建設業界の構造的体質,周縁から37,産経新聞文化欄,産経新聞,19900430
37 (非関税障壁としての)談合体質 布野修司
日米構造協議において、建築業界の構造的体質もまた大きく問題とされている。建設市場の解放が強く求められているのであるが、法規制、日本的慣行、業界の体質などがそれを阻んでいるというのだ。
ツーバイフォー工法(木造枠組壁構造)による三階建木造住宅の輸入拡大のための建築基準法の改正がひとつの焦点である。建材などの様々な規格や基準も問題とされる。要するに建設に関する様々な法規制、基準が非関税障壁とされるのである。また、関西新空港など大規模プロジェクトの建設にあたって、米国企業の入札参加が求められている。具体的に、米軍施設の建設で談合が行われたと裁判沙汰も起こっている。
日本の建設業界は独自のシステムと慣行をもっている。何も米国流のシステムを導入する必要はない。内政干渉だ、という意見もある。しかし、その体質を見直すいい機会であろう。業界が多くの問題を抱えてきたことは事実なのである。また、国際的な日本の立場から、その体質改善が強く求められていることも確かなのだ。
日本の建設業界は、既に久しく世界のトップレベルにあるとされるのであるが、それを支えるのは依然として重層的な下請け構造である。不透明な談合体質もある。今日では独特のシステムとして評価されたりするのであるが、建設費が曖昧となって施主の利益を保護できないとか、ダンピングによって建築の質が落ちるとかで、設計施工一貫の請負体質に問題があるという指摘はずっとなされてきた。
思い起こせば、戦後まもなく建設業界の封建的体質がGHQによって徹底的に問題とされたことがある。設計と施工の兼業の禁止も真剣に検討されている。外圧によらなければ、構造改革ができない体質は実に情けない。内政干渉という以前にやるべきことが山ほどありそうな気がするのである。
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