初心に還る, 『雑口罵乱』③(談話室,滋賀県立大学), 2009
初心に還る
布野修司
昨年(2008年)の1月号から『建築ジャーナル』誌に「メディアの中の建築家たち」と題して日本の現代建築家を取り上げて連載している。1月~3月号は前書きの総論のような形で、4月号から3ヶ月、安藤忠雄、続く7月~9月号を藤森照信、以降、伊東豊雄、山本理顕、石山修武、渡辺豊和、象設計集団と続けて、原広司論(2010年1月~3月号)を入稿したところである。
2008年の4月号は「ボクサーから東大教授へ 安藤忠雄の軌跡」というタイトルであったが、連休の前だったか後だったか、いきなり安藤さんが電話してきた。どうも気に入らなかったらしい。
聞くと、3箇所誤りがあるという。さしさわりがあるので書かないが、ひとつはボクサー時代の戦績が違うという。「ボクサー時のリングネームは「グレート安藤」、フェザー級、戦歴はプロ戦績通算8勝3敗1分―23戦13勝3敗7分け、という説もある。」と書いたのであるが、そんな試合数できるわけがないじゃないか!という。しかし、Wikipediaに書いてあるじゃないか、と言い返すと、あれが間違っているのだ!とのこと。単行本にするとき訂正します、で一件落着、と思いきや、「それはそうと、今度お前の大学に話しに行ってやるよ。この間、東大の入学式で1万人の前でしゃべったけど、評判よかったよ。建築といわず、新入生にしゃべるよ」とおっしゃる。
「ええ!」と絶句。
あとは省略するけれど、学長を引っ張り出すやらなんやら800人ぐらいは集まった。その様子を石野君が書いている。DVDにとってあるけれど、そのまま使うことはまかりならん、とのこと。安藤節は生の毒舌がいい。
西沢立衛さんとは初めてであったが、スライド・レクチャーを聞いて、そのセンスに感心。いきなり、「西沢さんは理論家肌じゃないのがいいね」と言って怒らせてしまった。「僕ほど理論家はいない」のだとか。なんでも修士論文は「設計資料集成」についてなんだそうで、建築計画学の野村東太先生とか小滝一正先生に習ったとか。吉武研究室出身の僕とは義兄弟ということになる。
いつか西沢論をという気になったけれど、先の連載は、僕の年齢以上と決めていて、隈研吾、妹島和世以下の世代は、第二ラウンドに書けたらいいと思う。
芦澤さんの会は、海外で出席できなかったけれど、一昨年卒業設計の講評会に来てもらって知っている。とにかく元気がいい。昨年来てもらった、ヨコミゾマコト、藤本荘介、佐藤淳も含めて、連載でとりあげる候補である。
飯田さんとは、学会賞作品賞の審査委員会で一緒だったけれど、ほぼ同い年で、初めて全体の仕事を見せてもらった。手堅い。横浜国大はこれであと北村恒さん呼ばなくちゃ。
重村さんとは学生時代からの付き合い。その全仕事をあらためてみせてもらった。生命循環都市の方向性は真に共鳴できる。
談話室は、学生たちのためだけではない。教師にとっても、自分の仕事、自分の歴史を振り返る機会でもある。いつも刺激をもらえる。建築を志した頃の初心を思い出さしてくれる。
今年、ついにというか、なんというか、還暦を迎えた。来年からは赤ん坊に還ったつもりで頑張ろうかな。
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