布野修司 共同通信 学芸=見聞録 連載全21回 2000年8月~2002年4月
ハーグ駅前再開発 マイケル・グレイブス、シーザ・ペリ、レム・コールハウス、リチャード・マイヤー、アルド・ロッシ他
趣のある歴史的建物の背後に異形の高層建築が二つ見える。オランダはハーグの王宮から中央駅前を望んだ光景である。左の砲弾形のビルは、シーザ・ペリ、右の急勾配の切り妻屋根が二つ連なるビルがマイケル・グレイブスの設計だ。
国際司法裁判所があり、歴史ある落ち着いた町として知られるハーグの駅前に、よくもまあ次々に話題作がそろうものである。コールハウスの出世作といっていいドラマ・シアター、リチャード・マイヤーのハーグ新市庁舎も隣接して建っている。国際的建築家の時ならぬ饗宴の感がある。それにしても、クアラルンプールの世界一高いペトロナス・タワー、NHK大阪など、このところのシーザ・ペリの世界を股にかけた活躍はすさまじい。
オランダ建築には昔から興味があった。アムステルダム派の建築が好きで随分見ている。長年つき合ってきたインドネシアの宗主国でもあり、オランダ建築や都市計画の世界史的展開には関心がある。ハーグには国立図書館、国立公文書館があって、このところ資料漁りのために通っていて気になってしかたがない。
まずは、オランダ建築の元気の良さにはびっくりするやら、うらやましいやらである。しかし、ポストモダンの建築などもう流行らないのではないのか。負け惜しみのようだが、大丈夫かな、という気がする。まるでバブル期の日本建築を見るようなのだ。
確かに、それぞれがハーグの町を読んで、それぞれに解答を出しているように見える。しかし、その解答の方向はばらばらなのだ。ハーグの町の未来がここに示されているとはとても思えない。
無味乾燥な近代建築の立ち並ぶ景観にポストモダンの歴史主義は確かに一撃を加えたかも知れないけれど、しっかりした歴史的街並みの前ではどうしても薄っぺらに見えてしまう。競演が饗宴に終始し、共演になり得ていないのが致命的なのである。
➊仮設住宅の創意工夫 台湾のまちづくり最前線 伝統文化の継承 見聞録01,共同通信,200007
❷循環型の社会へ一戸の住宅から 石井の家 見聞録02,共同通信,200008
❸出島の復元 日蘭交渉400年 まちづくりの世界史 見聞録03,共同通信,200009
❹緑再生の巨大な実験 傷つけて癒す・・・建築の本質 見聞録04,共同通信,200010
❺出雲大社は一六丈あったのか 巨大木造建築の伝統 見聞録05,共同通信,200011
❻空調を使わないビル エコ・オフィス 見聞録06,共同通信,200012
❼知られざるモニュメント 丹下健三の「動員学徒記念若人の広場」見聞録07,共同通信,200101
❽木匠塾の目指すもの ざらざら,ぼこぼこの素材感 見聞録08,共同通信,200102
❾笑う住宅 くねって,捻(ひね)って,捩(よじ)って 見聞録09,共同通信,200103
❿縄文の森を埋め込む 屋上緑化 壁面緑化 見聞録10,共同通信,200104
⓫自然素材の魅力 誰でも建築家になれる 建築探偵の佳作,見聞録11,共同通信,200105
⓬建築の保存再生 建物を大事に使う時代へ 無闇に壊すな,見聞録12,共同通信,200106
⓭骨太の建築 斜めの空間 新たな空間を生み出そうとする悪戦苦闘 デコン(破壊)派の傑作!?,見聞録13,共同通信,200107
⓮バブリーなハーグの建築,見聞録14,共同通信,200109
⓯メキシコ・シティの再開発 タワーめぐり一騒動勃発,見聞録15,共同通信,200110
⓰超高層の危険隠した20世紀の「設計思想」ー何故ビルは一瞬で崩壊したか,見聞録16,共同通信,200111
⓱コレクティブ・ハウスの行方 新しい共同住宅のあり方を求めて 使われない共用空間!?,見聞録17,共同通信,200112
⓲巨大な「箱」に多様空間 はこだて未来大学,見聞録18,共同通信,200201
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⓲土木デザインの新展開 都営大江戸線・飯田橋駅,見聞録19,共同通信,20020201
⓴古都にふさわしい建築とは 巨大マンション登場,見聞録20,共同通信,200203 11
㉑京都都心の惨状 林立するマンション 消えゆく町家 覆いがたい理念の分裂,見聞録21,共同通信,200204