不可避の構造改革 これからの建築に期待すること
布野修司
あんまり進歩がないのかもしれない。二〇年ほど前に『戦後建築論ノート』(一九八一年)を書いて、それなりに建築の未来を展望したのだけれど、あまり付け加えることがない。丁度第二次オイルショックの後で、高度成長期が終息した閉塞感はバブルが弾けた今日とよく似ていた。「町並みや歴史的環境の保存の問題」、「地域の生態系に基づく建築のあり方」など既に議論している。
五年ほど前にその改訂版『戦後建築の終焉---世紀末建築論ノート』(一九九五年)を出したけれど、主張の軸は変わっていない。バブルの残り火がまだ燃えさかっていたけれど、阪神淡路大震災によって「日本の近代建築」、「戦後建築」の課題が全て出尽くしたという思いがあった。そこで、八〇年代以降の建築の動向についての考察を加えるなかで、これからは個々の建築設計においても「地球のデザイン」が問われることを論じた。何も先見性を誇ろうというわけではない。近代建築批判の課題はそう簡単ではない、ということである。
とは言え、二〇年の時の流れは重い。この間、冷戦の終焉という世界史的な大転換も経験した。求められているのは現実的諸条件の中での具体的指針であろう。「フローからストックへ」「環境共生建築」「サステイナブル・デザイン」・・・耳障りのいい言葉が飛び交うけれど、ストック重視となるとすると、日本の建築界の再編成、構造改革は不可避である。建築の寿命が倍に延びれば、あるいは先進諸国並に建設投資が半分になるとすれば、建設産業従事者は二分の一になってもおかしくない。余剰の部門は、維持管理部門へ、建築に関わるIT部門へ、そしてまちづくり部門へ、大きくシフトしていくことになるだろう。
建築画報 2000年6月18日
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