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2023年7月12日水曜日

熱い都市の不思議,周縁から54,産経新聞文化欄,産経新聞,19900917

 熱い都市の不思議,周縁から54,産経新聞文化欄,産経新聞,19900917


 54 熱くなる都市             布野修司

 

 自慢じゃないけどわが研究室にクーラーはない。身体がなまって温度調節機能が低下する、昔はクーラーなんかなかった、自然がいいのだ、と理屈をいって無理してやせ我慢している。当然学生には評判は悪い。

 しかし、それにしても今年の夏は熱かった。東南アジアに毎年のように出かけて暑さには慣れているつもりが、さすがに参った。年のせいかもしれない。

 都市は確実に熱くなりつつある。統計的なデータは知らないけれど、実感ではそうだ。みんながクーラーを使う。今年のクーラーの販売台数は大変なものだったそうだ。電車に乗ってもどこへいってもクーラーが効いている。地下鉄にも冷房がつきだした。しかし、室内を冷やすということは室外を暖めるということである。屋外の温度が上がっているのは誰が考えても間違いがない。屋内は長袖で上着がいるほど冷えていて、外の温度が上がっているのだから、外へでると余計暑い。とてつもない悪循環だ。

 都市には、緑がますます少なくなり、川や土もどんどん覆われる。建物は密閉化し、風は抜けない。都市そのものの熱循環も既に相当おかしくなっている。

 先日、太陽熱や雨水、井水や地下水、地熱や風力など自然エネルギーの利用をめぐって葉山成三(テーテンス事務所)氏の話を聞く機会があった。上智大学中央図書館や自邸(サーマルハウス)など天井輻射冷暖房、躯体輻射冷暖房を用いた設備設計で知られ、熱環境の語り部と呼ばれる氏の熱弁には、省エネについて実に考えさせられることが多かった。

 かって、オイルショックで省エネルギーが話題になった。以降、ソーラー・システムなど省エネ技術は様々に開発されてきた筈だ。しかし、現実の都市は、ますますエネルギー浪費型の構造になっていく。何故なのか。

 今回のイラク問題で中東湾岸地域が危機だというと、また省エネの声が起こってくる。実にいいかげんである。



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