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2021年10月13日水曜日

北京激変 オリンピック前夜の狂騒 下 胡同壊滅

 北京激変 上 オリンピック前夜の狂騒,日刊建設工業新聞,20070629

北京激変 下 オリンピック前夜の狂騒,日刊建設工業新聞,20070706

北京激変 オリンピック前夜の狂騒 下 胡同壊滅

 北京大学の講演で、「最近の北京の建築シーン」と題した松原弘典(松原弘典建築設計事務所 主宰/慶応義塾大学 総合政策学部准教授)先生の話が面白かった。松原先生とは、彼が伊東豊雄事務所を辞めて、国際協力基金の奨学金を得て北京大学に留学中に会ったことがあり、「これからは中国だ、頑張れ」などと励ましたのであるが、その後の活躍は、北京で仕事をしながら日本に教えに行くという、現在が物語っている。将来期待の建築家である。

 松原先生曰く、北京の住宅供給はちょっとしたパニック状態である。昨年五月十七日に国務院常務会議が出した「民間住宅開発の延床面積七〇パーセント以上は九〇平米以下の住宅とすること」「四.九メートルを超える階高の場合は二層住宅として計算する」などを定めた政令(国六条「住宅供給構成の調整および住宅価格の安定に関する通知」)がそのきっかけである。なんとも設計が難しい、日本人建築家ならうまいだろうからと注文がある、という冗談のような事態が今日の北京である。シンポジウムに参加した、最近『五一白書』を出した鈴木成文先生も苦笑であった。

日本建築学会計画委員会春季学術研究会は、ツアーとして胡同の見学に一時間ほどの時間をとった。故宮の北、鐘楼・鼓楼のある周辺地区で保存地区に指定されている。北京大学 環境学院 都市·地域計画系の呂斌教授の研究室の周さんがその保存修景の取り組みを報告してくれたが、日本のまちづくりとよく似ている。呂先生は日本で学んだことがある。しかしそれにしても、胡同の雰囲気を残す地区は極めて少なくなりつつある。見学した地区は、外人観光客のために人力車が何台も並んでいるそんな地区である。隣接して「菊児胡同」という地区があり、四合院型集合住宅がある。日本で言えば、京都の町家型集合住宅である。中庭を活かしながら二階建て、三階建てに立体化する。スケールもそう威圧的でなく、なかなかいい。今度、再び訪れて、この方向の選択はなかったのか、とつくづく思った。


今回の企画の事務局を勤めた滋賀県立大学の博士後期課程の川井操君が中国都市の回族地区の街区組織を研究テーマとしているというので、清真寺(モスク)のある朝陽門地区と外城の牛街を歩いた。朝陽門地区は、それなりの雰囲気は維持していたが、表通りに面した地区は高層ビルやオフィスにすっかり建て替わっていた。びっくりしたのは牛街で、つい最近まで平屋の四合院が残っていたけれど、ほとんどが一八階建ての高層アパートになっている。

「国六条」によって小型住宅開発が盛んに行われるようになる一方、リノベーションも盛んだという。驚いたことに一九八〇年代、さらには一九九〇年代に建設された「物件」もリノベーションの対象になっているという。また、市の北東部の三里屯、金融街など商業地区の再編成も盛んである。さらに、都市周辺部の中心部への取り込み、すなわち、郊外地の開発がどんどん進んでいる。まさにバブリー北京である。


天安門広場に面した国立博物館のすぐ裏手に「北京城市企画展覧場」がつくられ、北京の中心地区の模型が展示されている。上海にもあるが、二層の吹き抜け空間ワンフロア全体を使ったその展示は圧巻である。模型から北京の変貌振りが伝わってくる。

中国の首都北京はどこへ行くのか。

 


 

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