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2021年12月17日金曜日

『室内』から「世界」を斬る  室外からみた『室内』

 『室内』から「世界」を斬る,(『『室内』の52年 山本夏彦が残したもの』,INAX出版所収),室内、200609

室外からみた『室内』 

『室内』から「世界」を斬る

布野修司

「百家争鳴」など折に触れて書かせて頂いたが、八九~九〇年の「室内室外」、九八~九九年の「おしまいの頁で」の連載がなつかしい。「僕はインドで牛になりたい」(九四年六月)、「桟留(サントメ)」(九八年九月)―江戸で流行った着物の縦縞模様インドのチェンナイ(マドラス)のサン・トメ(聖トーマス)に由来する―など、アジアを歩き回りながら考えたことが昨日のように蘇ってくる。

『室内』に書く、ということは、「山本夏彦」の眼を通すことであり、文章修行の趣があった。一般の「建築雑誌」に書くよりも肩に力が入った記憶がある。『室内』の魅力は、とにもかくにも「山本夏彦」(的なるもの)だったと思う。核に据えられていたのは、鋭いというか、洒脱なというか、皮肉っぽいというか、醒めたというか、本音というか、要するに「夏彦」的批評精神である。

わかりやすさと庶民感覚、専門や業界に囚われない自由の雰囲気が『室内』にはあった。欠陥住宅問題(「売建住宅に御用心」八六年四月)、設計競技問題(「公開してはどうかコンペの審査記録―面白いのは決定までのプロセス―」八九年一月)、東京論(「語りのこされた場所「皇居」―昭和が終って浮かんできたもの」同三月)、森林資源と割箸問題(山を見あげて木をおもう―どうして割箸なんか持ちだすの?―)九月)など、建築(業)界について、思う存分書いて気分がよかった。「夏彦」的なるものに載せられていたのだと思う。部数の違いもあるが、反響は一般の「建築雑誌」とは比べられないほど大きかった。

職人さんを大事にしたのが『室内』であった。「職人不足は誰のせい」(九〇年三月)を書いた頃、呼び出されてご馳走になった。現場で何が起こっているのか、何が真の問題なのか、とことん問いつめるのが、夏彦さんである。しかし、文章となると軽妙である。「職人不足は誰のせい」というタイトルは編集部につけて頂いたものである。「大工殺しの共犯者たち」というのが僕のセンスであった。人にものを伝え、揺り動かす、それには壷がある。銀行業界批判は痛烈であったが、極めて具体的に読者に向かって一斉にキャッシュ・ディスペンサーから引き落とせ、と書いた、その鋭さには舌を巻いた。夏彦さんは実にラディカルなのである。

『室内』は、誰にとっても身近である。身近なことから世界が見えるし、語れる。身近な問題を縦横無尽に、伸縮自在に扱うのが『室内』の魅力であった。

 

『室内』布野修司原稿 

 売建住宅に御用心,室内,工作社,198604

◎じゃぱゆきくん、百家争鳴、室内、198802 

室内室外

01公開してはどうかコンペの審査記録,面白いのは決定までのプロセス,室内,工作社,198901

02語りのこされた場所「皇居」,昭和が終って浮かんできたもの,室内,工作社,198903

03国際買いだしゼミナ-ル,建築見学どこへやら,室内,工作社,198905

04博覧会というよりいっそ縁日,建築が主役だったのは今は昔,室内,工作社,198907

05山を見あげて木をおもう,どうして割箸なんか持ちだすの?,室内,工作社,198909

06住みにくいのはやむを得ない,そもそも異邦人のための家ではない,室内,工作社,198911

07建築の伝統論議はなぜおきない,日本の建築界にもチャ-ルズがほしい,室内,工作社,199001

08職人不足はだれのせい,室内,工作社,199003

09こんなコンペなら無い方がまし,室内,工作社,199005

10宅地は高いほうがいい,室内,工作社,199007

11秋田杉の町能代を見る,室内,工作社,199009

12再び能代の町に行ってみて,室内,工作社,199011

 

◎僕はインドで牛になりたい百家争鳴室内工作社199406

 

『室内』おしまいの頁で199801199912

01百年後の京都,おしまいの頁で,室内,199801

02室内と屋外,おしまいの頁で,室内,199802

03英語帝国主義,おしまいの頁で,室内,199803

04 アンコ-ルワット,おしまいの頁で,室内,199804

05 ヤン・ファン・リ-ベック,おしまいの頁で,室内,199805

06 秦家,おしまいの頁で,室内,199806

07 木匠塾,おしまいの頁で,室内,199807

08建築家と保険,おしまいの頁で,室内,199808

09桟留,おしまいの頁で,室内,199809

10 インド・サラセン様式,おしまいの頁で,室内,199810

11 ヴィガン,おしまいの頁で,室内,199811

12カピス貝の街,おしまいの頁で,室内,199812

13ダム成金の家,おしまいの頁で,室内,199901

14 J.シラスのこと,おしまいの頁で,室内,199902

15 ジベタリアン,おしまいの頁で,室内,199903

16西成まちづくり大学,おしまいの頁で,室内,199904

17 スラバヤ・ヤマトホテル,おしまいの頁で,室内,199905

18京都デザインリ-グ構想,おしまいの頁で,室内,199906

19 ジャングル, おしまいの頁で,室内,19990

20 大工願望,おしまいの頁で,室内,199908

21日光,おしまいの頁で,室内,199909

22ヴァ-ラ-ナシ-,おしまいの頁で,室内,199910

23北京の変貌,おしまいの頁で,室内,199911

24群居,おしまいの頁で,室内,199912

 

◎旧朝鮮総督府の解体と日帝断脈説,室内,199602

◎序説の人生,室内,200001

◎世界一周,室内,工作社,200012

◎『室内』から「世界」を斬る,(『『室内』の52年 山本夏彦が残したもの』,INAX出版所収),室内、200609

 

室内室外

公開してはどうかコンペの審査記録,面白いのは決定までのプロセス,室内,工作社,198901 

語りのこされた場所「皇居」,昭和が終って浮かんできたもの,室内,工作社,198903

国際買いだしゼミナ-ル,建築見学どこへやら,室内,工作社,198905博覧会というよりいっそ縁日,建築が主役だったのは今は昔,室内,工作社,198907

山を見あげて木をおもう,どうして割箸なんか持ちだすの?,室内,工作社,198909

住みにくいのはやむを得ない,そもそも異邦人のための家ではない,室内,工作社,198911

建築の伝統論議はなぜおきない,日本の建築界にもチャ-ルズがほしい,室内,工作社,199001

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