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2022年10月8日土曜日

今年気になった建築 李祖原の一連のプロジェクト,日経アーキテクチャー,19961216

 今年気になった建築 李祖原の一連のプロジェクト,日経アーキテクチャー,19961216

李祖原の一連のプロジェクト

 布野修司

 

 今年一番気になった建築と言えば、巨大な壁のように立ち上がったJR京都駅ビルである。毎日のように見るし、一般の人から感想(批評)を求められる。なんとなく非難して欲しい、というまなざしがある。しかし、建設中だ。今年取り上げるわけにはいかないだろう。

 といっても他に実際見た建築となるとなかなか浮かんでこない。インドのアーメダバードで見てきたばかりのコルビュジェやカーンの建築の強烈な印象の前には(神谷五男氏の二部作『インドの建築』『インド建築案内』は今年の大収穫である)、建築雑誌のバックナンバーの頁をめくっても、すべての作品が霞んだように見える。韓国の雑誌『空間』を見直していて急逝した飲み友達だった張世洋(空間社主宰)のことを思い出した。アジア大会(釜山)のスタジアムの仕事がとれたという報告が最後の電話であった。彼の師金寿恨と同じく過労死である。僕にとって今年最大の事件である。

 続いて台湾の雑誌を手にしてはたと思い当たった。気になるのは李祖原の一連のプロジェクトである。今年三月淡水で四本の花という高層集合住宅をみた。故宮博物館の前にもコンドミニアムが建設中だった。おまけに、IAA(イノーベーティブ・アーキテクチャー・イン・アジア)のシンポジウムで本人と議論する機会があった。超高層建築の頂部を蓮の花で飾る彼の建築の深遠な設計理論「建築=一心之器」を聞いて度肝を抜かれてしまった。いささか神がかっている。アジア建築は一体どこへ行くのであろう。

 そういえば、六月に訪れたジャカルタにも頂部を様々に飾り立てた巨大なポストモダン建築の超高層ビルがいくつも建ち出していた。

 





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