日本再生・復興プロジェクト 招待講評者 布野修司
東日本大震災の復興を考え、日本再生を考えることは、それぞれが暮らす地域を考えることであるというテーマ設定であったから、被災地以外を対象とする作品も数多く期待されたが、ほとんどが被災地の復興を真摯に考える作品であった。被災地のリアルな状況に対して直接的提案を試みる作品には、単なるアイディアやコンセプトの提示にとどまらない迫力を感じさせられる作品が少なくなかった。
「にげる・かわす」を全面的に打ち出す復興計画全体の提案(14012小林直明)、防潮堤とまちづくりの融合をめざす提案(14013阿部俊彦)は、当該自治体において実際に受け入れられるべき提案だと思う。また、公営住宅の計画と配置検討(14019竹花洋子)は、リアリティを踏まえた具体的な提案である。防潮堤の高さなどインフラ整備と戸数のみを目標とする紋切型(戦後復興型)の復興住宅建設のみが先行するなかでこれらの提案の実現を願いたい。また、プッシュしたい。エマージェンシー・メガフロートの提案(14021ラフマンフラプラダナ)は、マリーン・コンストラクションの世界で具体的に検討されているのであるが、そのリアリティとテクノロジーのあり方についていささか危惧の念を抱いた。巨大なテクノロジーが世界をリードする時代ではないし、すべて解決できるわけではないと思う。防潮堤を一切作らない復旧復興のまちづくりの提案(14015北原祥三)は、極めてコンセプチャルな提案として、また復興計画に対するクリティカルな提案として評価できる。ただ、被災者への直接的提案と考えると、アイロニカルに過ぎると思った。
ふくしまの仮設住宅(14014山川健太)、船橋市を対象とする地域デザインの提案(14018三平奏子)、廃材の島(14022岩井宏樹)、水柩(14016菅原雅之)は、いずれも卒業設計作品であるが、具体的な場所を設定し、東日本大震災という未曽有の日本の現実に向き合った作品として好感をもった。ただ総じて、コンセプトと実現へ向けての論理的積み重ねに甘さがあるのが残念であった。
そうした中で、原子力発電所の廃炉を全面的な主題とする「水柩―廃炉の研究と封印機能をもつ博物館の提案」は、事態の深刻さを鋭く突きつける作品として強く魅かれた。原発をめぐる様々な議論はあるが、この作品が提起する課題は日本全体がまさに直面するものであり、先送りできないものである。大きな課題を若い感性で受け止め深く考えた、その思索の深度に好感をもった。いずれも甲乙つけがたい中で、ひとつだけこの作品を優秀作品(布野賞)として選定した理由は、選者の若き日の何かを思い起こさせてくれたからである。
名古屋の防災拠点をテーマとする14017(細谷翔太)およびコンテナ利用のユニット型支援住宅を提案する1402(平山雄基)は欠席であった。議論したかっただけに極めて遺憾である。
2012年度日本建築学会大会(東海)建築デザイン発表会
招待講評者 各位
日本建築学会 学術推進委員会
委員長 長 谷 見 雄 二
2012年度日本建築学会大会(東海)建築デザイン発表会
テーマ部門「講評」ご執筆のお願い
拝啓 時下ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。
先般は2012年度大会建築デザイン発表会の招待講評者をご承引いただき、誠に有り難うございました。当日の建築デザイン発表会の議論・講評等を宜しくお願い申し上げます。
さて、建築デザイン発表会「テーマ部門」につきましては、2008年度より招待講評者による講評を本会ホームページに掲載し、会員各位に広く公表することとしております。
つきましては、下記要領によりご担当テーマ部門の講評をご作成くださるようお願い申し上げます。
ご多忙のところ誠に恐縮に存じますが、宜しくお願い申し上げます。
敬具
「講評」執筆要領
1.作成部門:ご担当テーマ部門
2.表 題:ご担当テーマ部門名(講演番号~講演番号)
3.字 数 等:1梗概100字程度を目安としてください。ご担当テーマ部門の発表数が20
ならば全体で2,000字程度(多少の分量増加はかまいません)。
個々の発表について一言ずつ触れて頂いたうえ、全体をご講評願います。
なお「顕彰」した発表を、別途明記してください。
2010~2011年度の講評は以下をご覧頂けると幸いです。
http://news-sv.aij.or.jp/academic/taikai/10de.pdf
http://news-sv.aij.or.jp/academic/taikai/11de.pdf
4.締 切:2012年10月12日(金)
5.掲 載:本会ホームページ
6.原 稿 料:なし
7.提 出 先:E-mail 2012kougai@aij.or.jp
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