スペ-スspace,16回 読売新聞家庭欄19920205~19931229 第1期5回19920205~19920325 第2期11回1993~19931229
06 三角の部屋-うらやましい普請道楽,スペ-スspace,読売新聞家庭欄,読売新聞社,19931013
何気ない和室のように見える。しかし、よくみるとおかしい。奥の部屋は三角形である。写真ではわかりづらいが手前の部屋は平行四辺形で、畳も平行四辺形なのである。
新潟県に縁がある方はご存知であろう、越後の三角亭として知られる豪農の館、伊藤家の「はなれ」である。書斎兼茶室として、明治二十年代はじめに建てられたものだ。
全体の間取りが三角形、見えているのが十畳の茶室、奥に三角形の水屋、右に三角形の書斎という構成は奇想天外である。うかつにもこんな住まいがあるとは、つい最近まで知らなかった。
こんな和室は他にはないだろうと思うと、仙台にあるという。土井晩翠ゆかりの茶室である。さらに、江戸期の伊勢に先例があるという。
四角四面のスペースに住み慣れていると、三角形の部屋は居心地が悪い。落ち着かないのである。妙な錯覚に陥る気がしてならない。しかし、面白いといえば面白い。日頃、見慣れた風景が、内側から視ると、新鮮に見えたりするのである。
三角形の家をつくるなんて、大工棟梁にとってはとんでもないことである。やり慣れた仕事に比べると、手間暇もかかるし、無駄も多い。しかし、三角亭を手掛けた棟梁は実にやりがいがあったのではないか。そこには遊びの心がある。
飛騨高山の町に、全て平行四辺形の柱を使って、間取りも斜めになっている町屋があることを思い出す。この例は通りを歩いているだけでは見つからないかも知れない。これも、ちょっとした遊びである。
誰もが、三角亭を建てることができるわけではない。ウサギ小屋に住むわれわれにとっては、とんだ普請道楽にも思える。しかし、ちょっとはうらやましくはないか。
nLDKという四角な箱にとらわれず、何か変化をつけたくなって気はしないか。家を建てる方も住む方も遊び心を失ってきた。
第1期
01 高床式住居-床下でリサイクル,スペ-スspace,読売新聞家庭欄,読売新聞社,19920205
02 屋根-民族のアイデンティティ,スペ-スspace,読売新聞家庭欄,読売新聞社,19920304
03 土間-活用したい床の段差,スペ-スspace,読売新聞家庭欄,読売新聞社,19920311
04 物の住まい-人との“すみ分け”図る,スペ-スspace,読売新聞家庭欄,読売新聞社,19920318
05 コートハウス-都市文明とともに登場,スペ-スspace,読売新聞家庭欄,読売新聞社,19920325
第2期
06 三角の部屋-うらやましい普請道楽,スペ-スspace,読売新聞家庭欄,読売新聞社,19931013
07 ビルの谷間の町家-木造建築,消えゆく運命,スペ-スspace,読売新聞家庭欄,読売新聞社,19931020
08 山岳都市-欧州の町へのあこがれ,スペ-スspace,読売新聞家庭欄,読売新聞社,19931027
09 壁面劇場-自分の家だから自己表現,スペ-スspace,読売新聞家庭欄,読売新聞社,19931103
10 異文化との共生-ル-ル作りが日常的課題,スペ-スspace,読売新聞家庭欄,読売新聞社,19931110
11 生きている広場-部外者お断りで一体感,スペ-スspace,読売新聞家庭欄,19931124
12 同潤会の教え-集合住宅の将来を考える教材,スペ-スspace,読売新聞家庭欄,19931201
13 成長する家-居住者が増築に参加,スペ-スspace,読売新聞家庭欄,19931208
14 共用リビング用途様々,街路の雰囲気,スペ-スspace,読売新聞家庭欄,19931215
15 立体街区-各戸が自由設計の集合住宅,スペ-スspace,読売新聞家庭欄,19931222
16 環境共生-,スペ-スspace,読売新聞家庭欄,19931229
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