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2021年11月14日日曜日

06 三角の部屋-うらやましい普請道楽,スペ-スspace,読売新聞家庭欄,読売新聞社,19931013

 スペ-スspace16回 読売新聞家庭欄1992020519931229 151992020519920325 2111993~19931229

 

06  三角の部屋-うらやましい普請道楽スペ-スspace読売新聞家庭欄読売新聞社19931013

 何気ない和室のように見える。しかし、よくみるとおかしい。奥の部屋は三角形である。写真ではわかりづらいが手前の部屋は平行四辺形で、畳も平行四辺形なのである。

 新潟県に縁がある方はご存知であろう、越後の三角亭として知られる豪農の館、伊藤家の「はなれ」である。書斎兼茶室として、明治二十年代はじめに建てられたものだ。

 全体の間取りが三角形、見えているのが十畳の茶室、奥に三角形の水屋、右に三角形の書斎という構成は奇想天外である。うかつにもこんな住まいがあるとは、つい最近まで知らなかった。

 こんな和室は他にはないだろうと思うと、仙台にあるという。土井晩翠ゆかりの茶室である。さらに、江戸期の伊勢に先例があるという。

 四角四面のスペースに住み慣れていると、三角形の部屋は居心地が悪い。落ち着かないのである。妙な錯覚に陥る気がしてならない。しかし、面白いといえば面白い。日頃、見慣れた風景が、内側から視ると、新鮮に見えたりするのである。

 三角形の家をつくるなんて、大工棟梁にとってはとんでもないことである。やり慣れた仕事に比べると、手間暇もかかるし、無駄も多い。しかし、三角亭を手掛けた棟梁は実にやりがいがあったのではないか。そこには遊びの心がある。

 飛騨高山の町に、全て平行四辺形の柱を使って、間取りも斜めになっている町屋があることを思い出す。この例は通りを歩いているだけでは見つからないかも知れない。これも、ちょっとした遊びである。

 誰もが、三角亭を建てることができるわけではない。ウサギ小屋に住むわれわれにとっては、とんだ普請道楽にも思える。しかし、ちょっとはうらやましくはないか。

 nLDKという四角な箱にとらわれず、何か変化をつけたくなって気はしないか。家を建てる方も住む方も遊び心を失ってきた。



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