「裸の建築家/タウンアーキテクトの可能性」
〇日時:2006年5月26日(金)
〇会場:くじらの会:新宿NSビル13階NS会議室G
懇親会 :銀座ライオン新宿センタービル店(地下1階)
〇主催:くじらの会 事務局
〇プログラム:
<くじらの会の部>開場:18:00~
1.18:30~19:30(60分)
布野先生講演:「裸の建築家/タウンアーキテクトの可能性」
2.19:30~20:20(50分)
ワークショップ:「タウンアーキテクトの可能性について」
3.20:20~20:50(30分)
「くじらの会について」
会場移動:20:50~
<懇親会の部>開場:21:00~
1.21:10~
開会~乾杯(来賓挨拶)~懇談
2.布野先生挨拶:『近代世界システムと植民都市』日本都市計画学会
論文賞
授賞を記念して(受賞者「アジア都市建築研究会」)
3. ~23:00
懇談~来賓挨拶~懇談~閉会



〇当日の役割分担
(1)くじらの会司会・会計…二木
(2)くじらの会受付…倉澤、田口
(1)進行・記録責任者…奧富
(2)布野先生誘導係…山中
(3)ワークショップ記録係…鈴木 紀子(ARU田口設計工房)
(6)懇親会責任者及び司会進行…八巻
(7)懇親会受付…近藤 理恵子(家づくりネットワーク)
※ヴォイスレコーダーは八巻さん奧富さん田口君より貸してもらう。
※くじらの会には、ペットボトル持ち込み可(食は不可)。
ゴミは責任を持って各自持ち帰る。
林:町づくりは市民がやるもので、自治体がやるものであっては困ると思っているのですが。
布野:いきなり本質的な質問ですが、では自治体は何をやるのですか?
林:自治体の今までのやり方は、必要なくなると思っている。
布野:私も基本的に賛成です。PFI(*1)も必要ない。NPOに全部、財源など任せればいい。
林:現場でやっていて思うが、自治体は役に立っていない。
布野:私も町づくりとして近江環人コミュニティーアーキテクトを育て、大学院をとってくれるようにした。内閣府は都市再生と言うけれども、地域に目を向けていない。
林私は、世田谷で『まちづくりハウス』というNPOでの活動をしているが、そこのでは、自治会や町内会、市民で自主的に活動している会等の人たちが、ご近所の底力ではないが、様々な関わりのある人々を集め、力強い活動をしている。例えば、各所帯で高額の警備費保障費用を払っていることが判ると、地元でお金を集めて歩き回った方がよいのではという意見が出て来る。このようなことは町内会も行政もできないし、住宅政策のないところから実は出て来ている。もっとタウンピープルを信じてやる方がよい。役所は、自治区みたいなものをつくる時に、情報サービスなど肝心なところをやってくれればよい。また、建築、都市計画を本質的なところで考えてつくり直すことが今の役所では出来ない。自治区位にして組み立て直す方がいいのではないか。
布野:まだ、宇治市の都市計画審議会の会長をやっているが、マンション問題など起きた時どうするのかで、ダウンゾーニングをやった。そういう世界が一方であるが。
司会:僕らはどうやって食い込んでいくのか。方法がわからない。なかなかいいところに入っていけないのだが。姉歯問題は倫理の問題ではないか。
布野:建築家のモラルの問題は、建築士会、建築家協会では対応の仕方が違う。確認許可制の問題もあるが、保険しかない。建築主、施工者、建築家が保険をかけることしかない。
八巻:各地で町づくりをやっている建築家の実例で、うまくいっていることなど教えてほしい。
林:松江へ定住して、町づくりを行っている方は、地元のバスマップをつくって活動資金にしたり、新潟の村上、大分の湯布院でも、積極的に地元に入り、面白い町づくり(*)をしている。また『まちづくりハウス』の伊藤マサハル氏の活動などは、運営はギリギリだが、コミュニティーアーキテクトとして、実績を重ねている。また『山谷のふるさとまちづくりの会』の建築家やNPOの活動(*)は、ものになってきている感じだ。また自分たちでお金をつくろうという動きも出てきて、具体的な事業に粘り強くやれる力を付けている人たちが見えてきている。
西川:姉歯問題は食えないことがある。顔が見える仕事をしていない。人間と人間で直接仕事をしている関係がで出来ていないから起きた問題ではないか。
林:建物に保険を掛けると、保険の方からチェックが入る。
布野:建築家で保険のノウハウを持った人材がいない。そこに入り込むこともある。
司会:ところで皆さんは建築家なんですか。建築家と一級建築士の違いは。
布野:建築家はもので表現する人、空間を提案する人。すべてがタウンアーキテクトたりうる。得手不得手はあると思うが。
中條:建築家の自覚を持っているかどうかが問題。建築家は自分の空間に思いを表現できる人だと思う。
司会:建築家と言いたくない方もいるのでは。
田口:建築家ということはあまり意識しない。空間のダイナミックさというより、住む人が快適であることが重要と考える。
西川:空間を表現するのは、実は住む人で、住む人が表現したいものをプロとしてつくる人が建築家であると思う。
飯島:布野先生は、個人の美しさと全体が思う美しさの感情の温度差みたいなものはどのように思われているのか?
布野:僕は、システムのことしか言っていない。建築関係者は100万人いる。看護師さんと同じ数いる。町場でそのような人間がやっていた仕事が、ハウスメーカー等の進出によって崩れてきた。東洋大にいる時考えていたのは、アーキテクトビルダーとして、そのような地域を再構築し、施工までもやって食っていくこと。タウンアーキテクトはそのような仕事をコントロールする職能です。タウンアーキテクト数としては1万人位いればよい。個々がどのように稼ぐかはそれぞれ考えていくしかない。
岡:林さんのNPOの活動はよくやっていると思うが、実際どれだけの建築専門技術者が食べていけるのか。コンサルタントの仕事は、NPOが出てきてNPO価格が蔓延してしまっている。(単価が落ちている)布野さんの言っている仕組みはヴォランティアでやっているうちはよいが、果たして出来るのか?
布野:現在、全国的にコンサルタントや大手のシンクタンクは戦戦恐々な状態。大学の先生たちがコンサルタントもやり始めている。
岡:NPOの活動が定着し、うまくやっていける仕組みが出来るのか?
林:まだNPOにお金が回るような仕組みは出来ていない。シーズの活動(*)で、松村さんが企画を立てて、マイクロソフトのビルゲイツ氏を呼び、日本での寄付市場の発展に賛同を得た例など、寄付を貰える素地を強化していくことも重要だ。
地域のバザーだって、お金が入るだけでなく、人間関係のネットワークが出来て、いろいろな発見がある。そういう意味で違うノーハウを習得しないと過去のビジネススタイルでは食えなくなってきている。
山口:建築家は作りっぱなしが多い。うちの会社では、3ヶ月、1年、2年・・・とメンテナンスをしていく。10年、12年とやっていくうちにコミュニケーションが出来てきて、そこから仕事をもらえるようになる。夏休みには親子工作教室などのイベントもやる。うちの会社は埼玉中心。地域密着。他の地域では出来ない覚悟でやっている。
内田:私も保険と確認検査料をちゃんととることが必要だと思う。アメリカでも1%はとっている。一方では保険の問題があり、保険で新しい職能が生まれる。あらかじめ自分たちでやる仕事がこうだと設定するのが、変であって、新しい仕事をどんどん切り開いていくことしかない。一般解はなく、一人一人が特殊解をつくっていって、「俺はこうやって食っていくのだ」と言わざるを得ないのではないか。もう一点は、設計入札を止めコンペにしろという考えは理解するが、建物をつくることは地域や個人にとって晴れやかな場。それを建築家が罪深さも感じず、「俺たちいいことするからコンペに打させろ」というのは、違うのではないか。私は山古志村で仕事(*)をしていますが、一番大変なことは、いいプランをつくることではなくて、地域の大工さんと周辺の工務店との間でどういう風にコンスラクションマネージメントするかということなんです。それは、自治体も出来ないし、地域でやらなかったら、将来あんな雪深いところで維持管理は出来ない訳です。そういった新しい職能はいろいろある。そこらへんに飛び込んでいけるかどうかが勝負ではないか。
司会:新しい法令に対する危機感がある。
布野:内田先生の話で、大問題なのがPFIです。わかりやすく言うと事業コンペ。
総合評価により質も価格も評価し説明責任を果たすというものだが、30年保証、SPC(特別目的会社)をつくり自治体は丸投げ。地域の建築家はPM(*)的にファイナンスを組まない限り公共プロジェクトに参加できない。これは危機的状況で、コンペが成り立たない。
林:私たちが、NPOでやっていることの一つは、ローカルマネー、ローカルエコノミーをどのような仕組みでつくっていくかということです。自治体の責任も大きいし、政府や日銀もしっかり考えなければ。アメリカでは、ローカルマネーが動いているかチェックしている。60年代からインナーシティー問題などを沢山抱え込んで、都市の衰退を経験し、ローカルなパワーとエコノミーが成り立たないことには、国全体の経済に悪影響を与えることが判った。日本はまだそのようなことを考える頭がない。それをどうつくるかという論点からPFIをどうするかという仕組みを解いていく必要がある。
秋山:福島県喜多方に小宮山さんという方がいて、施工もやりながら、設計をされている。彼は、今の保障機構の検査員になった。小宮山さんは、現場で地域ビルダーや建築家などいろいろな仕事のことがわかるので、「面白い。自分の仕事に帰ってくる。」と言った。私は、これはいいスタンスだと思った。今の姉歯問題では、構造がピュアチェックなんて言い出してきていて、それは第三者性が必要なので、仕事をしている人間は関われないことになっている。それを現役の建築家も検査員を出来るようにして、そこからいろいろなことを学び、オープンにしていくといい仕組みになる。保険は壊れてからの話なので、マイナーな話なのではないか?
布野:そんなことはない。
秋山:アメリカは、弁護士料、保険料などにお金を沢山積んでいる。むしろ検査の方にお金がまわるようにしたらよいのではないか。保険は必要だと思うが。
布野:救いようがない。施工ミスに建築家が巻き込まれる可能性がある。私も保険社会は嫌いだが。
秋山:確かに最近は施工者の瑕疵でも、設計者が施工管理の責任で訴えられている。施工者が倒産していたら、設計者は払いきれない。
布野:PFIもそう。倒産したらどうするのという話はある。いやだけど保険でカバーするしかない。
久米:私は秩父で図面書きをしています。メンテナンスは大問題で、クレーム、瑕疵があった場合、図面書きレベルではお金がなく、対応できない。メンテナンスのためのお金の仕組みがほしい。また、田舎の人間は目の前に建てられる建築に参加できない実情がある。役所の思惑で、入札で争うのは不合理だが、国から補助金が出る時、設計料を入札で決めたというのが一番簡単。小さな事務所でもコンペに参加出来る仕組みがほしい。
布野:建築家協会の賠償保険(建賠)がパンク状態。内田先生の言われるように確認物件ごとやるしかない。
秋山:最近まで、建賠は掛けるけど使ったら恥だった。使わないから安かった。今本気で使われ出してパンクしている。
布野:保険を広めない限り安くならない。国交省にやらせなければ。
林:我々が考えた方がよいものになる。NPO法つくったとき、NGOや市民活動のグループや事業をしている人たちが集まり組織を作った。そこに人をスカウトした。偶然ばりばりのフリージャーナリストだった。その人の力を得て、いろいろなネットワークをつくって、専門家のノーハウを集めた。その結果、各政党がそこと話して、自分の党のNPO法を持ちたいと考えだした。そういうことをやらないと、国交省にお願いしているなんてことはだめ。自分たちの問題は自分たちで考えなければ。証券取引法にからんで、NPOバンクの方はひとさらいやった。組合員が500人以上のところは公認会計士にチェックしてもらうのはお金がかかってしまうから大変だから、専門家を集めてやった。そういうことは、建築家自身がやらないと。自分ではできないと思ってもどっかで探し出さなければ。
司会:布野先生を頼ってはだめなのですね。(笑)
中村:私は、全国版の住宅メーカーにいるのですが、良質な建築をどうやって確保するかという話が出たが、その話で抜けているのは、建てる人、住民のコスト負担が増えてるだけになってしまう、ということ。もっとコストを安くするなり、もっと違うアプローチで担保できないのかどうか議論したい。元々の話は地域社会が弱体化、形骸化していく状況に対して、新しいコミュニティーの形をつくっていくべきだと。そのような中に我々建築家がどのように参加していくのかという議論にしたい。主体は住民だと思う。その軸をずらして議論すると、ただどうやって食べようかだとか、業界はどうやって生き残ろうかとかの話になってなってしまう。
司会:僕の経験だと、熊本のまちづくりをやってみたことがある。熊本には第3セクターのシンクタンクがあるが、東京のコンサルタントを呼んできてしまう。地元の人が入れなくなる。それが今度はNPOだの大学だのとなっていくと地域が取り残されて、タウンアーキテクトも地元の人がなれないという状況が出て来てしまっている。
布野:僕のタウンアーキテクトは地元の人がならなくてもよい。任期制で、ある一定期間はそこで仕事をしてはだめですよという縛りをかける。
林:松江には寺本さんらすばらしい建築家が多くいる。
布野:寺本さんは、良く知っています。
林:?事務所から自分で事務所をつくった井上さん。この人はNPO松江まちづくり?塾の代表になっている人だけど、井上さんもそうだけど、ものすごくいろいろな町づくり参加のプロジャクトなど、そのようなことをやりながら、かなり進行している。何と知事と対談したりしている。だからそういう人は、いるんです。布野:それは、林さんの事務所が入っていって仕掛けているわけでしょ。
林:違います。私はそこでは仕掛けていない。私はこの15年位NPOにシフトしている。
司会:布野先生がおっしゃっていた、タウンアークテクトとコミュニティーアーキテクトとの使い分けをしたい、という話はいかがですか。
布野:似たようなものだが、現役の人たちがどうやってお金をもらうかという話は、上手い知恵がないので、それが迫力ないなと思っている訳です。一番イメージがあるのが、自治体を解体して、自治体のコンサルタント料をくれ、というのがリアルです。
林:「コミュニティーデザインプライマー」(*)という本がある。とてもいい本で、その中にコミュニティーアーキテクトやコミュニティーデザイナー人たちはどういう人たちなのか、アーキテクトや造園家の設計家とどう違うのかというのを、とても判りやすくきちんと説明をしてあって、頭の整理にいいなと思っていました。
布野:答えを言うとどういうことですか。
林:建築家は、建築のことをどうしても考えてしまうけれども、コミュニティーアーキテクトというのは、コミュニテーの一人一人の人たち、住んでいる人たちが大切にしているものを大切にしながら、その人たちと一緒に、のためにでなくと書いてあるが、一緒に考える。時には建築の仕事をすることも、あるいは公園のデザインをすることもあるのだけれど、それが先程西川さんが言われたように、「私が本当はこうあったらいいなと思うことを、私自身は上手く表現できないけれど、この人が一声歌ってくれたので、「あっ、これだ」と思ちゃった」というようなことが出来る人が、コミュニティーデザイナーとしてすばらしい。
布野:林さんには、毎回出て頂いて、、。こういうのをこれからやるのでしょ。
司会:これから続けていくつもりです。
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