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2025年12月10日水曜日

BRI(ブリ)タワー,at,デルファイ研究所,199306

 BRI(ブリ)タワー,at,デルファイ研究所,199306


ブリ(BRI)タワー    ジャカルタ・スラバヤ

                布野修司

 

 二年ほど前、スラバヤに一際目立つ高層ビルが建った。BRIタワー、下層階にインドネシア銀行が入るオフィス・ビルである。ミラーグラスのカーテン・ウオールで、最上階が六角錐形に尖っている。カンポンの住居との対比が印象的だ。

 アメリカの建築家のデザインだというのであるが、名前は確認し忘れた。ロンドンのドックランド、ピラミッドを頂く、シーザ・ペリの超高層ビルやヘルムート・ヤーンのシカゴの超高層ビルなど最近は頭に尖った帽子を被るのが流行らしい。

 われわれにはどうということはないビルなのであるが、スラバヤでは相当話題になったらしい。「ちびた鉛筆ビル」などというニックネームがついたことがそれを示している。なるほどずんぐりむっくりのプロポーションは、使い古した鉛筆のようである。新しいビルだけど、使い古したというのだから、少し皮肉が込められたネーミングかもしれない。

 昨年ジャカルタへ行ってびっくりした。この「ちびた鉛筆ビル」がジャカルタにもあるのである。高速道路を走りながら、慌ててシャッターをきったのであるが、見るからにそっくりである。写真を焼いて見比べて見ると、微妙にデザインが変えてある。しかし、素材や色の使い方からみて同じデザイナーであろう。このふたつのBRIタワーは、成長著しいインドネシアの都市のニュートレンドを象徴するかのようだ。

 ある企業が同じスタイルで本社や支社をデザインすることはもちろんあるのだけれど、なんとなく嫌な感じがしないでもない。同じデザインを都市を違えて繰り返す建築家のセンスが気になるのである。

 しかし、考えてみると、日本だってそう偉そうなことは言えない。新宿の副都心を見よ。みんなアメリカのどこかで見たような超高層ビルではないか。そう指摘する声は多い。ものまねが日本人の代名詞のように言われた時代はそう昔ではないのである。ジャカルタに行く度に気になるのがタムリン通りにあるあるビルだ。知る人ぞ知る、東京の新橋にあるビルとそっくりなのだ。

 同じような材料やモチーフを用いることはよくあることだ。地域毎にスタイルは共有されてきたし、建築家個人のスタイルの一貫性もむしろ当然のこととされる。そもそも近代建築の理念は、世界中で共通のスタイルを実現することなのだから今更目くじらをたてても始まらないのであろう。全くのコピーをつくることはやらなかったにせよ、同じようなことは近代建築家が世界中の発展途上国でやってきたことだ。

 ジャカルタにも随分と高層ビルが増えた。その中に、ポール・ルドルフによる高層ビルがある。ダルマラ・サクティ・ビルだ。いかにもルドルフらしい。しかし、それにしても、なつかしい過去の建築家に思えていたルドルフの顕在ぶりにジャカルタで出会おうとはなんか複雑な気分である。

 


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布野修司 履歴 2025年1月1日

布野修司 20241101 履歴   住所 東京都小平市上水本町 6 ー 5 - 7 ー 103 本籍 島根県松江市東朝日町 236 ー 14   1949 年 8 月 10 日    島根県出雲市知井宮生まれ   学歴 196...