スペ-スspace,16回 読売新聞家庭欄19920205~19931229 第1期5回19920205~19920325 第2期11回1993~19931229
壁面一杯に描かれたスーパーグラフィックは、タイのビルディング・トゥゲザー(一緒に建てよう)というグループの作品である。全体はいくつかのクラスター(房)で構成されているのであるが、各棟の妻壁にそれぞれ思い思いの絵がアーチストによって描かれている。とても楽しい。
実は、この団地が珍しいのは壁面の絵だけではない。団地の建設そのものも手作りなのだ。居住者自身が、夜間やウイークエンドにブロックをみんなで積んで創った団地である。専門家や職人の力も借りたのであるが随分と立派である。みんなで作り上げたから愛着があるのであろう。壁の絵も自分たちのものだというひとつの表現である。
日本では、こうしたスーパーグラフィックの表現は余り好まれない。護岸用のコンクリートの壁や工事現場の塀にところどころ試みられているがヨーロッパなどに比べればあまりパットしない。生地(きじ)のままが日本人に合う。
タイの人々は自宅の壁によく絵を描く。この団地でもパンダの絵を上手に描いた例を見かけた。インドネシアの人たちもそうだ。思い思いに絵を描くのがむしろ普通のようにみえる。
日本で集合住宅の壁にひとりだけペンキを塗ったりすれば大問題である。区分所有法や建築協定の規定に違反することになる。しかし、自分の壁に自由に絵を描いていいということになったらどうだろう。
おそらく見解は真二つに分かれる。醜悪になるに決まっている、我慢できないとなるか、面白いかも知れない、個々の表現が集まって全体として面白い表現になるかも知れないとなるか。
日本では、身近な環境に個々人が自己表現する場所が極めて少ない。また、日本人は必ずしもそれを好まないし、得意でもない。もう少し、自由な表現がなされてもいいのではないか。積極的に集まって住む意味が見直される機会になるような気がするのであるが。
第1期
01 高床式住居-床下でリサイクル,スペ-スspace,読売新聞家庭欄,読売新聞社,19920205
02 屋根-民族のアイデンティティ,スペ-スspace,読売新聞家庭欄,読売新聞社,19920304
03 土間-活用したい床の段差,スペ-スspace,読売新聞家庭欄,読売新聞社,19920311
04 物の住まい-人との“すみ分け”図る,スペ-スspace,読売新聞家庭欄,読売新聞社,19920318
05 コートハウス-都市文明とともに登場,スペ-スspace,読売新聞家庭欄,読売新聞社,19920325
第2期
06 三角の部屋-うらやましい普請道楽,スペ-スspace,読売新聞家庭欄,読売新聞社,19931013
07 ビルの谷間の町家-木造建築,消えゆく運命,スペ-スspace,読売新聞家庭欄,読売新聞社,19931020
08 山岳都市-欧州の町へのあこがれ,スペ-スspace,読売新聞家庭欄,読売新聞社,19931027
09 壁面劇場-自分の家だから自己表現,スペ-スspace,読売新聞家庭欄,読売新聞社,19931103
10 異文化との共生-ル-ル作りが日常的課題,スペ-スspace,読売新聞家庭欄,読売新聞社,19931110
11 生きている広場-部外者お断りで一体感,スペ-スspace,読売新聞家庭欄,19931124
12 同潤会の教え-集合住宅の将来を考える教材,スペ-スspace,読売新聞家庭欄,19931201
13 成長する家-居住者が増築に参加,スペ-スspace,読売新聞家庭欄,19931208
14 共用リビング用途様々,街路の雰囲気,スペ-スspace,読売新聞家庭欄,19931215
15 立体街区-各戸が自由設計の集合住宅,スペ-スspace,読売新聞家庭欄,19931222
16 環境共生-,スペ-スspace,読売新聞家庭欄,19931229
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