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2021年11月10日水曜日

02 屋根-民族のアイデンティティ,スペ-スspace,読売新聞家庭欄,読売新聞社,19920304

 スペ-スspace16回 読売新聞家庭欄1992020519931229 151992020519920325 2111993~19931229

 

02 屋根-民族のアイデンティティスペ-スspace読売新聞家庭欄読売新聞社19920304

 

  西スマトラのミナンカバウの住居は実に特徴的だ。棟が両方の端部で滑らかなカーブを描いて反り返っている。この部分はゴンジョングと呼ばれるが、大きな住居になると三対、六つ持つものもある。屋根の全体は横からみると水牛の角のように見える。ミナンカバウというとインドネシア(マレー)語で「勇敢なる水牛」という意味であり、屋根の形態は水牛の角をシンボライズしているという。

 屋根のスタイルは、地域や民族のアイデンティティーを象徴するものとして強く意識されることが多いのだが、そのスタイルは、必ずしも古来から伝統的に決まっているということではない。意外に新しく生み出された例も少なくないのだ。例えば、スラウェシ島のサダン・トラジャ族の住居は、鞍の形をした、これまた特徴的な形態をしているのであるが、そうしたスタイルの住居が盛んに建てられるようになったのは、地域が開かれて、観光客が盛んに訪れるようになった極く最近のことなのである。

 また、同じ民族でも条件によっては違う住居形式を選択することがある。ミナンカバウ族は、出稼ぎをすることで知られるのであるが、マレー半島のマラッカの周辺に移住して住む住居は本家とはまるっきり違う。ただ、棟の端部を少し斜めに上げる。そこにアイデンティーティーの意識が窺える。地域と民族のアイデンティティーがディテールにどう表現されるかは興味深いことである。

 日本ではどうか。入母屋屋根の沢山重なった「入母屋御殿」と呼ばれるスタイルがある。ここ十年ぐらい前から農村部で多くみられる。お城のイメージであろうか。ただ奇妙なことは、それぞれがこの入母屋御殿こそが地域のアイデンティーティーを象徴するものだと考えていることである。地域性をうたいながら、全国一律に同じような入母屋御殿が建つ。どこか変だ。


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01 高床式住居-床下でリサイクルスペ-スspace読売新聞家庭欄読売新聞社19920205

02 屋根-民族のアイデンティティスペ-スspace読売新聞家庭欄読売新聞社19920304

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