ジョグロ,at,デルファイ研究所,199403
ジョグロ
ジャワ インドネシア
布野修司
ジャワ(中部ジャワ、東ジャワ)の住居は、その屋根形態および架構形式によっていくつかに類型化される。その代表的なものが、ジョグロ、リマサン、スロトン、そしてカンポンである。規模が大きくなると、いくつかの住棟で構成されるが、住居の形式は基本的には屋根の形態で認識されるのである。
リマサンは、基本的には、寄せ棟の形式をいう。カンポン( )は、カンポンで一般的にみられることから、そう呼ばれてきたのであろう。切妻の形態をいう。それに対して、ジョグロ は最も格式の高い住居である。写真を見て欲しい。中央部の急勾配の寄せ棟屋根が高く突き出した形態が特徴的である。中央の四本柱(サカ・グル: )の上部に梁桁が何重にも組まれ、その上に小屋組がなされる。内部のピラミッド状の木組みは、ヒンドゥー教の宗教施設であるチャンディー建築に由来し、トゥンパン・サリ( )と呼ばれる。スラマタン(儀礼)の時に用意される米飯を円錐状ににしたものもトゥンパンと呼ばれている。
基本型は、中央の四本柱を中心に、一六本の柱で屋根が支えられるものである。屋根は、中央の急勾配の寄せ棟とそれを囲む下屋(げや)の二面からなる。大規模になると、更に四周にもう一列の柱列がつくられ、三六本の柱で屋根を支えるものもある。
屋根形態を問わず、ジャワの基本的な住居ユニットはオマと呼ばれる。オマの内部は、ダレムと呼ばれる。半戸外のベランダが、エンペランである。そして、ダレムは、前と後ろの二つ、もしくは、前と中央と後ろの三つの部分に分かれる。後部はスントンと呼ばれ、壁で囲まれた三つの部分からなる。向かって左(西)の部屋、スントン・クロンが米など食糧の倉庫、右(東)、スントン・ウエタンが武器や道具類の倉庫として使われる。中央のスントン・テンガは、床が高くつくられ、装飾を施されたベッドが置かれる。その外側の入口の両脇には戸棚が置かれるのが一般的である。スントン・テンガのベッドは、稲の神であるスリ、またそれが変身すると考えられている南海の女神ララ・キドゥルの場所と考えられ、結婚式などの儀礼の時を除いて、普段はカーテンで仕切られ公開されない。スントン・テンガは、オマの聖域である。スントン・テンガは、クロボンガンとも呼ばれる。
この構成がヒンドゥーの世界観を表しているという説がある。特にジョグロの中央部の突出は、メール山(マハメール)を象徴するというのである。。サカ・グルは垂直軸における中心であり、様々な彫刻によって飾られている。確かに求心性の高い架構であり、間取りである。
面白いことに、この四本柱の架構方式は、モスクにも用いられた。ジャワで最初にイスラム化されたデマックのモスクがそうだ。また、オランダ人たちもこの形式を自分たちの邸宅の架構方式として採用している。ひとつの架構形式がこうして普遍化している地域はかなり珍しいのではないか。
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