変動の影響がすでに世界中で感じられており、今後数年で悪化すると予想されていることも正しいです。海面上昇、極地の氷冠の融解、気象パターンの変化はすべて、生態系やコミュニティに重大な影響を与えており、今後も影響が続く可能性があります。沿岸の土地の喪失、自然災害の頻度の増加、および作物生産性の変化は、これらの変化の結果として世界中のコミュニティが直面している多くの課題のほんの一部です.
これらの課題に対処するには、世界中の政府、組織、および個人が協力して、温室効果ガスの排出を削減し、気候変動の影響に適応し、脆弱なコミュニティを保護する必要があります。
chatGPTは、一連の対話を覚えています。
物知りなだけで、何も提案できないのでは、と思い、最後のやりとり。
「で、どうすれば良い」
人口増加、高齢化、気候変動によってもたらされる課題に対処するために、個人ができることはたくさんあります。
1. 二酸化炭素排出量を削減する: これは、エネルギー効率の高い電化製品の使用、水の使用量の削減、車の代わりに公共交通機関や自転車/徒歩の利用、肉の消費量の削減によって実現できます。
2. 再生可能エネルギーを支援する: 太陽光や風力などの再生可能エネルギー源に投資したり、再生可能エネルギーを使用する企業を支援したりできます。
3. 資源の節約: これは、廃棄物を減らし、リサイクルし、水やその他の資源を節約することで実現できます。
4. 変化を提唱する: 選出された役人と連絡を取り、コミュニティ キャンペーンに参加することで、人口増加、人口の高齢化、気候変動に対処する政策やイニシアチブを提唱できます。
5. これらの問題に取り組んでいる組織を支援する: 人口増加、高齢化、気候変動に取り組んでいる組織に寄付したり、ボランティアをしたり、持続可能な開発イニシアチブをサポートしたりできます。
ZOOM Talk2⑥ 20230214 10:00~10:30
スマートシティ2-10 (布野→佐藤)2023 0227
Chat GPTについての反応は「「正論」すぎるAIと 人間の生きる道は」(藤田直哉のネット方面見聞録『朝日新聞』2月16日)というのが平均的な感想でしょうか?ありきたりの平均的応答が返ってくるのが最初の直感でした。TVのワイドショーで、ありきたりのことしか言わないコメンテーターは必要なくなると危機感を吐露したコメンテーターがいました。それと佐藤さんが言っていたように、現在の段階でデータベースが英語だということですね。
「アジア都市建築研究、建築評論で知られる布野修司(Shuji Funo)というのはどんな人ですか?」と聞いたら、東京、1947年生まれ、早稲田卒、東大教授・・・など他人にすり替わりました。
「布野修司(ふの しゅうじ)は、日本を代表する建築評論家、アジア研究者、建築家の一人です。彼は、東京都生まれで、1947年に生まれました。布野修司は、早稲田大学大学院文学研究科修士課程を修了し、その後、カリフォルニア大学バークレー校で比較文学と比較文化研究を学びました。帰国後、早稲田大学文学部助手や東京大学東洋文化研究所助教授を経て、東京大学大学院総合文化研究科の教授に就任し、建築評論や都市研究を専門として教育・研究活動を行いました。布野修司の研究分野は、東アジア文化論、都市論、建築論、現代思想など幅広く、多数の著書や論文があります。代表的な著書には、「アジア、建築、都市―グローバル化のなかの現代文化」、「新しいアジアの建築思想―伝統と現代のはざまで」、「アジアの公共空間―現代都市の価値とアイデンティティ」などがあります。また、自らの手で住宅や歴史的建造物の改修などのプロジェクトにも携わっており、建築家としても知られています。布野修司は、アジアの都市・建築に対する独自の見識や考察が高く評価されており、多くの建築家や研究者に影響を与えています。彼は、日本の建築評論家としてはもちろん、アジア全体の建築研究や都市研究において、重要な存在とされています。」
聞き方が問題、ヒントになってるようなので、再度聞いたら、訂正されました。まあ、布野の情報発信が少ないということでしょう。京都大学で学位取得など、かなりいい加減です。
「東京大学工学部建築学科を卒業、京都大学准教授、日本建築学会副会長、名誉会員で、アジア都市建築研究、建築評論で知られる布野修司(Shuji Funo)はどんな人ですか?」
ご指名いただいたのは、誤りがありましたので訂正いたします。布野修司(ふの しゅうじ)は、東京大学大学院工学系研究科建築学専攻を修了し、京都大学大学院工学研究科建築学専攻で博士号を取得しました。また、同大学の准教授を務めた後、東京大学大学院総合文化研究科の教授に就任し、アジア都市建築研究や建築評論を中心に、教育・研究活動を行いました。布野修司は、東アジア地域における都市・建築に対する独自の視点や批評が高く評価されており、日本を代表する建築評論家・研究者として知られています。彼の研究領域には、都市論、建築論、文化論などが含まれます。布野修司は、多数の学術論文や著書を発表し、そのなかでも代表的な著書には、「アジア、建築、都市―グローバル化のなかの現代文化」、「新しいアジアの建築思想―伝統と現代のはざまで」、「アジアの公共空間―現代都市の価値とアイデンティティ」などがあります。また、日本建築学会副会長や名誉会員を務めたこともあり、日本の建築界においても重要な存在とされています。
」
悪乗りついでに・・・
スマートシティとは? スマートシティには未来がありますか?何に可能性があるのでしょうか?
スマートシティ(Smart City)とは、都市の持続可能性、住民のライフスタイル、経済発展、安全保障、行政サービスなどを改善するために、情報通信技術(ICT)やセンサー技術を活用して、都市の機能を最適化することを目的とした概念です。スマートシティでは、例えば、住民の交通手段やエネルギー使用量、ごみの処理状況などをリアルタイムに収集・分析し、適切な情報を提供することで、都市の利便性や快適性を向上させます。また、ICTを活用することで、行政サービスの効率化や、防災・防犯対策の強化などが可能になります。スマートシティには、以下のような可能性があります。
1.
環境保全:省エネや再生可能エネルギーの活用により、二酸化炭素排出量の削減が期待できます。
2.
交通効率化:交通渋滞の軽減や、公共交通機関の運行の効率化により、移動時間の短縮が期待できます。
3.
行政サービスの強化:行政サービスの効率化により、市民の利便性が向上し、住民の満足度が高まることが期待できます。
4.
安全・防災対策の強化:センサーやモニタリング技術を活用することで、災害時の早期対応や被害の最小化が可能になります。
5.
経済発展:ICT産業の成長により、新しいビジネスモデルの創出や、新しい雇用の創出が期待できます。
ただし、スマートシティには課題もあります。例えば、情報セキュリティの確保や、プライバシー保護などが挙げられます。また、スマートシティの導入には膨大な投資が必要であり、費用対効果の評価や社会的受容性も考慮する必要があります。スマートシティは未来の都市の在り方として、大きな可能性を秘めていますが、その実現には技術的、社会的な課題を解決する必要があります
新都市(スマートシティ)の論理というタイトルで以下のような目次の本を書こうと思うのですが、どのような内容にしたらいいでしょうか?
起 デジタルICT革命 コミュニケーション・トゥールの未来 道具 技術
Web3 メタバース .AI 承 都市コミューン 人・集団 社会 家族・共同体・都市国家 転 地球環境
物質循環 経済 食糧・エネルギー 結 幸せな生活豊かな生活の近未来 自由・自律と共生・共存 衣食住交 教育 医療
この目次は、スマートシティ(新都市)に関するいくつかの主要なトピックをカバーしています。以下は、各セクションについての詳細な説明です。
1.
デジタルICT革命 このセクションでは、情報通信技術の発展が都市生活に与える影響について探ります。コミュニケーション、ツール、技術など、ICTがどのように都市生活を変えているかを考察します。また、Web3やメタバース、AIについても議論します。
2.
都市コミューン 都市に住む人々の間のコミュニケーションと協力に焦点を当てます。家族や共同体、都市国家など、異なるレベルでの社会的つながりを考察します。また、スマートシティが社会的つながりにどのような影響を与えるかを探ります。
3.
地球環境・物質循環 このセクションでは、スマートシティの持続可能性について考えます。地球環境や物質循環に焦点を当て、エネルギーや食糧に関する問題について議論します。また、経済的な観点から、スマートシティが持続可能性を追求するためにどのような役割を果たすことができるかを検討します。
4.
ハッピーライフ豊かな生活の近未来 最後に、スマートシティが人々の生活にどのような影響を与えるかを探ります。自由や自律性、共存・共生など、都市生活の質について考察します。また、衣食住交や教育、医療についても取り上げます。このセクションは、スマートシティが人々にとってどのような意味を持つのかを探り、都市生活の質を向上させる方法を考察します。
「新・都市の論理―スマートシティ?をめざして」というタイトルで、以下のような目次はどうでしょう?
序 スマートシティとは? I. デジタル革命―Web.3? 巨大プラットフォーマー
メタバースの世界 ブロックチェーンとDAO II. 新しい資本主義? 中央銀行と金融資本主義
ケインジアンvs新自由主義 仮想通貨と国際通貨 グローバリゼーションと〇〇ファースト(ナショナリズム) 民主主義と権威主義
資本論の再評価―マルクス再考 III. 地球環境・食糧・エネルギー・産業
気候変動 人新生 物質循環 食糧生産 サプライチェーン Ⅳ 都市自治体(コミューン)・共同体(コミュニティ)・アソシエーション 様々なDAO
分散型自立組織 都市行政・都市経営・都市組織 V. 空間 住・交 マース エコハウスエコビレッジエコシティ VI. 教育・医療・ 再生産
この目次は、スマートシティの概念を探り、デジタル革命や新しい資本主義、地球環境や食糧・エネルギーなど、さまざまな観点から都市の未来について考えています。また、都市自治体や共同体、アソシエーションについても掘り下げており、空間や教育、医療についても触れられています。以下に、各章の内容の例をいくつか挙げてみます。
·
I. デジタル革命―Web.3?
·
この章では、デジタル技術がどのように都市を変えているかを探ります。巨大プラットフォーマーやメタバース、ブロックチェーンとDAOなど、最新のテクノロジーについても紹介されます。
·
II. 新しい資本主義?
この章では、資本主義のあり方について考えます。中央銀行や金融資本主義、仮想通貨と国際通貨、グローバリゼーションとナショナリズム、民主主義と権威主義、マルクス再考など、様々な観点から議論が展開されます。
·
III. 地球環境・食糧・エネルギー・産
この章では、地球環境、食糧・エネルギー、産業など、都市と密接に関わる問題について考えます。気候変動や人新生、物質循環、食糧生産、サプライチェーンなどが取り上げられます。
·
IV. 都市自治体(コミューン)・共同体(コミュニティ)・ア
この章では、都市の自治体や共同体、アソシエーションについて考えます。様々なDAOや分散型自立組織、都市行政・都市経営・都市組織などが紹介されます。
·
V. 空間 住・交
この章では、都市の空間や住まい、交通について考えます。MaaSやEco-House、Eco-Village、Eco-Cityなど、環境に配慮した新しい取り組みが紹介されます。
·
VI. 教育・医療・再生産
最後の章
結局、自分で組み立てるしかないということですね。
スマートシティ2-11 (佐藤→布野)2023 0312
ChatGTPで、寄り道をしすぎてしまったのでしょうか。でも、調べれば調べるほど、やはり時代は大きく変わろうとしている、という思いを強くします。
私がこれまで経験した大きな変化は過去2回、詳しくは2+2回あります。一回目は、1970年代後半、パソコンの出現です。インベーダーに代表されるテレビゲームが人気を博し、コンピュータの心臓部、CPUが猛烈に安くなります。その結果、コンピュータが一人一台になる。私が起業したのもその頃です。パソコンでのソフト開発を手掛けたことで世間を知らない私もやれたのだと思います。乗換案内もパソコンのパッケージソフトとしてスタートしました。
2回目の大きな変化は、インターネットの商用化です。インターネット自体は、主に大学や研究機関では使い始めていましたが、営利目的での利用が可能になった1995年から爆発的に普及していきます。Windows95発売の大騒ぎは、インターネット時代の幕開けでもあります。
全てのパソコンがつながる。何と凄まじいトポロジカルな構図なのだろう、という思いにとらわれました。こんなものができたのだから、世の中が大きく変わらないわけはない、そう思いました。
携帯電話からもインターネットにつながる。通信の世界が3Gになり、移動中でもインターネットにつながる。これが2+1回目の変化。次いで通信の世界は4Gになり、スマートフォンが登場する。GPS、位置情報まで取れる。これが2+2回目です。第1章がPCの出現、第2章がインターネットの時代とすると、2-1 (1995年)インターネット商用化、2-2
(1999年)ガラケー、2-3 (2007年)スマホ、といったところでしょうか。
GAFA、あるいはGAFA+Mと言われますが、アップルとマイクロソフトが第一世代、グーグル、アマゾン、フェイスブックは第二世代です。世界的に影響力のある会社が、この数十年でガラリと変わっています。店に行かなくともネットで何でも手に入る。メディアも新聞、テレビではなく、SNS、ユーチューブです。子供のなりたい職業がユーチューバー、というのがこの間の変化を物語っています。
ところが、この数年、何かおかしいのです。囲碁もコンピュータが勝利。Mubertoという作曲AIが現れる。香港のネスカフェのC Mにバーチャルヒューマンが登場する。Midjourneyという言葉から絵を描くA Iが出現。そうしたらchatGPTというとんでもないものが現れる。まさに3回目の大きな変化が始まっているのです。
3回目の変化は、我々の知識の領域です。chatGPTはお喋りです。ときどき間違います。また、今のところ1年くらい前のことを知らなかったりもしてます。3月9日にFTXの破綻のことに関して話してたら、2021年11月のCEO自身がTwitterで破綻を示唆する発言をしたことには触れていますが、破綻はしてないと断言してます。破綻が2022年11月ですから、少なくとも4ヶ月前のことは把握してません。
ただ、これも時間の問題です。そのうち今現在のことも答えられるようになります。布野さんの生年月日を間違えたりしているのも、なぜそういう間違いが起こるのかを調べ、改善していくことになると思います。
結局、事実とは何か、ということになります。chatGPTが政治のことに触れたがらないのも、情報のリソースによって答えが変わってくるからでしょう。そのため、何でも知っている優等生であり続けるしかない。検索エンジンとしてはそこまでなのです。しかし、chatGPTを登場させた技術は、もっと効率良く、情報のリソースに色付けしなおした答えを返すこともできます。情報のリソースをコントロールする者が神になるのです。
あまりここに深いりすると、話題は別な方向に進んでいってしまいそうなのでやめます。chatGPTはプログラムソースを吐き出すことができるので、まずは我々の業界を直撃しそうですね。これまで何度もIT技術者が足りない、と言われてきましたが、いつも何とかなってきました。今度もそうです。今回の変化はさらに、いろいろな知的分野に影響してきそうです。
今ですらここまできてるのですから、昨今のAIの技術は、知識産業と言われるいろいろな分野がターゲットにしてきます。人が不要になる。しかし、そうした社会構造の中で新たな産業が起こってくる。ICT技術は、常に先端に立ち、そこからものごとを進めていかないと生産性が悪化、国はますます貧しくなってしまいます。
兎に角、ICTの動きが急、過去最大級の大きな転換の時期にある、ということです。動きの主体は自治体から、という布野さんの基本的な考え方には賛成です。そういえば、最近の動きで面白いな、と思ったのは、都市マネジメントでの動きです。
株式会社前橋市とも言うべきなのが、「めぶくグラウンド」です。新会社の資本金3億円のうち、前橋市が500万円を出資する。残りの2億9500万円を、3金融機関が1500万円ずつ、企業5社が5000万円ずつ出資します。
群馬企業の有力メインバンクである群馬銀行、東和銀行、しののめ信用金庫が金融機関、ジンズHD、コシダカホールディングス、カネコ種苗、ヤマト、日本通信が民間です。三セクの一種なのでしょうが、ほとんどコケた鉄道事業に変わる新しい動きです。
思いつきですが、隠岐島もこういった動きまで拡大すると面白いような気がします。
「ポツンと一軒家」というテレビ番組が好きでときどき見ていますが、文明を拒否し、山の中で好き勝手に暮らしている人が登場します。それでも実は文明の庇護のもとに生活が成り立っているだけです。ただ、幸せとは何かを考えさせられます。
また、エストニアの電子政府は、確定申告を不要にしました。今までの技術でもここまでできる、ということです。もっともサービス精神の伴わないICTの進展は、それほど地域住民の生活を豊かにはしていないようですが。
・スマートシティ2-12 (布野→佐藤)2023 0327
隠岐の島町はスマートアイランド事業(国交省離島振興課)、デジタル田園都市国家構想(内閣府)「遠隔教育システムの構築による学習機会の充実」(1194.1万円)、白河市は「オンライン行政相談システム構築事業」(348.1万円)「EVシェアリング」(247万円)がついたようです(Type1)。リスト(添付しますデジタル田園都市国家構想交付金(デジタル実装タイプ) - 地方創生未来技術支援窓口 - デジタル田園都市国家構想実現会議事務局 (chisou.go.jp))をみると、ものすごい断片的バラマキのように見えます。
ホームページ活用によるWEB図書館サービス、デジタル技術実装による地域コミュニティ担い手確保事業、デジタル情報配信基盤を活用した観光周遊促進等による地域活性化事業、AIチャットボットを活用した公式ウェブサイトリニューアル事業、AIオンデマンド交通とデジタル地域通貨導入による地域デジタル基盤強化事業、キャッシュレス決済対応レジ導入事業、バス運行管理および学校・保護者間連絡用ICT導入事業、デジタル地域通貨導入による地域経済の活性化、AIオンデマンド交通運行事業、AIドリル実装による学びのDX事業、デジタル教育推進事業、高齢者見守りサービス(スマートディスプレイ)整備事業・・・・・
ただ、都市マネージメントとして、何が「新都市の論理」に値するか、整理が必要ですね。
島根県は別途
|
協働学習支援ツールを活用した個別最適な学び推進事業 |
12,474 |
松江市 |
保育所入所申請デジタル化による住民サービス向上 |
5,379 |
出雲市 |
公共施設予約システム導入による施設利用の向上 |
20,680 |
益田市 |
ICT技術を活用した道路情報公開サービス事業 |
5,908 |
益田市 |
書かない 行かない まわらない みんなに優しい窓口改革事業 |
46,321 |
安来市 |
だれひとり取り残さない窓口構築事業 |
16,022 |
安来市 |
マルチタスク車両導入事業 |
9,227 |
安来市 |
森林基礎情報のデジタル化・林業DX推進事業 |
53,698 |
奥出雲町 |
コンビニ交付サービス導入事業 |
4,999 |
飯南町 |
い~にゃんPay導入事業 |
10,933 |
美郷町 |
美郷町地区防災計画作成支援事業 |
2,700 |
邑南町 |
学校・保護者・地域をつなぐ |
407 |
邑南町 |
防災情報の一元化 |
2,095 |
隠岐の島町 |
遠隔教育システムの構築による学習機会の充実 |
11,943 |
福島県は別途
オールふくしまスマートシティ推進事業 200,000
喜多方 複数分野データ連携の促進による共助型スマートシティ推進事業 88,366
生涯学習情報システム構築事業 |
1,193 |
公金収納方法多様化推進事業 |
23,293 |
災害からいのちを守る事業(防災DX推進事業) |
30,250 |
ふくしまHACCPアプリを活用した食品営業施設の遠隔監視事業 |
5,067 |
◎前橋市の「めぶくグラウンド」については、何をしようとしているか、もう少し説明してください。
◎エストニアの電子政府が確定申告を不要にしたというのは、源泉徴収、消費税などで全て税を徴収できるということですか?
◎これまで話題にしてきたDXとして、布野の頭に残っているのは・・・。
0 テレワーク、遠隔授業は既に実現済ですね。ほとんどの補助事業は、このレヴェルですね。
遠隔教育システムの構築による学習機会の充実は、コンテンツの問題?
1 地域内情報システム(山科モデル) 自治体Webサイト
→地域通貨 ヴォランティア(相互扶助)活動の地域循環
→地域MAAS? Uber
2 ヴァーチャル地域博物館+物産館 宅配?
3 小中高校生(住民)参加のまちづくりヴァーチャル空間 Minecraftモデル
4 テレワーク 集団 ヴェンチャー企業 誘致 育成
・・・・・・・・・・・
5 自治体=DAOの可能性
自治体の財政基盤
エネルギー基盤
食糧基盤
前橋「めぶくグラウンド」も含めて、何が必要か、さらにいろいろ教えてください。
◎「ポツンと一軒家」については、結局、「オフ・ザ・グリッド」がいかに可能か?ということだと思います。上の5 自治体=DAOの可能性に関わっていると思います。
オフ・ザ・グリッド、すなわち,電気,ガス,水,廃棄物処理など全て遠隔のインフラストラクチャーに頼らない建築,地域で生活に必要なものを循環させるシステム。建築には、オートノマス・アーキテクチャー(自立建築)という概念があります。すなわち、DAOです。日本でいう「環境共生建築(エコ・サイクル・アーキテクチャー)」も,環境との循環系を強調する意味ではわかりやすいと思います。地域の生態系に基づく建築です。地球環境問題を考えると、そんな建築は可能なのか?
などという余裕はない。可能な限り一定の地域において循環系を再生させることが最優先すべき指針だと思っています。別に、文明を拒否する必要はないと思います。
ZOOM Talk2⑨ 20230328 10:00~10:30
懇談会 20230331 佐藤+布野+松本洋一郎
・スマートシティ2-13 (佐藤→布野)2023 0411
布野さんから教えられた隠岐の島町、白河市への国からの予算の詳細、さらにはその他の国から地方に付けられた予算を見て驚いています。岸田政権の目玉がデジタル田園都市国家構想ということで、いろいろな動きがあります。我々も自治体と一緒になって提案しているものがあります。政治家や官僚が応援団として動いているケースもある、ということも聞いています。
その他にも内閣府の予算、国交省の予算等、いろいろありますね。そういえば、先日、松本さんと一緒に食事をしたとき、二人は科研費のことを話していました。大学とか研究機関だとこれが結構大きいのでしょうね。
破産しそうな国なのに、皆が予算の獲得に動いています。ジョルダンも同じです。新しいことを事業者に提案しても、国からの補助金がつかないとなかなか実現しません。昔は補助金の申請をしても相手にされなかった。というか、売上、財務状況等、資格要件を満たすとは思えませんでした。
そういえば30年くらい前のことでしょうか、IPAの補助金は、技術力さえあれば何とかなる、ということを聞き、3Dのグラフィックエディターを作ろう、としたときがありました。パッケージとして販売することが要件だったように思います。応募したら採択され、井門さんに応援してもらって、少なくとも一社には売れました。ただ、マーケットで戦えるレベルではありませんでした。
ゲームの下請けをやっていた頃のことです。インベーダーという一世を風靡するテレビゲームがきっかけになり、アーケードゲーム(喫茶店において対面でするもの)、ファミコン、メガドライブ、プレイステーションといったハードウェアが出てきて、そのゲーム制作を請け負っていました。ゲーム販売会社から開発機材を借りて開発を進めたのですが、下請けにはギリギリの台数しか来ません。開発機材は高価でとても我々が購入できるコストではありません。そこで、どのゲームにも対応できる開発環境を作り始めました。専用の開発機材よりも一桁安くする、という試みです。
その話をエニックスの福島社長にしたら、今度ゲームづくりの専門学校を作るから、そこで使いたい、ということになり、機材を納め、社員が先生になって講座を持ちました。日本電子専門学校にもゲーム講座を作り、同じように、開発機材を納品、講義を社員が担当しました。3Dのツールも非常に高価だったので、今度はIPAからの補助金にトライしました。
補助金が通るかどうか、なかなか確定しません。リスクをとって体制を作るようなことはできない状況でもありました。確定したら納期までほとんど時間がありません。おまけに膨大なドキュメントが要求されます。社内は擬似的な独立採算でやっていたので、このチームには大きな売上と利益が出ました。しかし、最盛時の作業のためにそれまでやっていた幾つかの仕事を断り、結果、このチームはその後継続が難しくなってしまいました。
年末に一緒に飲んだ東條さんが、UBA(Unix Business Association)という団体を作り、汎用コンピュータの時代からオープンシステムの時代に移行させようと頑張ったときがありました。理事として、サンマイクロシステムズ、日本オラクル等も加わり、大きな時代の変革をリードしました。私も監査役としてそこに加わり、時代はインターネットの時代に入っていきます。
その頃、通産省に安延さんという課長がいて、ベンチャーを支援しようということで、ふんだんな補助金をつけました。東條さんの頑張りで、UBAに集まった企業がそこに応募し、皆予算をつけてもらいました。私はその頃、いろいろあり、東條さんと少し疎になっていて、応募しませんでした。ただ、採択された会社は、その受注をきっかけに皆業績が悪くなっていきます。我々のIPAの補助金のときと同じです。
常盤橋の高層ビルでベンチャー支援とか、日本もいろいろ新しい試みをしていますが、こういうのはダメですね。ベンチャーというのは、傾きそうなボロビルでやっているのが一番良いです。
役人の評価は、いくらの予算を獲得できるか、ということを聞いたことがあります。それにしても布野さんから頂いた予算のリストを見ると、なんでこんなに幾つもの同じような予算が、と唖然とします。もっと集中的にGAFA対抗の予算をつければ良いのに、と思います。予算を付与する国も、果たして今の財政状況でいつまで持つのか。国が破綻するとどうなるのでしょう。
個人も同じです。国や自治体からどういった支援金がもらえるか、そこに熱が入っています。いつの記事だったか、国の対外的に話していることとして、日本はこれだけの国債はあるが、個人の預貯金はいくらあるので云々というのを読んだ記憶があります。でもこれってどういうことか、最悪、国は皆のお金を没収できる、ということを言っているように聞こえてなりません。もちろん、それは最悪のケースであって、そうならなくとも、税金のUP、年金のカットはもはや猶予がないところまで来ているのではないでしょうか。
前橋市の山本市長はアグレッシブな人です。これまでにも国の補助金をとり、いろいろな実証実験をやっています。我々もその実証実験の一部を担当させてもらったことがあります。しかし成果が出るというには程遠い終わり方をしているような気がします。そこから見たら「めぶくグラウンド」は、新しい3セクですね。民もお金を出して一緒に事業にトライする。単に補助金に頼るよりは、大分マトモだと思います。しかしそれにしても我々に残されている期間はあまりないようにも思います。
ここまで書いてきて、なぜかおよそ50年前の三島事件が頭に浮かんできました。正確には、1970年11月25日、作家の三島由紀夫が、憲法改正のため自衛隊に決起を呼びかけた後に割腹自殺をした事件です。そのときの檄から抜粋。「われわれは戦後の日本が、経済的繁栄にうつつを抜かし、国の大本を忘れ、国民精神を失い、本を正さずして末に走り、その場しのぎと偽善に陥り、自ら魂の空白状態へ落ち込んでゆくのを見た。政治は矛盾の糊塗、自己の保身、権力欲、偽善にのみ捧げられ、国家百年の大計は外国に委ね、敗戦の汚辱は払拭されずにただごまかされ、日本人自ら日本の歴史と伝統を涜してゆくのを、歯噛みをしながら見ていなければならなかった。」
新都市の論理は、檄文から始まり、破綻した国の状況の描写し・・・、NHKの南海トラフの特番のようですかね。次いで、国はどうすべきか、個人はどうすべきか、といったことから始めていていく、というのはどうですかね。
最後に、pythonの件。実は、一通り機械学習のところまではわかりました。藤原さんから勧められた本はやめ、chatGPTに聞き、森
巧尚さんのシリーズを知りました。「Python 1年生」から始まり、「Python 2年生」のスクレイピングのしくみ、データ分析のしくみ、「Python 3年生」の機械学習のしくみまで、自分のマシンで殆どプログラム例を走らせました。うまくいかないとき、社員を呼びましたが、文字入力のミスでした。Macでやっていたので、アイドルのみのインストールの後、アナコンダをインストールしたら、そこにもアイドルが入っていて少し難しい問題が発生したりしました。
今はchatGPTからpythonのソースリストを吐き出させることにトライ、EXCELとうまく繋ぐには、というところで少し時間がかかってます。藤原さんにどう方向するか、考えています。
ZOOM Talk2⑩ 20230411 10:00~10:30
・スマートシティ2-14 (布野→佐藤)2023 0418
Open AIのサム・アルトマンCEOが来日、岸田首相に会った(4月10日)というニュースに驚きましたが、なぜ、Open AIが日本に着目したかについては分かる気がします。日本語のビッグ・データが欠如しているし、英語以外の世界をカヴァーする必要があるわけですね。
Chat-GPTについては、佐藤さんも布野も革命的変化が起こりつつあるという認識ですね。東大(太田邦史副学長・教育情報担当)の見解(ルビコン川を渡った!新たなトゥールを活用し、変化を先取りし、積極的に利用法や新技術、法制度、社会・経済システムを見出していくべきだ。論文がAIによって学習される問題は見極める必要がある。)に近いかな。しかし、論文にしても先行研究を踏まえるわけだし(学会のパラダイムに縛られる)、データ捏造をする事例もある。Chat-GPTが広く捏造や異論をチェックしてくれるというメリットもある。先日松本さんが言っていたように、レヴューアーを選ぶのに既にChat-GPTが使われているといいます。
AIを脅威と考えるリアクションは、まず、①個人情報(プライバシー)の保護、そして、②膨大なデータを巨大ITC企業が独占する問題(権限集中、中立的でも民主的でもない、支配(監視独占)の道具=アルゴリズムが不明 ブラックボックス)が大きい。―当初OPEN AIに出資したイーロン・マスクは取締役を辞任、Twitter社を買収してX社に吸収、Chat GPTに対抗するXを開発予定とか、この怪物は世界がよく見えているということでしょう?―③Pre-Trainedされるテキスト画像の著作権侵害、これは画像AI、文学など芸術作品に申告だけれど、いわゆる論文も似たようなもの、④教育学習への影響といったところでしょうか?まあ、教育学習の問題は、賢い子は使いこなすことになると思います(犯罪にも)。
中国、ロシアのような権威主義国家が情報統制するでしょうが、オープンAI化の流れは止まらないような気がします。問題は、閉じた世界でのみ利益を追求(独占)する仕組みということですね。
政府の自治体への補助金の問題について、額は比べものにならないほど少額ですが、科学研究費(JSPS学術振興会、JST科学技術振興機構)も同じような問題があります。国公私立5大学を渡り歩きましたので、その問題点は身に染みて理解しているつもりです。大きな転換は21世紀の法人化ですね。説明は省きます。日本学術会議の問題、卓越大学指定の問題―選択と集中―の問題、・・・この国の官僚たちの頭の世界は全く頼りになりませんね。東條さんも結構すごいですね。ビル・ゲイツにしても、マーク・ザッカーバーグにしても大学院の学生だったわけですよね。日本の政治家は、Chat-GPTは大いに活用したいなどといいますが、日本からAI開発しようという気はさらさらないですね。卓越大学と言っても、選択と集中すればいいでしょうという感じですね。
前橋市の事例、地域通貨にしてもいろいろ事例はありそうです。白河、隠岐の島で具体的になにかやってみせるしかない、ということでしょうか(しかしそれにしても我々に残されている期間はあまりないようにも思います)。そこで、「新都市の論理」を書き残そうということですね。
「新都市の論理は、檄文から始まり、破綻した国の状況の描写し・・・、NHKの南海トラフの特番のようですかね。次いで、国はどうすべきか、個人はどうすべきか、といったことから始めていていく、というのはどうですかね。」
檄文は、佐藤さんにお願いします。
以下、布野が檄文をもとに草稿をつくります(Chat-GPTに聞きながら(笑))
破綻した国の状況
国はどうすべきか
都市(自治体)はどうすべきか
個人はどうすべきか
python「Python 1年生」クリアしつつあります。
TypeミスをChat-GPTが直してくれます。自分がいくら見比べてもわからないのですが。
以降、教えてください。
ZOOM Talk2⑪ 20230418 10:00~10:30
・スマートシティ2-15 (佐藤→布野)2023 0504
檄文の構想、それに続いての章立てを考え始めながら、いよいよ二人のワークも終盤にきたな、という気がしないのです。何か、大きな違和感を感じ始めています。chatGPTです。この生成系AIは、とてつもなく恐ろしい可能性を秘めているということに気づき始めた、ということでしょうか。番狂わせが起こってしまった、ということなのでしょう。
我々がオリエント急行に乗っていて、道中景色を見ながら、楽しく議論を続けていた。パリ発イスタンブール行きの急行も残すところ数時間というときになって、窓から外を見たら、列車は猛スピードで走っている。このままでは終点に着く前に脱線してしまうか、列車どめにぶつかって大破するかのどちらか。通信機器だけは正常に動いているのであちこちに指示はできる。そんなアナロジーでしょうか。
数日前、chatGPTの生みの親とも言えるジェフェリー・ヒントン氏がGoogleを退社しました。ヒントン氏は、AIの進展によってネット上に流れる嘘の画像などについて「真実を見分けることが難しくなる」と指摘、また、AIが人間の雇用を奪う可能性のほか、悪意を持つ人による利用に懸念を示し、AIが「自律的な兵器」になりうることなども危惧している。AI技術の進歩が「社会と人類に深刻なリスクをもたらす」とし、制御できる方法を見つけるまで、技術を拡大させるべきではないと指摘、これからはその危険性を訴えていくことに全力を注ぐという。
私も最初は面白さ半分で、使ってみては驚いていたが、次第に恐怖を感じるようになり始めています。他愛もない会話、要約する能力が素晴らしいと感じ、いろいろ試すことから始まりましたが、話題が専門的になってもその知識の量は凄まじいものがあります。pythonのプログラミングの勉強をし始めて驚くのは、chatGPTは、なんとプログラムまで書けるということです。
「2-11」で今回のAIの深化は、この数十年のICTの発展での、パソコンの出現、インターネットの商用化に次ぐ大きな変わり目であると記しましたが、chatGPTのような生成系AIは、核兵器以来の人類の発明、ということまで言われてもいます。ICT機器の文脈で考えるよりは、あるいはそう考えるべきかもしれない。私もそんな気持ちにとらわれ始めてきました。
そう言えば、マンハッタン計画の指導者のロベルト・オッペンハイマーは、世界初の原子爆弾の爆発を指揮したことにより、多くの人命を奪い、破壊的な力を持つ兵器の誕生に貢献したことに苦悩しました。オッペンハイマーは後年、古代インドの聖典『バガヴァッド・ギーター』の一節、ヴィシュヌ神の化身クリシュナが自らの任務を完遂すべく、闘いに消極的な王子アルジュナを説得するために恐ろしい姿に変身し「我は死神なり、世界の破壊者なり」と語った部分(11章32節)を引用してクリシュナを自分自身に重ね、核兵器開発を主導した事を後悔していることを吐露しています。*1)
我々が生きている社会は、決して善意に満ちた平和な世界なんてものではない。国家、あるいは独占資本がときとして一緒に、ときには猛烈に対抗しながら、全ての富と権力を独占しようとして動いている世界ではないか。そういった文脈から考えたとき、ある統一した方向に向けて動いている一部の戦略的な一部の勢力がいることを感じさせられていました。
ダボス会議の主催者であるクラウス・シュワブ。CFR、アメリカの外交問題評議会と一緒になって、現在のグローバル資本主義の動きをリセットし、持続可能な社会を作らなくはならないことを唱えています。地球温暖化はすでに臨界点に達し、これからは天候異変がコントロール不能となる。2030年が臨界点であるという。そのたえには、2025年までに資本主義と民主主義をリセットし、全体主義的な高度管理社会へ移行しなければならない。グレートリセットである。それももう時間がない。
SDGsという持続可能な開発目標、グレタ・トゥーンベリもそういう文脈の中で宣伝塔となり、また、新型コロナウィルスのパンデミックでさえ、世界中の国が巨額の財政支出を起こし、あり余ったお金は、金融崩壊につながる。今年に入って、3月10日「シリコンバレーバンク」の経営破綻、3月12日「シグネチャーバンク」が経営破綻、3月19日「クレディ・スイス」スイスの金融最大手「UBS」による救済買収、4月30日「ファースト・リパブリック・バンク」の破綻と世界中の銀行が破綻し始めている。こうした流れの延長にグレートリセットが予定されているのではないか。
その勢力の目算が外れたのが、まずはロシアではないか。プーチンのウクライナへの侵攻。中国もロシアの側に加担しながら、世界情勢は混沌とし始めていた。世界統一どころか、新たな冷戦の開始である。待ったなしの2030年が、再度、計画を立てざるを得なくなってしまった。
そこに、突如現れたのがchatGPTではないでしょうか。大規模言語モデルLLMは、オープンソースである。オープンAIが先行はしているが、決して一社だけのものではなく、グーグルも他のIT会社でも、始末の悪いことにはコンピュータ技術に秀でたスタッフがいればいとも簡単に完成させられるものでもある。一旦完させると1年で1000倍も賢くなる。単に計算するだけではなく、社会のありとあらゆるものを変えようとし始めていくのではないか。
絶対的な真などはなく、与える情報によりどんな性格にも変わりうるものである。子供の頃の漫画、鉄人28号そっくりである。「いいもわるいもリモコン次第」。これまでの政治をコントロールするものから見たら、まるで扱い方が想像できない兵器のようなものである。そしてそのリモコンを持つのは、政治家がなかなか理解できないコンピュータ技術屋である。
私自身は、グレートリセットに与するものではありません。むしろそういう大きな流れとは別に、日本の地方から世界の政治を変えるのを考える人間です。AIは、より根源的な理解を目指しますが、あくまで道具として使っていきたい、と考えます。ただ、最近の動きは凄まじく早く、2045年と言われていたシンギュラリティーがえらく早まっているのかもしれない、と思い始めていました。それこそ2025年とかそんなところまで。
このことは、今の世界の支配層にはどう感じられるのでしょうか。コンピューターの知識もあり、chatGPTとも躊躇せずにやり取りができる人間だとしたら、まだやりようはあるのでしょうが、そうでない人たちが殆どだとしたら、政治の原則はいつも一つ「敵を殺せ」です。コンピュータ業界に猛烈な規制が始まる。赤狩りではなく、コンピュータパージのようなものが程なく始まるのではないのでしょうか。インターネット網がズタズタにされていく。GAFAMに司直の手がはいる。優秀な技術屋が次々に死んでいく。
私たちは今オリエント急行に乗っています。さて、何をどう急ぐべきか。この稿、いささか発狂しています。
・スマートシティ2-16 (布野→佐藤)2023 0508
佐藤さん
オリエント急行の比喩は言いえて妙かもしれませんね。生成系AIが核兵器以来の人類の発明というのも、あるいは、そうかもしれません。アーネスト・ラザフォード(1871~1937)が原子核を発見したのが1911年,フリッツ・シュトラスマン(1902~1980)とオットー・ハーン(1879~1968)が核分裂を発見したのは1938年です。エンリコ・フェルミ(1905~1954)が原子炉をつくったのは1942年,原子爆弾投下のわずか3年前ですね。広島,長崎への原子爆弾投下は,人類のあまりにも性急な無謀な「実験」であったことは確かです。
ジェフェリー・ヒントンの指摘についてはつい最近のニュースで知りましたが、画像、小説については少なくとも真実もフェイクも全く区別がつかなくなることは間違いないし、悪意を持つ人による利用も既に現実でしょう。しかし、絵画についての真贋や物語や小説の剽窃は昔からあったことです。オーセンティシティ(真性性)、オリジナリティ(独創性)をどう考えるか、ということになるのでは?ビッグデータの意味するのは、ほとんどすべてのホモ・サピエンスの知恵は誰かが思いついているということでしょう。
「自律的な兵器」についてはどうでしょう。オッペンハイマーが『バガヴァッド・ギーター』に触れているのは知りませんでしたが、破壊(再生)の神はシヴァで、維持の神ヴィシュヌの化身クリシュナは本来、愛、知、美の聖なる神なんですけどね。
これについては、東條巌さんが推奨してくれた西垣通編『AI・ロボットと共存の倫理』(岩波書店、2022)を斜め読みをしました。生命と機械をめぐってはオートポイエーシス(自立自己形成)というシステムとアロポイエーシス(自らで自らをつくらない。外部によって決定される)というシステムが区別されます。
非生命―生命―人間の境界をめぐっては、すべて機械論的原理によって理解されるというのが近代科学ですが、カーツワイルのシンギュラリティ論は、最高度に発達したAIが人間を凌駕し、改造された人間と結びついて新たな存在、永遠の意識が生まれるという主張、予測ですね。収められた論考は、全体として、シンギュラリティについてはネガティブなトーンのように思われます。
「AIと人文知」という研究会があって、6月頭に座談会に出るように要請されています。さらに考えてみようと思っています。
Pythonによるプログラミングについては、佐藤さんに追いつくところまで行っては言っていませんが、森巧尚『Python』1~3年生まで、とばしとばしですが、ほぼ動かしました。スペルミスや半角、スペースなどについてChat GPTにかけると一瞬で直してくれるのですいすい行きました。藤原博文さんにもらった雑誌『Software Design』に載っていた「マンデルブロート集合」の絵も動かなかったのですが、Chat GPTが瞬時にチェックしてくれました(添付)。
スクレイピングで、データの収集の仕方がなんとなくわかりました。また、データ分析、機械学習については、要するに正規分布や回帰分析の統計学、数量化理論1~Ⅳ類などというのを思い出しましたが、要するに分類で、どこで人為的操作が行われるかをほぼ理解しました。しかし、さらに使いこなすためには、実践的なプログラムを書いてみないとだめだろうと思います。「発狂」の遥か手前です。
ところで、西垣通編『AI・ロボットと共存の倫理』の「第一章 人間と機械の連続と非連続、そして倫理」(河島茂生)の最後に、広井良典(「第五章 AIを活用した未来構想と地球倫理」執筆)がAIを使って見事なまでに日本の未来のシナリオを描いてみせた、都市集中か地方分散かが最も本質的で、後者に持続可能な未来がある・・・と書いているのを読んで、興味を持ちました。広井良典は東大の科学哲学出身で厚労省にもいたらしいのですが、いまは京大の「人と社会の未来研究院」の教授です。
何冊かとりよせましたが、まだ、眼を通す時間がありません。多作でさらにいろいろ書いています。
『コミュニティを問いなおす つながり・都市・日本社会の未来』(ちくま新書、2009年)
『ポスト資本主義 科学・人間・社会の未来』岩波新書 2015
『人口減少社会のデザイン』(東洋経済新報社、2019年)
『AI×地方創生 データで読み解く地方の未来』(東洋経済新報社、2020年)
『無と意識の人類史――私たちはどこへ向かうのか』(東洋経済新報社、2021年)
『AI×地方創生 データで読み解く地方の未来』(東洋経済新報社、2020年)がAIBP(AI Based Planning)を謳うのですが、データ(179の指標KIP(Key
Performance Indicators))に基づく政策立案(EBPM)で、重回帰分析ですね。基本的に都道府県単位です。それに先立って『人口減少社会のデザイン』が方向性を示しています。
その方向性については、大きな違和感はありません。ただ、AIがその方向を示しているというキャッチフレーズには???です。また、10の論点と提言をしていますが、もう少しシャープに(檄文として)まとめられるのではないかと思います。
ZOOM Talk2⑥ 20230509 10:00~10:30
・スマートシティ2-17 (佐藤→布野)2023 0520
テレビのニュースを見ていたら、G7にゼレンスキーも来た。ウクライナ問題とは何なのか。そもそもアメリカが仕掛け、ゼレンスキーが役者、プーチンは我慢できずに戦争を始めた、という構図と思っていましたが、西側が結束し、ロシアも相当に追い詰められているようです。プーチンの失脚という流れになっていくのか、あるいは核が本当に使われるような事態になるのか、わからないことが沢山あります。人と人とは直接会って話をすると物事は進む。G7という場を作り、政治家同士が話す。そこにインドやウクライナのトップも来る。政治は、官僚は、マスコミはとイライラすることも多いが、それにしても、確かに世の中は動いている、と改めて感心させられています。
2-10で章立ての案を布野さんが一旦出してくれました。私のリクエストに応えて2-14でもう一度布野さんが章立てを見直しました。
「新都市の論理は、檄文から始まり、破綻した国の状況の描写し・・・、NHKの南海トラフの特番のようですかね。次いで、国はどうすべきか、個人はどうすべきか、といったことから始めていていく、というのはどうですかね。」
構成は以下のようになりました。
檄文
破綻した国の状況
国はどうすべきか
都市(自治体)はどうすべきか
個人はどうすべきか
前回布野さんが書かれた西垣通編『AI・ロボットと共存の倫理』の中のAIを使って見事なまでに日本の未来のシナリオ、都市集中か地方分散かが最も本質的で、後者に持続可能な未来がある・・、というくだり、面白いと思います。結局、地方からやっていくしかない、ということだと思います。
地域通貨については、下北沢でベンチャーが始めた「シモキタコイン」が、結局広がらず、今月いっぱいで終了することになったということです。世田谷区が支援し区の商店街振興組合連合会が運営するQRコード決済サービス「せたがやPay」の出現が大きいです。
最近ジョルダンが買収したエアーズというドローンの会社の社長大越さんが、社長になる前、エアーズの他、ストックポイント等いくつかの会社に関わっていたとのこと。大越さんは面白い地域通貨の構想を持っています。給与の振り込みが電子マネーでもできるように変わったので、自治体が地域通貨を作り、希望者には役所、企業から例えば10%までは地域通貨で振り込ませるようにし、そこに自治体がボーナスを付与する。ただし、その地域通貨は地域のお店でしか使えない。使わなかったら、少しずつ減少していく、という地域通貨です。彼はアイディアだけでなく実際にビジネスを組み立てられそうです。
その大越さんが社長のドローンの会社、昨年12月に取得し、今年3月の決算ではのれん代を出しても利益が出るはずでしたが、3ヶ月の予定が半分も達成できず、監査法人からのれん代を一括償却させられてしまいました。そのため、ジョルダンの半期の決算は純利益がマイナス2億円台というかつてない悪い決算になってしまいました。ドローンは今後の成長株だし、社長に熱意があり、優秀なので買収を決めたのですが、今になって慌てていろいろ調べ始めました。社長は電通で10年間働いた後、いくつかの会社に関わり、ドローンの会社があまりにひどいのに驚いた。学校のフランチャイズもやっているが、お金をもらっただけで何もやってない。社員もひどい状態だったので見てられなくて社長を引き受けた、と言っています。会社はトップで決まるので、今が最悪、彼はやり切っていくだろう、と安心しましたが、地域通貨絡みで頭抜けたビジネスモデルを作り、実際に動ける人間が近いところにいた、ということに驚きました。
フィンランドの MaaS Globalという会社が、whimというアプリを作り、世界展開を始めたことに刺激を受け、私が動き始めた頃、同窓会で布野さんとも久々に再会しました。どちらかというと自分のやりたいことを好きにやっていた、というのがそれまでの私のやり方です。MaaSはそういうやり方ではどうにもならないと思い、ロンドンのデジタルチケットの会社と提携し、大きな会社を交えて国の政策を変えることができないかとJMaaSという会社を作り、MaaSへの動きをPRしたり始めました。しかし、東大OBのネットワークを活用し、JRのトップに会いに行ったり、国土交通省の局長に依頼に行ったり、それまでの私にはなかった動きを始めました。
しかし、壁は厚いです。既存のエスタブリッシュメントはこれまでのスタイルを変えようとしません。それでも1000万人以上のユーザーを抱える乗換案内の知名度は抜群ですから、積極的に動くこといろいろな話が入ってくるようになりました。2020年年初から始まったコロナウィルスで一気に売上が減少しましたが、国の補助金からみの受託仕事が入り、移動を主とする会社にしては赤字にならないでやってこれていたし、将来の交通に向けてのいろいろな実証実験もやれてます。また、移動は必然的にスマートシティの構成要素でもあります。
壁が厚い、という不満は、一方では我々の人材の層の薄さにも起因するのでしょう。大きな旗を掲げたら、その旗を担ぐにふさわしい人材を揃えていかなければならない。可能性のある社員を鍛えることももちろんですが、外部からももっと良い人を集めなければならない。そのためには、私も酒食の場を増やし、ワイワイガヤガヤやりながら人の発掘をやっていかなければならないのでしょう。国を動かそうと思ったら、キーとなる人たちの集まりを作り、そこに大学や研究機関をうまく巻き込みながら、どこかで実証実現の場を作り、成果を横展開していく。そういうことなのでしょう。
餅は餅屋、例えばchatGPTを動かしているとこういうやり方をすれば、こんな面白いものができるのではないか、と私にはすぐ想像力が働きます。しかし、自分でプログラムはダメですね。自分でもできるはずだと思い「python1年生」にチャレンジし、大まかには理解しましたが、もっとやらなければならないことがある。プログラムについては、得意なスタッフがやった方がよほど早い。会社も人事から経理まで全部自分でやっているから、そろそろ組織を本気で作らないとダメだと考え始めています。また、私自身は、自分の得意なところを急ぎ、目にみえる形にしなければいけません。
そう言えばもう一つ、3日ほど前、東條さんと縁ある西堀さんが尋ねてきました。東條さんが、昔、東京エンゼルスというベンチャーキャピタルを立ち上げたときがありました。Unixベースでオープンシステムを広げていこうという団体の構成員からお金を集め、小規模なベンチャーに投資しようとトライアルです。それがうまくいかず、そのキャピタルを引き継いだもが西堀さんです。引き継ぎはしたけどどうにもならなく、彼自身の商売も今ひとつなので、60になったのを機にリタイアした、という話を人づてに聞いていました。
その彼が元気なのです。リタイアした同じ業界の3人が月一くらいで会い始めた。暇を持て余し、やることのない毎日に皆嫌気がさしていた。3人の中のひとり、某証券会社の役員を辞めた人がお金なら自分が企業から集められる。ICT絡みの技術の評価は西堀さんの得意とすることです。いっそ三人でベンチャーキャピタルをやらないか、ということになったということです。投資先を決めたり、出資企業の役員会へ参加したり、新しい技術を勉強するのは大変ですが、今は楽しい毎日だということです。
ベンチャーキャピタルというのは、期間を決め出資者からお金を集めます。年2-3%はキャピタルが運用費としてもらい、満期までには上場、売却という形で個々の出資先ごとに清算、儲けの20%がファンドの取り分です。企業は持っているキャッシュの運用をいくつかのベンチャーキャピタルに依頼したりしてます。元証券会社の役員は、当時の付き合いもあり、20億円弱のお金を集めた、ということです。15億で2%の運用費としても3千万円は使えるお金になりますから3人の活動費としては十分、部屋は借りずにシェアオフィスで済ませているので、ちょっとした収入も期待できるわけです。
SI5Bは、歳を取りすぎましたかね。松本さんを本気にさせれば、大学を交えたうまい仕組みも作れそうだし、我々は、皆、顔は広いですよね。「新・都市の論理」は広く意欲ある人材を集める広告塔になれれば良い、と思います。そして、我々も国へのご奉公、最後の仕事が残っていると思います。
二人のやり取り、20回あたりで一区切りとし、次のステージを考えませんか。「新・都市の論理」が売れたら、そこに至るまでのプロセスとして出版もありですかね。出版といえば、建築で布野さんと同期の長嶋さんが本を作り送ってくれました。我々の「新・都市の論理」は、長嶋さんの本とは異なり、マーケットでベストセラーを狙いたいですね。長嶋さん、確かオックスフォードに留学していましたよね。そう言えば、一昨日、あいおい損保の山口専務とゴルフをしましたが、あいおいがオックスフォードのスピンアウト企業のMind Foundry社と資本業務提携をしたと言っていました。Mind Foundryやの創業者のマイケル・オズボーン教授は、先日来日したオープンAIのサム・アウトマンと並ぶかも知れません。あいおい損保やMind Foundryを巻き込み、未来の都市づくりを考えていくことも
前回の私の稿で、生成AIは権力は止めざるを得ないのでは、と書きましたが、その後いろいろ調べると、オープンソースですし、研究者もどんどん育っているし、とてもそんな状況ではないですね。日本でもサーバーエージェントが日本語LLMを発表しました。計算機パワーが凄まじい勢いで増しているので、AIの勢いはさらに凄まじく、1年も経てば様変わり。3年後にはとんでもないことになっていますね。そこで都市はどうあるべきか。社会はどうあるべきか。急がなければなりません。
ZOOM Talk2⑦ 20230523 10:30~11:00
・スマートシティ2-18 (布野→佐藤)2023 0603
ウクライナ・ロシア・G7
ロシアのウクライナ侵攻については、この往復書簡で随分話題にしてきたように思います。世界史の大転換ですから当然ですね。戦車、戦闘機、ドローン、ミサイルなど武器のみならず、食糧、エネルギー、半導体・・・世界が拠って立つ基盤、サプライチェーンが露わになったということはこれまでたびたび話題になりました。付け加えると、ひとつは独裁者の「帝国の夢」が根っこにあるような気がします。世界史の栄光(帝国)の時代への回帰ですね。プーチンには「ロシア帝国の夢」、習近平には「大中国の夢」がある。両国とも社会主義の壮大なる実験を経験した国です。
近所に同い年の坂内徳明さんというロシア民俗学の先生(一橋大学名誉教授)が住んでいて、関西に行く前から研究会などで知っていたのですが、一昨年末『道化と女帝のロシア もう一つの近代の道』という私家本をもらいました。プーチンはコロナ禍で、ロシアの歴史を熱心に勉強したらしいですが、ロシア帝国の創始者ピョートル大帝(1672~1725)の時代、世界を理想化しているように思えます。この坂内さんの本は、その死後5年後に即位した第四代女帝アンナに焦点を当てるのですが、その後、ウクライナ侵攻があり、私家本ではもったいないと、京大学術出版会に紹介したら、少し形を変えて今年の2月に刊行されました。
その「あとがき」の冒頭には「ノブゴロドは父、キエフは母、モスクワは心、ペテルブルグは頭」とあります。プーチンは、ロシアの頭脳、サンクト・ぺテルブルグ生まれです。キエフは母ですからロシアのものなんです。18世紀初頭にサンクト・ペテルブルグを建設したのがピョートル大帝です。坂内さんは、「サンクト・ペテルブルグ創建によってロシアは頭脳を獲得し・・・近代化を自ら選択した・・・新たなロシアをどのように位置づけるかという世界史的課題を自ら引き受け、西欧社会と真摯に向き合い、限りなき対話を繰り返すことが、その後の自身の生の持続を可能にするとの自覚を意味した・・・」。プーチンの選択は、「限りなき対話を繰り返す」ことではなかったということ、また、それを強いているのがG7であり、NATOということですね。
もうひとつは、昨晩(5月23日)の報道番組(BSフジ)で改めて知ったのですが、サイバー戦争で生成AIは相当な役割を果たしそうだということです。ロシア圏で暗躍するRAASというのがあるんだそうですね。ランサムウエアRansomeware・as a Service。また、いろいろ教えてください。
会社経営・地域経営・都市経営・国家経営
ジョルダンの半期の決算は純利益がマイナス2億円台というかつてない悪い決算になってしまいました!というのは、びっくりします。つくづく、佐藤さんは布野とは異次元の世界で生きてきたんだ、いるんだと思います。
しかし、地域経営、自治体経営、そして国家経営も基本的に同じなんでしょうね。新時代に即応した経営が求められている。
地域通貨は、もう少し、勉強したいと思います。また、どっかで成功させたいですね。
20回程度で一区切りにするのは賛成です。
以下をベースに、思いつくところをメモしてみます。
檄文
破綻した国の状況
国はどうすべきか
都市(自治体)はどうすべきか
個人はどうすべきか
檄文は、佐藤さん担当 いくつか箇条書きでください?
序? グローバルなシステムの提起
・「新・都市の論理」が求められている。
羽仁五郎『都市の論理』のリヴァイズ?(自治体の復権・都市自治体は連合せよ!)
→都市は分散自立して、世界中の都市とブロックチェーンで連合
・DAO(Decentralized Autonomous Organization)分散型自立組織としての都市のネットワークでつながる世界
・地域分散社会の拠点としての都市(コミューン)
・持続可能な地域物質循環システムの構築
・
・MAAS
・
・前提としての、地球環境 地球倫理 地球のデザイン
・ポスト資本主義システム
・世界共和国
・欲望の世界はメタヴァース(仮想現実)に???
Ⅰ 破綻した日本の状況
・財政破綻 債務残高DGP2倍超の異常
MMT理論批判 金融資本主義 世襲資本主義
・格差拡大 貧困(生活保護)率の増大 富裕層と貧困層 社会の二分化
・日本の国力・国際的地位の低下 日本企業の弱体化
GDP/人 24位
・行政(官僚)システムの劣化 縦割り行政 政治(家)システムの劣化
官僚の地方支配 3割自治 規制社会 ブラックボックス
・東京一極集中と地方の空洞化
・人口減少と少子高齢化
・食糧自給率 エネルギー自給率の低下
Ⅱ 国(日本)はどうすべきか →これは国策マタ― 地域分散都市へ
・拡大成長から持続可能な定常循環型成熟社会へ
・地方分散 遷都
・政策決定のオープン化 EBPM(Evidence-Based
Policy Making)
・財政健全化
・税の戦略的配分
・社会保障 年金 セイフーネットの構築
・食糧自給率 エネルギー自給率の増大
Ⅲ 都市(自治体)はどうすべきか
・
・首長のリーダーシップ
・地域MAAS 地域交通無料化
・地域通貨
・地域情報システム 山科アプリ
・ヴァーチャル地域博物館
・ヴァーチャル市場
・シェアハウス・シェアオフィス
Ⅳ 個人はどうすべきか
脱炭素化 脱化石燃料 再生可能エネルギー利用の最大化
自然再生 炭素吸収源の最大化 植樹・樹木利用
衣・食 地域自給
住 オートノマス・ハウス 環境共生住宅 ゼロ・エネルギー住宅
交 脱自動車 地域MAAS
結 檄文・まとめ
あんまり総花的でもインパクトはないかもしれませんね。
Ⅰ 世界=地球レヴェル
分散型自立組織としての都市ネットワークの必要
↓
Ⅱ 日本
人口減少・少子高齢社会の先進モデル
Ⅲ 都市
分散型自立組織としてのシステムの提示 手法・・・都市の論理
衣食住交システム?
結局 この中身をつめるということでしょうか?
ZOOM Talk2⑧ 20230606 10:00~10:30
・スマートシティ2-19 (佐藤→布野)2023 0618
檄文の箇条書きを作りながら、各章の内容についてさらに話さなければならない時期になってきました。およそ1年以上かけたメールでのやり取り、よく続いたと思います。MaaSを考え始めたとき、2人の関わってきた分野が実は非常に近いものであることに気づきました。そして何よりも無期限ストライキのときの東大の同級生であったこと、還暦の頃の同窓会での再会でまたあの頃が戻ってきた、ということでしょうか。
まだ世に出る前で知識欲があり、何かをしなければという強い意欲があった頃が昔だとしたら、そろそろフェイドアウトする頃ではあるが、やり残しはいくつもあり、この国の未来は危ういという現実に直面し、何かをしなければという思いが強いのが今であるように思います。
いきなり檄文に入る前に、私としては、この1回でさらに追加したいことを書き連ねていきます。布野さんの次回をもってメールでのやり取りは一旦終了とし、その後の進め方を直接会い話せれば、と思います。合わせて20往復も続いた2人のやり取りもそれなりに価値のある成果が残せたと思います。
多筆な布野さんと異なり、私はあまり文を書きません。以前に、西部邁さんの関わっていた「表現者」という雑誌に連載したことがありました。ジョルダンがある経緯から5年間ほど「表現者」の発刊元を引き受けたことがありました。そのとき、インターネットで世の中はこう変わる、ということを書きました。まとめて書いたのはあれが最後です。
西部さんに連れられて安部さんの議員会館の部屋まで行って小一時間話をしたことも2度ほどありました。2度目の総理大臣になる前のことです。座談会という形で平沼赳夫さんや中川昭一さんとテーブルを囲んだこととか、西部さん絡み、いろいろな想い出がありますね。
本にするなら、ジョルダンも出版社を持っているので、使うこともできます。が、兎に角、売れません。担当している者にはこのままでは廃止と脅しをかけ、SNS等ありとあらゆる販促の方法を使い半年間で黒字化しろ、と厳命していますが、果たしてどうなることか。売れる本を出している出版社でもしんどいのではないでしょうか。
我々の考えていることをベースに新しいムーブメントを起こせないか、ということがそもそもの狙いなのです。布野さんをYouTuberにするとか、あるいは漫画、それとも全く新しいネット上のサイトを作っていくとか、その辺までいろいろ考えています。
前回のミーティングのときに話したように、コンパクトシティー、というものが気になっています。5月の末、義母の墓参りのため、妻と2人で富山県の氷見市に行ったときのことです。金曜日の夕方、新高岡まで行き、高岡で一泊、翌朝、妻の実家まで行くことを考えました。ホテルは殆どが高岡駅前です。高岡駅から妻の実家までは、20キロ弱あるので、レンタカーを借りようと思いましたが、高岡駅にはレンタカー会社もありません。新高岡駅からレンタカーを借りました。
新幹線の泊まる新高岡駅から高岡駅までは、城端線というローカルな電車がありますが、本数が極めて少ないです。高岡市内には,氷見市の美味しい回転寿司もありますが、駅の近くではありません。ホテルから歩くのは大変なので、新高岡駅で車を借りたのはそれなりに役に立ちました。高岡も今は車社会です。高岡駅近くの商店街はシャッター通りです。新高岡駅前には大きなイオンがありますが、それ以外は殆ど何もありません。
私が昔考えた2020年のICT社会というのは、コンパクトシティーが点在し、新幹線で結ばれている社会であったような気がします。石油が枯渇するのを前に国も大きく変わるはずだ。公共交通網が充実していて、主要な都市を新幹線が走っている日本は、高速大容量の通信網の拡充と合わせ、新しい未来に移行しやすいと思いました。
しかし、なかなか変わりません。シェードオイルも登場、石油の枯渇もありません。2020年になろうとしても豪奢な日常が続く毎日が継続していましたが、いきなりコロナです。人の移動が全世界的に殆どなくなりました。人と人のコミュニケーションもテレビ会議が主に変わりました。
コロナも3年を経過し、また、昔ながらの日常に戻ろうとしています。しかし、線状降水帯なる言葉が登場し、日本のあちこちで雨が降ると被害がでています。温暖化も余計にひどくなり、6月でももう夏のようです。ウクライナ問題が加わり、エネルギーの価格は猛烈に高くなってきています。やはり、そうふんだんではないのです。長引くウクライナ戦争は、今度は穀物の価格にも及びそうです。日本の技術力の低迷は、国の借金が大きいことと合わせ、為替にも影響を与え、の暗雲が立ち始めています。また、我々団塊の世代が順に後期高齢者になろうとしています。
コロナ前の日常に戻ろうとしても、そのまま戻ることはありえないくらいに未来は不透明になってきています。もはやこのままではどうにもならないのではないでしょうか。やはり、私たち全員が未来に向けて大きく動き出すべきときにきているのではないでしょうか。
chatGPTに代表される生成AIも登場してきました。はじめて使ったとき、とんでもないものが現れた、と大きな衝撃を覚えましたが、あっという間に皆が同じように驚きました。インターネット登場以来の大きな変化、と誰もが感じているようです。今度の変化は、インターネットがあるので驚くほどスピードが速いのです。量子コンピュータの登場で計算機のスピードもさらに速くなってきています。クオーターごとにガラッと変わる。今はそんな時代です。chatGPTは、日本の司法試験では合格点が取れなかった、と言ってはいても、1年後には合格です。3-5年であらゆるものがガラッと変わるのです。
マイナンバーの失敗等、悲しくなる報道が繰り返されています。漢字文化圏の設計ミスのようなものが背景にありますが、企画、設計、製造という一連のサイクルが既存の体系ではうまくかない、ということを改めて示したようです。とことんゼロクリアの時期なのでしょう。
しかし、そう悲観することばかりではありません。日本を大きく変えてきた我々、団塊の世代が声を上げるべきときなのです。俺たち、本当に年金で暮らせるのか。運転免許を返納して、どうやって移動するのだ。
NTTが頑張っているIOWN、あるいはその普及で、5Gで遅れをとった日本も通信で先駆ける可能性が残っています。遠隔医療とかも現実性が高まっています。布野さんが、アムステルダムの街づくりに参加していた、ということも、すばらしい経験です。現実性のあるプランを作れる、と思います。
ZOOM Talk2⑧ 20230620 10:00~10:30
・スマートシティ2-20 (布野→佐藤)2023 0704
タイトル案です。
タイトル案です。
希望のコミューン
(都市ユートピア)
新・都市の論理
分散型自立組織としての都市ネットワーク
佐藤俊和・布野修司
はじめに
世界は,いま,大きく転換しつつある。
第一に,世界の歴史の大転換が進行中である。第二次世界大戦後の世界を規定してきた冷戦構造が崩壊(ベルリンの壁崩壊(1989年11月),ソ連邦の崩壊(1991年12月))して以降,本格的にグローバリゼーションの時代が到来する。ヘゲモニーを握ったのはアメリカ合衆国であり,世界随一の軍事力を背景にアメリカ合衆国によって世界が主導されていく時代が開始された。アメリカ合衆国のヘゲモニーは,しかし,21世紀に入って,9.11(2001)の同時多発テロ,イラク戦争(2003)によって揺らぎ始める。そして,リーマンショック(2008)が世界経済に深刻な打撃を与える。その一方で,大きく抬頭してきたのが中国である。北京オリンピック(2008),上海エクスポExpo(2010)を成功させ,中国が国内総生産GDPで日本を抜いて世界第2位となったのは2010年である。そして,アメリカ合衆国にアメリカ・ファーストを唱えるD.トランプ政権が誕生すると(2017~2021),イギリスのブレグジットBrexitなど自国第一主義を唱える経済ナショナリズムが世界各地で顕著になる。また,民主主義(自由主義諸国)vs権威主義(中国,ロシア他)という新たな世界秩序の構図が鮮明に浮上してきた。「一帯一路」vs「自由で開かれたインド・太平洋」という経済圏の囲い込みをめぐる対立構図がそれに重層する。
世界経済のヘゲモニーをめぐる米中の対立構造は,これからの世界史を大きく規定していくことになるが,これに割って入るかのように,ロシア連邦のウクライナ侵攻が開始された(2022年2月24日~)。第三次世界大戦を引き起こしかねないこの暴挙の背景には,プーチン大統領の強大であったソビエト連邦時代さらにはロシア帝国再興の夢があるとされるが,共通に問われているのは世界資本主義の行方である。世界はどこへ向かうのか,今のところ誰にも予測できない。
第二に,ICT(情報伝達技術)革命とインターネット社会の到来,そしてAIの出現がある。インターネットthe Internet(インターネット・プロトコル・スイートTCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)の起源は1960年代に遡るが,インターネットを用いて複数のコンピュータ・ネットワークを相互接続した地球規模の情報通信網の形成が開始されるのは1980年代後半であり,インターネットを基にした世界初のWWW(World Wide Web)が初めて実装されたのは1990年末である。そして,21世紀に入って,膨大なデータを保持,圧倒的な競走優位な立場に立った巨大なプラットフォーマーGAFAM(グーグル,アマゾン,フェイスブック,アップル,マイクロソフト)が出現する。インターネットが普及し始めた頃のWebがWeb1.0,すなわち読むだけのWebの時代,FacebookやTwitterが登場して双方向になってきたのがWeb2.0とされる。さらに,オープンAIによるChat Gpt(Generative Pre-Trained Transformer)が出現(2022),GAFAMが瞬時に追い上げ,あっという間に生成AIが社会に浸透しつつある。
第三は,世界史の転換どころではない。地球環境そのものの危機(転換)がフィードバック不可能な点にまで近づきつつある。「人新世Anthropocene」という言葉が一般的に流布することになったのは,オゾンホール関する研究でノーベル化学賞を受賞した(1995)パウル・ヨーゼフ・クルッツェン(1933~2019)が2000年に用いて以降であるが,46億年の地球の歴史に比すれば瞬時と言っていいホモ・サピエンスの活動が,地球の環境システム全体に影響を及ぼすことは驚くべきことである。
地球環境の危機の起源となるのは産業革命である。世界人口の幾何級数的な増加は産業革命によって引き起こされる。19世紀初頭の世界人口は約10億人と推定されている。それ以後の人口増加率の劇的変化は明瞭である。それでも20億人に達するまで(1927)100年以上を要したが,その後の人口増加はすさまじい。グレート・アクセラレーションと呼ばれるのは,化石燃料,とりわけ石油を大量に消費し出した20世紀後半以降である。そして,気候変動による異常気象は連動しており,わずかに思える平均気温の上昇が地球環境全体のバランスを崩し,転換点を超えてしまう恐れがあるということである。転換点とは,最終氷期(ヤンガードリアス期)の終結から現在にいたる1万年(完新世Holocene)とは異なる時代に移行する閾を意味する。仮にIPCC(気候変動に関する政府間パネル)が目標とする1.5°上昇以下に抑えられたとしても,産業革命以前に戻るには数百年はかかるとされる。
★
この大転換に際して,国際社会は右往左往,一致した方向を見いだせないでいる。193ヶ国が加盟する国際連合The United Nationsは完全に機能不全に陥ってしまっている。気候変動に関する政府間パネルIPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change)が国際連合環境計画UNEPと世界気象機関WMOによって設けられたのは1988年,リオ・デ・ジャネイロで「環境と開発に関する国連会議」(地球サミットCOP(締約国会議)1)が開催されたのは1992年であるが,気候変動,地球温暖化問題への各国の対応が遅々として進まないことは,スウェーデンの若き環境活動家グレタ・トゥーンベリ(2003~)が厳しく告発するところである。
本書が問いたいのは,近代の国民(民族)国家Nation Stateシステムに代わる世界システムである。世界共和国への道を見失って,自国第一主義に陥り,国家間の複雑にもつれた関係を解くことができない中で,国民(民族)国家に代わる基礎単位として注目するのは都市である。国家,中央銀行によるコントロールの不安定な枠組を超えて連携する都市ネットワークによる世界システム構築の可能性である。ブロックチェーンの技術を基盤として,仮想通貨,NFT(非代替性トークン Non Fungible Token)によって運営される,中央集権ではない分散型自立組織DAO(Decentralized
Autonomous Organization)のネットワークがそのイメージとなる。
1950年に25億3600万人であった世界人口は,1989年には52億3700万人で,50億人を突破したのは1986~87年とされるが,以降も人口増加はとどまることを知らず,ほぼ約12年毎に10億人増加して,2022年には80億人を超えた。今や人口1000万人を越えるメガシティは38都市(2019)[7]に及ぶ。このメガシティを産むのは,「差異」=格差拡大を駆動力とし,安価な労働力,物資を求めて,国境,制度,規制を超えて浸透していく資本主義システムである。分散型自立組織としての都市のネットワークが必要なのは明らかなように思える。
★
冷戦構造が崩壊して以降,ICT革命が進行,地球温暖化が加速してきた(グレート・アクセラレーション)時代は,ほぼ日本の平成時代(1989~2019)に重なる。オイルショックによって,高度成長期からの転換を余儀なくされた日本は,低成長かつ安定成長を前提とする社会編成に向かうかに思われた。しかし,1985年9月の先進5か国 G5 (米英仏独日)蔵相・中央銀行総裁会議における為替ルートの安定化(円高ドル安に誘導)の合意(プラザ合意)によって,高度経済成長期の再来かのような好景気が訪れる。しかし,1990年1月4日の大発会から株価の大幅下落が始まる。振り返れば,1986年12月から1991年2月までの51か月間がバブル経済期(平成バブル,平成景気)であった。以降,日本経済が回復することはない。日本経済の長期低迷期は「失われた30年」と言われる(吉見俊哉(2019))。
この間の日本の国際的地位の低下は覆うべくもない。日本の一人当たり名目GDP(国内総生産)は,1990年代前半にはアメリカ合衆国を抜いて世界一となった。しかし,バブル経済が崩壊した1992年以降,GDPの成長率は,年平均1%前後で推移する。2010年には国内総生産GDPは中国に抜かれて世界第3位になる。それどころか,日本の一人当たり国内総生産は世界28位(国際通貨基金2022,27位:世界銀行・国際連合2019)にまで低下している。日本企業の弱体化も明らかである。平成元年には,世界の上位50社のうち33社が日本企業であったのに,30年後には35位のトヨタ自動車のみとなっている。
財政破綻 債務残高GDP2倍超の異常,格差拡大,富裕層と貧困層の二分化,行政(官僚)システムの劣化 縦割り行政の硬直化,食糧・エネルギー自給率の過少化など,日本という社会,国家が抱えているクリティカルな問題については,本論で確認するが,本書が焦点を当てる最大のプロブレマティークは,東京一極集中と地方の空洞化である。加えて,日本が世界に先駆けて少子高齢化社会に向かいつつあるということがある。
日本の総人口は,2013年以降,減少に転じた。2070年には8700万人に減少すると推計されている(厚生労働省人口問題研究所2023年4月)。世界の総人口も21世紀後半には減少に転じることが予測されている。地球が「持たない」ことははっきりしているから,どのようなシナリオになろうとも,一極集中,貧富拡大の資本主義モデルとは異なる社会システムが必要とされていることは明らかであり,日本が世界に先駆けてその社会モデルを実現する大きな意味がある。分散型自立組織としての都市のネットワーク・モデルは,その大きな指針となる。
目次案
はじめに
第Ⅰ章 都市コミューンの存立根拠-都市の起源・変容・転生(布野)
都市の原像
都市のグローバルヒストリー
全球都市化―メガシティに未来はない!
第Ⅱ章 縮退する日本―自立循環(人口定常)社会へ(佐藤・布野)
コンパクト・シティへ
中央集権か地方分権か
第Ⅲ章 ICT革命-DAOのためのトゥール(佐藤)
第Ⅳ章 分散型自立都市の都市戦略(佐藤・布野)
おわりに
[1] 生物の細胞は数〜数十μmの大きさで、DNAとRNAの両方を含むが、ウイルス核酸は、DNAかRNAのどちらかしか含まない。
[2] 一般的な生物と異なるのは以下のような点である。①細胞ではなく、基本的には核酸とタンパク質からなる。②生物は細胞内部にDNAとRNAの両方の核酸が存在するが、ウイルス粒子内には基本的にどちらか片方だけしかない。③細胞が2分裂を繰り返すことによって指数関数的に増殖する(対数増殖)のに対し、ウイルスは1つの粒子が、感染した宿主細胞内で一気に数を増やす(一段階増殖)。感染したウイルスは細胞内で一度分解されるため、ウイルス粒子の存在しない期間(暗黒期)がある。④細胞は生きるのに必要なエネルギーを作る製造ラインを持っているが、ウイルスは、代謝系を持たず、自己増殖できない。代謝を宿主細胞に完全に依存し、宿主の中でのみ増殖が可能である。⑤自分自身でエネルギーを産生せず、宿主細胞のものを利用する。
[4] トマス・モア(1478~1535)が『ユートピア』をラテン語で出版したのは1516年である。正式なタイトルは“Dē optimō reī pūblicae statū dēque novā īnsulā Ūtopiā(最良の共和国と新島ユートピア)”である。ユートピアは,ギリシャ語のオーou (οὐ)(“no””not”=無,否)とトポス topos (τόπος)(場所)に由来し,接尾語iā(-ία)がついた語Outopía (Οὐτοπία,ラテン語でŪtopiā)である。近代初期の英語では”Utopie”あるいは”Utopy”と綴られる。発音は”Eutopia”で,第2音節にアクセントがある。要するに,「何処にもない場所no-place-land,Nowhere」という意味である。
[5] ユートピア島は,内陸の土地を15マイルほどの幅で開削して,海水で取り囲んだ人工島で,中央部の一番広い所で幅が200マイルで,両端は500マイルにわたる環状の線を描いていて,2つの端部から海流が流れ込み,その幅は11マイルである、とあります。ユートピア島には,54の都市があり,全て同じように作られ,都市間の距離は,最少24マイル,最大でも徒歩一日で,首都アモロートは島の真中に位置している。各州は州都を中心として,少なくとも周長20マイルの土地を有し,農村部には2名の奴隷の他,主人夫妻によって統率される40人の男女が住み,市民は農家に2年滞在し,毎年半数の20人ずつ交替する。
[6] 市街には,住居が街路の端から端まで櫛の歯のごとく整然と並んでいて,街路幅は20フィートである。石造あるいは煉瓦造の3階建の住居には 2つの入口があり,裏庭は裏の街路に接続している。各街路にはそれぞれ会館が一定の距離のもとに建てられており,1つの会館には左右両側にそれぞれ15軒ずつ,計30軒の世帯が割り当てられる。
[7]
“Demographia World Urban Areas”, 15th Annual Edition, April 2019