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2023年5月20日土曜日

GLショー、夢と現実,周縁から38,産経新聞文化欄,産経新聞,19900507

 GLショー、夢と現実,周縁から38,産経新聞文化欄,産経新聞,19900507

38 GLショー(の豊かさと貧しさ)     布野修司

 

 毎年、連休前半にGLショー(東京国際グッドリビングショー)が開催される。今年は、「新しい時代の住まいが見える」をテーマに四月二七日から六日間開かれ、三〇万人を超える人々を集めた。大変な人気である。

  リビングショーがこうも人々をひきつけるのは、住まいの豊かさが真に求められ始めたからだといわれる。もちろん、連休中、狭い家で所在なく、遠出もおっくうだというので、せめて豊かな住まいの夢でも見ようという層も多い。しかし、気に入ればその場でモデル住宅や別荘用のログハウスを買ったりする層も増えているのだ。今年印象的だったのは、やたらにアトラクションやパーフォーマンスが増えていることである。次第にお祭りのようになっていくのかもしれない。

 人々をひきつけるのは、まずハイテック機器である。コンピューター制御の電脳台所、ハイビジョン画面のホームシアター、様々なホーム・セキュリティーやホーム・オートメーションのシステムだ。一方、それと対比的に求められているのが、自然の肌触りである。桧のお風呂や木製の建具、木や瓦、石など自然の材料(あるいはそのイミテーション)によるインテリア・エクステリア用品が数多く展示されているのである。空気清浄器や浄水器など健康のための機器も目立つ。外国からの出品もぐんと増えている。

 しかし、一方、住宅事情の貧困をそのまま示すような商品も目につく。例えば、まるで床下収納のような地下室である。ワンルームマンションの一室である。地下車庫である。収納皿が回転するなど様々な工夫を施した収納家具である。半坪ほどのサウナである。異常に小さいバスタブである。よくよくみるとハイテクをうたう機器もサイズはこぶりのものが多いのだ。

 最新住設機器を見てみれば、日本の住まいの豊かさと貧しさが同時にみえてくる、そんなGLショーであった。



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