日本建築学会 2000年学会賞(作品賞) 総評
最終判断には委員会全体のある種のバランス感覚が働いていると思う。そういう意味では妥当な選考であった。
ただ個人的評価は異なる。第一次選考で残った8作品の中で最後まで押したのは「上林暁文学記念館」「三方町縄文博物館」「中島ガーデン」の3作品である。前2作品は第一次選考で最も多い票を集めたが、現地調査で支持を失ったのが残念である。細かい収まりより大きな構想、新しい空間の予感、薄くてぺらぺらの建築ではなく存在感のある建築を評価基準としたけれど、眼につく欠陥の指摘を圧倒し返す言葉を持ち得なかった。
「熊本県立農業大学校学生寮」は、豪快で、さすが当代の目利きの作品と、好感が持てた。特に食堂の空間が不思議な魅力がある。ただ、平面計画にしろ構造計画にしろ素人そのものなのは買えなかった。特に木造の扱いはこれで時間に耐え得るかと思う。また、旧態たる奇妙な設計施工の体制も気になった。「東京国立博物館法隆寺宝物館」は完成度において文句はないが、この作品によって「重賞」問題を突破するのをやはり躊躇(ためら)った。「中島ガーデン」は、日本型都市型住宅のプロトタイプ提出の試みとして「茨城県営長町アパート」とともに評価した。
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