良質な都心住宅,問題は構造転換である,日経アーキテクチャー,19960520
良質な都心住宅
問題は構造転換である
「供給量の拡大を優先する従来の方針を転換して」どうなるか、住宅産業界にとっては死活のテーマである。しかし、その前に建設省は、本当に方針を転換するのか。大都市圏の中心部に今後10年で100万戸という数値目標はどういうことか。建設省の戸数主義、新規供給重点主義、スクラップ・アンド・ビルド路線の枠組みが果たして変わるのか、実をいうと大いに疑わしく思っている。
単純な算数である。日本の住宅ストックを4500万戸として、平均30年の耐用年限とすると年間150万戸のフロー。この現在の生産供給体制は変わらざるを得ない。100年もつ「良質な」住宅を供給していくとすると年間45万戸の建設量でいい。3倍の時間をかけて、3倍の価格で売る。「良質」といっても、何年の耐用年限を考えるかによって質は決まるのである。
この枠組みは、日本の経済構造、産業界の編成に関わるからそう単純ではないけれど、既に供給量の拡大が問題でないとすれば、ストックの更新型へ住宅生産構造が構造転換していくのは当然であろう。建設投資がGNPの2割を占める国はやはり異常である。
ここ数年、ゼネコン、プレファブ・メーカーなどが参加する中高層ハウジング研究会で以上のような問題を考えている。共通のテーマは、二段階供給システム、あるいはスケルトン、インフィル、クラディングの三系統システムである。また、公共ー民間の役割分担を考えるなかで、スケルトンの公共性を高めることが重要だというのが共通認識である。
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