日本建築学会 2001年学会賞(作品賞) 総評
布野修司
今回の選考は、正直言って、あまり乗らなかった。現地視察を行う8作品にこれぞと思う作品のいくつかが残らなかったことと、残った作品のうちに重賞がらみの作品が3作品もあったことが大きい。
重賞は絶対認めないというのではないが、余程の作品でなければ投票しない、というのが、基本姿勢である。要するに、学会賞は、「新人賞」的でいい、と思う。荒削りであれ、将来の日本の建築界をリードするような力のある若い作家に可能性をみたいと思う。学会賞のレヴェルが問題になるのは、若手の作品に勢いが無く、それなりのキャリアを積んだ卒のない作品の受賞が続いているからであろう。これも時代の流れである。
受賞作の内では、公立はこだて未来大学は文句無いと思った。実に単純なビルディング・システムがかくも多様な空間を産むということにいささか感動を覚えた。山本理顕さんのプランニングの力量とともに、木村俊彦先生の到達点を見る思いであった。テクニカル・アプローチの、大袈裟に言えば日本の近代建築の目指したのはこのような作品であったのかもしれない、と思った。
地下鉄線大江戸線飯田橋駅は、土木分野への建築家の果敢な試みとして評価したい。余計な仕上げを剥ぎ取るだけで地下空間の豊かな展開を示唆し得ている。しかし、それ以上を期待したい気がある。排気塔や天井を這う照明器具のインスタレーションはそれ以上の方向を指し示しているようには思えなかった。
W・HOUSEは、版築の壁に好感をもった。しかし、都市型住宅のプロトタイプとしては、街に対しても、市場としても、いささか閉じすぎてるように思った。
若い力に期待するという意味では「八代の保育園」に大いに期待があったが、勢いが感じられなかった。徹底するところがない、という印象である。透静庵は極めて水準の高い作品であるが、公開性に欠ける点がひっかかった。8作品に惜しいところで残らなかった竹山聖、宇野求の作品にしても、住宅スケールの作品には、「一連の作品」というのを、受賞対象から外した学会賞規定のハードルはいささか高い。
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