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2023年2月2日木曜日

ジャイプルのハヴェリ,雑木林の世界58,住宅と木材,(財)日本住宅・木材技術センターセンタ-,199406

 ジャイプルのハヴェリ,雑木林の世界58,住宅と木材,(財)日本住宅・木材技術センターセンタ-,199406

雑木林の世界58

ジャイプールのハヴェリ

 

                布野修司

 

 飛騨高山木匠塾の第4回インターユニヴァーシティ・サマースクールの今年の日程が、八月三日から一一日と決まった。八月六日が日本一かがり火祭りで、今年も屋台を出店することになる。施設計画も進められつつあり、財源についても検討しつつあるところだ。プログラムについては、ほぼ昨年と同じとなることを想定しているが、詳細は未定である。  ●期間 一九九四年八月三日(水曜)~八月一一日(木曜)

  ●場所 岐阜県高根村久々野営林署野麦峠製品事業所

 ●主催 飛騨高山木匠塾(塾長 太田邦夫)

 ●後援 名古屋営林局・久々野営林署/日本住宅木材技術センター/高山市/高根村/AF(建築フォーラム)/サイトスペシャルズフォーラム/日本建築学会/日本建築セミナー/木造建築研究フォーラム(以上 予定)

 ○実習

 1。屋台模型制作実習 1/5および原寸部分/2。家具デザインコンペ /3。家具制作/4。足場組立実習/5。施設全体計画立案/6。野外風呂建設 /7。バイオガス・浄化槽研究/8。竈建設/9。測量実習 /10。型枠実習

  ●参加資格 木造建築に関心をもつ人であれば資格は問わない

 ●参加予定 芝浦工業大学・東洋大学・千葉大学・京都大学・工学院大学・大阪芸術大学・京都造形大学・茨城ハウジングアカデミー

 ●参加費 学生 3000円/日(食事代、宿泊費含む)/一般 5000円/日(食事代、宿泊費含む)/但し、シーツ、毛布、枕カヴァーは各自持参のこと。

●連絡先 芝浦工業大学 藤澤研究室(                )/京都大学  西川・布野研究室(            )/千葉大学 安藤研究室(            )/東洋大学 太田・秋山・浦江研究室(            ) 

 

 さて、この春休みにはタイとインドに出かけてきた(三月二〇日~四月五日)。タイは、AIT(アジア工科大学)でレクチャーを行なう以外は特に目的はなかったのであるが、久しぶりにバンコク、チェンマイ、アユタヤを見ることができた。特に懐かしかったのは、ビルディング・トゥゲザーのプロジェクト・サイトを再訪できたことである。このプロジェクトは、インターロッキング・ブロックとPCの梁を組み合わせるビルディング・システムにより、居住者自ら建設に参加する形をとったユニークな試みであったが、その変貌は驚くほどであった。タイの経済水準は随分と高くなった、という印象である。

 ブロック造のニュー・ヴァージョンは、カナダからのルファブル先生を中心とするAIT(ハビテック・パーク)と協力して続けられているのであるが、供給形態としては建て売りの形である。ビルディング・トゥゲザーも変質を迫られたようである。

 本命は、インドのジャイプールであった。インドは初めてである。デリー、チャンディガール(コルビュジェも迫力あるけれど、ロックガーデンもいい)、アーグラ(タージマハール!!)、ファテプルシークリー(アクバルの建築狂)、マトゥラ(クリシュナの聖地)とムガールの都市建築を見て、ジャイプールへというコースである。ジャイプールには、研究室の荒仁(アラジン)君が二月の初めから滞在しており、同じく研究室の青井哲人君と調査の仕上げに駆けつけたというかたちであった。

 ジャイプールと言えば、例のジャンタル・マンタル(天文台)がある。デリーのものより規模が大きい。建築家毛綱毅曠、写真家藤塚光政が組んで出した『不知詠人読み人知らずのデザイン』(TOTO出版 一九九三年)にも取り上げられている。見るのが楽しみであった。しかし、町の方がさらにすごい。興味は、都市計画と都市住居の方にすぐさま移ったのであった。

 ジャイプールの町を計画したのも、ジャンタル・マンタルをつくったジャイ・シンⅡ世である。一八世紀の前半のことである。実際に都市計画に当たったのは、ビジャダル・ナガルであり、ジャイプールはビジャダル・ナガルの町とも呼ばれる。

 その形態は極めて特徴的である。基本は三ブロック×三ブロックのナイン・スクエアなのであるが、北西部が山によって切りとられ、その分、南東部が一ブロックはみ出している。全体は、ヴァストゥ・プルシャ曼陀羅、あるいは、インド古代から伝わる建築書マナサラのプラスタラ・タイプに基づくという説がある。奇妙なことに正南北に対して都市軸がずれている。諸説あるけれど、ジャイプールがあるコスモロジーに基づいて理念的計画された計画都市であることは明かである。

 一辺が八〇〇メートルの一ブロック(チョウクリ)はかなりのスケールである。城壁で囲まれたピンク・シティ(旧市街:建物は赤い砂岩でつくられ、町全体が赤いことからこう呼ばれる)は想像以上に大きい。しかし、住民にとって、このスケールは極めて適切であるということが、歩き始めてすぐにわかった。ブロックの通りには、ありとあらゆる店が並ぶ。幹線道路が交わる交差点は、チョウパルと呼ばれ、マーケットになっている。また、ブロックの内部では様々なものがつくられている。最大でも四〇〇メートル歩けばたいていのものは手に入る。職住近接である。住工混合である。様々な機能が重層しあっている。

 一階にはショップ、その後ろには事務所スペースが置かれる。三階、四階である。その背後に居住スペース。立体的な断面構成も重層的である。しかし、きちんとした型がある。中心になるのは、ハヴェリと呼ばれる中庭形式の住居である。中庭を囲んで、オフィスや店舗がつくられる場合も多い。

 ハヴェリとは邸宅の意であるが、チョウクと呼ばれる中庭を囲んで三層、四層の構成をとる。グジャラートでは、木造であるが、ジャイプールでは組石造である。何人住んでいるか、と問えば百二十人とか、百三十人とか、答が返ってくる。我々には想像ができないかもしれないのであるが、いわゆるジョイント・ファミリー(合同家族)である。屋上は日が落ちれば実に涼しい空間になる。ハヴェリは、高密度居住が可能になる都市型住居である。調査の分析が楽しみである。

 

 


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