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2023年7月14日金曜日

小さな金物にも大きな力,周縁から56,産経新聞文化欄,産経新聞,19901015

 小さな金物にも大きな力,周縁から56,産経新聞文化欄,産経新聞,19901015

 56 型枠緊結金物            布野修司

  内田(祥哉)賞というのがある。建築界には様々な顕彰制度があるが、最もユニークな賞だ。授賞作品を挙げてみればそのユニークさがわかる。第一回が「目透し張り天井板構法」、第二回の今年が「プラスティックコーン式型枠緊結金物」である。すなわち、顕彰の対象は、個人や団体ではなく、建築作品そのものでもなく、ものや技術が対象なのだ。

 内田賞というのは、国内の建築における事績で、構法に関する技術開発に対する影響が顕著なものを評価し、その内容を記録することによって、建築の進歩と発展に寄与することを目的として設けられたものなのである。

 ところで今年の授賞作品であるプラスティックコーン式型枠緊結金物とは何か。打ち放しコンクリートの平面を見てみてほしい。直径三センチ、深さ一センチほどの穴が規則正しく空いている筈だ。その穴がプラスチックコーン、通称「ピーコン」の跡である。すなわち、コンクリートを打設するための型枠を緊結する金物一式を表彰しようというのである。

 いまや、鉄筋コンクリート造の現場には必ず使われている。なんだと思われるかもしれない。しかし、それが生み出されるのには創意工夫と試行錯誤の歴史があるのである。

 都心の小中学校は同じ様な状況にあるのであるが、子供がいない町というのはやはり不自然である。計画者も子供の数が一割にもみたないなんて思いもしなかったに違いない。

 子供のいない町も不自然だけれど、若い世帯だけの町もこれまた不自然である。かって、ニュータウンの計画において、全く逆の現象が起こったことがある。予想を遥かに超える子供たちが入学し、教室が足りなくなったのである。あちこちのニュータウンで、あわててプレファブ校舎が建てられたのであった。同じ様な世代が一斉に入居するのだから当然なのだけれど、それに合わせて学校を計画するなんて思いもかけなかった。計画というのはどうもうまくいかないものだ。各世代がともに生活できるまちづくりができないのは、果して豊かか。根本的に何かがおかしい。



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