スペ-スspace,16回 読売新聞家庭欄19920205~19931229 第1期5回19920205~19920325 第2期11回1993~19931229
02 屋根-民族のアイデンティティ,スペ-スspace,読売新聞家庭欄,読売新聞社,19920304
西スマトラのミナンカバウの住居は実に特徴的だ。棟が両方の端部で滑らかなカーブを描いて反り返っている。この部分はゴンジョングと呼ばれるが、大きな住居になると三対、六つ持つものもある。屋根の全体は横からみると水牛の角のように見える。ミナンカバウというとインドネシア(マレー)語で「勇敢なる水牛」という意味であり、屋根の形態は水牛の角をシンボライズしているという。
屋根のスタイルは、地域や民族のアイデンティティーを象徴するものとして強く意識されることが多いのだが、そのスタイルは、必ずしも古来から伝統的に決まっているということではない。意外に新しく生み出された例も少なくないのだ。例えば、スラウェシ島のサダン・トラジャ族の住居は、鞍の形をした、これまた特徴的な形態をしているのであるが、そうしたスタイルの住居が盛んに建てられるようになったのは、地域が開かれて、観光客が盛んに訪れるようになった極く最近のことなのである。
また、同じ民族でも条件によっては違う住居形式を選択することがある。ミナンカバウ族は、出稼ぎをすることで知られるのであるが、マレー半島のマラッカの周辺に移住して住む住居は本家とはまるっきり違う。ただ、棟の端部を少し斜めに上げる。そこにアイデンティーティーの意識が窺える。地域と民族のアイデンティティーがディテールにどう表現されるかは興味深いことである。
日本ではどうか。入母屋屋根の沢山重なった「入母屋御殿」と呼ばれるスタイルがある。ここ十年ぐらい前から農村部で多くみられる。お城のイメージであろうか。ただ奇妙なことは、それぞれがこの入母屋御殿こそが地域のアイデンティーティーを象徴するものだと考えていることである。地域性をうたいながら、全国一律に同じような入母屋御殿が建つ。どこか変だ。
第1期
01 高床式住居-床下でリサイクル,スペ-スspace,読売新聞家庭欄,読売新聞社,19920205
02 屋根-民族のアイデンティティ,スペ-スspace,読売新聞家庭欄,読売新聞社,19920304
03 土間-活用したい床の段差,スペ-スspace,読売新聞家庭欄,読売新聞社,19920311
04 物の住まい-人との“すみ分け”図る,スペ-スspace,読売新聞家庭欄,読売新聞社,19920318
05 コートハウス-都市文明とともに登場,スペ-スspace,読売新聞家庭欄,読売新聞社,19920325
第2期
06 三角の部屋-うらやましい普請道楽,スペ-スspace,読売新聞家庭欄,読売新聞社,19931013
07 ビルの谷間の町家-木造建築,消えゆく運命,スペ-スspace,読売新聞家庭欄,読売新聞社,19931020
08 山岳都市-欧州の町へのあこがれ,スペ-スspace,読売新聞家庭欄,読売新聞社,19931027
09 壁面劇場-自分の家だから自己表現,スペ-スspace,読売新聞家庭欄,読売新聞社,19931103
10 異文化との共生-ル-ル作りが日常的課題,スペ-スspace,読売新聞家庭欄,読売新聞社,19931110
11 生きている広場-部外者お断りで一体感,スペ-スspace,読売新聞家庭欄,19931124
12 同潤会の教え-集合住宅の将来を考える教材,スペ-スspace,読売新聞家庭欄,19931201
13 成長する家-居住者が増築に参加,スペ-スspace,読売新聞家庭欄,19931208
14 共用リビング用途様々,街路の雰囲気,スペ-スspace,読売新聞家庭欄,19931215
15 立体街区-各戸が自由設計の集合住宅,スペ-スspace,読売新聞家庭欄,19931222
16 環境共生-,スペ-スspace,読売新聞家庭欄,19931229
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