スペ-スspace,16回 読売新聞家庭欄19920205~19931229 第1期5回19920205~19920325 第2期11回1993~19931229
万国旗が住棟間に旗めき、楽しげな催しが行われているのは熊本県の保田窪第一団地である。山本理顕氏設計によって二年程前に完成したこの公営住宅はこの間大変な論議を呼んできた。
この中央の広場に面したリビングに吹きさらしのブリッジで渡るという実に大胆な間取りが採られているのである。広場に面して各戸のリビングが向き合う形になっている。
戦後日本の住宅の象徴というとDK(ダイニングキッチン)である。2DKがうまれたのは戦後まもなくのことだ。住戸面積が限られていた時代、どのように間取りをつくればいいのか。食事をするスペースと就寝するスペースはまず分離すべきだ、これを食寝分離論という。この理論によって食堂と台所を一緒にする工夫が生まれた。それによって生まれたのがDKである。
実に興味深いことにこのDKというスペースはマンションであれ戸建て住宅であれ日本中に蔓延する。nLDKと言えばだいたい想像がつくワンパターンだ。
そうした中でこの公営住宅が論議を呼ぶのは当然のことであった。ただそれだけではない。もうひとつの論議の的がこの中央広場である。一見何の変哲もなさそうであるが、この広場へは一旦各戸へ入ってからしか行くことができないのだ。
広場を囲む住棟に住む人たちだけの共用スペースである。外部の人たちに対しては閉じていることになる。内部の住人には否が応でもまとまりをもとめるスペースとなる。
ただ住戸が並ぶだけの、また積み重なるだけの団地が多い中で、集まって住むことの意味を問いかけるのがこの広場である。こうした行事の時にはヴェランダとヴェランダが旗で繋がれる。容易に一体感が生まれる。ただスペースがあるだけの広場では死んだ広場である。コミュニティーが日常的に用いることで広場は生きた広場になる。閉じた広場にはそれを意図する仕掛がある。
第1期
01 高床式住居-床下でリサイクル,スペ-スspace,読売新聞家庭欄,読売新聞社,19920205
02 屋根-民族のアイデンティティ,スペ-スspace,読売新聞家庭欄,読売新聞社,19920304
03 土間-活用したい床の段差,スペ-スspace,読売新聞家庭欄,読売新聞社,19920311
04 物の住まい-人との“すみ分け”図る,スペ-スspace,読売新聞家庭欄,読売新聞社,19920318
05 コートハウス-都市文明とともに登場,スペ-スspace,読売新聞家庭欄,読売新聞社,19920325
第2期
06 三角の部屋-うらやましい普請道楽,スペ-スspace,読売新聞家庭欄,読売新聞社,19931013
07 ビルの谷間の町家-木造建築,消えゆく運命,スペ-スspace,読売新聞家庭欄,読売新聞社,19931020
08 山岳都市-欧州の町へのあこがれ,スペ-スspace,読売新聞家庭欄,読売新聞社,19931027
09 壁面劇場-自分の家だから自己表現,スペ-スspace,読売新聞家庭欄,読売新聞社,19931103
10 異文化との共生-ル-ル作りが日常的課題,スペ-スspace,読売新聞家庭欄,読売新聞社,19931110
11 生きている広場-部外者お断りで一体感,スペ-スspace,読売新聞家庭欄,19931124
12 同潤会の教え-集合住宅の将来を考える教材,スペ-スspace,読売新聞家庭欄,19931201
13 成長する家-居住者が増築に参加,スペ-スspace,読売新聞家庭欄,19931208
14 共用リビング用途様々,街路の雰囲気,スペ-スspace,読売新聞家庭欄,19931215
15 立体街区-各戸が自由設計の集合住宅,スペ-スspace,読売新聞家庭欄,19931222
16 環境共生-,スペ-スspace,読売新聞家庭欄,19931229
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