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2021年11月16日火曜日

08 山岳都市-欧州の町へのあこがれ,スペ-スspace,読売新聞家庭欄,読売新聞社,19931027

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  08  山岳都市-欧州の町へのあこがれスペ-スspace読売新聞家庭欄読売新聞社19931027

 一見、外国の集合住宅のようだけれど、実は東京都の多摩地区にある団地の光景である。まるでイタリアの山岳都市のようだと随分評判になった。ベルコリーヌとは、美しい丘という意味だという。

 日本の住宅団地というと四角い箱型の住棟が平行に並ぶ単調なイメージがすぐ浮かぶ。戦後、日本列島の北から南まで同じ様な団地が建設され、見慣れた住宅地の風景となってしまった。

 北欧の集合住宅がモデルというが、住戸を積み重ねるだけの箱型になったのは経済性が優先されたからである。画一的な団地は味気ないということでデザインに工夫がなされ出した。ここ一〇年ぐらいのことであろうか。その代表的な試みがこの団地である。

 ところでなぜイタリアの山岳都市なのであろうか。オランダの町並みをそっくりそのまま再現したテーマ・パークが評判を呼んでいるけれど、日本人の心には何となくヨーロッパの町への憧れがあるのだろうか。

 日本の集合住宅の歴史は浅い。アパートメント・ハウスが導入されたのが昭和の初め頃であり、建設が本格化したのは戦後のことだ。半世紀の間模索が続いてきたといってもいい。しかし、そろそろ、これぞ日本の集合住宅という形式が生み出されてもいいのではないか。

 例えば、町家の伝統を生かした共有空間を豊かに持った低層で高密度の集合形式はできないか。ただ、それ以前に大きなネックがある。日本では持家一戸建てへのこだわりが強すぎるのである。

 毎年建てられる住宅の過半は集合住宅である。大都市圏では七割がそうだ。集合住宅で生まれ、集合住宅で一生過ごす、既にそんな時代が来ている。終(つ)いの住処として日本の集合住宅を考えるとき、事情は違ってくるであろう。

 単に、ヨーロッパの町のイメージを借りてくるのではなく、一生住み続けるための工夫を積み重ねていくことが大切ではないか。



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