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2024年12月7日土曜日

講演:京都エコハウスモデルへむけて,日本の住宅生産と「地域ビルダー」の役割,京都健康住まい研究会,19991029

 講演:京都エコハウスモデルへむけて,日本の住宅生産と「地域ビルダー」の役割,京都健康住まい研究会,19991029


京都エコハウスモデルにむけて

 日本の住宅生産と「地域ビルダー」の役割

                                          京都大学大学院工学研究科

                   生活空間学専攻 地域生活空間計画講座

                                布野修司

 

●略歴      

1949年 島根県出雲市生まれ/松江南校卒/1972年 東京大学工学部建築学科卒

1976年 東京大学大学院博士課程中退/東京大学工学部建築学科助手

1978  東洋大学工学部建築学科講師/1984年  同   助教授 

1991  京都大学工学部建築系教室助教授

 

●著書等

         『戦後建築論ノート』(相模書房 1981

                  『スラムとウサギ小屋』(青弓社 1985

                  『住宅戦争』(彰国社 1989

         『カンポンの世界ーージャワ都市の生活宇宙』(パルコ出版199107

         『見える家と見えない家』(共著 岩波書店 1981

                  『建築作家の時代』(共著 リブロポート 1987

         『悲喜劇 1930年代の建築と文化』(共著 現代企画室)

         『建築計画教科書』(編著 彰国社 1989

         『建築概論』(共著 彰国社 1982

         『見知らぬ町の見知らぬ住まい』(彰国社  199106

         『現代建築』(新曜社)

         『戦後建築の終焉』(れんが書房新社 1995

         『住まいの夢と夢の住まい アジア住居論』(朝日選書 1997

         『廃墟とバラック』(布野修司建築論集Ⅰ 彰国社 1998

         『都市と劇場』(布野修司建築論集Ⅱ 彰国社1998

         『国家・様式・テクノロジー』(布野修司建築論集Ⅲ 彰国社1998)          等々

 

 

○主要な活動

 ◇ハウジング計画ユニオン(HPU) 『群居』

 ◇建築フォーラム(AF)  『建築思潮』

 ◇サイト・スペシャルズ・フォーラム(SSF)

 ◇研究のことなどーーーアジア都市建築研究会

 ◇木匠塾 

 ◇中高層ハウジングプロジェクト

 ◇建築文化・景観問題研究会

 ◇京町屋再生研究会

 ◇

 ◇

●主要な論文     

 『建築計画の諸問題』(修論)

  『インドネシアにおける居住環境の変容とその整備手法に関する研究』(博論)

 Considerations on Housing System based on Ecological Balance in the Region, The 8th  EAROPH International Congress  JAKARTA  1982

 The Regional Housing Systems in Japan,HABITAT International  PERGAMON PRESS 1991

京都エコハウスモデルにむけて 日本の住宅生産と「地域ビルダー」の役割

 

Ⅰ 日本の住宅生産

      概要

    ①国民経済と住宅投資 ②住宅建設戸数の動向 ③住宅需要の動向

    ④住宅所有関係の動向 ⑤住宅種別の建設動向 ⑥工務店事業所及び従業員数

    ⑦建設関係技能者 ⑧建築士と建築士事務所 ⑨木材需給⑩建材 ⑪工具

  2  地域特性

    ①住宅着工動向 ②木造率 ③プレファブ化率 ④住宅関連業種

  3  国際比較

 

Ⅱ 住宅生産者社会の構造

 

 1 住宅供給主体と建設戸数

 2 住宅生産者社会の地域差

 3 工務店の類型と特性

 

 

 Ⅲ 日本の住宅をめぐる問題点 論理の欠落ーーー豊かさ?のなかの貧困

   ◇集住の論理  住宅=町づくりの視点の欠如 建築と都市の分離

           型の不在 都市型住宅   家族関係の希薄化

   ◇歴史の論理  スクラップ・アンド・ビルドの論理

          スペキュレーションとメタボリズム価格の支配 住テクの論理

          社会資本としての住宅・建築・都市

   ◇多様性と画一性  異質なものの共存原理

           イメージの画一性 入母屋御殿

            多様性の中の貧困 ポストモダンのデザイン

           感覚の豊かさと貧困  電脳台所

   ◇地域の論理 大都市圏と地方

          エコロジー

   ◇自然と身体の論理:直接性の原理

          人工環境化 土 水 火 木

            建てることの意味

   ◇生活の論理「家」の産業化 住機能の外化 住まいのホテル化

          家事労働のサービス産業代替 住宅問題の階層化

          社会的弱者の住宅問題

 

 

 Ⅳ 京都で考えたこと

 

   京町家再生

 

   京都グランドヴィジョン

 

   祇園祭と大工   マイスター制度とものづくり大学

 

 

 Ⅴ 京都エコハウスモデルに向けて

        21世紀の集合住宅

         三つの供給モデル

 

    エコ・ハウス・・・・ナチュラル・ハウス・・・

 

        スラバヤ・エコ・ハウス





パッシブ・クーリング 冷房なしで居住性向上 

 ミニマム熱取得  マキシマム放熱

ストック型構法

 長寿命(スケルトン インフィル) リニューアブル材料 リサイクル材料(地域産出材料)

創エネルギー

 自立志向型システム(Autonomous House) PV(循環ポンプ、ファン、共用電力) 天井輻射冷房

 自立志向型給水・汚水処理システム 補助的ソーラー給湯

ごみ処理 コンポスト

 

 大屋根  日射の遮蔽

 二重屋根

 イジュク(椰子の繊維)利用

 ポーラスな空間構成 通風 換気 廃熱

 昼光利用照明

 湿気対策 ピロティ

 夜間換気 冷却 蓄冷

 散水

 緑化

 蓄冷 井水循環

 スケルトン インフィル

 コレクティブ・ハウジング

 中水 合併浄化槽

 外構 風の道            

    積層形式における共有空間

    歴史の原理:ストック 街並み景観

   フローからストックへ

 

     地域性の原理・・・地域住宅生産システムの展望:

    直接性の原理

    循環性の原理

   環境共生

   自律性の原理・・・


京の風土と町にふさわしいエコ・サイクル・ハウスの提言

 

 はじめに

 日本の住宅生産の動向、その問題点をめぐって論ずべき点は多いが、決定的なのは一貫する住宅供給の論理が不在であり、地球環境時代における住宅のプロトタイプについて必ずしも明確になっていないことである。豊かさの中の論理の欠落について列挙すれば、少なくとも以下の点が指摘できる。 

  ◇集住の論理の欠落:住宅供給=町づくりという視点がない。建築と都市計画がつながっておらず、都市型住宅としての集住のための型がない。

 ◇歴史の論理の欠如:スクラップ・アンド・ビルド(建てて壊す)論理がこれまで支配的であり、歴史的ストックを維持管理する思想がなかった。住宅供給は住テクの論理によって支配され、社会資本としての住宅・建築・都市という視点が欠けている。

 ◇異質なものの共存原理の欠如:日本の住宅は極めて多様なデザインを誇るように見えて、その実、画一的である。生活のパターンは一定であり、従って間取りは日本全国そう変わらない。文化的な背景を異にする人々と共生する住空間が日本には用意されていない。

 ◇地域の論理の欠如:住宅は本来、地域毎に固有な形態、原理をもっていた。地域の自然生態、また、社会的、文化的生態によって規定されてきたといってもいい。その固有の原理を無化していったのが産業化の論理である。また、住宅問題は、大都市圏と地方では異なる。住宅の地域原理を再構築するのが課題となる。

 ◇自然と身体の論理の欠如:産業化の論理が徹底する中で、住宅は建てるものではなく買うものとなっていった。また、人工環境化が押し進められた。住宅は工業生産品としてつくられ、その高気密化、高断熱化のみが追求されることによって、住空間は人工的に制御されるものと考えられてきた。結果として、住空間は、土、水、火、木・・・など自然と身体との密接な関わりを欠くことになった。

 ◇生活の論理「家」の産業化:問題は単に住宅という空間の問題にとどまらない。住機能の外化、住まいのホテル化家事労働のサービス産業代替、住宅問題の階層化、社会的弱者の住宅問題など家族と住宅をめぐる基本的問題がある。

 

 エコ・サイクルハウスの理念

 これからの住宅供給のあり方について、以上を踏まえて、いくつかの基本原理が考えられる。

 ◇長寿命構法、ストック型構法(スケルトン・インフィル分離)

 まず、フローからストックへという流れがある。すなわち、建てては壊すのではなく、既存の建物を維持管理しながら長く使う必要がある。日本全体で年間150万戸建設された時代には住宅の寿命は30年と考えられたが、少なくとも百年は持つ住宅を考えておく必要がある。そのためには建築構法にも新たな概念が必要である。住宅の部位、設備など耐用年限に応じて取り換えられるのが基本で、大きくは躯体(スケルトン)と内装(インフィル)、さらに外装(クラディング)を分離する。また、再利用可能な材料、部品(リニューアブル材料 リサイクル材料を採用する。

 ◇地域型住宅:地域循環システム

 地域の風土に適合した住宅のあり方を模索するためには、地域における住宅生産システムを再構築する必要がある。具体的には地域密着型の住宅生産組織の再編成、地域産材の利用など住宅資材の、部品の地域循環がポイントである。

 ◇自立志向型システム(Autonomous House

 循環システムは個々の住宅においても考えられる必要がある。特に、廃棄物、汚水などを外部に極力出さないことが大きな方針となる。自立志向型給水・汚水処理システム、ごみ処理用コンポストなどによって、住宅内処理が基本である。

 ◇自然との共生

 個々の住宅内での循環系システムの構築に当たってはふたつの方向が分かれる。いわゆるアクティブとパッシブである。しかし、省エネルギー、省資源を考える場合、パッシブが基本となる。具体的には冷暖房なしで居住性を向上させるのが方針である。ミニマム熱取得、 マキシマム放熱が原理となる。通風をうまくとる。また、太陽光発電、風力発電など創エネルギーも重要となる。さらに、天井輻射冷房などの考え方も導入される。

 

 エコ・サイクル・ハウス・テクノロジー

 以上のような原理は各地域の状況に合わせて考えられる必要があり、それぞれにモデルがつくられる必要がある。インドネシアのスラバヤでモデル集合住宅を建設した経験がある。北欧など寒い国には既に多くのモデルがあるが、問題は暑い地域である。地球環境全体を考えるとより重要なのは暑い地域の住宅モデルである。スラバヤは、日本と無縁のように見えるかもしれないが、大阪、京都の夏と同じ気候である。採用した考え方、技術を列挙すれば以下のようになる。大屋根による日射の遮蔽、二重屋根、イジュク(椰子の繊維)の断熱材利用、ポーラスな空間構成、通風、換気、廃熱、昼光利用照明、湿気対策のためのピロティ、夜間換気、冷却、蓄冷、散水、緑化、蓄冷、井水循環。こうした考え方は、基本は京都でも同じである。一般的にエコ・ハウス・テクノロジーを列挙すれば次のようになる。

 ◇自然(地・水・火・風・空)利用:風力エネルギー、風力利用:通風腔・外装システム:自然換気システム、壁体膜:太陽熱利用、断熱、蓄熱、昼光利用、昼光制御、昼光発電、地熱利用、PV(循環ポンプ、ファン、共用電力)

 ◇リサイクル・資源の有効利用:建築ストックの再生:地域産材利用、雨水・中水利用:廃棄物利用・建材、古材、林業廃棄物、間伐材利用、産業廃棄物:廃棄物処理 、コンポスト、合併浄化槽、土壌浄化法

 

 京都エコ・サイクル・ハウス・モデルへ向けて

 具体的な京都エコ・サイクル・ハウス・モデルについては、いくつかの条件設定が必要である。京都の住宅需要に即した提案でなければ画餅に終わる可能性がある。

 まず考えられるのは町家モデルである。これも二つあって、ひとつは新町家というべきモデルであり、ひとつは既存の町家の改造モデルである。いずれも伝統的町家を評価した上で、新たな創意工夫が必要である。「京都健康住まい研究会」の提案は町屋モデルの提案である。町家を新たに建設する機会はそうあるわけではないが、既存の町家の改造は大きな需要がある。

 もうひとつ是非とも必要なのは集合住宅モデルである。立地によって、また、供給主体によってモデルは異なるが、それぞれのケースにモデルが必要である。スケルトンについては、O型 柱列型 column、 A型   壁体スケルトン wall、B型 地盤型スケルトン baseを一般に区別できる。供給主体についても、地主単一の場合、複数の場合で異なる。

 しかし、いずれにしろ、スケルトンーインフィル分離、オープンシステム、居住者参加、都市型町並み形成、環境共生は鍵語である。

 

 

 

布野修司関連文献

■単著

①スラムとウサギ小屋,青土社,単著,1985128

②住宅戦争,彰国社,単著,19891210

③カンポンの世界,パルコ出版,単著,1991725

④住まいの夢と夢の住まい・・・アジア住居論,朝日新聞社,単著,199710

⑤廃墟とバラック・・・建築のアジア,布野修司建築論集Ⅰ,彰国社,単著,1998510(日本図書館協会選定図書)

⑥裸の建築家・・・タウンアーキテクト論序説、建築資料研究社,単著,2000310

■編著

⑦見知らぬ町の見知らぬ住まい,彰国社,編著,1990

⑧建築.まちなみ景観の創造,建築・まちなみ研究会編(座長布野修司),技報堂出版,編著,19941(韓国語訳 出版 技文堂,ソウル,19982)

⑨建都1200年の京都,布野修司+アジア都市建築研究会編,建築文化,彰国社,編著,1994

⑩日本の住宅 戦後50, 彰国社,編著,19953

■共著

⑪見える家と見えない家,叢書 文化の現在3,岩波書店,共著,1981

■訳書

⑫布野修司:生きている住まいー東南アジア建築人類学(ロクサーナ・ウオータソン著 ,布野修司(監訳)+アジア都市建築研究会,The Living House: An Anthropology of Architecture in South-East Asia,学芸出版社,監訳書,19973


2024年12月6日金曜日

報告:アジアの都市と居住モデル,「都市におけるテクノロジーと人間に関する調査」研究会政策科学研究所,2001年10月29日

 政策科学研究所 

 「都市におけるテクノロジーと人間に関する調査」研究会
アジアの都市と居住モデル        20011029

 布野修司(京都大学)

 

 はじめに

   ・建築計画→地域生活空間計画

  ・カンポン調査(東南アジアの都市と住居に関する研究)

  ・「イスラームの都市性」研究

  ・アジア都市建築研究

  ・植民都市研究

             

 [1]布野修司:戦後建築論ノート,相模書房, ,1981615

  [2]布野修司:スラムとウサギ小屋,青土社,1985128

  [3]布野修司:住宅戦争,彰国社,19891210

  [4]布野修司:カンポンの世界,パルコ出版,1991725

  [5]布野修司:戦後建築の終焉,れんが書房新社,1995830

  [6]布野修司:住まいの夢と夢の住まい・アジア住居論,朝日新聞社, 19971025

  [7]布野修司:廃墟とバラック:建築のアジア,建築論集Ⅰ,彰国社,1998510

  [8]布野修司:都市と劇場:都市計画という幻想,建築論集Ⅱ,彰国社,1998610

  [9]布野修司:国家・様式・テクノロジー:建築のアジア,建築論集Ⅲ,彰国社,1998710

 [10]布野修司:裸の建築家:タウンアーキテクト論序説、建築資料研究社,2000310

 住居関連

[2]布野修司:見知らぬ町の見知らぬ住まい,彰国社,編著,1990

 [4]布野修司:見える家と見えない家,叢書 文化の現在3,岩波書店,共著

[6]布野修司:日本の住宅 戦後50, 彰国社,編著,19953

  [9]布野修司:日本の住居1985,戦後40年の軌跡とこれからの視座,建築文化,彰国社,共著,1985

 [29]布野修司:これからの中高層ハウジング,建設省住宅局,丸善,共著,1993

 [35]布野修司:講座 現代居住全5巻 第2巻 家族と住居,早川和男編,東京大学出版会,共著,19967

 [38]布野修司:21世紀の集合住宅・・・持続可能で豊かな社会をめざして,中高層ハウジング研究会,19983

 

[1]布野修司:環境の空間的イメージーーーイメージマップと空間認識,M.W.ダウンズ ダビット. ステア共編 吉武泰水監訳,IMAGE AND ENVIRONMENT---Cognitive Mapping and Spatial Behavior, edited by Roger M, Downs & David Stea, Aldine Publishing Co. Chicago 1973,曽田忠広 林章 布野修司 岡房信共訳,鹿島出版会,共訳書,1976

[2]布野修司:生きている住まいー東南アジア建築人類学(ロクサーナ・ウオータソン著 ,布野修司(監訳)+アジア都市建築研究会,The Living House: An Anthropology of Architecture in South-East Asia,学芸出版社,監訳書,19973

[3] 布野修司:植えつけられた都市--英国植民都市の形成、ロバート・ホーム著 ,布野修司+安藤正雄(監訳)+アジア都市建築研究会, Of Planting and Planning The Making of British Colonial Cities ,監訳書, 京都大学学術出版会、20017

 

アジアの都市と居住モデル

 

Ⅰ.東南アジアの都市居住・・・都市カンポンの構成

                         :スラバヤをめぐって

   ○スラバヤの都市形成過程とその構造

   ○カンポンの構成

   ○カンポン住居の類型と変容プロセス

 

Ⅱ.東南アジアのハウジング・プロジェクト

   ○東南アジア各国の住宅政策

   ○セルフヘルプによるハウジング

   ○インフォーマル・グループの試み

   ○カンポン・ススン

 

Ⅲ.スラバヤ・エコハウス

 

 

 

Ⅳ.アジアの都市型住居

    Cakranegara---Jaipur

     Katumandu(Hadigaon, Patan, Thimi) Lahore ---Ahmedabad---Delhi

     Beijing--- Kyoto

    Taipei

     Ulsan--- Kyongju   

 

 

地域生活空間計画研究フレーム

 

 Ⅰ 居住空間システム

 

 [8]布野修司,田中麻里(京都大学):バンコクにおける建設労働者のための仮設居住地の実態と環境整備のあり方に関する研究,日本建築学会計画系論文集,483,p101-109,1996.05

[17]田中麻里(群馬大学),布野修司,赤澤明,小林正美:トゥンソンホン計画住宅地(バンコク)におけるコアハウスの増改築プロセスに関する考察,日本建築学会計画系論文集,512,p93-99,199810

 

  ◎ヴァナキュラー建築 住居の原型? 集合の基本形式

 [7]脇田祥尚,布野修司,牧紀男,青井哲人:デサ・バヤン(インドネシア・ロンボク島)における住居集落の空間構成,日本建築学会計画系論文集,478,p61-68,1995.12

 [9]脇田祥尚(島根女子短期大学),布野修司,牧紀男(京都大学),青井哲人(神戸芸術工科大学),山本直彦(京都大学):ロンボク島(インドネシア)におけるバリ族・ササック族の聖地,住居集落とオリエンテーション,日本建築学会計画系論文集,489,p97-102,199611

[14]山本直彦(京都大学),布野修司,脇田祥尚(島根女子短期大学),三井所隆史(京都大学):デサ・サングラ・アグン(インドネシア・マドゥラ島)における住居および集落の空間構成,日本建築学会計画系論文集,504,p103-110,19982

 

 

  Ⅱ カンポン・ハウジング・システム

 

 [1]布野修司,前田尚美,内田雄造:「インドネシアのスラムの居住対策と日本の経験との比較」  第三世界の居住環境とその整備手法に関する研究 その1,日本都市計画学会 学術研究論文集 19,1984

 [2]布野修司,前田尚美,内田雄造:「インドネシアのカンポンの実態とその変容過程の考察」  第三世界の居住環境とその整備手法に関する研究 その2,日本都市計画学会,学術研究論文集20,1985

 [6]布野修司:カンポンの歴史的形成プロセスとその特質,日本建築学会計画系論文報告集,433,p85-93,1992.03

  ・カンポン・インプルーブメント・プログラム(KIP) 

    ・ルーマー・ススン

[12]布野修司,山本直彦(京都大学),田中麻里(京都大学),脇田祥尚(島根女子短期大学):ルーマー・ススン・ソンボ(スラバヤ,インドネシア)の共用空間利用に関する考察,日本建築学会計画系論文集,502,p87~93,199712

    ・スラバヤ・エコハウス

 

  Ⅲ 街区組織と都市型住居 Urban Tissues

    グリッドThe Grid  

    コスモロジーCosmology 

    イスラームの都市原理 Hindu City & Islam City 

    棲み分けSegregation 

    街区組織と地域社会Block Pattern and Community Organization 

    Urban House Prototype

 

 

[10]布野修司,脇田祥尚(島根女子短期大学),牧紀男(京都大学),青井哲人(神戸芸術工科大学),山本直彦(京都大学):チャクラヌガラ(インドネシア・ロンボク島)の街区構成:チャクラヌガラの空間構成に関する研究 その1,日本建築学会計画系論文集,491,p135-139,19971

[11]布野修司,山本直彦(京都大学),黄蘭翔(台湾中央研究院),山根周(滋賀県立大学),荒仁(三菱総合研究所),渡辺菊真(京都大学):ジャイプルの街路体系と街区構成ーインド調査局作製の都市地図(1925-28)の分析その1,日本建築学会計画系論文集,499,p113~119,19979

[19]山根周(滋賀県立大学),布野修司,荒仁(三菱総研),沼田典久(久米設計),長村英俊(INA):モハッラ,クーチャ,ガリ,カトラの空間構成ーラホール旧市街の都市構成に関する研究 その1,513,p227~234, 199811

[20]黒川賢一(竹中工務店),布野修司,モハン・パント(京都大学),横井健(国際技能振興財団):ハディガオン(カトマンズ,ネパール)の空間構成 聖なる施設の分布と祭祀,日本建築学会計画系論文集,514,155-162p,199812

[22]竹内泰,布野修司:「京都の地蔵の配置に関する研究」,日本建築学会計画系論文集,520,263-270p,19996

[23]韓三建,布野修司:「日本植民統治期における韓国蔚山・旧邑城地区の土地利用の変化に関する研究」,520,219-226p,19996

[25]闕銘宗(京都大学),布野修司,田中禎彦(文化庁):新店市広興里の集落構成と寺廟の祭祀圏,日本建築学会計画系論文集,521,p175181,19997

[28]トウイ,布野修司:北京内城朝陽門地区の街区構成とその変化に関する研究,日本建築学会計画系論文集,526,p175-183,199912

[29]Mohan PANT(京都大学),布野修司:Social-Spatial Structure of the Jyapu Community Quarters of the City of Patan, Kathmandu Valley, カトマンドゥ盆地・パタンのジャプ居住地区:ドゥパトートルの社会空間構造 ,日本建築学会計画系論文集,527,p177-184,20001

[30]根上英志,山根周,沼田典久,布野修司:マネク・チョウク地区(アーメダバード、グジャラート、インド)における都市住居の空間構成と街区構成,日本建築学会計画系論文集,535,p ,20009

[31]正岡みわ子,丹羽大介,布野修司:京都山鉾町における祇園祭と建築生産組織,日本建築学会計画系論文集,535,p ,20009

[32]トウイ,布野修司,重村力:乾隆京城全図にみる北京内城の街区構成と宅地分割に関する考察,日本建築学会計画系論文集,536,p,200010

 

 

 Ⅳ 世界都市史研究

 

 植民都市研究 All cities are in a way colonial

      Pretolia New Delhi Canberra

      Munbai Chennnai Calcutta

      田園都市計画

 

 

 

補1 21世紀の集合住宅 3つの供給基本モデル

A モデル設計の5つの柱 

        スケルトン分離

       オープンシステム

       居住者参加

       都市型町並み形成

       環境共生

B 供給モデル

  o型 one owner

       a型 association

       b  bond

C スケルトンモデル

        O型 柱列型 column

        A型   壁体スケルトン wall

       B型 地盤型スケルトン base

*(OAB)x(abc) 

 

  補2 住居をめぐるいくつかのアクシス 住まいの夢と夢の住まい

      所有形式(所有-無所有、定住-移住、恒久-仮設)

      集合形式(独居-群居、男性-女性、複数家族ー核家族)

      空間形式(有限-無限、限定-無限定、自由-不自由)

      環境形式(場所-無場所、自然-人工、地下-空中)

      技術形式(画一性-多様性、自己同一性-大衆性、地域性-普遍性)

      象徴形式(生-死、コスモス-カオス、永遠ー瞬間)

 

2024年12月5日木曜日

田島喜美恵、都市・建築の再生と建築計画—韓国ソウルの清渓川復元と近・現代建築— 建築計画委員会春期研究集会報告 、建築雑誌、20080703

 2006/07/03 KIMIE TAJIMA

都市・建築の再生と建築計画韓国ソウルの清渓川復元と近・現代建築

建築計画委員会春期研究集会報告

 

滋賀県立大学 布野修司教授が今年の4月から建築計画委員会委員長に就任し、最初の行事として、62日〜4日、韓国ソウルにて建築計画委員会春季研究集会が催された。

 

■企画準備

布野先生は京都大学から滋賀県立大学に移籍され2年目の現在、布野研究室には日本人学生だけでなく、韓国、スペイン、タイ、などからの留学生が机を並べ、研究内容も国際的なものが多い。

「日本で小さくやるよりは、海外で小さくやる方がいい」との布野先生の考えから、10人位の小さな団体で視察を中心にした研究会をということで具体的に企画立案された。しかし予想に反して、日に日に増える参加者は、最終的には52名にまで膨らんだ。

海外で建築計画委員会をするのは初めてのことで、難しい面も予想されたが、資料の準備では布野研究室に在籍する客員研究員の朴重信氏、博士課程の趙聖民氏を中心に、ワーキンググループを作り、日程や宿の手配、資料作りを研究室でおこなった。

当初、資料はペラ数枚をホッチキスで留める簡易な資料を考えていたが、日に日に頁数は増え59頁の立派な冊子になり、単なる旅行の栞としてではなく、韓国建築資料としてレベルの高い内容になった。

春季研究集会より一日早い61日に、布野先生、朴氏、私は関西国際空港から韓国に向かった。2001年に開港した仁川空港(設計:テリー・ファレル)は、飛行機をイメージした近未来的な雰囲気を持つ。空港からリムジンバスに1時間程揺られソウル市内に入った。タワーホテル(設計:金寿根)に荷物を置き、漢陽大学の朴勇換先生の研究室にお伺いし、御挨拶と翌日のシンポジウムの打合せ等を行った。

 

シンポジウム(62日)

『都市・建築の再生と建築計画韓国ソウルの清渓川(チョンゲチョン)復元と近・現代建築』シンポジウムを漢陽大学にて催した。韓国の学生、日本の学生が会場準備をし、滋賀県立大学 山根周講師が司会を務め、通訳を朴重信氏と趙聖民氏が務めた。最初に布野先生から開会の挨拶と本会の主旨と経緯の説明があり、大韓建築学会副会長 崔璨煥チェチャンファン)先生の御挨拶、続いて、大韓建築学会計画分科の徐鵬敎(ソブンギョ)先生の御挨拶を頂き、続いて3人の先生からご講演頂いた。

 

1)『韓国における建築計画の現状』:漢陽大学 朴勇換教授

本シンポジウムのプロローグとして、最近のソウルの建築事情として、外国の建築家とパートナーシップを組み建てられた建築と超高層住宅をざっと一流れで説明。高層住宅では低層部はマーケットやオフィスとして使われていて、中層、高層部は住宅になっている場合が多く、現在のソウルを象徴する風景になっている。

 

2)『近代化遺産の保存と再生』:清州大学 金泰永教授

ソウルの都市生活には近代建築が溶け込んでいる。韓国の1930年代の有名な小説の主人公の行動を引き合いに出しその雰囲気をあらわす。

具体的な活動として1990年から近代建築の記録化事業を始め、現在239件登録文化財があり、その内容は戦争関連施設、産業施設、公共施設、最近では共同墓地も登録されることになり、特にその中に宿泊施設は30を占める。保存修理の実例として、明洞聖堂、ソウル市立美術館などを説明され、またこういう動きの一方で、近代建築の修理基準を撰定するための活動もしている。また、韓国docomomoの活動を紹介した。

京都大学の客員教授時代、京都の町家に感動し、昔のものという要素としてだけではなく、現代建築においても意味のある要素があると感じ、それが今の活動の根底にある。

 

3)『韓国における都市再生の試み(清渓川復元)』:ソウル市住宅局 許煐局長

清渓川は元々、ソウルを流れる河川だった。水量はそれほどなかったことから、人口が増えるに従って水質は汚染され衛生的に問題視されるようになった。1910年代頃から浚渫工事を始め、川にコンクリートの蓋を被せ始めた。1958年に本格的に蓋をする工事を始め、1976年から高架道路工事を始めた。近年その高架道路も痛みが激しく、安全とは言えない状況になった。清渓川の周りの商店街も老朽化していた。

20021月、選挙に清渓川を復元することを公約に掲げた、民間企業出身の市長が誕生した。その日から事業が始まった。ソウルは都市としての競争力、文化を持つために、開発というイメージよりは、暮らしの質を高める、自然環境にやさしいということをコンセプトに掲げた。

復元工事を着手するにあたり、市民、清渓川は商店街が多く軒を列ねている商業者との間で、4000回以上の話合いが行われ、意見を反映させた多くの対策が作られた。

高架道路を撤去し復元した川の長さは5.85km3つのセクションに分けて工事を行った。また工事の際に発生した廃材約68万トンのうち約96%をリサイクルした。清渓川は、普段は水量が少ないが、雨季になったら洪水がおこる特性があることから、記録されている200年周期の降水率を元に、川の設計を行った。現在、漢江の12万トンの水と、毎日湧き出る22千トンの地下水を利用して、清渓川には一日につき142000トン(平均水深40cm)の水が流れている。

人の憩いの場としての親水機能はもちろん、緑を豊富に取り入れ、魚や鳥や虫などの生きものが生活できる自然の生態環境を作り出している。また清渓川は照明計画を綿密にして、夜の清渓川の風景も考えている。

最も危惧されていた、高架道路を撤去してしまうとソウル市内の道路が大混雑するのではないかという問題は、結果的に公共交通機関を使う人が増え、市内全体の車両交通量が減り混乱は起きなかった。

200511月の世論調査において、夏が涼しくなり、空気がきれいになり、車の騒音がなくなったなど、ほとんどの市民が環境が良くなったと答えている。経済的にも活性し、また不動産価格も復元後には2.5倍近く値上がった。

公共事業の中で行政と市民が話合いで多くの問題を解決しながら事業を行った良い例になった。

<シンポジウム写真2枚>

 

シンポジウム終了後、漢陽大学の構内にあるレストランに場所を移して、懇親会が催された。立派なレストランで、食事も豪華なものだった。千葉大学 宇野求教授、東京大学 松村秀一教授など参加者の先生方のスピーチなどもあり、華やかな懇親会となった。

 

 

視察(63日)

・徳寿宮(ドクスグン)とその周辺の近代建築

徳寿宮の周りには、多くの近代建築がある。朝の気持ちのよい時間に散策しながら徳寿宮を始め、韓国聖公会ソウル大聖堂、貞洞第一教会、ソウル市立美術館をまわる。

徳寿宮の大漢門では、当時の王宮守備隊の交代式の再現がされ、華やかな宮廷文化を垣間見ることができる。韓国聖公会ソウル大聖堂はロマネスク様式で十字型平面を持ち、壮観な姿をほこる。貞洞第一教会は木造のモダニズム建築で、教会の方が丁寧に説明くださり、この教会を美しく保存するために努力を惜しまない姿勢が感じ取れた。ソウル市立美術館は、裁判所をコンバージョンして誕生した現代美術館で、ファサードを残し内部は大胆な改築を施している。

<ドクスグン大漢門交代式写真1枚>

<ソウル市立美術館写真1枚>

清渓川(チョンゲチョン)

清渓川は、東京の日本橋問題の件でよく引き合いに出されることもあり、以前から個人的に非常に興味があった。前日の講演を受けてさらに興味が湧いた。週末ということもあり、家族連れが水遊びする姿、川魚が泳ぐ風景を眺めていると、つい最近まで高架道路だったとは思えない。ランドスケープとしてもとてもよくデザインされている。

<清渓川写真2枚>

昌徳宮(秘苑)

600年前に建立された昌徳宮は、特に造園が興味深い。作り込む庭ではなく、できるだけ原林を活かし、作意を感じさせないように作られている。その風景に溶け込むように建物が点在している。

ソウル北村 

都市型韓屋が多く残るソウル北村は、細い坂道を挟むように韓屋の背の高い塀が連なっている。塀や門扉はそれぞれ表情があり、不思議と圧迫感はそれほど感じない。

韓屋の博物館を観覧した。門扉を潜ってすぐマダン(中庭)があり、オンドル(床下暖房)も見られた。実際の韓屋の住まわれ方など、さらに興味が湧いた。

<ソウル北村写真1枚>

 

視察(64日)

・サンスン財団リウム美術館

住宅地と山に挟まれる敷地に、レム・コールハスの児童文化センター、マリオ・ボッタの古美術館、ジャン・ヌーベルの現代美術館、三つの建築が中庭を囲む形で配置計画されている。この美術館はまず、展示物の内容が良く面白い。展示物の内容を考え、それに沿ったデザインがされている。現代のソウルを象徴する美術館になっている。

<リウム美術館写真1枚>

ソウルの森

トゥッソムに位置するソウル森は元下水処理場である2005年オープンしたソウルの森は、市民と行政が一緒に作ることを主体とし、幾度もワークショップや話合いが行われた。約115万平米の敷地内に5つのテーマを構成している。多くの人で賑わい、レンタサイクルで公園内を走る人の姿も多くみられた。

<ソウルの森写真1枚>

 

 

まとめ

『建築計画学のあり方をめぐっては、今日様々な問題が指摘されますが、建築計画学を志した1970年代初頭、既に、例えば、縦割り研究、研究(のための研究)のマンネリ化という限界は指摘されていました。それは克服されたとは言えないと感じていますが、一方、果たすべき役割はあるのではないかと強く思います。とりわけ、グローバルな視野において、建築計画学をみると、その方向が見いだせるのではないか、という直感があります。特に、アジアについては、日本建築学会としても、JAABE(英文論文集)、ISAIA(国際アジマ建築交流シンポジウム)があります。建築計画委員会としても、積極的に関わりたいという思いが、今回の企画の背景にあります。』(2006年日本建築学会建築計画委員会春季研究集会 資料集/滋賀県立大学布野研究室)

資料冊子の冒頭頁の布野先生の挨拶は、これからの建築計画学の方向性を示唆していて興味深い。この最初の一歩としての今回の研究会はおのずと布野先生の意気込みを感じ、その通りに実りのある会になった。

私は生まれて初めて韓国の地に立った。右も左もわからずに、先生方の後をとにかく追って行く事しか出来なかった。帰国してすぐに韓国に関する本を読んで、特にその住環境に興味を持った。今度、韓国に行く時は、是非、住居を中心に見てみたいと思う。おそらく多くの参加者も何かしらの示唆を得ることができたのではないだろうか。

建築計画学委員会の課題は決して少なくないが、本研究会でひとつひとつ乗り越えていけるだけのエネルギーを感じることができた。今後の建築計画学委員会の発展を予感させられてならない。

<集合写真1枚>

 

 

 

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布野修司 履歴 2025年1月1日

布野修司 20241101 履歴   住所 東京都小平市上水本町 6 ー 5 - 7 ー 103 本籍 島根県松江市東朝日町 236 ー 14   1949 年 8 月 10 日    島根県出雲市知井宮生まれ   学歴 196...