コンペ「採点方式」の魅力と限界,建築に採点は馴染まない,日経アーキテクチャー,日経BP社,19920803
コンペ「採点方式」の魅力と限界 布野修司
採点などということが建築の評価に馴染むのかとまず思う。確かに設計教育において、建築士の資格試験において、採点ということは日常的に行われているのであるが、得点そのものについては常々疑問である。ランクやレヴェルを分けることは当然あるのであるが、何点ということにさしたる意味はない。様々なクライテリアに照らして総合的に評価がなされるのであって、クライテリアごとの得点を足しても総合評価になるのであろうか。それ以前に、クライテリアというのは共通に絶対的なものして設定できるであろうか。クライテリアの選定そのものが既に評価の範疇ではないのか。
コンペの場合、一作品を選ぶ。何点違いだからというのではなく、やはり総合的な判断が必要だろう。公正ということについても、何をもって公正というのか議論は簡単ではない。問題は公開性である。今度、僕が審査員として関わることになったある町の文化ホールのコンペはエスキス・プロポーザル・コンペで「公開ヒヤリング」方式で審査を行なうことになった。公開の場で(あるいは公開を前提として)どうどうと評価を戦わせ、責任の所在をはっきりさせることさえきちっと行われていれば何も問題はないと思う。
問題は、あまりにも密室のコンペが横行していることであって、採点方式の問題というのは次元の違う問題である。
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