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2021年11月18日木曜日

11 生きている広場-部外者お断りで一体感,スペ-スspace,読売新聞家庭欄,19931124

 スペ-スspace16回 読売新聞家庭欄1992020519931229 151992020519920325 2111993~19931229

 11  生きている広場-部外者お断りで一体感スペ-スspace読売新聞家庭欄19931124

 万国旗が住棟間に旗めき、楽しげな催しが行われているのは熊本県の保田窪第一団地である。山本理顕氏設計によって二年程前に完成したこの公営住宅はこの間大変な論議を呼んできた。

 この中央の広場に面したリビングに吹きさらしのブリッジで渡るという実に大胆な間取りが採られているのである。広場に面して各戸のリビングが向き合う形になっている。

 戦後日本の住宅の象徴というとDK(ダイニングキッチン)である。2DKがうまれたのは戦後まもなくのことだ。住戸面積が限られていた時代、どのように間取りをつくればいいのか。食事をするスペースと就寝するスペースはまず分離すべきだ、これを食寝分離論という。この理論によって食堂と台所を一緒にする工夫が生まれた。それによって生まれたのがDKである。

 実に興味深いことにこのDKというスペースはマンションであれ戸建て住宅であれ日本中に蔓延する。nLDKと言えばだいたい想像がつくワンパターンだ。

 そうした中でこの公営住宅が論議を呼ぶのは当然のことであった。ただそれだけではない。もうひとつの論議の的がこの中央広場である。一見何の変哲もなさそうであるが、この広場へは一旦各戸へ入ってからしか行くことができないのだ。

 広場を囲む住棟に住む人たちだけの共用スペースである。外部の人たちに対しては閉じていることになる。内部の住人には否が応でもまとまりをもとめるスペースとなる。

 ただ住戸が並ぶだけの、また積み重なるだけの団地が多い中で、集まって住むことの意味を問いかけるのがこの広場である。こうした行事の時にはヴェランダとヴェランダが旗で繋がれる。容易に一体感が生まれる。ただスペースがあるだけの広場では死んだ広場である。コミュニティーが日常的に用いることで広場は生きた広場になる。閉じた広場にはそれを意図する仕掛がある。


 

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03  土間-活用したい床の段差スペ-スspace読売新聞家庭欄読売新聞社19920311

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11  生きている広場-部外者お断りで一体感スペ-スspace読売新聞家庭欄19931124

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13  成長する家-居住者が増築に参加スペ-スspace読売新聞家庭欄19931208

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