大塚「共同体基礎理論」は、資本制生産に先行する共同体の諸類型としてアジア的→古典古代的→ゲルマン的という3類型の発展段階が最も有力な見解というが、当初から解せないのは、都市国家の成立すなわち都市革命を画期としないこと。土地の私的占取、共同体内分業の度合のみが分類基準とされている。
共同体の「古典古代的形態」はギリシャのポリスの社会構成である。山本理顕『権力の空間/空間の権力』は、ハンナ・アレントの『人間の条件』のギリシャのポリスの社会構成から説き起こされる。その「コミュニティ権」「地域社会圏」の理論的根拠の基礎的考察は終えつつあると思ったけど、まだある。
採集狩猟社会の基本モデルと多様なあり方は理解できたと思う?。問題は「農業共同体」である。信頼に足る資料がないのだからその基本モデル(原始共同体)の内部構造については深入りしなくてもいいが、定住革命、都市革命、国家の成立をめぐる整理は必要となる。共同体の連合=都市国家とはならない。
定住革命が農業革命に先行するというのは、実際、魚介類や森林資源の豊富な地域ー例えば、日本の縄文時代などーで確認されている。そして、野生のコムギやイネの自生地で農耕が開始されたのもごく自然である。農耕が初めて開始されたとされるレヴァント地域でも定住が先行していることはわかっている。
柄谷行人は原始共同体的・アジア的・古典古代的・ゲルマン的・資本制生産様式を地理的な特定を除き、歴史的発展の順序とみなさない条件で、今も有効だという。しかし農業革命は基本的に認めず定住革命によって国家が誕生したとする。原都市=国家である。農業革命は国家の結果だという『世界史の構造』
交換様式A(互酬)の高次元での回復を展望する柄谷「交換様式論」はわかりやすい。国家の成立を抑制する原理が互酬性であった。定住によって階級社会が生まれ、国家が成立する。都市=国家の成立は都市と農村の分業によって成り立つ。農業共同体には互酬性が機能していたのである。相互扶助の原理だ。
昨日、横浜国大で山本理顕プリツカー賞受賞記念特別講演「閾」論を聴いた。すごい熱気だった。IITでの受賞レクチャーTheory of Community Based on the Concept of Thresholdとほぼ同じであるが難解である。コミュニティの「閾」とは何か?この一連の呟きは「閾」論を理論的に補強する試みなのである。
柄谷『世界史の構造』(2010)は既に交換様式論の骨格を示している。定住革命(定住狩猟採集社会)→原都市=国家の成立・世界帝国→近代世界システム(国民国家・産業革命・資本主義)→(世界共和国)という4段階の画期は、A互酬、B略取と再分配、C商品交換、D(X)という4つの交換様式に対応する。
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