ワンルームマンション,周縁から36,産経新聞文化欄,産経新聞,19900423
36 ワンルームマンション 布野修司
四月は新しい生活の始まる月である。新入生や新入社員も、引越しであわただしかった生活がようやく落ち着く頃である。
若いひとたちの住まいというと、最近、木賃アパートというのは流行らない。専らワンルームマンション(一室形式の住戸を主体とする共同住宅)である。シャワー室かバスが付き、洒落たデザインの鉄筋コンクリート・マンションでないと若者にはうけない。仕送りする親はたまったものではない。
ワンルームマンションというと、一頃大問題になった。その建設量が第一次ピークになった一九八四年頃のことだ。八八年頃第二次ピークとなり、その後、建設は減りつつあるのであるが、この地価高騰のあおりをうけて、郊外へとその建設は広がりつつある。それとともにワンルームマンション問題も郊外へ波及しつつあるのだ。
ワンル-ムマンションは何故問題か。もちろん、ワンルームマンションが全て悪いというわけではない。若い単身者の住まいとしてなくてはならない役割を果たしている。ただ、問題の第一は、ワンルーム形式ということであまりにも狭小な住宅が供給されているという点である。
また、問題の第二は、ワンルームマンションが、地域に対して極めて閉鎖的な形で建設されるという点である。ワンルーム居住者の単身者だけで閉じている。深夜に騒ぐ、ゴミを決められた日に出さない、自転車やバイクを路上にとめる、など、地域社会との軋轢は、その点から派生する。
問題の第三は、特にワンルーム・リース(賃貸)・マンションの場合、その仕組みに問題があるという点である。すなわち、投機目的の所有者と入居者が全く匿名の関係であることである。大家さんが近くに居住する場合はまだ問題は少ないのであるが、管理がしっかりしないものも多いのである。
そんな問題で、四月そうそうトラブルに巻き込まれるようでは困ったものである。若い層にとっても、住宅問題は実に深刻なのだ。
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