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2021年12月15日水曜日

世界一周 

 

世界一周,室内,工作社,200012

世界一周 布野修司

 

 二〇世紀最後の夏、ついに世界一周を成し遂げた。などと自慢げに言ってみたくなるが、どうということはない。インドに寄ってからオランダに行き、柄にもなくハーグの国立公文書館(ARA)に通ってライブラリー・ワーク。途次、パラマリボ(スリナム)、ウイレムシュタッド(クラサオ)、カラカス(ヴェネズエラ)まで足を伸ばしたら、もう北米経由の方が安いという。マイアミ、シカゴを回ってアラスカの上を飛んで帰ってきた次第。五週間ほどの旅だ。

 二〇〇〇年は「日蘭友好四〇〇年記念」?の年であった。関ヶ原の戦いの年、三浦按針ことウイリアム・アダムズ、八重洲の名のもとになったヤン・ヨーステンら二四人の乗ったオランダ船リーフデ号が大分県臼杵湾に漂着して四〇〇年になるという。

 二〇年程前からオランダの植民地だったインドネシアに通っている縁だかなんだか、このところオランダのつくった町を追いかけている。出島、ゼーランディア城(台南)、マラッカ(マレーシア)、コロンボ、ゴール(スリ・ランカ)、コチン(インド)、そしてケープ・タウン(南アフリカ)まで辿り着いたが、世界は広い。というより、一七世紀から一八世紀にかけてのオランダのヘゲモニーはすごかった。ケープ・タウンまでが東インド会社(一六〇二年設立)の管轄で、西アフリカ以西を担当した西インド会社(一六二一年設立)がある。なんて恥ずかしながら知らなかった。百聞は一見に如かず、とばかりに地球の裏側の土を踏むに及んだのである。

 カリブの町は予想以上にまぶしかった。パステルカラーに彩られた世界遺産都市ウイレムシュタッドなどとてもアジアの町のセンスではない。同じオランダがつくったとはいえ、土地土地でそれぞれ固有の町が育まれるというのが、とりあえずのありきたりの感想だ。

 ところで、米国大統領選の集計騒ぎには驚いた。まるで発展途上国である。インドネシアでは、スハルトの開発独裁体制崩壊以降、東チモールに続いて、アチェ特別州、西イリアンなどで独立要求が高まりつつある。仮に、住民投票ということになっても、米国からは選挙監視団など要らない、ということになりはしないか。

 I.ウォーラーステインによれば、近代世界システムのヘゲモニーを握ったのは、オランダ、英国、アメリカ合衆国のわづか三つの国だけである。そして、ヘゲモニー国家は永続しない。必ず滅びる。これは既に合衆国衰退の兆候ではないか、などというのは妄想か。

 インドの総人口が中国のそれを既に超えたのをご存じか。IT、ITと騒ぐけれど合衆国も日本も何故インドなのか。安価な知的労働力が狙われているのである。二一世紀のヘゲモニーを握るのは中国あるいはインドではないか。世界一周などすると、世界を又に掛けるビジネスマンのような心境になるのが不思議である。桑原、桑原。


『室内』布野修司原稿

 

 売建住宅に御用心,室内,工作社,198604

◎じゃぱゆきくん、百家争鳴、室内、198802

 

室内室外

01公開してはどうかコンペの審査記録,面白いのは決定までのプロセス,室内,工作社,198901

02語りのこされた場所「皇居」,昭和が終って浮かんできたもの,室内,工作社,198903

03国際買いだしゼミナ-ル,建築見学どこへやら,室内,工作社,198905

04博覧会というよりいっそ縁日,建築が主役だったのは今は昔,室内,工作社,198907

05山を見あげて木をおもう,どうして割箸なんか持ちだすの?,室内,工作社,198909

06住みにくいのはやむを得ない,そもそも異邦人のための家ではない,室内,工作社,198911

07建築の伝統論議はなぜおきない,日本の建築界にもチャ-ルズがほしい,室内,工作社,199001

08職人不足はだれのせい,室内,工作社,199003

09こんなコンペなら無い方がまし,室内,工作社,199005

10宅地は高いほうがいい,室内,工作社,199007

11秋田杉の町能代を見る,室内,工作社,199009

12再び能代の町に行ってみて,室内,工作社,199011

 

◎僕はインドで牛になりたい百家争鳴室内工作社199406

 

『室内』おしまいの頁で199801199912

01百年後の京都,おしまいの頁で,室内,199801

02室内と屋外,おしまいの頁で,室内,199802

03英語帝国主義,おしまいの頁で,室内,199803

04 アンコ-ルワット,おしまいの頁で,室内,199804

05 ヤン・ファン・リ-ベック,おしまいの頁で,室内,199805

06 秦家,おしまいの頁で,室内,199806

07 木匠塾,おしまいの頁で,室内,199807

08建築家と保険,おしまいの頁で,室内,199808

09桟留,おしまいの頁で,室内,199809

10 インド・サラセン様式,おしまいの頁で,室内,199810

11 ヴィガン,おしまいの頁で,室内,199811

12カピス貝の街,おしまいの頁で,室内,199812

13ダム成金の家,おしまいの頁で,室内,199901

14 J.シラスのこと,おしまいの頁で,室内,199902

15 ジベタリアン,おしまいの頁で,室内,199903

16西成まちづくり大学,おしまいの頁で,室内,199904

17 スラバヤ・ヤマトホテル,おしまいの頁で,室内,199905

18京都デザインリ-グ構想,おしまいの頁で,室内,199906

19 ジャングル, おしまいの頁で,室内,19990

20 大工願望,おしまいの頁で,室内,199908

21日光,おしまいの頁で,室内,199909

22ヴァ-ラ-ナシ-,おしまいの頁で,室内,199910

23北京の変貌,おしまいの頁で,室内,199911

24群居,おしまいの頁で,室内,199912

 

◎旧朝鮮総督府の解体と日帝断脈説,室内,199602

◎序説の人生,室内,200001

◎世界一周,室内,工作社,200012

◎『室内』から「世界」を斬る,(『『室内』の52年 山本夏彦が残したもの』,INAX出版所収),室内、200609

 

室内室外

公開してはどうかコンペの審査記録,面白いのは決定までのプロセス,室内,工作社,198901

 

語りのこされた場所「皇居」,昭和が終って浮かんできたもの,室内,工作社,198903

国際買いだしゼミナ-ル,建築見学どこへやら,室内,工作社,198905博覧会というよりいっそ縁日,建築が主役だったのは今は昔,室内,工作社,198907

山を見あげて木をおもう,どうして割箸なんか持ちだすの?,室内,工作社,198909

住みにくいのはやむを得ない,そもそも異邦人のための家ではない,室内,工作社,198911

建築の伝統論議はなぜおきない,日本の建築界にもチャ-ルズがほしい,室内,工作社,199001

 

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