スペ-スspace,16回 読売新聞家庭欄19920205~19931229 第1期5回19920205~19920325 第2期11回1993~19931229
一見、外国の集合住宅のようだけれど、実は東京都の多摩地区にある団地の光景である。まるでイタリアの山岳都市のようだと随分評判になった。ベルコリーヌとは、美しい丘という意味だという。
日本の住宅団地というと四角い箱型の住棟が平行に並ぶ単調なイメージがすぐ浮かぶ。戦後、日本列島の北から南まで同じ様な団地が建設され、見慣れた住宅地の風景となってしまった。
北欧の集合住宅がモデルというが、住戸を積み重ねるだけの箱型になったのは経済性が優先されたからである。画一的な団地は味気ないということでデザインに工夫がなされ出した。ここ一〇年ぐらいのことであろうか。その代表的な試みがこの団地である。
ところでなぜイタリアの山岳都市なのであろうか。オランダの町並みをそっくりそのまま再現したテーマ・パークが評判を呼んでいるけれど、日本人の心には何となくヨーロッパの町への憧れがあるのだろうか。
日本の集合住宅の歴史は浅い。アパートメント・ハウスが導入されたのが昭和の初め頃であり、建設が本格化したのは戦後のことだ。半世紀の間模索が続いてきたといってもいい。しかし、そろそろ、これぞ日本の集合住宅という形式が生み出されてもいいのではないか。
例えば、町家の伝統を生かした共有空間を豊かに持った低層で高密度の集合形式はできないか。ただ、それ以前に大きなネックがある。日本では持家一戸建てへのこだわりが強すぎるのである。
毎年建てられる住宅の過半は集合住宅である。大都市圏では七割がそうだ。集合住宅で生まれ、集合住宅で一生過ごす、既にそんな時代が来ている。終(つ)いの住処として日本の集合住宅を考えるとき、事情は違ってくるであろう。
単に、ヨーロッパの町のイメージを借りてくるのではなく、一生住み続けるための工夫を積み重ねていくことが大切ではないか。
第1期
01 高床式住居-床下でリサイクル,スペ-スspace,読売新聞家庭欄,読売新聞社,19920205
02 屋根-民族のアイデンティティ,スペ-スspace,読売新聞家庭欄,読売新聞社,19920304
03 土間-活用したい床の段差,スペ-スspace,読売新聞家庭欄,読売新聞社,19920311
04 物の住まい-人との“すみ分け”図る,スペ-スspace,読売新聞家庭欄,読売新聞社,19920318
05 コートハウス-都市文明とともに登場,スペ-スspace,読売新聞家庭欄,読売新聞社,19920325
第2期
06 三角の部屋-うらやましい普請道楽,スペ-スspace,読売新聞家庭欄,読売新聞社,19931013
07 ビルの谷間の町家-木造建築,消えゆく運命,スペ-スspace,読売新聞家庭欄,読売新聞社,19931020
08 山岳都市-欧州の町へのあこがれ,スペ-スspace,読売新聞家庭欄,読売新聞社,19931027
09 壁面劇場-自分の家だから自己表現,スペ-スspace,読売新聞家庭欄,読売新聞社,19931103
10 異文化との共生-ル-ル作りが日常的課題,スペ-スspace,読売新聞家庭欄,読売新聞社,19931110
11 生きている広場-部外者お断りで一体感,スペ-スspace,読売新聞家庭欄,19931124
12 同潤会の教え-集合住宅の将来を考える教材,スペ-スspace,読売新聞家庭欄,19931201
13 成長する家-居住者が増築に参加,スペ-スspace,読売新聞家庭欄,19931208
14 共用リビング用途様々,街路の雰囲気,スペ-スspace,読売新聞家庭欄,19931215
15 立体街区-各戸が自由設計の集合住宅,スペ-スspace,読売新聞家庭欄,19931222
16 環境共生-,スペ-スspace,読売新聞家庭欄,19931229
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